日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
43 巻, 4 号
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  • 榊原 隆次, 内山 智之, 服部 孝道
    2006 年 43 巻 4 号 p. 415-422
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    高齢者では排尿障害が非常に高頻度にみられ, その機序は多因子的である. ベッドサイドでの診断として, 患者および介護者の訴えをよく聞き, 過活動膀胱 (OAB) 症状, 女性の腹圧性尿失禁, 意欲・認知・歩行障害による機能性尿失禁を鑑別する. 夜間多尿の診断には時刻・排尿量チャート, 残尿による二次性頻尿尿失禁の診断にはエコーまたはカテーテルによる残尿測定を行う. 認知症を伴わない高齢者のOABは, 多発性脳梗塞によることが多い. 多発性脳梗塞・レヴィー小体型認知症では, アルツハイマー病と異なり, 初期から歩行障害と排尿筋過活動が高頻度にみられる. 進行すると3疾患共に機能性尿失禁をきたす. 患者が排尿を教えなくなると, 薬物治療はむずかしくなる. 治療・対処法として, 意欲低下がある場合はまずドネペジル, アマンタジンなどを投与すると良い. それと並行して, 機能性尿失禁に対して排尿誘導, OABに対してセロトニン系薬物など (認知症が軽度の場合は抗コリン薬も), 歩行障害に対してエルドーパなどを試みる. 夜間多尿に対しては少量のデスモプレッシン就寝前点鼻スプレーを行う. 排尿障害の治療は患者・介護者の生活の質を向上させることから, 積極的に取り組むことが望まれる.
  • 三木 哲郎
    2006 年 43 巻 4 号 p. 423-427
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    平成16年度から始まった新臨床研修制度の後期研修が平成18年4月より始まった. 医師の大学の医局離れが進行し, 都会の大学病院や大規模病院への医師の偏在や, 特定の診療科を避ける医師の増加などが社会的問題となってきているが, 老年医学部門での専門医の教育・研修制度については, 日本老年医学会認定老年病専門医制度研修カリキュラムが平成13年6月13日に改定されてから大きな変化はない. 内科認定医を取得した後, 老年病専門医に向けた研修が始まることになるが, 間近に迫った超高齢化社会に向けて, 世間でも医師の間でも認識不足である老年医学, 老年病専門医の重要性を宣伝し, この機に大いに飛躍発展できる学問ではないかと考え, 今回の総説を完成させた.
  • 飯島 節
    2006 年 43 巻 4 号 p. 428-430
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 田村 遵一, 川田 悦夫, 佐藤 正通, 森平 和明, 伊藤 克彦
    2006 年 43 巻 4 号 p. 431-432
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 大類 孝, 山谷 睦雄, 佐々木 英忠, 荒井 啓行
    2006 年 43 巻 4 号 p. 433-436
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    高齢者の疾病は単に臓器別の疾患として捉えるのみでは不十分で, 多臓器障害の様相を呈する事が多く, その治療には加齢による臓器機能の低下も含めた包括的医療が要求される. よって, 大学病院における老年病専門医の役割は重要で, 旧来の縦割りの医局制を超えて臓器別医療の総括を行い, 全身を診る Geriatric General Physician としての役割が要求される. また, 21世紀国が奨める医療は, 前述のように各臓器障害の診断, 治療のみならず個々人を尊重しての全人的医療であり, これはまさに老年医療が目指すものに他ならない. よって, これからの医療の担い手である医学生, 初期研修医, 大学院生を対象にした老年医学教育は重要で, そのための魅力ある教育カリキュラムの作成は老年病専門医の重要な任務である. また, これまで展開してきた要介護高齢者を対象とした臨床研究の結果をもとに, 現在のわが国における老年症候群の克服に向けての課題を明らかにし, 老年病医として Evidence に基づく解決策を提言することも重要な責務と考える.
