日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
44 巻, 4 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
第48回日本老年医学会学術集会記録〈Meet the Expert〉
第48回日本老年医学会学術集会記録〈ミニレビュー〉
  • 遠藤 英俊
    2007 年44 巻4 号 p. 429-432
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    介護保険は2006年4月に改正され,要支援1と2に対して介護予防が重点化され,医療·保健·福祉の中心的役割を担う地域包括支援センターが創設された.また介護サービスとしては新たに地域密着型サービスが設立され,地域での認知症に重点化したサービス,小規模多機能居宅介護サービスが位置づけられた.その中で認知症の新しいアセスメントが作成されたり,介護支援体制も変更された.また訪問看護も通所療養介護などができるようになり,それなりに新しい視点で介護保険の改正が行われた.その結果介護·看護においても多大な影響があり,今後の対応が重要である.一方医師においても 介護保険の改正に伴う影響は大きく,介護や看護と協働して対応する必要がある.
第48回日本老年医学会学術集会記録〈若手企画シンポジウムI:臨床系テーマ:高齢者高血圧の最前線〉
  • 武地 一
    2007 年44 巻4 号 p. 433-436
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    高齢者の医療において,認知症あるいは認知機能低下をどうマネジメントするかということは大きな課題である.今後,ますます高齢化が進み,認知症患者が増加する趨勢のなかでは認知症発症や認知機能低下のリスクとなる要因を少しでも減らすことは,高齢者のQOLを維持したり,高齢者医療·介護のコスト増大を防ぐために重要なことである.高血圧は従来,脳血管性イベントあるいは脳血管性認知症の危険因子として知られていたが,近年,中高年期の高血圧がその後の認知機能低下やアルツハイマー型認知症発症にも関連するという報告が行われ,また,降圧剤治療によってアルツハイマー型認知症の発症リスクを減らすことができる可能性も示唆され注目を浴びている.この問題は,アルツハイマー型認知症に脳血管因子がどのように関わっているかという議論とも関係している.アルツハイマー型認知症におけるMRI上の脳白質変化の意義も含めて,高血圧·高血圧治療と認知症·認知機能の関係を論じたい.
  • 原田 和昌
    2007 年44 巻4 号 p. 437-440
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    加齢と高血圧の相互作用により左室肥大や大動脈スティフネス増大などの心血管リモデリングが生じるが,これらは心血管死の危険要因となる.高齢者高血圧患者の心エコー法により求めた左室重量係数と脈波速度を,血中BNPと24時間血圧を用いて解析し,加齢と性差の影響を調べた.左室重量係数,脈波速度はともに夜間血圧と正相関し,夜間血圧は血中BNPと正相関したことからBNPが臓器障害の指標となりうる可能性が示唆された.加齢による左室肥大の進行は女性でより著しかった.女性は加齢でnon-dipperは増加しないが,閉経後収縮期血圧が急速に上昇し男性よりも24時間血圧が高くなるという報告があり,24時間血圧値と夜間血圧値の上昇で,加齢による肥大の進行が説明できる.脈波速度は男女とも加齢で増加したが,左室重量係数とは相関しなかった.以上より,心臓と血管のリモデリングの進行はともに夜間血圧と関係するものの,両者は比較的独立しており,高齢女性で進行する左室肥大により心血管死の増加を説明できる可能性がある.
