日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
35 巻, 2 号
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  • 折茂 肇
    1998 年 35 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 1998/02/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症に関して最も重要なことは, この疾患をできるだけ早い時期に見い出し, 骨折の発症を防止することである. 骨折と骨塩量との関連を見ると, 最大骨塩量を示す時点では骨折が殆ど見られないが, 骨塩量が減るにつれて, 骨折の発生頻度が高くなり, 骨塩量が骨折を規定する重要な危険因子であることがわかる.
    予防及び早期治療の基本的な考え方は, もともと骨塩量の低い人を早い時期に見出し, 骨折闘値以上に骨塩量を保つようにすることである. 骨塩量が正常でも fast loser を検出し, 骨塩量の減少を予防して normal loser の範囲に保つようにする. そのためには, まず骨塩量を測定し, 骨塩量が低い場合には, 骨塩量を増加させる或いは減少を予防する措置を講じる. 一方, 骨塩量が正常な群については骨代謝異常を評価し fast loser を検出する.
  • 木崎 治俊
    1998 年 35 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 1998/02/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    アポトーシスとは発生・成熟の過程で不必要になった細胞や傷害を受けた細胞を積極的に除去するために, 細胞自身が持つプログラムにのっとって高度に制御されて引き起こされる細胞の死であり, 生体の恒常性の維持に重要な機能を担っている. しかも, この細胞の死は線虫から高等動物にいたるまで極めて保存された遺伝子群により, 増殖や分化と表裏一体で制御されている. 近年, アポトーシスの制御に関わるbcl-2, p53, カスペースファミリーなどの主要な遺伝子とそれらの産物の構造と機能との関連性, アポトーシスの誘発に直接関わっている Fas と Fas リガンド, 腫瘍壊死因子とそのレセプターを介したアポトーシスの機構, セラミドを介した誘発の機構, Bcl-2タンパクの機能と関連したミトコンドリア膜電位とミトコンドリアタンパクの役割が次第に明らかにされてきている. 一方, アポトーシスが生命の恒常性の維持に重要な意味をもつことから, その異常がエイズを含めたウイルス疾患, 細菌感染症, 自己免疫疾患, 免疫不全症, 神経変性疾患, 内分泌疾患, 腎臓疾患, 心臓疾患, 消化器疾患, 癌などの多くの疾病の病態, 病因に関わっていることが明らかにされ, その分子レベルでの理解から, 病因・病態の把握にとどまらず, アポトーシスの制御分子を標的として治療に応用されようとしている. 本稿ではそのアポトーシスの分子機構の最近の進歩とアポトーシスと疾病との関わりについて概説する.
  • 最近の動向
    三木 隆己, 揖場 和子
    1998 年 35 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 1998/02/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 終末医療における意義の検討
    山村 尚子
    1998 年 35 巻 2 号 p. 103-115
    発行日: 1998/02/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    意識状態が Japan coma scale で300の昏睡に陥った連続38例につき, 蘇生回復後, 同一医師が同一プロトコールで臨死体験の有無を問診し, 14例, 37%に体験をみとめた.
    体験ありの例14例に対して, 体験なしの24例を対照として, 年齢, 性別, 原因疾患, 職業, 宗教, 学歴, 体験場所, 使用薬物などによる出現頻度ならびにオッズ比を比較した. 体験場所として病院が高率であったが, 院内故に重症者も救命される率が高いためとみられた. 原因疾患では自殺企図者に1例も体験がなかった. その他に関しては, 体験の有無による群間に差をみず, これらの臨床背景因子が体験の出現, 不出現を分けることはなかった.
    体験の型として, 超越型, 自己観察型, フラッシュバック型の3型をみとめたが, 欧米に多いトンネル体験の型はみとめなかった. 体験の構成要素としては, 暗闇の虚空と先方の薄明り, 死者との遭遇, 小川, 川, 溜池といった要素がみとめられた.
    臨死体験の影響として, 死の恐怖が緩和したと述べたものがみられ, その後の生活態度が内省的になり, 精神的影響をうけたとするものが, 対照群に比べて有意に多かった. 体験なしの群では, 意識が300のレベルに陥る疾患に罹患しながら, その経験を日常的健康問題と捉えた例が多かったのと対照的であった.
    臨死体験例の研究結果として, 高齢者の終末医療に益すると考えられた点は, (i) 死あるいは死に至る過程に関する体験的知識を収集することができた, (ii) 体験者では死に対する不安, 恐怖がないか, 極めて少ないことが分かった, (iii) 終末医療に従事するものが心すべきことが示唆された点であった.