  • 鈴木 裕介
    2006 年 43 巻 4 号 p. 437-440
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    Rapid ageing of the society inevitably increases the demand for specialists in the healthcare of older people. Under these circumstances, how geriatricians work as specialists in the framework of healthcare services is becoming an urgent concern for those who are engaged in the healthcare for the elderly. Although some similarities can be identified in the development of geriatrics medicine across the countries, actual roles of geriatricians and the definitions of their specialties seem to vary depending on the healthcare systems of each country. Current issues related to the speciality of geriatric medicine are discussed.
  • 櫻井 孝, 横野 浩一
    2006 年 43 巻 4 号 p. 441-444
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 秋下 雅弘
    2006 年 43 巻 4 号 p. 445-446
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 遠藤 英俊
    2006 年 43 巻 4 号 p. 447-448
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    Geriatricians have a major roles to assess and head elderly patients using a team approach. In this paper, the first question is to ask what a geriatrician is, and the second question is to ask the role of a geriatrician. A geriatrician is a coordinator for elderly patients who have physical and mental disorders. We have to take care of not only diseases, but also the patients' lives after discharge from hospital. Geriatrician should coordinates a team approach and maintain contact with care managers. In general hospitals, discharge planning, which supports short and smooth discharge is an important role of geriatrician. We are frequently asked to see elderly patient by specialists because of difficult problems, such as delirium, cognitive dysfunction and communication disorder.
  • 荒井 啓行
    2006 年 43 巻 4 号 p. 449-452
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    Elevated plasma homocysteine levels are associated with an increased risk of developing atherosclerotic vascular disorders such as stroke, but have also been implicated for neurodegenerative diseases including Alzheimer's disease (AD). Other studies have reported that hyperhomocysteinemia is associated with developing silent brain infarctions and white matter lesions in community-dwelling elderly people. It is not uncommon for such ischemic cerebrovascular lesions to be found in otherwise typical AD patients on magnetic resonance imaging.
    Such co-existing cerebrovascular diseases in AD must be important in developing aspiration pneumonia and falls. Previous studies demonstrated that basal ganglia infarcts, either silent or symptomatic, impaired swallowing function and these lesions were associated with an increased risk of developing aspiration pneumonia in AD patients, particularly in later stages. Further, periventricular white matter lesions are associated with an increased risk of falls irrespective of clinical stages of AD.
  • 浦上 克哉
    2006 年 43 巻 4 号 p. 453-454
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 白木 正孝
    2006 年 43 巻 4 号 p. 455-458
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    超高齢者において骨粗鬆症を治療すべきか否かについてはまだ問題がある. 殆どの骨粗鬆症治療薬の開発試験は試験中における死亡例の発生を考慮して超高齢者は試験に組み込まれていないことが多い. 従って, 超高齢者においても薬剤が骨折を予防しうるか否かに関する evidence は薄い. しかし, 超高齢者は骨折のリスクが高く, 骨折が起こるとそのことに起因する直接または間接の合併症が多発する. 従って, 超高齢者といえども骨粗鬆症を合併している場合には治療は行われるべきと考える. 問題はどのような薬物が超高齢者の骨折に有効であるかであり, 始めからビスフォスフォネート (BP) が第一選択薬であるか否かは定まっていない. 今回の討論において我々の自験例を解析し, BPが高齢者骨粗鬆症の適応となりうるか否かを検討した. 対象は成人病診療研究所を受診した閉経後骨粗鬆症例1,041例である. これらを75歳以上の高齢群 (Old: n=329) および75歳以下の若年群 (Young: n=712) に分類し, さらに治療を行わなかった control 群 (Old control n=95, young control n=165) ビタミンDまたはKで治療した群 (Old VDK群n=124, young VDK群n=238) および alendronate (ALN) にて治療した群 (Old ALN群n=110, Young ALN群n=309) に分類した. これらの群について治療後1~3年の経過を観察し, その骨密度, 骨代謝マーカーおよび骨折率の推移を群間比較した. 骨密度はALN治療群で年齢に非依存性に6~7%増加し, 一方VDK群は維持され, Control 群は3%程度低下した. 骨吸収マーカーはALN群で年齢非依存性に40~50%低下したのに対し, VDK群においては control 群と差を認めず, わずかな上昇 (20%) を認めた. 骨折発生率は Old control 群で50%におよび, VDK群はそれを18.8%抑制したのに対し, ALN群では66.7%抑制した. Control 群に対するALN群の骨折抑制率は有意であった. 一方 Young control 群の骨折発生率は25%と Old 群の半分であり, Young ALN群の骨折抑制率は35.6%抑制と有意な抑制効果を認めた. 一方 Young VDK群の骨折抑制効果は有意ではなかった. 以上の結果から超高齢者の骨折を有意に抑制しうるのはALN治療のみであり, その点でALNは現段階では超高齢者に対する治療の第一選択薬となりうると考えられた.
