日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
8 巻, 6 号
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  • 西丸 雄也, 尾前 照雄, 勝木 司馬之助
    1971 年8 巻6 号 p. 293-296
    発行日: 1971/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    反復性局所性脳虚血発作 (TIA) を主訴として, 九州大学第2内科を訪れ, 初診時に脳卒中を発症していなかった28例を, 初回TIAより最短9ヵ月, 最長144ヵ月, 平均48ヵ月追跡調査した.
    最終追跡時点で, 15例 (53.6%) は就職あるいは家事に従事し, 6例 (21.4%) が死亡していた. 脳卒中が直接死因と考えられた症例はなかった. 脳血栓の発症は6例 (21.4%) にみられた. そのうちの2例には脳血栓の発作が2回みられた. 初回TIAより脳血栓発症までの期間はそれぞれ3時間, 20時間, 1.5ヵ月, 2.5ヵ月, 4年4ヵ月, 8年であった. 初診時の臨床所見と脳血栓の発症との関係を検討したが有意な因子を見出しえなかった.
  • 骨髄血管動脈硬化と脂肪髄との病理学的関連性について
    海老原 隆郎, 勝沼 英宇
    1971 年8 巻6 号 p. 297-305
    発行日: 1971/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    貧血の直接的原因とみられている造血物質V. B12, 鉄の欠如, あるいは溶血, 悪性腫瘍, 慢性疾患などが証明できなくて, 従来から生理的貧血と呼ばれた老年性貧血の発生機序の一因子として私達は剖検で骨髄動脈に硬化を認め, それが血流障害をきたし, 脂肪化をもたらして貧血が発現するであろうと推測した. よって老年性貧血の発生に骨髄血管の動脈硬化が重要な因子であると考え本研究に着手した.
    実験動物としては体重2kg以上の雄性白色家兎を用い, 1日10gのラノリンとグルコースをおからとともに与えて飼育する一方, 大腿動脈狭窄術あるいは血管収縮剤アドレナリン反復筋肉注射などを行い動脈硬化家兎の作製を行った. 同時に末梢血液検査, 血清総コレステロールおよび体重を定期的に測定し, 貧血, 高脂血症および剖検で大動脈に粥状硬化の生じた時期に実験に使用した.
    成績: 動脈硬化家兎の骨髄血管に Micropaque を注入しその病態を検索したところ, 骨髄血管の屈曲, 蛇行, 狭小, したがって骨髄内血流量の減少がうかがわれ, 正常群との間に明らかな相違が認められた. 動脈血管の細くなった所は組織学的には老年者骨髄と同様骨髄動脈の内膜が肥厚し, 内腔狭隘を呈し, 静脈洞の萎縮, 血管周囲の脂肪髄の増加が認められ, また造影剤の進入量も少なかった.
    老年者骨髄の低形成あるいは脂肪髄の増加の機序は, 骨髄栄養動脈は動脈性毛細管になったのち, 主幹静脈系と連絡するのにすべて静脈洞, 集合洞を経て血流の交通を行うものであるから, 動脈系に内腔狭隘を呈する硬化が起これば循環障害が発現し静脈洞, 集合洞支配下の造血組織のみが酸素補給不足, 造血物質補給不足, 断絶等の影響をこうむり, 造血巣の萎縮形成不全となり, 終末血管に一致して脂肪髄がみられ, これが結果として老人の貧血となって現われると思われる.
    以上の成績より実験的に惹起した高脂血症, 動脈硬化家兎の貧血は, ヒト老年者骨髄と類似し, その貧血の発生には骨髄動脈硬化がその一要因と考えられる.
