血清Eの測定を, 近年開発された, 迅速, 簡便な蛍光法を用いて行い, 各種疾患との関連性を中心に検討した.
健常若年者の血清Eは1.01±0.23mg/d
lで加齢と共に多少の上昇をみた.
血清Eが低値を示す疾患としては, malabsorption syndrom などの吸収障害を示す疾患や, 肝障害などの Vit E の Carrier 蛋白の合成低下の考えられる疾患や, 脳卒中, 心筋硬塞などの Vit E の消費される事が考えられる疾患など多くの例で低E血症がみられた. 逆に高値を示す疾患としては, 糖尿病, ネフローゼ, 高脂血症などがあるが, 従来より多くの研究者の目は低E血症に向けられており, 高E血症に関する知見は少ない. そこで著者らは, 高脂血症における血清Vit E の動態につき検討した. 健常成人, 高脂血症共に, 血清脂質と血清Eとの間に正相関が得られたが特に cholesterol, β-リポ蛋白で高かった.
健常成人の血清リポ蛋白中のEはHDL分画に多く含まれていたが, 高脂血症では各型に応じた特色がみられ, IIa型ではLDL分画に, IIb型ではVLDL, LDL分画, IV型ではVLDL分画に Vit E が多く含まれていた. 天然の Vit E である d-α-tocoperyl acetate 300mg/dayの投与により, 健常成人では血清脂質の変動はみられなかったが, 高脂血症では投与後4週で中性脂肪の低下をみた. 血清E値は投与後2週で両者共に投与前の2倍以上の値になり, 以後著変がなかった. しかし高脂血症が投与後2, 4週共, 健常成人に比し血清E値は常に著しい高値を示した. 血清Eと疾患との関連性を高脂血症を中心に検討し, 各種疾患との間に深い結びつきが推察され, 臨床的にも血清Eの測定が意義深いものと思われた.
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