  • 原田 敦, 山本 精三, 倉都 滋之, 岩瀬 敏樹, 井上 喜久男, 佐々木 康夫, 田中 孝昭, 藤田 正樹, 中野 哲雄, 安藤 富士子
    2006 年 43 巻 4 号 p. 459-461
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 下方 浩史
    2006 年 43 巻 4 号 p. 462-464
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    健康長寿を目指すためには生活習慣の改善が最も重要である. 喫煙や飲酒のコントロール, 肥満防止, 栄養改善, 運動習慣などの生活習慣の改善は, 寝たきりを防止して健康寿命を延ばしていくためには不可欠である. 生活習慣の是正は小児期から必要であり, 青年期, 中年期から老年期まで, 生涯にわたって必要であるが, ライフステージごとに方法や目標は異なる. 75歳以上の後期高齢者では肥満よりも痩せの危険が高いことを認識し栄養指導を行うことが必要である. 喫煙による循環器疾患や呼吸器疾患への影響としては急性の不整脈の誘発や, 末梢血管の収縮, 気道への刺激などもあり, 禁煙は高齢者でも有用と考えられる. また代謝予備力が落ちているために飲酒量も減らすことが望ましい. 運動習慣は高齢者の身体活動能力を維持するだけでなく, 代謝機能を高め, 鬱を予防するなど心身の健康維持に重要であり, 運動教室などを利用して積極的な介入を行っていくべきであろう.
  • 勝谷 友宏, 荻原 俊男
    2006 年 43 巻 4 号 p. 465-468
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    ヒトゲノムの塩基配列がほぼ解明され, 研究の主体も遺伝性疾患から生活習慣病に移ってきている. 一般に遺伝子の影響は若年者で強く, 高齢者で弱いとされるが, 長寿遺伝子はもとより, 加齢とも関連が深い酸化ストレス, インスリン抵抗性などに関与する遺伝子の解析に伴い, 高齢者においても遺伝子が果たす役割が意外に大きいことが明らかになってきた. 中でも, 老化モデルマウスや早老症と呼ばれるウェルナー症候群, プロジェリア症候群などの遺伝子解析の結果は, 細胞の寿命やアポトーシスにゲノムが深く関わっていることを示唆している. 高齢者では, 長年にわたって築き上げた生活習慣を変更することは容易でなく, 仙人のような生活を強いることにより, 治療の継続が妨げられることも少なくない. 本 controversy では,循環器疾患感受性遺伝子解析のデータをもとに, 遺伝的素因すなわち個人の体質により生活習慣の是正が異なるという立場から議論を深めていきたい.
  • 遠藤 英俊
    2006 年 43 巻 4 号 p. 469-471
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    The Japanese long term care insurance has started since 2000. After 5 years' experience, it is scheduled to change in 2006, the most important point is preventive care which means to stop the deterioration of ADL or cognitive function. Prevention is thought to be best way to cut the cost of care services. The preventive care system will start in April, 2006, over 1 million people with supportive care needs will receive muscle training or oral care and nutritional support from care workers in the community.
    New comprehensive community centers will open and these should which make assessments for preventive care, and provide consultations for care givers and families, and comprehensive care management in the community, and protect the dignity of the elderly will newly start.
    To improve quality of care services is important, and each prefecture has to evaluate all services and to publish the data with internet, so that everybody can see it and select the most appropriate care or company. Also, the government will start a new system of community based services including group homes, small and multifunctional care services, and day care services for people with dementia. These services should have one room available for each individual.
