日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
14 巻, 6 号
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  • 鏡森 定信, 金川 克子, 岡田 晃
    1977 年14 巻6 号 p. 453-459
    発行日: 1977/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    短時間に寒冷昇圧テストを反覆しておこなう Double Cold Pressor Test を30歳以上121名に実施した. 得られた成積は年齢階層を60歳未満と以上に分け, 血圧を収縮期血圧と拡張期血圧に分け検討された.このテスト時の1回目および2回目の寒冷刺激による血圧の上昇値は, 収縮期血圧および拡張期血圧とも基礎血圧とは有意な相関を示さなかった. またこのテスト時の1回目と2回目の寒冷刺激による血圧の上昇値は, 収縮期血圧および拡張期血圧いずれにおいても有意な相関がみられた. Double Cold Pressor Test 時の1回目の血圧の上昇値と1年後の血圧上昇値とは, 60歳以上の拡張期血圧の場合を除いて有意な相関がみられた. さらにこのテスト時の1回目の血圧の上昇値とこのテスト時の2回目の血圧の上昇値との差と同じくこのテスト時の1回目の血圧の上昇値と1年後の寒冷昇圧テスト時の血圧の上昇値の差との相関を検討したところ, 60歳未満の拡張期血圧の場合を除いて有意な相関がみられた.
    以上 Double Cold Pressor Test における1回目と2回目の血圧の反応の関連および経時的にみた寒冷刺激時の血圧の上昇値の大きさやその変動の検討より, 各個人は寒冷刺激に対する血圧反応に関して一定の傾向を有することが示唆された. 他の循環器検査との関連では, Double Cold Pressor Test で1回目と2回目の収縮期血圧の上昇値の変動した群で, 眼底の交叉現象の出現率が対照に比較して有意に高い傾向を示し, 将来の脳心事故予知に有用とされている眼底の細動脈硬化所見とこのテストから得られる結果とが関連していることが認められた.
  • 白倉 卓夫, 村井 善郎, 古林 正夫
    1977 年14 巻6 号 p. 460-467
    発行日: 1977/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Chloramphenicol (CP), thiamphenicol (TP), aminobenzylpenicillin, carbenicillin (AB-Pc, CB-Pc) による老年者の急性造血障害例17例について, 原因薬剤の投与条件や末梢血液像につき検討するとともに, CP, TP例については, とくにこれら薬剤による造血障害発現に関与する肝, 腎機能について造血障害非発現例と比較検討した. えられた成積は次の如くであった.
    1. 原因薬剤はCP, TP 13例, AB-Pc 3例, CB-Pc 1例で, TP例が圧倒的に多かったが, 障害血液細胞は赤血球系が17例中15例と最も多く, ついで血小板系障害の頻度が多かった. 死亡したCP, AB-Pc各1例以外の症例は, 他の原因で死亡した1例を除いて, 原因薬剤投与を中止後, 障害細胞の速やかな回復がみられた.
    2. CP, TP投与例中, 造血障害を発現した例と発現しなかった例とについて, 原因薬剤投与時の対象の肝, 腎機能検査成積を比較検討した. その結果, GPT異常高値が, CP, TP造血障害例に有意に多いことが示された.
    3. TP 2例, AB-Pc 1例では, 造血障害とともに肝機能障害が同時にみとめられた. 時間的経過からみて, 両障害は原因薬剤により別個に惹起されたと解された.
    老年者においては, 上記薬剤とくにCP, TPでは, 急性造血障害を惹起する頻度が, 一般にいわれている発現率に比して高い成積をえた.
    しかしこれら造血障害例の大部分は, 原因薬剤の投与を中止することにより, 多くは2乃至7日の間に障害血液細胞の急速な回復をみた. また肝障害をもつ老年者でのCP, TP造血障害発現が有意に高いことが指摘された点からみて, これら薬剤の使用に際しては, 投与対象例について, この点に留意するとともに, 薬剤使用中には末梢血液中の網赤血球を含む血液像の変化に注意し, 異常あれば速やかに投与を中止すれば, 薬剤による急性造血障害を最小限に防止しうることが指摘された.
  • 堀江 昭夫, 琴尾 泰典, 西原 康雄
    1977 年14 巻6 号 p. 468-474
    発行日: 1977/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    60歳以上の高齢者159例と大酒家25例について, 死後変化の少ない剖検膵を病理組織学的に検索して, その頻度を比較した. 大酒家は8年以上にわたり, 毎日2合 (360ml) 以上の飲酒をした人達である.
    高齢者および大酒家群ともに膵標本では導管周囲線維化, 小葉間ないし細葉間線維化, 小葉萎縮が通常認められることが多かった.
    粘液細胞増生, 導管上皮の扁平上皮化生は大酒家の標本より高齢者群の標本に高頻度にみられた. これに反して, 導管拡張, 炎症性細胞浸潤, 静脈拡張は高齢者群より大酒家の標本に高頻度に認められた.
