日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
73 巻, 11 号
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原著
  • 川田 有希子, 露木 茂, 河口 浩介, 山口 絢音, 川口 展子, 河野 幸裕
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2735-2740
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    乳癌治療において,センチネルリンパ節生検は標準手術となり,術後合併症の減少は患者のQOL向上に重要である.今回われわれは,乳房温存手術・センチネルリンパ節生検施行173例を対象とし,腋窩操作における超音波凝固切開装置(Ultrasonically Activated Coagulating Shears: UACS)のseroma形成予防に対する有用性を,電気メス群を対照として比較検討した.seroma発生頻度において,対照群では34%(30/88例)に対して,UACSは13%(11/85例)と有意に低下させた.平均穿刺回数も対照群2.0回に対してUACS群は1.7回と有意に少なかった.さらにBMI:25以上の肥満症例や摘出リンパ節個数4個以上の症例においても,UACSは有意にseroma発生頻度を減少させた.
    以上より,UACSはセンチネルリンパ節生検において,術後seromaの発生防止に有用である.
臨床経験
  • 橋詰 直樹, 寺倉 宏嗣, 吉元 和彦
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2741-2744
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    在宅静脈栄養管理が必要な患者や,重症心身障害患者などに対し,経静脈的栄養管理のため完全埋め込み型中心静脈カテーテル(以下CVP)が挿入され,長期留置に至ることも多い.そのなかで血管壁への固着や,側弯症や上肢の屈曲によりCVPに過度の負荷をかけ鎖骨と第一肋骨の圧挫によるpinch-off syndromeをきたすなど合併症も認める.われわれはCVPの抜去困難であった4例について検討した.全例が重症心身障害患者であり,CVP挿入期間は8-13年であった.3例が右鎖骨下静脈に,1例が左鎖骨下静脈に留置された.2例は抜去のために鎖骨の一部を切除し鎖骨下静脈を切開してカテーテルを摘出した.残りの2例は血管壁に強固に癒着しており,合併症を生ずる可能性は低いと判断し抜去せずに経過観察を行っている.当科での経験をもとに文献的考察をふまえ報告する.
  • 前平 博充, 清水 智治, 目片 英治, 園田 寛道, 山口 智弘, 谷 徹
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2745-2751
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    目的・方法:当院で経験した左側閉塞性大腸癌において,術前に減圧処置後に待機手術を行った群(待機群:15例)と緊急手術が必要であった群(緊急群:13例)との臨床経過臨床病理学的因子を検討した.
    結果:人工肛門造設は待機群(6/15;40%)で緊急群(12/13;92%)に比し有意に低率であった.術後在院期間,手術根治度,術後合併症および全生存率は両群間に有意差を認めなかった.待機群で13日以上減圧を行った症例で術後合併症が有意に増加した.入院時modified Glasgow Prognostic Score(mGPS)が0点であった患者の予後は良好であった.
    考察:緊急性のない左側閉塞性大腸癌では,減圧期間を考慮した上で,経肛門イレウス管を用いた減圧により人工肛門造設を回避できる可能性がある.入院時mGPSは左側閉塞性大腸癌の予後予測因子として有用である可能性が示唆された.
  • 林 成興, 五十嵐 雅仁, 萩原 謙, 山形 基夫, 高山 忠利, 鈴木 武樹
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2752-2757
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    単孔式腹腔鏡手術で用いるSILSTMポートを肛門管に装着し,経肛門的内視鏡手術(SILSTEM)を3例経験した.手術手技:麻酔下にSILSTMポートを肛門管に装着し送気.色素散布にて腫瘍の範囲を同定,生理食塩水を注入し腫瘍のリフティングを確認後,超音波凝固装置にて粘膜剥離を先行させ腫瘍直下は一部筋層まで切離した.腫瘍切除後十分な洗浄を行い通常の腹腔鏡鉗子やクリップを用いて連続縫合閉鎖した.手術時間は140(101-284)分で出血量は少量であった.術後漏便などはなく肛門括約筋機能には問題なかった.術後入院日数は4(2-8)日であった.術後11~18カ月で遠隔転移および局所再発は認めていない.今後症例を重ね臨床試験などを行い適応や長期成績の検討が必要であるが,SILSTEMは有用な手術手技であると考えられる.
症例
  • 大友 直樹, 酒井 朗子, 牧野 裕子, 上田 祐滋, 島尾 義也, 林 透
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2758-2762
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    肉芽腫性乳腺炎の3症例を報告する.症例1 23歳女性.2009年4月左乳房腫瘤に気付き近医受診,乳腺炎を疑われ抗生剤投与されるも改善せず当科紹介.針生検で肉芽腫性乳腺炎の診断.細菌は同定されずステロイド開始し軽快した.症例2 36歳女性.2011年12月右乳房の発赤,腫脹,疼痛あり当科紹介.細胞診で肉芽腫性乳腺炎の疑い.ステロイドは効果無く切開排膿と抗生剤投与で軽快.Corynebacteriumが検出された.症例3 36歳女性.2011年12月より右乳房痛および発熱.近医受診し乳腺炎の診断,抗生剤を投与されたが症状の改善なく,2012年1月当科紹介.切開ドレナージを施行した.細胞診では肉芽腫性乳腺炎が疑われ,Corynebacteriumが検出された.結節性紅斑を伴い治療に難渋した.