  • 川村 陽一
    2006 年 43 巻 4 号 p. 472-475
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 柴山 志穂美
    2006 年 43 巻 4 号 p. 476-477
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 隆雄
    2006 年 43 巻 4 号 p. 478-480
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 飯島 節
    2006 年 43 巻 4 号 p. 481-484
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    介護保険制度は,「自立支援」と「居宅重視」を基本理念とし, 介護の社会化を目指してスタートした. しかし, この5年間の実績をみると, 制度利用者の自立度はむしろ低下 (要介護度は上昇) し, 施設待機者が急増するとともに, 介護殺人はいっこうに減らないという結果となっている.
    これに対して本年度の制度改革においては,「介護予防」のさらなる推進のために「新予防給付」を創設するとともに, 介護施設の抑制方針は堅持しながら負担の公平化の名目で施設給付の見直しが図られている.
    しかしながら, 加齢にともなって徐々にあるいは新たな疾病によって自立度が低下することは避けられないことであり,「介護予防」の効果は限定的なものにならざるを得ないだろう. また, 今後, 独居高齢者や高齢者のみの世帯が急増することを考えると, 在宅介護の今以上の拡大は不可能であり, 結局, 有料老人ホームなどの特定施設への依存度が高まる結果となることが予想される.
  • 鈴木 みずえ, 金森 雅夫, グライナー 智恵子, 伊藤 薫, 大城 一
    2006 年 43 巻 4 号 p. 485-491
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: 認知症高齢者の主観的QOLに関する縦断的調査は十分行われていない. 認知症に特異的なQOL指標である Dementia Quality of Life Instrument の追跡調査を実施し, 縦断的評価が可能であるか検証した. 方法: ベースラインの面接調査は成14年11月4日~平成15年1月31日に実施し, 対象者は認知症高齢者72名, 男性19名, 女性53名; Vascular Dementia (VD): 66名, Senile Dementia of Alzheimer's Type (SDAT): 16名であった. 1年後の追跡調査が可能な対象者は60名 (VD 56名, SDAT 4名), 中止の理由は入院10名, 死亡1名, 通所中止1名であった. 結果: MMSEの平均値は追跡群20.87 (±4.80) と非追跡群の17.82 (±5.65) と比べて有意に高く, ベースラインと1年後を比較するとMMSE得点が有意に低下した. ベースラインと1年後を比較すると日本語版DQoLでは「否定的感情」が有意に改善したが,「所属感」は有意に低下した. 信頼性係数であるCronbach's αのベースラインは0.872~0.723, 1年後は0.744~0.886であった. 日本語版DQoL下位尺度とGDSの相関係数はそれぞれの同項目間のベースライン, 1年後のすべてに有意な関連が認められた. ベースラインのGDSと1年後日本語版DQoLの「自尊感情」,「肯定的感情」,「否定的感情」,「所属感」の相関係数は-0.504~-0.320と有意な関連が認められた. 結論: 日本語版DQoLの下位尺度とGDSと有意な関係があり, 縦断評価も可能であることが示唆された. 1年後の日本語版DQoLの「否定感情」(逆転項目) は有意に改善しており, 1年後に主観的QOLが改善する可能性も示唆された.
