photon absorption method を用い, 381例の日本人の左橈骨骨塩含量 (RMC) を測定し, 以下の結果を得た. (1) RMC値をg/cm
2なる単位で表示した際の本法の精度は, 1.9±1.09%であり, 本法は in vivo の骨塩定量法として精度が優れていた. (2) RMCと鎖骨皮質幅との関係は, 男性においては相関係数0.617 (n=20, p<0.01), 女性においては0.481 (n=34, p<0.01) を示し, さらに腰椎骨粗鬆化度ともよく一致した. (3) 男性135例, 女性246例のRMC値の経年変化を調査した. 男性では30歳台で0.68±0.016g/cm
2なる最大値を示したのち漸減し, 50歳台で0.60±0.35g/cm
2を示した. 以後70歳台までほぼ一定値を示し, 80歳台では0.52±0.040g/cm
2と30歳台に比し約23.7%6のRMCの減少を示した. 女性においては, 各年代で男性のRMC値よりも低値を示した. 30歳台女性のRMC値は0.59±0.016g/cm
2を示し, 50歳台以後のRMC値の減少が著明であった. 即ち60歳台0.49±0.011g/cm
2, 70歳台0.47±0.010g/cm
2および80歳以上で0.42±0.024g/cm
2を示した. 44例の老年者女性の骨折例のRMC値は同年代の女性例のそれに比し, いずれも低値を示した. (4) 閉経前女性7例, 閉経後女性10例, および閉経後女性で骨折を有する例6例の3群につき, 3年間RMCを測定した. 前2群の3年後のRMCの減少率はそれぞれ8.0%および8.9%で差がないのに比し, 骨折群のそれは20.4%と有意に減少率が大であった. (5) RMCは年齢, 体重, 身長と相関を示し, その相関の強さは男性では体重, 年齢, 身長の順であり, 女性では年齢, 体重, 身長の順であった. (6) 男女ともそのRMC値は年齢, 体重, 身長を変数とした重回帰式で表わされ, それぞれの変数を代入して得られるRMC値は, その個人の理論的RMC値であると考えられた. (7) この理論値を実測値より減ずることで得られる残渣は, 非骨折女性例では0を中心とする正規分布を示し, この理論式が正しいことが示された. (8) 一方骨折例の残渣は有意に負にかたむいた. (9) 以上より photon absorption method は, in vivo における骨塩含量測定に有用であり, 老年者においては, RMCは男女で異った変動を示し, 更に女性例においては, 骨折の有無で本質的に異ったRMC値をとることが示された.
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