脂質代謝および血液凝固学と動脈硬化症の関連性についての研究は, 現在多くの研究者の関心を集めている. 著者らは数年来この方面の研究の一端として, 脂質代謝と血液凝固, 線溶ならびに血小板に関する検索を続けてきた. 今回は血小板の脂質代謝, とくに脂質合成能と血小板諸機能について,
14C-Acetate を使用し検索した. すなわち, 冠不全, 脳軟化症などの動脈硬化性疾患群と, 糖尿病および悪性腫瘍の血小板について, 粘着率, 退縮率, 第3因子能, Serotonin 摂取能などの血小板機能と, 血小板脂質合成能の比較検討を試みた. その結果, 動脈硬化性疾患群では血小板の総脂質および燐脂質, NEFA合成能の上昇群において, 粘着率の著しい亢進を認めた. また, 第3因子能および Serotonin 摂取率は総脂質合成能の低下群で異常低値を示した. 糖尿病および悪性腫瘍では一定の傾向を認めることができず, また, 血餅退縮能は三疾患群でまったく脂質合成の変化に際して変動を認めることができなかった. すなわち, 動脈硬化性疾患の血小板における脂質と血小板機能の間に関連性の存することを示唆するものと考えられる.
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