日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
36 巻, 10 号
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  • 藤島 正敏
    1999 年 36 巻 10 号 p. 681-689
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    脳血管障害, なかでも脳梗塞, 脳出血に代表される脳卒中は, それ自体がすでに高齢者の疾患であるが, その発症年齢はさらに年々高くなっている. 近年, 死亡率は減少傾向にあり, 致死率は低下したものの, 発症率はむしろ増加の兆候さえある. したがって有病率, 受療率は年々増えているのが現状である. 脳卒中の危険因子は管理治療の普及により高血圧から, 近年台頭してきた糖尿病などの代謝異常, さらに年齢の要因が一層重要になってきた.
    高齢者脳卒中は生命予後とともに機能予後が悪く, 仮に急性期を脱しても, 長期予後は決して満足できるものではない. さらに寝たきり, 痴呆の最大の要因でもあり最も介護を要する疾患ではないだろうか. 脳卒中は二次予防 (再発予防) のための慢性期治療の重要性はもちろんのこと, それ以上に一次予防 (発症予防) への取り組み, 早期からのリスクの管理が望まれる.
  • 小澤 敬也
    1999 年 36 巻 10 号 p. 690-694
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    遺伝子治療の発想は, 遺伝性疾患に対する治療法の決定打として生まれてきた. その後, 細胞に遺伝子操作を施すステップを取り入れた治療法全般を指して遺伝子治療といわれるようになり, 大きな広がりを持つようになってきた. 患者数の少ない遺伝性疾患よりも, 癌やエイズなどの重篤な後天性疾患を主な対象として, 予想を超える勢いで臨床研究が進められている. さらに, 新しい動きとして, 心血管病変などの慢性疾患も遺伝子治療の対象に含まれるようになっている. 一方我が国では, アデノシンデアミナーゼ欠損症に対する遺伝子治療が1995年に北海道大学で実施されて以来しばらく停滞していたが, 最近, 癌に対する遺伝子治療の試みが活発となっている. 何らかの形で遺伝子の投与を受けた患者数は, 1998年には全世界で約3,000人を突破したが, ほとんどの場合まだ臨床的有効性は確認されず, 実験的医療の段階に留まっているのが実情である. その最大の理由は, 遺伝子導入法などの基盤テクノロジーが実用レベルに到達していないことである. したがって, ベクターを含めた遺伝子導入システムの開発が最大の鍵を握っている. 遺伝子導入法としてはレトロウイルスが代表的なものであるが, 研究面では, アデノ随伴ウイルス (AAV) ベクターやレンチウイルスベクターが現在大きな脚光を浴びている. また, 造血幹細胞を標的とした場合には, 遺伝子導入造血幹細胞を体内で選択的に増幅させるシステムの開発も進んでいる. 全く新しい角度からの治療法を開拓することが可能になったという意味では, 遺伝子治療が画期的な方法であることに間違いない. 近い将来, 遺伝子治療テクノロジーが医療の中に様々な形で取り込まれ, 基本的医療技術の一つとして重要な位置を占めるようになるものと予想される.
  • 土井 俊夫
    1999 年 36 巻 10 号 p. 695-698
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 井口 昭久
    1999 年 36 巻 10 号 p. 699-702
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 川本 龍一, 土井 貴明, 山田 明弘, 小国 孝, 岡山 雅信, 鶴岡 浩樹, 佐藤 元美, 梶井 英治
    1999 年 36 巻 10 号 p. 703-710
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    地域在住の高齢者を対象に, 抑うつ状態とその背景因子を解明するための横断調査を実施した. 対象は, 地域在住の自記式回答可能な高齢者であり, 調査は, 松林らの香北町健康長寿研究で用いられたと同様のアンケートと Zung Self-Rating Depression Scale (以下SDS) を用いて行われた.
