老年高血圧症患者における降圧療法の心肥大, 心機能への影響を検討した. 対象は, 心エコー検査にて心肥大を認めた65歳から79歳の老年高血圧症患者24人 (平均年齢71±1歳) で, 収縮期および拡張期血圧ともに高い本態性高血圧患者 (収縮期血圧≧160mmHg, 拡張期血圧≧95mmHg) 13人と, 収縮期高血圧患者 (収縮期血圧≧160mmHg, 拡張期血圧<95mmHg) 11人の二群に分け, Ca拮抗薬または変換酵素阻害薬を3カ月間投与した. 2週間毎に血圧を測定し, 治療前後で心エコー検査を施行, 左室重量係数 (LVMI) を計測, 駆出分画 (EF) を用いて心収縮能を検討した.
本態性高血圧群 (平均年齢70±1歳) では, 治療前後において血圧は174±3/97±1mmHgから149±4/84±2mmHgと下降し, LVMIは204±14g/m
2から174±16g/m
2と有意に減少したが, EFは67±3%から67±3%と有意な変化を認めなかった. また, 収縮期高血圧群 (平均年齢74±2歳) では, 治療前後において血圧は167±3/82±2mmHgから144±4/74±2mmHgと下降し, LVMIは179±14g/m
2から156±12g/m
2と有意に減少したが, EFは77±2%から75±3%と有意な変化は認めなかった. 心肥大退縮効果は収縮期高血圧群で, 収縮期血圧下降度と相関を認めた (r=0.74, p<0.05) が本態性高血圧群では血圧下降度との相関を認めず, 交感神経系・レニン-アンジオテンシン系の変化とも相関を認めなかった.
心肥大を合併する老年高血圧症患者において, Ca拮抗薬または変換酵素阻害薬による降圧薬治療は, 本態性高血圧・収縮期高血圧ともに単剤で充分な降圧効果を示し, また心機能を低下させることなく心肥大退縮効果を示した. また, 老年者に特有な収縮期高血圧では, 収縮期圧負荷軽減が心肥大退縮効果に関与することが示唆された.
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