    これらの所見から, 高齢者群に導管上皮の再生性ないし化生性変化の頻度が高く, 他方大酒家群にしばしば導管の閉塞性機転の作用していることが明らかになった.
  • 馬渕 宏, 多々見 良三, 上田 幸生, 上田 良成, 羽場 利博, 亀谷 富夫, 伊藤 清吾, 小泉 順二, 宮元 進, 太田 正之, 竹 ...
    1977 年14 巻6 号 p. 475-479
    発行日: 1977/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    家族性高コレステロール (chol) 血症の診断基準は, 欧米では既に確立されているが, 食生活が異なるわが国でも適応されるか否か未だ検討されていない. 今回われわれは腱黄色腫を認める家族性高 chol 血症55例について検討し以下の結論を得た.
    i) 家族性高 chol 血症の血清 chol は255~908mg/dl (平均±SEM, 385±14mg/dl) であった.
    ii) 家族性高 chol 血症の血清トリグリセライド (TG) 値は54~307mg/dl (平均±SEM, 128±9mg/dl) であった.
    iii) リポ蛋白分画について検討した7例のLDL (低比重リポ蛋白) -chol は226~360mg/dlであつた.
    iv) 以上の成績より, 家族性高 chol 血症の診断基準は, (1)血清 chol が250mg/dl以上で腱黄色腫又は, アキレス腱の肥厚を認めるか, (2)一等親に家族性高 chol 血症があり, 血清 chol が250mg/dl以上のいづれかである.
  • 臨床症状と予後について
    星 豊, 布施 正明, 飯尾 正宏, 藤原 敬悟, 川口 新一郎, 村田 啓, 千葉 一夫, 山田 英夫, 内山 伸治, 岡田 洽大
    1977 年14 巻6 号 p. 480-488
    発行日: 1977/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    過去4カ年間に65歳以上の高齢者を対象とする慢性硬膜下血腫21例を経験したので, その臨床症状と予後について報告する. 対象者の平均年齢は77.1歳で性差は認めない. 本症の既往で大切なのは頭部外傷95%, 高血圧症52%, 糖尿病19%, そして慢性アルコール中毒14%である. 入院前の発症および初発症状を家族から聞くと, 一番多いのは歩行障害43%で (下肢脱力, 半身不全麻痺, 片麻痺), 精神障害及び人格変化24%, 失禁29%, 頭痛24%, 痴呆24%, 意識障害24%, さらに痙攣や目まい5%である. 本院入院前の診断名は脳梗塞43%, 脳動脈硬化症14%, 脳出血14%, 老年痴呆10%そして頭部外傷, 脳腫瘍, 髄膜炎など同じように5%である. 入院前の種々様々な診断名から老齢者において慢性硬膜下血腫を老年痴呆, 脳血管障害, 他の血管系痴呆などと鑑別診断することは極めて難しい. 入院時の主症状は意識障害43%, 精神障害38%, 半身不全麻痺と片麻痺71%, 失禁29%, 頭痛24%, 言語障害24%そして Aphasia が10%である. 瞳孔不同とウッ血乳頭は非常に少なく3%であった. 髄液所見では180mmH2O以上は7例で33%, 120mmH2O以下は8例で38%であった. 髄液蛋白が50ml/dl以上のものは陳旧性脳卒中と脳梗塞の例であった. 脳血管撮影を施行した17例の全例に無血管領野を認めて確定診断ができた. 予後判定は臨床症状とCBFの結果を観察した. CBFの改善を示したのは術後3カ月目であった. 改善が成大に較べて, 老人の本症が遅延するのは, 脳血行障害がすでに存在し, 脳実質圧迫がより少なくても, 脳萎縮もあり, しかも頭蓋内腔の拡大が存在するからである.
  • 盤若 博司, 妻鳥 昌平, 板垣 晃之, 漆原 彰, 大庭 建三
    1977 年14 巻6 号 p. 489-495
    発行日: 1977/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    糖負荷時の血糖およびインスリン反応を主として年齢面より検討する目的で耐糖能に影響する諸種疾患の既往または合併症を有するものおよび薬剤服用者を除外した13歳から91歳までの男女合計1,325名を対象とし, 50g経口ブドウ糖負荷試験を実施した.
    インスリン反応としては血糖曲線およびインスリン曲線で囲まれる部分の面積比SIRI/SBS値および従来より一般に使用されているΔIRI/ΔBS, ΣIRI/ΣBS値とを使用した.
    インスリン反応と年齢との関係を検討する場合の統計学的考察を行い, その成績よりインスリン反応と年齢との関係, および年代別にみた肥満因子のインスリン反応への影響を調査し, 以下の結論を得た.
    1. インスリン反応を年齢面より検討する場合は実測値を用いるよりも対数変換値を用いるべきである.
