心不全を合併した心房細動 (AF) 患者で, 心機能低下の指標となる血漿心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP), 脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP) 濃度を用いた電気的除細動 (DC) 後の心房細動(AF) 再発の予測が可能であるか, また年齢による違いがあるかにつき検討した. 安静臥床の上DC直前に採血し, 血漿ANP, BNP濃度を測定した. 除細動に成功した50名 (うち女性12名, 平均60.5歳, New York Heart Association (NYHA) クラスII~III度, 高血圧性心疾患20名, 拡張型心筋症17名, 弁膜症7名, 虚血性心疾患4名, 僧帽弁狭窄症は除外) を対象とし, 追跡したところ, DC後2カ月以内に21名でAFが再発した (平均洞調律維持期間9.05日). 他の29名は平均580.6日間観察し得た. 洞調律維持期間を, 患者背景, 臨床症状, 心エコー上の心機能などに加え血漿ANP, BNP濃度を用いて Cox proportional hazard 法にて解析した. 年齢, 性別, AF罹病期間, NYHAクラス, 左室駆出率 (平均40.8%), 左心房径 (平均44.8mm), 血漿ANP濃度 (平均71.3pg/m
l), 血漿BNP濃度 (平均152.3pg/m
l) のうち, Cox multivariate analysis では, 血漿ANP濃度 (p=0.003), 血漿BNP濃度 (p=0.0003), AF罹病期間 (p=0.007) のみが独立したAF再発の規定因子だった. 血漿ANP濃度は, AF再発と負に, 血漿BNP濃度とAF罹病期間は正に関連した. 血漿ANP濃度を血漿BNP濃度で除したANP/BNPが, 中央値である0.43以下の患者群では, AF再発の予測が感度70%, 特異度72%で可能であり, この確率は70歳以上の高齢者では感度100%, 特異度80%と, さらに良好であった. 心不全を合併したAF患者において, DC直前の血漿ANP濃度低値, 血漿BNP濃度高値は, それぞれ心房機能低下, 心室機能低下を反映し, DC後のAF再発の独立した危険因子である可能性が示唆された. 血漿ANP濃度低値は, 特に高齢者においてAF再発と関係が深い可能性があると考えられた.
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