福岡県下の百歳以上の超高齢者 (以下百歳老人) 60名中40名 (男子7名, 女子33名) について直接訪門して健康診断を施行し, その社会医学的検索を行った.
1) 百歳老人の居住分布は現在の人口分布にほぼ一致し, 長寿地区の局在は認めなかった. しかしその出生と生育地は過半数 (30名, 75.0%) は農村で, とくに内陸平野で都市近郊型農業地域である筑後地方出身者が14名と多数を占め, 純漁村, 農漁村出身者は少なかった.
2) 百歳老人は同胞中で上位出生者が多く, 出生順位第1~3子が過半数 (67.5%) で長男・長女が多かった. 青壮年期の職業は24名 (60.0%) が比較的重労働の職種経験者であり, 特に女子にその傾向を認め, また老年期まで勤労従事者が80.0%を占めた.
3) 百歳老人は脳血管障害, 糖尿病, 腫瘍性疾患手術の既往はないが, 80歳以降骨格系変性疾患, 白内障罹患者を多く認めた. 現在の医療受診率は16名 (40.0%) と低く, 高血圧加療中のものを2名認めた. 視力は良く保持され日常生活可能なものが過半数を占めるが, 聴力の著明低下は36名 (90.0%) 認めた. ADLでは25名 (62.5%) が日常生活可能と判定しえた.
4) 百歳老人の家系的な長寿傾向は確認できなかった. その生活様式は多世代同居型であり, 居住環境が良好に保持され, また家族の百歳老人の介助, 食事への配慮など環境因子が良いことが注目された.
5) 栄養調査では特定の長寿食はなく, 多くは家族の調理で低カロリー, 低塩食の摂取者が多い. とくに緑黄野菜と動物性蛋白を充分摂取している者が多かった. 嗜好として喫煙歴を有するものは極く少数3名 (7.5%) であったが, 飲酒に関しては15名 (37.5%) が飲酒歴を有し, 現在も10名 (25.0%) に清酒嗜好を認めた.
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