  • 経管栄養施行下の神経疾患高齢患者における pilot study
    佐藤 幸恵, 小黒 浩明, 村上 陽, 安部 哲史, 山口 修平, 小林 祥泰
    2006 年 43 巻 4 号 p. 492-497
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: 神経疾患を有する高齢患者の嚥下障害に対し, 胃瘻などの経管栄養を行っても胃食道逆流により継続投与が困難となるケースがある. この病態に対して, セロトニン受容体拮抗剤 sarpogrelate による症状改善効果を食道内のpH測定にて検討した. 対象・方法: 嚥下障害によって経鼻胃管, 胃瘻造設を施行している神経疾患患者5名 (脳梗塞後遺症3名, クモ膜下出血後遺症1名, ヘルペス脳炎後遺症1名). 食道pHモニターを透視下で食道胃吻合部より5cm上に48時間留置しモニタリングした. 最初の24時間は通常の経管栄養を3回施行し (Drug-off), 続く24時間は sarpogrelate 300mg分3を経管栄養施行30分前に投与した (Drug-on). pHが4以下となる時間帯を胃食道逆流ありとした. この2回の24時間 (Drug-off と Drug-on) について平均pH, pHが4未満となる合計時間, 胃食道逆流回数の3項目を比較した. 結果: Drug-on の夜間帯 (午後7時から翌朝7時) で食道内pHが平均6.0と安定する傾向が見られた. またDrug-onで平均pHが有意に高値となった (Drug-off: pH6.0, Drug-on: pH6.5: P<0.05). pHが4未満となる合計時間と, 胃食道逆流の回数に対しては sarpogrelate の効果はみられなかった. 結論: セロトニン受容体拮抗剤の sarpogrelate は経管栄養施行中の胃食道逆流に抑制効果をもつ可能性がある. 機序として, 消化管に栄養剤が達した刺激による異常なセロトニン賦活を抑制している可能性を考えた.
  • 岡村 菊夫, 野尻 佳克, 山本 楯, 小林 峰生, 岡本 嘉仁, 安井 直
    2006 年 43 巻 4 号 p. 498-504
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: 診療所を受診している人々における下部尿路症状の頻度を検討する. 方法: 診療所を受診している50歳以上の1,120人に対して, 国際前立腺症状スコア (I-PSS) の下部尿路症状に関する7質問とQOLに関する1質問, 過活動膀胱症状質問票 (OABSS) の3質問, 国際尿失禁会議質問票 (ICIQ-SF) の4質問を含むアンケート調査を行い, 排尿障害の頻度程度, 困窮度について検討した. 結果: アンケートは958人 (86%) から回収され, 上記質問の回答に欠損のない822人 (73%) を最終解析対象とした. 男性364人 (平均年齢67歳), 女性458人 (68歳) であった. I-PSSとOABSSの重症度が中等度あるいは重度であったのは男性でそれぞれ99人 (27%), 43人 (12%) であり, 女性では55人 (12%), 40人 (9%) であった. 下部尿路症状によるQOL障害を示すQOLスコアが中等度, 重度であったのは男性206人 (57%), 女性193人 (42%) であった. ICIQ-SFにおいて何らかのタイプの尿漏れを有する男性は55人 (15%), 女性は185人 (40%) であった. I-PSS, QOLスコアがともに中等度以上あるいはどちらかが重度, あるいはICIQ-SFで1点以上の男性は138人 (38%), 女性は165人 (36%) であった. 結論: IPSSとICIQ-SFを下部尿路症状のスクリーニングに用いた際には, 診療所に通院する50歳以上の男性の38%, 女性の36%が, 治療が必要かどうかの評価が必要な下部尿路症状を有していると考えられた.
  • 宮本 秀和, 萩原 明人, 信友 浩一
    2006 年 43 巻 4 号 p. 505-511
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: 今後, 予想される医療費の増大を抑制するには, リハビリテーションの回復期の中核となる回復期リハビリテーション病棟の入院期間の短縮を検討することが重要である. そこで, 本研究では, 回復期リハビリテーション病棟の入院期間の要因を分析した. 方法: 対象者は福岡市内のH病院の回復期リハビリテーション病棟に, 平成15年5月1日から平成16年12月31日の間に入院し, 退院した患者236名のうち, 検討した15変数 (性別, 年齢, 疾病, 入院の紹介元, 入院前の生活拠点, 退院先, 入院時の家族構成, 理学療法・作業療法・言語療法の各リハビリ量, FIM, 経済的な問題の訴えの有無, キーパーソン, 退院に当たっての家屋改造の必要性, 在院日数) に関し, 欠損値がない者 (167名) である. 在院日数の関連要因を検討するため, 在院日数を従属変数, その他の要因を独立変数とする重回帰分析をおこなった. その際, 人員配置や障害の種類や程度とリハビリの組合せによる偏りを補正するため, リハビリ投入量をPT投入量と非PT (OT・ST) 投入量に2分して, 解析を行った. 結果: リハビリテーションの療法では, 理学療法, 作業療法, 言語療法のうち, 理学療法の投入量のみが在院日数の短縮と関連していた (p<0.05). 結論: (1) 理学療法が担当する基本動作やADL訓練のみが転帰の目安となっている, (2) 投入量の多い理学療法が在院日数の有意な説明変数となった可能性が考えられた. また, (3) 作業療法と言語療法は在院日数の短縮につながらず, 在院日数長期化の一因である可能性や, 作業療法や言語療法の投入量の少なさが, 自宅退院でなく, 施設退院につながっている可能性が示唆された. 今後は, 他の施設の患者を対象に同様の検討を行い, 今回の知見と比較検討する必要があると思われる.