  • コンドロイチン硫酸鉄59Fe静注法による臓器体内59Fe分布と全身オートラジオグラフィーについて
    渡辺 佳俊, 福島 祥隆, 勝沼 英宇
    1971 年8 巻6 号 p. 306-313
    発行日: 1971/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    私どもは加令にしたがって網内系機能がどのように推移していくかを検索する目的でコンドロイチン硫酸鉄コロイドを用いた. 従来網内系機能検査法としてはコンゴーレッド, Au198コロイド等を使用して網内系機能, とくに肝, 脾, 骨髄などへの摂取, 貪食の割合, 速度, 量のみをみてきた文献が多い. しかしこれのみでは網内系機能を正しく反映しているかは疑義が多い. しかるにコロイド鉄は静脈内に投与されると, 網内系細胞に摂取され, 貪食, 処理され, 鉄を遊離し, 遊離された鉄は血漿中のトランスフェリンと結合して赤血球に出現するので, 網内系の摂取, 貪食, 処理を同時に観察できる利点がある. よって本剤を使用して網内系機能検索に着手した. 実験動物は4群に分け, 仔マウス群, 成熟マウス群, 老マウス群, ラノリン飼育マウス群の各群にコンドロイチン硫酸鉄コロイド, 体重20g当り0.5mg, 1μCiの割合で尾静脈内に投与し, 経時的にエーテル麻酔下に頸動脈を切断し, 放血死せしめ, 血液を採取し, 環流後肝, 脾, 骨, 腎などの被検臓器を取りだし, シンチレーションカウンターで測定し, 測定値は吸収率と吸収率較差で定量的に表わした. 定性的には4群のマウスについて全身オートラジオグラフィーを用い, 凍結全身切片を作製し, 乾燥後, コンタクト法にてX線フィルムに露出し, 次の成績を得た.
    (1)ラノリン, 老マウス群は仔, 成熟マウス群に比し, コンドロイチン硫酸鉄の血液からの消失は遅延し, 赤血球鉄利用率も低値を示した. (2)前群は後群に比べて肝臓放射活性のピークも遅延し, 消失速度も低下している. (3)ラノリンマウスは他の3群に比して脾腫を有し, 脾臓放射活性は亢進している. (4)ラノリン, 老マウス群は他の2群に比し, 骨髄活性のピークが遅延している. (5)以上より網内系機能は加令とともに低下する成績を得た.
  • 7年半後の成績
    柴田 茂男
    1971 年8 巻6 号 p. 314-322
    発行日: 1971/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    日本人の死因の第1位である脳卒中をいかにして予防するかは現代医学の大きな課題の一つとなっている. この課題の解明のために, 疫学的, 病理学的, 臨床的等の各方面からの接近が試みられてきた. これらの方法の一つとして, 眼底所見が脳卒中と関連が深いことに注目し, 眼底所見から脳卒中の発生を予知し, 予防に役立てようという試みが数多く行われてきた. しかしこれらの成績の大部分は, 断面調査または retrospective study であって, prospective study は少ない. また診断のきめ手となる剖検を実施している研究はごくまれである. そこで剖検率が100%に近い浴風会の症例589例 (男186例, 平均年令73.7才, 女403例, 平均年令75.7才) について, 昭和37年12月から昭和45年6月までの7年半にわたって老年者の予後を, 眼底所見を中心として追跡調査し次の成績を得た.
    1) 高血圧性眼底所見といわれている狭細, 口径不同, 出血と白斑は60才以上の老年者においても症例は少ないが変動しうる.
    2) 動脈硬化性眼底所見といわれている反射, 交叉現象および銀線動脈・白線動脈では変動が認められなかった. これらの所見についてはさらに追跡調査の必要がある.
    3) 死亡率の性差は認められなかった. 年代別の死亡率は加令とともに上昇し, 血圧別の死亡率は, 最大血圧別, 最小血圧別とも, 血圧の上昇とともに死亡率が高くなるのが認められた.
    4) 眼底所見別および眼底分類別の死亡率は程度が重くなるにしたがい, 総死亡率も脳卒中死亡率も高くなる. この傾向は60代でもっとも顕著で, 70代, 80代となるにしたがい不明瞭となる. 換言すれば, 眼底所見の老年者の予後に対する意義は60代においてもっとも高く, 70代, 80代と順次低くなる.
    5) 眼底所見は有無別のみに分類するのでなく, 異常に重い所見は (++) 群のごとく別に扱ったほうが予後をみる際に有用である.
    6) 反射は従来その判定のむずかしさから軽視される傾向があるが, 狭細, 口径不同などと同様に重視しなければならない所見である.