  • 西永 正典
    2007 年44 巻4 号 p. 441-444
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    日本高血圧学会の高血圧診療ガイドライン(JSH2004)では,高齢者高血圧に対して,前期高齢者(65歳以上75歳未満)と後期高齢者(75歳以上)の降圧目標をいずれも140/90mmHg未満とした.しかし,ガイドラインの中でも示されているように,私たち老年科医が日々遭遇している,80歳前半以降の高齢者高血圧に対してのエビデンスは未だに少ない.海外のEWPHE(European Working Party on High Blood Pressure in the Elderly Trial)では,80歳以上では降圧治療の効果がほとんど消失するとしたのに対し,HYVET(Hypertension in the Very Elderly Trial)パイロット試験では,降圧療法によって脳卒中だけが,降圧療法のベネフィットがあった.さらに,STOP-Hypertension, MRC-old, STONEと同様に,NIPPON DATA90の解析でも,降圧薬を服用していて,正常血圧レベルに達していない群のリスクがもっとも高く,降圧薬を服用し正常血圧にコントロールされている群では,降圧薬を服用せず正常血圧である健康群とほとんどリスクが変わらなかった.我々のフィールドでも高齢者の降圧コントロールが十分でなく,高血圧コントロール不十分例で要介護になりやすいことを考えると,欧米に比し脳卒中が多い日本人では,降圧療法により脳卒中の発症がある程度抑制できるならば,「介護予防の観点」からも高齢者に対する降圧療法は可能な範囲で勧められるべきと考えられる.
  • 横手 幸太郎
    2007 年44 巻4 号 p. 445-447
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
  • 海老原 孝枝, 大類 孝, 海老原 覚, 辻 一郎, 佐々木 英忠, 荒井 啓行
    2007 年44 巻4 号 p. 448-451
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    Angiotensin converting enzyme (ACE) inhibitor plays an important role not only as an antihypertensive drug but also for prevention of various complications related to geriatric syndrome. Pneumonia in the disabled elderly is mostly due to silent aspiration of oropharyngeal bacterial pathogens to the lower respiratory tract. Aspiration is related to the dysfunction of dopaminergic neurons by cebrovascular disease, resulting in impairments in both the swallowing and cough reflexes. ACE inhibitor can increase in the sensitivity of the cough reflex particularly in older post-menopausal women, and improvement of the swallowing reflex. In a 2-year follow-up study in stroke patients, patients who did not receive ACE inhibitors had a higher risk of mortality due to pneumonia than in stroke patients who were treated with ACE inhibitor. Moreover, the mortality of pneumonia was significantly lower in older hypertensive patients given ACE inhibitors than in those treated with other antihypertensive drugs.
    On the other hand, we found a new benefit of ACE inhibitor on the central nervous system. The mortality in Alzheimer's disease patients who received brain-penetrating ACE inhibitor was lower than in those who received other antihypertensive drugs. In a 1-year follow-up study, cognitive decline was lower in patients receiving brain-penetrating ACE inhibitors than in patients receiving a non-brain-penetrating ACE inhibitor or a calcium channel blocker. Brain-penetrating ACE inhibitors may slow cognitive decline in patients with mild to moderate Alzheimer's disease. ACE inhibitor might be effective for the disabled elderly, resulting in the prevention of aspiration pneumonia and Alzheimer's disease for the elderly.
  • 藤澤 智巳, 荻原 俊男
    2007 年44 巻4 号 p. 452-455
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    現在わが国では人口の急峻な高齢化を基盤に,高齢高血圧患者の急激な増加がみられる.一般に高齢者では身体的·知的機能の低下ならびに慢性疾患の合併などにより生活の質(Quality of Life:QOL)が低下しているが,高血圧を有する高血圧患者ではさらなるQOLの低下が認められている.QOLの評価にあたっては,様々な因子について自覚的および他覚的健康度の2つの軸により評価を行い,多次元からなる要素を包括的に捉える必要がある.高血圧治療の中心となる降圧薬のQOLへの影響についてこれまで様々な知見が集積されているが,降圧薬によってQOLへの影響が異なることに留意したい.また,脳卒中は寝たきりの最大の原因疾患として高齢高血圧患者のQOLを大きく障害するため,脳卒中の効果的な予防を心がけたい.最後に高血圧治療の有益性に関して,QOLは様々な要素と相互に影響しあい,その結果治療の有益性に影響する.そのため,その治療にあたっては特にQOLへの配慮が重要である.こうした各個人のQOLにも留意した高血圧治療は,生活習慣病のマネージメントとして重要である.今後大規模試験で高血圧治療の長期予後や臓器保護作用への影響の検討に加えて,QOLへの影響についてもエビデンスが蓄積し,さらに有益性の高い高齢者高血圧の治療が展開されることを期待したい.
