日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
32 巻, 12 号
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  • 高橋 忠雄, 橋本 肇, 野呂 俊夫, 日野 恭徳, 平島 得路, 黒岩 厚二郎, 山城 守也
    1995 年 32 巻 12 号 p. 781-785
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    過去14年間の食道癌手術45例 (平均年齢72.6±6.3歳) において多重ロジスティクモデル分析および Cox の比例ハザードモデル分析を用いて術死に対する術前・術後因子の相対危険度および予後に対する相対危険度を推定した. 術死の有意の危険因子は術後呼吸器系合併症のみであり, さらにこの術後呼吸器系合併症発生の有意の危険因子は癌 stage のみであった. また予後の有意の危険因子は(1)癌 stage, (2)年齢であった. 癌 stage の高い症例では術後十分に呼吸器の監視を行い呼吸器系合併症の発生の予防に注意しなければならない. また高齢者になるほど早期発見, 早期治療が救命と長期生存に最も重要な要素であり, 術前併存症のリスクは必ずしも大きな影響を与えるものではないと考えられる.
  • 荒木 厚, 出雲 祐二, 井上 潤一郎, 高橋 龍太郎, 高梨 薫, 手島 陸久, 矢富 直美, 冷水 豊, 井藤 英喜
    1995 年 32 巻 12 号 p. 786-796
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年糖尿病患者のQOL (Quality of life) を評価する目的で, 外来通院中の60歳以上の老年糖尿病患者452例を対象に, 家庭訪問によりQOLに関する面接アンケート調査を行った. 糖尿病の負担感に関して, 症状負担度 (8問), 生活上負担度 (8問), 食事療法負担度 (7問), 治療負担度 (5問),満足度 (4問), 不安度(5問)について質問し, 計37問の質問の得点を合計し, 糖尿病総合負担度スケールを作成した. 糖尿病総合負担度スケールの Cronbach のα係数は0.88で満足すべき信頼度であり, 内部相関も良好であった. 糖尿病総合負担度スケールは老年者のQOLの一つの指標であるフィラデルフィア老年病センター (PGC) モラールスケールと有意 (r=-0.48, p<0.001) の相関を示し, 負担度が増えるほどQOLは低下すると考えられた. 糖尿病総合負担度スケールは老年糖尿病患者のQOL評価に有用であると思われた.
  • 荒木 厚, 出雲 祐二, 井上 潤一郎, 高橋 龍太郎, 高梨 薫, 手島 睦久, 矢富 直美, 冷水 豊, 井藤 英喜
    1995 年 32 巻 12 号 p. 797-803
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    前報において老年糖尿病患者383例の家庭訪問によるQOLの面接アンケート調査より糖尿病総合負担度スケールを作成した. 本報では, 老年糖尿病患者の糖尿病負担感を規定する要因を明らかにする目的で, 糖尿病総合負担度と身体的, 社会的, 心理的因子との関連について検討した. 糖尿病負担度は, 食事療法, 経口剤治療, インスリン治療の順で大きくなり, また網膜症, 神経障害を有する群でも大きくなった. さらに, 糖尿病負担度は, HbA1c高値, ADL低下と有意の関連を示した. 社会的因子ではポジティブ社会サポート, ネットワーク, 余暇活動が増えるほど糖尿病負担度が小さくなり, ネガティブ社会サポートが増えるとそれは大きくなった. 重回帰分析の結果, 低年齢, 女性, ADL低下, HbA1c高値, インスリン治療, ポジティブ社会サポートの低下, ネガティブ社会サポートの存在, 経済的余裕度のないこと, および糖尿病適応感の低下が糖尿病負担感の増加を説明する独立した因子であることが明らかとなった.
  • 荒木 厚, 出雲 祐二, 井上 潤一郎, 服部 明徳, 中村 哲郎, 高橋 龍太郎, 高梨 薫, 手島 陸久, 矢富 直美, 冷水 豊, 井 ...
    1995 年 32 巻 12 号 p. 804-809
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    外来通院中の60歳以上の老年者糖尿病383例 (男132例, 女251例) を対象に, 食事療法の負担感に関する面接アンケート調査を家庭訪問により行った. カロリー制限, 食事のバランス, 規則正しい食事, 好物の制限, 間食の制限, 外食時の制限, 食事療法全体に対する負担感の7項目について質問し, 各質問の回答に「全く負担がない」の1点から「非常に負担である」の4点まで配点し, 7つの質問に対する回答の得点を合計して食事療法負担度のスケール化を行った (α係数=0.80). 食事療法負担度は女性, 老年前期, 高血糖例, 経口剤治療例で大きくなり, 食事療法の順守が良好であるほど軽減した. さらに食事療法負担度は社会や家族のポジティブサポートが大きい程小さくなり, ネガティブ社会サポートが大きくなる程大きくなり, 単に糖尿病の治療にかかわる要因のみでなく, 社会的要因によっても大きな影響を受けることが明らかとなった. また, 食事療法負担度が大きい程, モラールは低くなり (r=0.18, p<0.001), 食事療法に対する負担感の有無は, 老年糖尿病患者のQOLに大きな影響を与えることが示唆された.