  • 老年者剖検例についての検討
    村田 和彦, 寺沢 富士夫, 藤井 潤, 蔵本 築, 細田 瑳一, 栗原 博, ユイング リーホン, 松下 哲, 倉持 衛夫, 池田 正男, ...
    1971 年8 巻6 号 p. 323-328
    発行日: 1971/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    冠・脳・大動脈硬化に対する高血圧・高 cholesterol 血症の影響を明らかにするため, 生前10年以上にわたって血圧を観察しえた132例の剖検例について, 血圧・血清総 cholesterol の平均値と冠動脈・脳動脈・大動脈の肉眼的病変の程度との相関を検討した.
    最大血圧と冠動脈硬化・脳動脈硬化・大動脈複雑病変の程度との間には, それぞれr=+0.319(p<0.01), +0.434 (p<0.01), +0.282 (p<0.05) の有意な正相関が認められたが, 最小血圧と有意な相関を示したものは脳動脈硬化 (r=+0.284, p<0.01) のみであった. 一方, 血清総 cholesterol 値との有意な相関は冠動脈硬化についてのみ認められ (r=+0.284, p<0.01), 脳動脈硬化・大動脈硬化と血清総 cholesterol 値との相関は明らかでなかった.
    冠・脳・大動脈硬化の間には, 複雑な相互関係がみられたが, これらの動脈における病変は必ずしも平行して進行するものではなかった.
    以上の成績からみると, 動脈硬化の発生, 進展には, 全身的な因子のほかに局所的な因子が重要であると考えられる.
  • 北川 道弘, 葛谷 文男
    1971 年8 巻6 号 p. 329-332
    発行日: 1971/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    セルローズアセテート膜による血清リポ蛋白電気泳動法につき検討した. 本法はアルブミンを含有しない Buffer でも pre-β, α, βリポ蛋白およびカイロミクロンを明瞭に分離することができ, 短時間にすむという利点を有することを確かめた.
    集団検診にてトリグリセリド120mg/dl以上の高値を示した88サンプルに応用したところ次の結果を得た. すなわち pre-β (+) 69, (-) 19, カイロミクロン (++) 7, (+) 16, (±) 19, (-) 46.
    本法は高トリグリセライド血症の成因に関して, 内因性 (高 pre-β) か外因性 (高カイロミクロン) かの判別に非常に有益であろうと結論した.
  • Post-Heparin Lipolytic Activity よりの検討
    竹内 一郎
    1971 年8 巻6 号 p. 333-342
    発行日: 1971/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    内因性高 triglyceride 血症の成因を検討する目的で, 高TG群28例, 正常TG群35例, 計63例に対して, Triolein, Tricaprylin, 一部 Ediol を基質とした方法により, PHLAを測定した. PHLAは両群において明らかな差を認めなかったが, PHLA×10-3/TG pool すなわち, 血中TG pool 量に対するPHLAの値は, 高TG群において有意の低下を示した. また, 糖負荷によりPHLAの変化は認められないが, 高TG群において糖負荷により基質の種類に対する反応が異なってくる可能性が示唆された. さらに, 血中 cholesterol 値の多寡および耐糖能異常の有無は, 今回の検索の範囲ではPHLAの値に影響を与えなかったが, α-lipoprotein 濃度が正常TG群では血中よりのTG処理機能と関連を有することが示された. さらに, PHLA×10-3/TG pool の値を血中よりのTG処理機能を示す指標として, また糖負荷時の insulin 反応をTG合成を示す指標として, 高TG血症例をi) 産生過剰型 (overproduction type) ii) 処理障害型 (impaired removal type) iii) 混合型 (combined type) に分類すると, 全例に処理障害を, 約半数にさらに合成の亢進が関与することを示す成績を認め, i) 産生過剰型24例中0, ii) 処理障害型24例中11例, iii) 混合型24例中13例となった. さらに, Fredrickson 慶大変法分類に基づく Type IVの多くは処理障害型に属した. また, 高脂肪食投与によりPHLAの増加と同時に血中TGおよび血中VLDL TGの減少する傾向を認め, PHLAと血中TG調節機構とに関し若干の考察を加えた.
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