第48回日本老年医学会学術集会記録〈パネルディスカッションI:高齢者医療における超音波診断〉
原著
  • 羽生 春夫, 佐藤 友彦, 赤井 知高, 酒井 稔, 高崎 朗, 岩本 俊彦
    2007 年44 巻4 号 p. 463-469
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    目的:老年期の認知症患者について記憶障害に対する病識の程度や有無を比較検討した.方法:軽症のアルツハイマー病(AD)63例,レビー小体型認知症(DLB)17例,血管性認知症(VaD)14例および軽度認知障害(MCI)56例を対象とし,記憶障害によって日常生活上起こりうる問題点を標準化された質問票(日本版生活健忘チェックリスト,EMC)を用いて,患者と介護者から同時に評価し,両者の差から病識の程度や有無を判定した.結果:各群で患者EMCスコアに相違を認めなかったが,介護者EMCスコアはMCI群,DLB群,VaD群と比べてAD群で有意に高く,病識低下度(介護者EMCと患者EMCのスコア差)はAD群で有意に高くなった.有意な認知機能障害を認めない老年者コントロールの病識低下度の平均+2標準偏差を超えるものを病識低下ありと定義すると,AD群の65%,MCI群の34%,DLB群の6%,VaD群の36%が該当し,AD群が最も多く,DLB群は最も少なかった.AD群で介護者が配偶者による場合と配偶者以外による場合に分けて比較したが,両群で介護者EMCスコアに相違を認めなかった.結論:軽症のADやMCI患者の一部でさえも記憶障害に対する病識の低下を示す場合が少なくなく,有効かつ安全な治療や介護を行う上で留意する必要があると考えられた.一方,その他の認知症,特にDLBでは明らかな病識低下例を示す割合が少なく,ADとは異なる病態の相違が示唆されたのと同時に,この記憶障害に対する病識の相違が鑑別点の一つとして活用できる可能性が示された.
  • 森 明子, 杉村 公也
    2007 年44 巻4 号 p. 470-475
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    目的:認知症群と健常群の2群におけるAssessment of Motor and Process Skills(以下AMPS)で測定される手段的日常生活活動(以下IADL)能力とRivermead Behavioral Memory Test(以下RBMT)で測定される日常記憶能力の特徴を明らかにし,早期認知症の能力評価について検討することである.方法:対象者は102名の女性で,1カ所の介護老人保健施設と3つのグループホームに入所している52名の認知症群と,自宅で暮らしている健常群50名であった.参加者は68歳以上92歳以下だった.認知症群と健常群のAMPSの運動技能,処理技能と,RBMTの前方視記憶得点,後方視記憶得点,総得点の3種類との相関を検証した.成績:認知症群,健常群の両群ともAMPSの運動技能は前方視記憶得点,後方視記憶得点,総得点と相関が認められなかった.AMPSの処理技能は後方視記憶得点,総得点とは相関したが,前方視記憶得点とは相関しなかった.このことからIADL遂行能力と前方視記憶能力は同時に低下するものでないことがわかった.さらに散布図で詳細に分析したところ,IADL遂行能力は高いものの前方視記憶能力が障害されている群(II群)が認知症群,健常群の両群で認められた.結論:IADL能力と日常記憶能力は相関を認めたが,前方視記憶得点のみ相関が認められず,散布図の結果から認知症群,健常群共に前方視記憶得点はIADL遂行能力に関係なく低下することが明らかになった.ゆえに高齢者を評価する場合,IADL遂行能力と日常記憶能力の両面を評価する必要があると考えられた.今回の2つの方法を用いれば,MCIのスクリーニングが有効,確実に行い得ることになると考えられる.
