私どもは加令にしたがって網内系機能がどのように推移していくかを検索する目的でコンドロイチン硫酸鉄コロイドを用いた. 従来網内系機能検査法としてはコンゴーレッド, Au
198コロイド等を使用して網内系機能, とくに肝, 脾, 骨髄などへの摂取, 貪食の割合, 速度, 量のみをみてきた文献が多い. しかしこれのみでは網内系機能を正しく反映しているかは疑義が多い. しかるにコロイド鉄は静脈内に投与されると, 網内系細胞に摂取され, 貪食, 処理され, 鉄を遊離し, 遊離された鉄は血漿中のトランスフェリンと結合して赤血球に出現するので, 網内系の摂取, 貪食, 処理を同時に観察できる利点がある. よって本剤を使用して網内系機能検索に着手した. 実験動物は4群に分け, 仔マウス群, 成熟マウス群, 老マウス群, ラノリン飼育マウス群の各群にコンドロイチン硫酸鉄コロイド, 体重20g当り0.5mg, 1μCiの割合で尾静脈内に投与し, 経時的にエーテル麻酔下に頸動脈を切断し, 放血死せしめ, 血液を採取し, 環流後肝, 脾, 骨, 腎などの被検臓器を取りだし, シンチレーションカウンターで測定し, 測定値は吸収率と吸収率較差で定量的に表わした. 定性的には4群のマウスについて全身オートラジオグラフィーを用い, 凍結全身切片を作製し, 乾燥後, コンタクト法にてX線フィルムに露出し, 次の成績を得た.
(1)ラノリン, 老マウス群は仔, 成熟マウス群に比し, コンドロイチン硫酸鉄の血液からの消失は遅延し, 赤血球鉄利用率も低値を示した. (2)前群は後群に比べて肝臓放射活性のピークも遅延し, 消失速度も低下している. (3)ラノリンマウスは他の3群に比して脾腫を有し, 脾臓放射活性は亢進している. (4)ラノリン, 老マウス群は他の2群に比し, 骨髄活性のピークが遅延している. (5)以上より網内系機能は加令とともに低下する成績を得た.
抄録全体を表示