  • 葛谷 雅文, 益田 雄一郎, 平川 仁尚, 岩田 充永, 榎 裕美, 長谷川 潤, 井口 昭久
    2006 年 43 巻 4 号 p. 512-517
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: 要介護認定を受けた在宅療養中の高齢者の「うつ」の出現頻度を明らかにし,「うつ」と関連する因子を抽出する. 方法: 名古屋市在住で要介護認定を受け在宅療養中の高齢者1,875名を対象にした縦断調査 (the Nagoya Longitudinal Study for Frail Elderly) の登録時のデータを基に Geriatric depression scaleshort version (GDS-15) を行うことができた1,409名 (男性489名, 女性920名, 平均年齢80.1歳) を対象とした. 訪問看護師により聴取された, 基本的日常生活動作, 要介護度, 併存症, 介護保険サービス使用, 服薬種類, 栄養状態, 生活環境などとGDS-15スコアとの関連を検討した. GDS-15スコア6点以上を「うつ」10点以上を「高度のうつ」とした. 結果:「うつ」「高度なうつ」の出現頻度はそれぞれ57.2%, 23.1%であった. 抗うつ薬服用者は全体の5%,「高度のうつ」群では6.6%であった.「うつ」の出現は要介護度の上昇に伴い増加した. 多項ロジスティック回帰では「うつ」の存在は要介護度が3以上, 栄養不良, 3種類以上の服薬デイケア (サービス) の未利用との間に関連を認めた. 結論: 要介護高齢者では高頻度で「うつ」が存在し, しかもほとんどが未治療であった.
  • HCQAIの妥当性の検証
    熊本 圭吾, 荒井 由美子
    2006 年 43 巻 4 号 p. 518-524
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: 在宅ケアの質評価尺度 Home Care Quality Assessment Index: HCQAIは, 家族介護者による在宅介護において, 1) 要介護高齢者の状態 (アウトカム), 2) 介護の実施状況 (プロセス), 3) 居宅内の設備 (インプット) の3領域を, 居宅介護サービス職員の観察により評価するため, 荒井らにより作成され, その信頼性と内容的妥当性が確認されている. 本研究は, このHCQAIの収束的妥当性の検証を目的とした. 方法: 調査は, 岡崎市医師会訪問看護ステーションを利用する要介護高齢者とその家族介護者102組を対象とした. HCQAIの妥当性は, 各下位尺度と, アウトカムおよびプロセスとインプットを示す変数との間の順位相関係数を算出することにより検証した. アウトカムを示す変数として, 要介護度訪問看護師が評価した利用者の「障害老人の日常生活自立度」と「痴呆性老人の日常生活自立度」, 家族介護者が評価した利用者の認知障害と問題行動の程度を用い, プロセスとインプットを示す変数として, 新たに「在宅ケアの印象」尺度を作成し用いた. 結果: HCQAIの中で, アウトカム指標となる下位尺度は, 要介護高齢者のアウトカムを示す他の変数との間に有意な相関が認められ, プロセスとインプットを示す変数 (在宅ケアの印象) との間に有意な相関が認められなかった. 一方, プロセスやインプットに相当する下位尺度は, プロセスとインプットを示す変数 (在宅ケアの印象) との間に有意な相関が認められ, 1つの下位尺度を除きアウトカムを示す他の変数との間に有意な相関を示さなかった. 結論: HCQAIの各下位尺度は, 概ね想定された収束的妥当性を示した. このHCQAIの更なる改善と妥当性の検証を積み重ねることにより, 家族介護者による在宅ケアの客観的評価, 特にインプットやプロセスの評価に広く用いられる尺度が提供できるものと考える.