  • 寺井 敏, 宮本 秀和
    2007 年44 巻4 号 p. 476-482
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者の入院比率の高い回復期リハビリテーション(以下リハと略す)病棟の現状を分析し,回復期リハの問題点と課題について検討した.方法:対象は当院回復期リハ病棟へ入院した232例(男性74例,女性158例;平均年齢78.6±12.9歳)である.これらの症例を脳血管障害(A群)83例と廃用症候群(B群)149例に分類し,両群で年齢,日常生活動作(以下ADLと略す)能力,在院日数,基礎疾患の内訳や入院中の合併疾患の発生頻度,入退院の動向などにつき後ろ向きに解析を試みた.結果:A, B群の平均年齢は,それぞれ,75.9±14.0歳,80.0±12.0歳であり,B群で有意に高かった(p<0.05).両群間で入院時Barthel Indexに差はなかったが在院日数には有意差がみられた(A群:140.9±9.4, B群:107.3±11.3;p<0.05).基礎疾患の内訳では,A群では脳梗塞例が55例と多く,B群では多彩な病因の中でも肺炎の占める頻度が33例と最も高かった.リハ期間中,A群中25例(30.1%),B群中40例(26.8%)では急性疾患への治療や専門的医療の必要性が認められ,両群ともその約半数は急性期病床への転出が行われた.入退院の動向では,紹介元はいずれも急性期病院が最も高い頻度を呈していた.回復期リハ病棟退院後に在宅または施設での生活が可能となっていた症例はA群中53例(63.9%),B群中109例(73.2%)であり,両群とも在宅復帰例のBarthel Indexの平均は80前後でほとんど全ての症例が介助歩行レベル以上の運動能力を有していた.一方,施設への退院例ではそのADLは低く,車椅子レベルを呈するものが両群とも約6割を占めていた.結論:高齢者では,リハ期間中も包括的で経時的な医療行為の介入が必要であり,在宅復帰には歩行可能レベルまでのADL改善が望まれると思われた.
  • 樋口 多恵子, 太田 求磨, 田邊 嘉也, 鈴木 栄一, 下条 文武
    2007 年44 巻4 号 p. 483-489
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者市中肺炎における日本呼吸器学会成人市中肺炎診療ガイドラインの重症度判定(A-DROP)及びPORTコホート研究による予測基準(PSI)の予後予測精度を比較検討した.方法:過去2年間に高齢者市中肺炎で当院に入院した患者(111例·男57例·女54例)を対象に重症度分類,初期治療に使用した抗菌薬,治療経過について検討を行った.結果:平均年齢82.0±7.4歳.高齢前期15%,高齢後期50%,超高齢35%であった.A-DROPスコア0·1·2·3·4·5の各死亡率(%)は0例/3例(0%)·0/23(0)·1/46(2.2)·5/29(17.2)·1/5(20.0)·2/5(40.0),PSIクラスI·II·III·IV·Vのそれは0/0(0)·0/8(0)·0/31(0)·0/47(0)·9/25(36.0)であった.結論:PSIは高齢者市中肺炎患者,特に高齢後期以上の患者においても予後予測性に優れた方法である.一方,A-DROPでは高齢者市中肺炎患者の重症度判定には不十分である可能性がある.A-DROPで重症度を判定する場合は,検査所見や身体所見のみに頼ることなく,うっ血性心不全,脳血管障害,肝障害,腎障害,悪性腫瘍等の基礎疾患を考慮した判定が適当である.
