加令, 動脈硬化において組織ことに結合織における糖たんぱく代謝が主要な役割を果すという観点に立って, われわれは, 加令, 肥満, 動脈硬化の血清糖たんぱく質の測定を行なった.
対象は, 正常者を若年群35才以下, 中年群36~60才, 高年群61才以上に分け80例, 肥満群は肥満以外に異常のない中年者18例, 動脈硬化群は動脈硬化性眼底を有しECGにST-T変化を認め, 腎機能低下せる者で腎疾患を有しない者81例である. 測定は seromucoid と protein-bound hexose (PBH) は Weimer-Moshin 法, 糖たんぱく分画比は滬紙電気泳動を用いPAS染色を行なった. たんぱく量は Biuret 法, たんぱく分画比は Amido-schwarz 10B を用いた.
1) seromucoid とPBHの平均値は加令とともに増加を示し, 若年群に比し中年群では有意であるが, 中年群と高年群の差は明らかでない. 糖たんぱく分画比では高年群は若年群に比し, albumin 分画の低下とα
1-globulin 分画の上昇を認め, 中年群はその中間を示した.
2) 中年肥満群では seromucoid とPBHは正常群に比し有意に増加を示しており, 標準体重より算出した肥満度と相関を認めた. 糖たんぱく分画比の変化は明らかではない.
3) 動脈硬化群において seromucoid とPBHは正常群に比し有意に増加を示したが, 中年動脈硬化群ではPBHの増加が著明であり, 高年動脈硬化群では seromucoid の増加が顕著である. 両群においてα
1-globulin 分画の上昇は有意であったが, albumin 分画の低下は中年動脈硬化群にのみ有意を認めた.
4) seromucoid とPBHは同一個体では朝と昼の測定値はほぼ等量である.
以上のことから, 肥満では糖たんぱく質は量的変化を主体とするごとくである. 正常者, 動脈硬化で年令によって構成の変化をきたしていることは, 組織の代謝の変化を反映していると思われ興味深い.
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