  • 若林 一郎, 荒木 慶彦
    2006 年 43 巻 4 号 p. 525-530
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: 飲酒は血中脂質や血液凝固への影響を介して動脈硬化進展に抑制的に作用することが知られているが, その作用への年齢の影響に関する報告は少ない. 本研究では女性における飲酒と動脈硬化のリスク要因との関連性におよぼす年齢の影響を検討した. 方法: 職場での定期健診を受診した20歳から69歳までの女性53,911人を対象に, 一日あたりの平均飲酒量により非飲酒群, 少量飲酒群 (一日当たりエタノール換算30g未満), 多量飲酒群 (一日当たり30g以上) の3群に分類し, 飲酒と血圧, BMI (body mass index),血中脂質 (総コレステロール, HDLコレステロール, 動脈硬化指数) との関連性について年齢別に検討した. 結果: BMI, 血圧, 血中総コレステロール, 動脈硬化指数はいずれも年齢とともに増加したが, HDLコレステロールは年齢とともに低下した. BMIは20歳代から50歳代では非飲酒群に比べて少量飲酒群で有意に低かった. 40歳代および50歳代の多量飲酒群では非飲酒群に比べて収縮期血圧が有意に高く, 60歳代でも同様の傾向を認めたが, 20歳代および30歳代では有意差はみられなかった. 拡張期血圧はすべての年齢群で非飲酒群に比べて多量飲酒群で高かった. 血中総コレステロールは50歳代までは非飲酒群に比べて飲酒群で低い傾向を示したが, この傾向は60歳代ではみられなかった. いずれの年齢群においても飲酒量の増加とともにHDLコレステロールは増加傾向を, また動脈硬化指数は減少傾向を示した. 結論: 若年女性と異なり高年女性では, 飲酒による収縮期血圧上昇作用は有意である一方, BMIや総コレステロール低下作用は弱い傾向があり, すなわち高年女性では飲酒の動脈硬化進展予防へのメリットがより少なく, 逆にデメリットがより多くなる可能性が示唆された.
  • 東 太地, 尾崎 絵美, 薬師神 芳洋, 河野 政志, 酒井 郁也, 高田 清式
    2006 年 43 巻 4 号 p. 531-535
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 女性. 2003年8月下腿浮腫, 無尿を認め近医受診し, 水腎症および腹腔内リンパ節腫大を指摘され, 当院泌尿器科に紹介され入院. 鼠径部リンパ節生検の結果, 悪性リンパ腫 (Non-Hodgkin, diffuse large B cell, stage IIA) と診断され当科に転科した. 同年9月よりR-CHOP化学療法を6コース施行され完全寛解となった. 2004年7月中頃より嚥下障害が出現したため, 同年8月16日当科に再入院した. 食道透視および上部消化管内視鏡検査で中下部食道に潰瘍を伴う全周性の狭窄を認めた. 表在リンパ節は触知せず, 全身CT, Gaシンチ, 上部消化管内視鏡下生検でも明らかな悪性リンパ腫の再発や食道癌の所見は認めなかった. LDH, 可溶性IL-2レセプター, 各種腫瘍マーカーも正常範囲であった. 以上より良性食道狭窄の可能性が考えられたが, 狭窄も高度で保存的治療は困難であり, また悪性疾患の可能性も完全には否定できなかったため, 当院第1外科に転科し9月21日腹腔鏡下食道切除術および胃管再建術を施行した. 病理所見より食道潰瘍による瘢痕性狭窄と考えられた. 悪性リンパ腫の化学療法後寛解期早期に発症し, 鑑別診断が困難であった良性食道狭窄の症例を経験したので報告する.
  • 第16回日本老年医学会近畿地方会
    2006 年 43 巻 4 号 p. 536-543
    発行日: 2006/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
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