  • 河野 直子, 梅垣 宏行, 鈴木 裕介, 山本 さやか, 茂木 七香, 井口 昭久
    2007 年44 巻4 号 p. 490-496
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    目的:軽度の認知機能低下が認められる患者群(以後MCIと略す)の検出感度に優れ,日常臨床場面で簡便に使用可能な検査が必要とされている.そこで本研究では,Alzheimer's Disease Assessment Scale(以後ADASと略す)日本語版の単語カードを用いた遅延再生課題を提案し,MCI群の本課題の成績を健常高齢者群及びアルツハイマー病(以後ADと略す)患者群の成績と比較した.方法:名古屋大学医学部附属病院老年科,外来もの忘れ検査において,36名のMCI群,13名の最軽度AD群,104名の軽度AD群,年齢と教育歴を一致させた19名の健常高齢者群を,ADAS単語カードを用いた単語再生課題によって評価した.課題は,従来法である直後再生試行と新規実施の遅延再生試行とから構成された.結果:MCI群は健常高齢者群と比べて,直後再生試行,遅延再生試行の両方において低い成績を示すことが確認された.また,遅延再生試行は,直後再生試行に比べてMCI患者群を健常高齢者群から識別する感度に優れており,直後再生試行に遅延再生試行を組合せて施行することで,直後再生単独実施に比べてより高い感度(94.4%),特異度(68.4%)を得られることが確認された.結論:結果は,ADAS単語カードを用いた遅延再生課題が,もの忘れ外来などにおけるMCIのスクリーニング検査として有用であることを示す.
  • 平川 仁尚, 益田 雄一郎, 葛谷 雅文, 井口 昭久, 植村 和正
    2007 年44 巻4 号 p. 497-502
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    背景:高齢者施設での看取りが増加することが予想されており,入院·入所時に,心肺蘇生や急性期病院への転院·搬送など終末期状態に陥った際にどのような対応を希望するか高齢者および家族を交えて話し合っておくことは重要である.諸外国ではアドバンスディレクティブAdvance directives(AD)と呼ばれる終末期ケアに関する方針を記録する書式が普及しており,その中で心肺蘇生や病院への搬送を希望しないなどの指示などがある.しかし,わが国においては,終末期における自己決定のあり方に関する調査はほとんどない.そこで,心肺蘇生や急性期病院への搬送に関する自己決定が困難である患者の家族が表明する希望とそれに関連する因子を明らかにすることを目的として本調査を実施した.方法:対象は,平成17年4月から平成18年9月までに愛知県内の療養型病床群1施設に新規に入院した全患者70人である.この療養型病床群は,入院時に医師が患者·家族にADの作成を支援している.調査内容は,患者の特徴,心肺蘇生と急性期病院への搬送·転院の希望の有無であった.心肺蘇生および急性期病院への搬送·転院の希望と関連する患者の特徴を明らかにするため,心肺蘇生の希望がある群(CPR+群)とそうでない群(CPR-群)とで,患者の特徴を比較検討した.また,急性期病院への搬送·転院の希望についても同様に比較検討した.成績:対象者のほとんどが重度の要介護状態であり,対象者全員のADは家族によって作成されていた.心肺蘇生の希望を持っていた家族は全体の約16%で,急性期病院への転院の希望を持っていた家族は全体の約37%であった.いずれの希望においても,年齢,性別,世帯構成,既往歴,要介護度,栄養摂取法,意識障害の有無など対象者の特徴には両群間で有意差はみられなかったが,ADの作成を支援した医師の割合は両群間で有意に異なっていた.結論:医師による説明を標準化する必要性が示唆され,家族や医療者に終末期ケアに関する議論を行う際の指針や教育が必要であると考える.
  • 杉原 栄一郎, 檀原 高, 饗庭 三代治, 福田 友紀子, 中島 直也, 乾 啓洋, 松元 直美, 羽田 南欧子, 片山 暁子, 内藤 俊夫 ...