  • 小田原 弘明, 近森 大志郎, 矢部 敏和, 瀬尾 宏美, 河本 昭子, 小澤 利男, 土居 義典
    1998 年 35 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 1998/02/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者における血圧と左室拡張期心機能との相関を検討するため, 地域在住の高齢者ボランティア28名を対象として研究を行った. 血圧は随時血圧と携帯型自動血圧計による自由行動下血圧を測定した. 左室拡張期心機能は心エコーによるパルス波ドプラ法とリスト法心プール検査により評価した.
    随時血圧, 24時間血圧と左室重量係数との間には有意な相関は認めなかった. 随時血圧では心プール法による後期最大充満速度と拡張期血圧の間に弱い相関 (r=0.39, p<0.05) が認められるのみで, 他の心プール法の指標あるいは心エコー・ドプラ法の指標と血圧との間に相関は認められなかった. 自由行動下血圧では心プール法による後期最大充満速度と24時間血圧・昼間血圧・夜間血圧のいずれの間にも相関が認められたが, 夜間拡張期血圧との間の相関が最も強かった (r=0.53, p<0.005). 心プール法による後期最大充満速度と前期最大充満速度との比率, 最大充満速度までの時間, 心エコー法による拡張早期左室流入速度と自由行動下血圧との間にも相関は認められたが, いずれも後期最大充満速度と夜間拡張期血圧との相関よりは弱かった.
    地域在住高齢者において, 血圧と左室重量係数との間には相関を認めず, 血圧と左室拡張期心機能との間に有意の相関が示された. この相関は24時間血圧あるいは昼間血圧よりも夜間血圧において明瞭であった.
  • 井原 一成, 柴田 博, 安村 誠司, 芳賀 博, 生地 新, 岩崎 清, 高橋 誠一郎, 佐野 琢也, 渡部 由里, 粟野 美穂
    1998 年 35 巻 2 号 p. 122-128
    発行日: 1998/02/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    地域の在宅高齢者に, 自己評価式抑うつ尺度と精神科医による診断面接を用いた二段階式の調査を実施して, Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders III (DSM-III) 診断による感情障害の大うつ病と気分変調性障害, 非定型うつ病の時点有病率の把握を行った.
    本研究の対象は, 東北地方の一農村の65歳以上の住民857人より, 入院中や老人ホーム入所中及び長期不在の者などを除外した766人であった. 調査の第一段階では, 全員に対して Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D) が実施された. CES-Dは20項目版で, 看護婦の資格を持つ調査員による聞き取り法で行われた. CES-Dの回答は698人から得られ, このうちCES-D得点が12点以上の者83人と, CES-Dの非応答者で非応答の理由が不明であった者8人が第二段階の調査対象となった. 第二段階では, DSM-IIIによる大うつ病などの診断を行うために精神科医が対象者の面接を実施した. 診断面接は, Diagnostic Interview Schedule の躁病エピソードを除く感情障害の部分を用いることで構造化するとともに, 非構造的な面接で身体状態や実族状況などの情報を加えて診断の補助とした. また, 長谷川式簡易知能評価スケールなどの情報も加えて痴呆の有無の判定もあわせて行った. 精神科医による診断の結果, 本研究が対象とした一農村の在宅高齢者のDSM-III診断による有病率は, 大うつ病で0.5%, 気分変調性障害で0.3%, 非定型うつ病で0.4%であった. 痴呆と感情障害が重複して診断された者を含めた場合の有病率は, 大うつ病で0.7%, 気分変調性障害で0.4%, 非定型うつ病で0.4%であった. 大うつ病の有病率は, 女と後期高齢者で, やや高かった.