  • 坂下 泰雄, 浅山 邦夫, 杉本 立甫
    1995 年 32 巻 12 号 p. 810-816
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    2年間に当院に入院した脳血管障害例のうち, 発症数日後より運動麻痺が著明に改善した中大脳動脈領域大脳皮質を含む広範囲脳梗塞例について検討した. 症例は67~80歳の男性6例で, 全例塞栓型の発症様式であった. 4例は弛緩性左片麻痺で上肢の麻痺が強く, 2例は右片麻痺であった. 意識レベルは4例で Japan coma scale のIIであったが, 他の2例は清明であった. 4例で心房細動が合併し, 他の2例では心室性あるいは上室性期外収縮を認めた. 心房細動合併例で心房内血栓を証明できた例はなく, 心臓弁膜症を合併した例もなかった. 高血圧が3例, 糖尿病は1例で合併し, コレステロール値は全例で正常であった. 5例が初回発作であった. 発症時の運動麻痺は, いずれの症例も発症後1ないし3日目から麻痺が回復しはじめ, 更に10日間前後で麻痺は著明に改善した. 退院時までには日常生活動作は自立し歩行も安定した. しかし, 左半球損傷例では失語症を, 右半球損傷例では左半側空間無視を残す例があった. 発症後11日目までに行った脳血流スキャンで梗塞巣周辺の前頭葉部分での血流増加を認めた. 治療は脳浮腫対策と輸液で, 血栓溶解剤は使用しなかった. 発症後数時間で急速に神経症状が改善する脳梗塞を spectacular shrinking deficit と呼ぶことがあるが, 本報告例の特徴は, 脳塞栓発症後3日を経過してからも運動麻痺の回復が良好であったことで, 脳梗塞発症時の予後判定に際して注意すべき一群があると思われる.
  • 森島 淳之, 満田 憲昭, 名倉 潤, 紙野 晃人, 里 直行, 三木 哲郎, 荻原 俊男
    1995 年 32 巻 12 号 p. 817-821
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Werner 症候群 (WRN) は, 常染色体性劣性の遺伝性早老症であり, 原因遺伝子座位は第8染色体短腕に存在することが知られているが, 原因遺伝子そのものは未だ単離同定されていない. 本邦での有病率は約20万人に1人で, 発症頻度が白人集団に比べて高い疾患の一つである. 今回, 甲状腺乳頭状腺癌と骨髄異形成症候群を合併し, 39歳にて死亡した患者の3人の同胞 (当患者を含めて2人が発症) と, イトコ婚である両親に対して遺伝子解析を行った.
    WRN領域に存在する4種のマイクロサテライト多型, D8S360, D8S1055, D8S339, ANK1を用いて遺伝子型を決定し, ハプロタイプを作成した. 患者の同胞のうち長女と次女の2人は, 臨床診断では健常者である. 長女は正常のハプロタイプを受け継いでいたが, 次女はWRN変異遺伝子をもつハプロタイプを受け継いでいた. しかし, この2人は臨床的に異常はなかった. この結果は, WRNが劣性遺伝であることを裏付けた.
    本症候群の発症機序は, 未だ不明であるが, 老化の機序を探る手立てとして有力視されており, 将来単離同定されるであろうWRN遺伝子の機能を解明すれば, 老化機序解明の糸口になると考えられる.
  • 市原 寿江, 美馬 伸章, 赤池 雅史, 東 博之, 重清 俊雄, 齋藤 史郎
    1995 年 32 巻 12 号 p. 822-824
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    84歳, 男性. 右上顎第二大臼歯を抜歯後に止血困難となり, 当科に紹介された. 止血検査で血小板減少 (2.2×104l), FDP-E (3,172ng/ml), Dダイマー (42.6μg/ml), トロンビンーアンチトロンビンIII複合体 (48.0ng/ml) およびプラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体 (6.8μg/ml) の増加が見られ, 腹部CTで両側総腸骨動脈に最大径4cmの動脈瘤が認められた. 両側総腸骨動脈瘤による播種性血管内血液凝固症候群 (DIC) と診断し,ヘパリン (10,000単位/日) 投与によってDICが改善された後, Yグラフト置換術を施行した. 本例はDICを合併した孤立性腸骨動脈瘤の世界第2例目である.
  • 西田 宏二, 加藤 正博, 東島 正泰, 高木 維彦, 明石 隆吉
    1995 年 32 巻 12 号 p. 825-829
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は93歳女性. 心窩部痛にて近医を受診し, 当院紹介入院となった. 初診時血液生化学検査及び腹部超音波検査にて胆石症, 閉塞性黄疸, 急性化膿性胆管炎, 急性膵炎と診断し, 緊急経皮経肝的胆道ドレナージ (Percutaneous transhepatic choledocal drainage: 以下PTCD) を施行した. 経皮経肝的胆道造影 (Percutaneous transhepatic cholangiography: 以下PTC) にて十二指腸乳頭部に径4cmの結石嵌頓を認めたが, 年齢も考慮して経乳頭的アプローチは困難と判断した. そのため体外衝撃波結石破砕療法 (Extracorporeal shockwave lithotripsy: 以下ESWL) にて結石を破砕した. 破砕後のPTCにて十二指腸傍乳頭憩室を認め, また上部消化管内視鏡検査にて同様の憩室を確認した. ESWL前後のPTCを比較検討し, 十二指腸傍乳頭憩室内結石により閉塞性黄疸, 急性化膿性胆管炎, 急性膵炎を生じた Lemmel 症候群の1例と診断した. また高齢者の巨大結石症に対しESWLは比較的安全で容易な治療手段であると考えた.
  • 1995 年 32 巻 12 号 p. 830-857
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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