    2007 年44 巻4 号 p. 503-506
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者の非結核性抗酸菌症(Nontuberculous mycobacteriosis,NTM症)の特徴を知る目的で臨床像の検討を行った.方法:対象は65歳から92歳の非結核性抗酸菌症の10例で,臨床所見,画像所見,細菌学的検査などについて検討した.結果:自覚症状としては,呼吸器症状がみられたのは2例で,微熱,倦怠感,食欲不振などの非特異的症状が多くみられた.呼吸器疾患の既往を有する症例は4例で,6例においては痴呆を合併していた.画像所見では,多発する小結節影がすべての症例でみられ,気管支拡張所見を伴う例を1例認めた.細菌学的検査では10例中,8例は喀痰で,2例は気管支鏡洗浄液にて診断基準を満たしていた.これら10例中,6例においては入院時,喀痰と同時に胃液検査が施行されており,6例中5例が抗酸菌陽性を示し,喀痰と比し入院初回時の菌の検出率は高かった.今回の10例はすべてMycobacterium avium intracellulare complex(MAC)であった.結論:高齢者においては喀痰を無意識に嚥下している可能性も高く,胃液でのNTMの検出が高かったと考えられた.
症例報告
  • 赤井 知高, 黄川田 雅之, 木村 明裕, 菊川 昌幸, 木内 章裕, 羽生 春夫, 松林 純, 岩本 俊彦
    2007 年44 巻4 号 p. 507-512
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性.2005年8月上旬より発熱,咳嗽が出現し,肺炎と診断された.その時,白血球増多,貧血,血小板減少を認め,血液疾患の疑いで,8月24日に転院してきた.骨髄所見より慢性骨髄単球性白血病(CMML)と診断され,9月7日からhydroxycarbamideによる治療を開始し,また入院時から認められたDICに対してヘパリン,メシル酸ガベキセートを投与した.9月12日に突然の右季肋部痛が出現し,腹部CTにて巨大肝嚢胞内への出血を確認したため,ヘパリンを中止して経過を観察した.その後9月24日に再度腹痛が増悪し,CTにて腹腔内ならびに胸腔内への出血を認め,翌日にはショック状態となって死亡した.剖検では肝嚢胞被膜の破裂ならびに左胸膜からの大量の出血が認められ,出血性ショックに陥ったことが直接死因と考えられた.病理組織学的には白血病細胞が肝嚢胞被膜や多臓器へ浸潤していた点で文献的考察を踏まえて報告する.
  • 稲田 満夫
    2007 年44 巻4 号 p. 513-516
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/06
    ジャーナル フリー
    87歳の女性.四肢筋力低下のため,起立歩行は不可能,食事に介助が必要となり入院した.高血圧,低K血症(2.7mEq/l),代謝性アルカローシスを認め,一方,尿中K排泄量は20mEq/日以上で,鉱質コルチコイド過剰症と考えられた.甘草配合漢方薬の服用中止約3カ月後も低K血症は持続し,血漿レニン活性0.2ng/ml/時以下,アルドステロン32pg/ml,尿中アルドステロン1.1μg/日と著明に低下していた.甲状腺機能及びACTH―糖質コルチコイド系の機能は,いずれも正常であった.デキサメサゾン1.5mg/日を投与後コルチゾールは2.2μg/dlに抑制され,血清Kは3.9mEq/l,血圧も正常化した.スピロノラクトン50mg/日を併用し,血清Kは4.7mEq/lに上昇,以後スピロノラクトン50∼75mg/日のみで血清K及び血圧は正常に推移し,レニン活性6.9ng/ml/時,アルドステロン186pg/mlまで上昇した.また,食事の介助は不要となった.本症例は,デキサメサゾン及びスピロノラクトンが有効であり,11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 2(以下11β-HSD2と略す)活性阻害が考えられ,血清コルチゾール/コルチゾン比は0.95で,80歳代の5例の女性対照群(0.28∼0.72)より高値であった.従来,本症は,甘草に含まれるグリチルリチン酸の慢性的服用による偽性アルドステロン症として知られ,また,その効果は長期間持続するとされる.しかし,今回の症例では,服用中止約1年以上経過後でも,スピロノラクトンを中断すると,低K,低レニン·低アルドステロン,代謝性アルカローシスが出現し,スピロノラクトン再投与で正常化した.最近,本症の高齢発症例がしばしば報告され,グリチルリチン酸以外の11β-HSD2抑制因子として加齢の関与を検討する必要がある.
日本老年医学会地方会記録
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