    地域在住の自記式回答可能な高齢者2,379人中2,361人 (99.2%) より回答を得た. そのうち回答不備例を除く分析可能な対象は, 1,181人 (49.6%), 男性542人 (平均年齢72.3±5.5歳), 女性639人 (平均年齢73.0±6.3歳) であった. SDSからみた抑うつ状態の程度では, 正常731人 (61.9%), 軽症240人 (20.3%), 中等症181人 (15.3%), 重症29人 (25%) であった. SDSと背景因子との関係については, SDSが重症になるほど平均年齢は高齢になり, 女性の比率が有意に高かった. その他, SDSが重症になるほど同居者や配偶者のない人, 定期的な内服治療を受けている人, 飲酒をしない人, 運動習慣のない人, 仕事をしない人の割合も有意に高かった. SDSと各種スコアーとの関係については, SDSが重症になるほどADL, 情報関連機能, 手段的・情緒的支援ネットワーク, 家族仲, 友人や親戚との人間関係, 経済状態のスコアーは有意に小さかった. SDSを取り巻く背景因子を説明変数とするロジスティック回帰分析では, 女性であること (オッズ比: 1.73,95%信頼区間: 1.10~2.72), ADL (0.80,0.69~0.93), 情緒的支援ネットワーク (0.88,0.81~0.96), 友人や親戚との人間関係 (0.98,0.96~0.99) が有意な独立寄与因子であった. SDSと主観的感覚との関係については, SDSが重症になるほど健康感, 満足感ともにスコアーは有意に小さかった.
    地域に在住する高齢者の抑うつ状態の予防のためには, 本調査により明かにされた背景因子の改善を計り, 今後経過を追跡して行くことが必要であろう.
  • 山下 一也, 飯島 献一, 小林 祥泰
    1999 年 36 巻 10 号 p. 711-714
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    特別養護老人ホーム (特養) 入所者の Activities of Daily Living (ADL) や Quality of Life などを心理的側面からアプローチした研究は未だ十分とはいえない. そこで今回, 特養新入所者19例 (男性5例, 女性14例, 69~94歳, 平均年齢81.9歳) を対象として, その知的機能, ADL, 主観的幸福感, うつ状態, apathy について1年間追跡調査した. 今回対象とした特養は1997年4月開所され, リハビリテーションや娯楽などを積極的に取り入れ運営されている.
    入所時と入所1年後において老研式活動能力指標, Zung の自己評価式抑うつ尺度, apathy スケールでは変化はみられなかった. 長谷川式簡易知能評価スケールは, 15.3±8.4点 (平均±SD) から10.6±7.3点へと有意に低下した (p=0.0088). しかし, 改訂版モラールスケール総得点は9.1±3.2点から10.4±4.8点へと有意に上昇した (p=0.0007).
    特養では単に収容という形ではなく, 積極的な対応により, ADL, 知的機能, 抑うつ状態, apathy などの改善はみられないものの主観的幸福感の改善はみられることが示唆された.
  • 糖尿病罹病年数と血糖日内変動の関係からの検討
    大庭 建三, 鯉渕 仁, 岡崎 恭次, 猪狩 吉雅, 犬塚 有紀, 矢野 誠, 山口 祐, 網代 由美子, 佐藤 周三, 永井 信也, 鈴木 ...
    1999 年 36 巻 10 号 p. 715-720
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    スルホニル尿素 (SU) 薬療法中の老年糖尿病患者の血糖日内変動を主として糖尿病罹病年数との関係から検討し, SU薬療法上の問題点を明らかにする. 対象はSU薬を服用中の60歳以上のインスリン非依存型糖尿病患者87例である. 糖尿病の罹病年数別に, 10年未満群, 10年以上15年未満群, 15年以上20年未満群および20年以上群の4群に分類した. 血糖日内変動は各食前後 (8, 10, 12, 14, 18, 20時), 午前0時, 3時, 6時および翌朝8時に測定し, 血糖曲線下の面積を1日血糖総面積とした. 血糖日内変動を糖尿病罹病年数別に比較すると, 平均8, 10, 20, 3および6時血糖値に差はなかったが, 平均12, 14, 18, および0時血糖値は各群間に有意差を認め, 群間比較では, 10年未満群の10時血糖値, 10年未満群および10年以上15年未満群の18時血糖値に比し, 20年以上群のそれぞれの時間帯血糖値は有意に高値であった. 1日血糖総面積は20年以上群が10年以上15年未満群に比し有意に高値, 10年未満群に比し高値の傾向を認めたが, 15年以上20年未満群とは有意差はなかった. 各時間血糖値および1日血糖総面積それぞれを目的変数とした重回帰分析では, 糖尿病罹病年数は12, 14, 18, 20, 0, 3時血糖値および1日血糖総面積と, SU薬投与量は12, 14, 18, 0時血糖値および1日血糖総面積と正相関を認めた.