    2. インスリン反応を年齢面より検討する場合は従来より一般に使用されているΔIRI/ΔBS値やΣIRI/ΣBS値よりもSiri/Sbs値の方が年齢とより有意の相関が得られる.
    3. インスリン反応と年齢との関係については非肥満群では正常, 境界および糖尿病域いずれも年齢と正の相関を認めるが, 肥満群では年齢との相関は得られない.
    4. 若壮年非肥満群糖尿病域例のインスリン反応は正常域例のそれに比べて明らかに低値を示すが, 老年非肥満群ではいずれの域もインスリン反応面からは区別し難い.
    5. 肥満因子のインスリン反応への影響は老年群では若壮年群に比べて少い傾向が認められる.
  • 七田 恵子, 柴田 博, 松崎 俊久, 木戸 又三, 高橋 重郎, 斉藤 紀仁
    1977 年14 巻6 号 p. 496-500
    発行日: 1977/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    東京都特別養護老人ホーム入所者, 男子111名, 女子206名, 計317名を対象として日常生活動作能力 (Activities of Daily Living: ADL) の調査を実施し, 血圧, 血液生化学所見との関連を追求した. ADLは歩行方法, 歩行範囲, 食事, 着衣, 入浴, 及び用便の6項目に評価点を与え, 13段階に分類した.
    対象集団は平均80.5歳 (60~101歳) と高齢者が多く, それらのほとんどが慢性疾患を有している. 主な疾患としては骨・運動器 (36.6%), 脳卒中後遺症 (32.5%), 精神障害 (24.6%) 等である.“ねたきり”,“おむつ使用”の老人がおよそ3割を占めた.
    ADLの程度は全体として低い成績であり, 特に男子が女子より低い傾向を示した. ADL評価点はADLの比較的高いもの, 低いものの両極に, より多く分布した.
    性別にADLの低い群, 高い群の2群に大別し, ヘマトクリット値, 血色素量, A/G比, 血清総蛋白, 血清コレステロール, 尿酸, 収縮期血圧, 拡張期血圧の平均値で比較すると, 男子はADLの高い群が低い群に比し, すべての検査項目において高値を示し, 血清コレステロールに関しては有意であった. 女子では血清コレステロール, A/G比, 血清総蛋白, 尿酸はADLの高い群に高く, そのうち血清コレステロール, A/G比, 尿酸では有意差が認められた. ADLと血圧の関係では, 概してADLの低い群に比し, 高い群に血圧の高い傾向を認めたが, 女子の拡張期血圧のみは逆の関係であった.
  • 脊髄家兎でのバルーン加圧方式による褥瘡
    入来 正躬, 島田 馨, 嶋田 裕之, 古沢 恵美, 井口 敏男
    1977 年14 巻6 号 p. 501-509
    発行日: 1977/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老人の看護で問題となるヒト褥瘡の病因, ケアー, 治療効果を客観的に検討し得るよう脊髄家兎を用いて, 実験動物モデルの開発を試みた.
    方法: ゴムのバルーンを径約2cmの浅い円筒型のキャップの中に入れ, 装着前にあらかじめ毛を剃り落した大腿部皮膚上にあて, このキャップを外側より大腿の外側にあてたプラスチック板で皮膚の上に軽くのせる. バルーンおよび導管中に水を満して圧を加え, 実験継続中加圧したままにする. 圧は, バルーン内圧を水銀マノメーターで, 皮膚にかかる圧を圧測定用センサーを用いて測定し連続記録した.
    結果および考按: 1) 脊髄家兎の身体床面にかかる圧を化学的呈色反応を用いて測定したところ, 仙骨部で最も高く, 40±10mmHgであった. このため, 実験はバルーン内圧が150-90mmHg, 90-60mmHg, 60-40mmHg, 30-20mmHgの4つの場合について行った. バルーン加圧開始後4日目で, 150-90mmHg加圧グループでは9例全例, 90-60mmHg加圧グループでも7例全例に褥瘡を発生した. 60-40mmHg加圧グループでは4例中2例表皮の変化が認められ, 2例では著変を認めなかった. 30-20mmHg加圧グループでは褥瘡は発生しなかった.
    2) バルーンと皮膚の間にガーゼを入れた方が, ゴムを入れた場合より表皮の変化は軽い.
    3) バルーン加圧方式により発生した褥瘡の病理所見は, 脊髄家兎で身体床面仙骨部に, 自然に発生した褥瘡の所見とほぼ等しい. さらに, ヒトでみられる褥瘡の所見と類似している.
    4) 脊髄家兎に発生した褥瘡の細菌叢および局所の細菌感染による影響は, ヒトとは異なる.
    結論: 以上の結果より, 細菌感染の問題を除いて, 脊髄家兎でバルーン加圧方式によって作られた褥瘡は, ヒト褥瘡研究の実験動物モデルとして有用であろう.
  • 1977 年14 巻6 号 p. 510-536
    発行日: 1977/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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