  • 超音波ドプラ法による検討
    澤井 伸之, 山野 繁, 南 繁敏, 野村 久美子, 山本 雄太, 高岡 稔, 福井 理恵, 土肥 和紘
    1998 年 35 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 1998/02/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    無症候性脳梗塞患者は脳卒中を発症する危険性が高いことから, 無症候性脳梗塞は脳卒中危険因子の1つに挙げられている. しかし, 無症候性脳梗塞の脳循環動態を超音波ドプラ法で検討した報告はみられない. そこで著者らは, 無症候性脳梗塞の発症予知に対する超音波ドプラ法の有用性を検討した. 対象は, 頭部MRI検査と総頸動脈・頭蓋内血流動態の測定が同時に実施された137例 (平均年齢63歳) である. 対象を健常 (N) 群45例, 無症候性脳梗塞 (AS) 群40例, およびラクナ梗塞 (LI) 群52例の3群に分類し, 定量的超音波血流量測定装置 (QFM) による総頸動脈血流量 (CCA-BF) と経頭蓋超音波ドプラ法 (TCDA) による中大脳動脈血流速度 (MCA-BV), Fourier pulsatility index (MCA-PI) を3群間で比較した. さらにN群のうち経年的に観察し得た28例を, 無症候性脳梗塞非発症 (N1) 群19例と発症 (N2) 群9例に分け, 総頸動脈・頭蓋内血流動態指標の経年変化から無症候性脳梗塞発症予知の可能性について検討した. N群, AS群, およびLI群の3群間での検討では, CCA-BFとMCA-BVは3群間に差がなかった. 一方, MCA-PIの平均値は, N群が最も低値であり, AS群, LI群の順に有意に増加した. また, N群の経年変化検討では, 初回検査時のMCA-PI平均値はN1群に比してN2群で有意に高値を示した. さらに, 無症候性脳梗塞発症の診断・基準をMCA-PIが0.32以上とした場合, 無症候性脳梗塞発症予知診断精度は感度が78%, 特異度が89%であった.
    以上から, TCDAによる Fourier pulsatility index は, 中大脳動脈領域の無症候性脳梗塞発症を予知する指標となることが示唆される.
  • 堀木 真由美, 森島 淳之, 山縣 英久, 楽木 宏実, 池上 博司, 三木 哲郎, 荻原 俊男
    1998 年 35 巻 2 号 p. 136-138
    発行日: 1998/02/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性. 長男は成人発症型の筋強直性ジストロフィー (MyD) の発端者であり, 68歳時に家系調査を目的として遺伝子診断を受けた際, 白血球由来の高分子量DNAにおける (CTG) 反復配列が約70回の軽度延長を認め, 軽微型筋強直性ジストロフィーであることが判明した. 平成5年より間欠性跛行を認め, 下肢の血流ドップラー検査にて, 重症の閉塞性動脈硬化症と診断された. 同疾患の手術適応評価目的で入院中, 薬の内服を忘れる, 自分の病室が分からないなどの痴呆症状を認めている. MyDを一種の早老症としてとらえたとき, 遺伝子診断により判明した軽微型筋強直性ジストロフィー患者において, 慢性閉塞性動脈硬化症や痴呆を合併したことは, 本疾患の原因遺伝子が老化の促進に関与している可能性を示唆していると考えられた.
  • 佐伯 秀幸, 棟田 慎二郎, 小林 卓正
    1998 年 35 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 1998/02/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 女性. 59歳より近医にてレボドパと塩酸トリヘキシフェニジルによりパーキンソン病の治療を受けていた. 1996年6月17日より高熱が出現し, 翌朝には意識障害が認められたため当科へ入院した. 抗パーキンソン病薬は入院前日まで内服していた. 入院時, 昏睡状態で, 40℃台の高熱, 低血圧, 頻脈, 頻呼吸および尿閉を認めた. 一般臨床検査では白血球増多, 血小板減少, 高CK血症, 著明な高血糖, 脱水を認めた. 高浸透圧性非ケトン性糖尿病性昏睡, DICおよび尿路感染症と診断し, インスリン, 抗生物質, メシル酸ナファモスタットおよびウリナスタチンの投与を開始した. その後, 意識レベル, 高血糖, DICは改善したが, CK, ミオグロビン, アミラーゼは上昇し続け, 意識障害, 筋硬直, 手指振戦, 発汗などの症状も出現してきた. 血清CK値と血清ミオグロビン値の最高値はそれぞれ11,095U/l, 12,520ng/mlであった. これらの所見から悪性症候群と診断し, 6月26日からレボドパ/カルビドパとダントロレンの経口投与を開始したところ, 上記所見はすみやかに改善し, 全身状態も良好となった.
    今回, 私達はパーキンソン病の治療中に, 糖尿病性昏睡を契機に悪性症候群を発症し, 抗パーキンソン病薬の中断により増悪した高齢者の1例を経験した. 本症例では悪性症候群の発症早期からDIC, 高アミラーゼ血症を合併していた. 高齢者は自他覚症状に乏しいため低栄養, 脱水に陥りやすく, 悪性症候群を発症しやすい状態にある. パーキンソン病を治療中の高齢者では常に本症候群の発症の可能性を念頭に置いて早期発見に努めるとともに, DICや多臓器不全に対する検査・治療を発症時から行うことが重要と思われた.
  • 1998 年 35 巻 2 号 p. 145-155
    発行日: 1998/02/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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