    以上から, SU薬による血糖コントロール効果は, 罹病年数が長くなるにつれて減弱してくるとともに, SU薬の増量による食後血糖値に対するコントロール効果は朝食前血糖値に比べて得られにくい可能性が示唆された.
  • 〈第2報〉急性心筋梗塞の慢性期生命予後規定因子の検討
    高橋 弘, 斉藤 重幸, 高木 覚, 島本 和明
    1999 年 36 巻 10 号 p. 721-729
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    北海道帯広市において1990年10月1日から1996年3月31日までの5年6カ月間に悉皆性を考慮した循環器疾患発症登録を施行した. 急性期死亡例を除く慢性期生存例194名を対象にアンケート法により予後追跡調査を行い, 急性心筋梗塞の慢性期生命予後規定因子について検討した. 追跡率は94.5%で平均追跡期間は1.62年である. 発症時病歴で女性が男性に比べ発症年齢が約10歳高く, 高血圧罹患者の割合が多い. 喫煙歴や飲酒歴保有者の割合は男性で多い. Kaplan-Meier 分析による慢性期生命予後規定因子は高齢者, 飲酒歴非保有者, 心筋梗塞や脳梗塞既往者, 腎機能障害者, Killip III度以上の心不全重症者, 急性期リハビリ未施行者, PTCA未施行者であった. Cox hazard model により全死亡に対するリスクを検討すると単変量解析では年齢が10歳増すごとに1.5倍に死亡リスクの増加, 65歳以上で2.6倍に死亡リスクの増加, 心筋梗塞や脳梗塞既往者で約2.5倍, 腎機能障害者で約4.6倍の死亡リスクの増加, また Killip III度以上の心不全重症者で約5.7倍の死亡リスクの増加を認めた. 一方, 飲酒歴保有者で0.3倍の死亡リスクの低下, PTCA施行者で約0.1倍の死亡リスクの低下, 急性期リハビリ施行者で約0.3倍の死亡リスクの低下を認めた. これらの因子を加えた多変量解析では, 全死亡に対する予後不良因子は飲酒歴非保有者とリハビリ未施行が採択された.
    本研究より日本人の急性心筋梗塞の慢性期予後規定因子として年齢, 飲酒歴, 心筋梗塞・脳梗塞既往歴, 腎機能障害, 心不全, 急性期リハビリ施行, PTCA施行が確認された. また病歴, 重症度を考慮しても急性期リハビリの施行が慢性期生命予後規定因子として採択され, 心筋梗塞後の早期離床はADL, QOLの保持や慢性期生命予後を考える上で重要であると示唆された.
  • 関谷 充晃, 植木 純, 家永 浩樹, 高橋 英気, 檀原 高, 福地 義之助
    1999 年 36 巻 10 号 p. 730-733
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の女性. 微熱の精査のため施行した胸部レントゲンで両側肺門縦隔リンパ節腫脹 (以下BHL) を認め入院となった. 血清ACE, リゾチーム高値, ぶどう膜炎の存在, ツ反陰性, ガリウムシンチグラフィーでの縦隔肺門部の高集積の所見よりサルコイドーシス (以下サ症) が疑われた. 77歳と高齢で心筋梗塞の既往もあるため, 経気管支肺生検は施行せず, より侵襲の少ない気管支肺胞洗浄 (以下BAL) を施行した. BALで総細胞数3×105/mlと増加, リンパ球比率33.2%, CD4/CD8比24.5と高値を示し臨床的にサ症と診断した. 本例は入院の約6カ月前の胸部レントゲンではBHLは認めず77歳と高齢での発症が確認されたサ症の1例であった. 従来の報告ではサ症の高齢発見例は少なくないが, 高齢での発症が確認された例は比較的稀であり報告した.
  • 川田 啓之, 川本 篤彦, 渡辺 眞言, 上村 史朗, 坂口 泰弘, 山野 繁, 藤本 眞一, 橋本 俊雄, 土肥 和紘
    1999 年 36 巻 10 号 p. 734-741
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    82歳, 女性. 平成9年1月17日に呼吸困難と胸痛を自覚しており, 両下腿の浮腫, 四肢末梢のチアノーゼ, および起坐呼吸も出現したので当科に入院した.
    経過: 血清CK値は, 入院時に488IU/lまで増加しており, 8時間後には最高値の4,866IU/lに達した. 入院時の心臓超音波検査所見では全周性の左室壁運動低下, 心電図所見では不完全右脚ブロックおよび2:1の房室ブロックが認められた. 心電図は, 入院10時間後には完全左脚ブロック, 第3病日には正常洞調律を示した. 以上の検査成績から, 急性心筋炎あるいは急性心筋梗塞が疑われた. 第13病日に施行した右室心内膜心筋生検所見では心筋に軽度の変性と心筋細胞周囲に線維化が認められたが, 炎症細胞の浸潤を欠いていたので急性心筋炎が否定的であり, 本例は心筋炎後の慢性期に一致するものと考えられた. 心不全改善後の第45病日に退院した. 退院18日後, 心不全が再燃したので当科に再入院した. 心不全改善後の第20病日に冠動脈造影を施行した. 右冠動脈造影では, Seg1が75%, Seg2~3の移行部が99%の狭窄を示した. 左冠動脈造影では, 左前下行枝Seg6の起始部と末梢側が75%, 左回旋枝Seg13が75%の狭窄を示しており, 3枝疾患と診断された. 冠動脈バイパス術が考慮されたが, 本人および家族が同手術を拒否したので, 第60病日に退院した.
    まとめ: 経過中に多彩な心電図変化を呈した高齢者3枝冠動脈疾患の1例を経験した. 本例は, 加齢と心筋炎後の心筋変性による心機能低下が入院前から不顕性に存在していたうえに3枝冠動脈疾患を合併していたために全周性の左室壁運動低下を示し, 心不全と多彩な不整脈が出現したと考えられる. 以上のような複雑な病態を明らかにするためには, 高齢者に対しても冠動脈造影や心筋生検を積極的に施行すべきであると考えられる.
  • 荒木 勉, 東福 要平
    1999 年 36 巻 10 号 p. 742-746
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は高血圧と痔出血の既往歴を有する72歳女性で, 胸痛および著明な小球性低色素性貧血(RBC340×104l, Hb5.4g/dl, Ht21.7%) と血小板減少 (0.2×104l) にて入院した. 心電図所見 (V2からV5誘導のST上昇と陰性T波), 心エコー図所見 (左室前壁から中隔領域の壁運動低下), 心筋逸脱酵素の上昇 (CPK最高値470U/l) より, 左前下行枝領域の急性心筋梗塞 (AMI) と診断した. 著明な血小板減少があることから冠動脈造影は施行せず, また抗凝固薬, 血栓溶解薬, 抗血小板薬なども投与せず, 貧血に対する輸血のみにて経過観察した. 胸痛は次第に軽減, 翌日には消失し, 以後は狭心症, 心不全, 不整脈などの合併症なく経過した. 貧血と血小板減少の原因を検索した結果, 血清鉄とフェリチンの低下, 抗血小板抗体陽性, platelet associated IgGの高値 (257.8ng/107cells), 骨髄穿刺所見 (赤芽球の著増, 巨核球の増加), 上下部消化管内視鏡検査所見 (内痔核) より, 貧血については痔からの持続的出血による鉄欠乏性貧血, 血小板減少については特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) と診断した. すなわち本症例は以前より鉄欠乏性貧血+慢性型ITPがあり, その上に今回AMIを発症したものと推定された. 貧血は輸血により改善したが, 血小板減少は副腎皮質ステロイド療法や免疫グロブリン大量療法, 血小板輸血に全く反応せず, 1万以下の状態が持続した. しかし明らかな出血症状はなく, 免疫抑制療法や摘脾は行わず, ステロイド内服のみにて退院とした. 退院前の心電図ではI, aVL, V2~V5誘導に陰性T波を, TlおよびBMIPP心筋シンチグラフィーでは前壁中隔から心尖部に一致した欠損像を認めた. ITPではAMIの合併は非常に稀であり, 血小板減少状態での心筋梗塞の発症機序や治療を考察する上で貴重な症例と考え報告した.
  • 端野・壮瞥町研究より
    高木 覚, 斉藤 重幸, 林 義人, 仲野 昌弘, 小原 史生, 大西 浩文, 島本 和明
    1999 年 36 巻 10 号 p. 747-748
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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