  • 柏木 伸一郎, 崎村 千恵, 川尻 成美, 高島 勉, 小野田 尚佳, 若狭 研一, 平川 弘聖
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2763-2767
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    乳房Paget病は乳癌細胞が乳頭もしくは乳輪の表皮内に進展したもので,乳頭や乳輪に発赤やびらんを生じることによって発見される.浸潤性腫瘤を形成する場合はPagetoid型として扱われ,浸潤性腫瘤を認めないPaget型と鑑別される.術前,Paget型との診断にて手術を施行し,永久標本にてリンパ節転移が高率なPagetoid型と診断に至るケースも存在する.Pagetoid型はPaget型と類似した皮膚所見を呈するものの,予後や治療方法が異なり,腋窩リンパ節転移の有無を的確に評価することが重要である.当科で経験した乳房Paget病5例を報告する.全症例で浸潤性腫瘤を認めなかったため,Paget型であると考えられた.手術ではセンチネルリンパ節生検を施行し,転移を認めなかった.Paget病の手術は,最初から腋窩リンパ節郭清を省略するのではなく,センチネルリンパ節生検を施行するのが妥当だと考えられた.
  • 山田 美保子, 加藤 岳人, 吉原 基, 平松 和洋, 柴田 佳久
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2768-2773
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    潜在性乳癌の2例を経験したので報告する.症例1は56歳女性,左頸部腫瘤の生検で乳癌のリンパ節転移と診断され紹介となった.触診や画像検査で両側乳腺に腫瘤を認めず他の原発巣も認めなかった.cT0cN3M1(LYM)cStageIVと診断し化学療法を施行した.症例2は43歳女性,PET-CTで右腋窩に高集積域を認め紹介,触診や画像検査で両側乳腺に腫瘤を認めず右腋窩腫瘤の針生検で乳癌の腋窩リンパ節転移と診断した.右胸筋温存乳房切除術+腋窩リンパ節郭清を施行した.摘出乳腺に腫瘍は認めず,病理診断はpT0pN2aM0pStageIIIAで術後補助化学療法,放射線照射を行った.ともに無再発生存中である.
    本症例を含む潜在性乳癌報告例の検討では,原発が乳腺であることの証明に免疫染色(CK7,CK20,GCDFP-15,mammaglobin)が有用で,乳房に対する治療では何らかの局所治療が必要と考えられる.
  • 二萬 英斗, 池田 英二, 吉富 誠二, 辻 尚志, 黒田 雅利, 賀島 肇
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2774-2777
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.甲状腺癌に対し甲状腺亜全摘術,気管前傍リンパ節郭清を行った.術後に呼吸苦と胸背部痛があり,胸部単純X線写真,胸部CTで縦隔気腫と診断した.術中気道損傷を疑い同日再手術を行ったが,明らかな気漏部位は認めず,開放式ドレーンからの吸込みによる縦隔気腫と診断した.ドレーンを閉鎖式持続吸引ドレーンに入れ換えたところ,自覚症状,画像所見ともに速やかに改善した.
    甲状腺手術後に開放式ドレーンからの吸込みによる縦隔気腫が稀に生じる.特に郭清操作が縦隔内まで及んだ症例ではより吸込みによる縦隔気腫を起こしやすいと思われる.逆行性感染により縦隔炎を合併したり,緊張性縦隔気腫を呈したりすると致死的になり得る合併症であり,このような症例では閉鎖式持続吸引ドレーンが縦隔気腫の予防に適しており有用と考えられた.
  • 天願 俊穂, 中須 昭雄, 村上 隆啓, 安元 浩, 八幡 浩信, 本竹 秀光
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2778-2781
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,男性.道路横断中にはねられ受傷し当院救急センターに搬送された.受診時はショックバイタルで意識障害を伴っていた.精査にて頭蓋骨骨折,下顎骨骨折,胸椎横突起骨折,多発肋骨骨折,胸部大動脈損傷,両側肺挫傷,右気胸,肝損傷,腹腔内出血,骨盤骨折を認めた.造影CTにて恥骨後面に造影剤の漏出像認めたため経カテーテル動脈塞栓術を行った.同時に大動脈損傷に対するステントグラフト留置術も施行した.術後,脳の高次機能障害は残存したが歩行できるまで回復し,さらなるリハビリテーション行うために転院した.術後,約6カ月後の胸部造影CT検査にてステント留置部位の異常は認めておらず脳損傷や肺挫傷,骨盤骨折を合併した大動脈損傷の治療法として有用であることが示唆された.
  • 笠島 裕明, 岩崎 輝夫, 藤井 眞, 森本 芳和, 弓場 健義, 山崎 芳郎
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2782-2786
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.65歳より多系統萎縮症(multiple system atrophy:以下MSA)と診断され通院加療中.2009年2月直腸癌に対してHartmann手術を施行し経過観察中,右肺S3転移性肺腫瘍に対して,2011年4月肺部分切除術を施行した.術直後に気管内チューブを抜管したが,術翌日シーソー様呼吸と気道分泌物貯留のため呼吸不全に陥り再挿管を要した.術後3日目に再抜管したが同様の呼吸状態となり再々挿管を要し,術後9日目気管切開施行,術後20日目人工呼吸器離脱,術後109日目退院となったが,術後120日目自宅にて呼吸停止し死亡した.MSAはオリーブ・橋・小脳系,黒質-線条体系および自律神経系という多系統の障害が進行していく孤発性神経変性疾患で,種々の機序で呼吸障害をきたす恐れがある.検索しえた限りMSA患者に対する開胸術の報告は認めず,周術期管理上の注意点を中心に報告する.
  • 足立 洋心, 荒木 邦夫, 目次 裕之, 徳島 武
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2787-2790
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の女性.2007年7月左肺腺癌にて左肺S6区域切除施行,経過観察中(pT1aN0M0 stageIA).2011年7月CTにて左下葉S10に10mm大の結節陰影を認めた.悪性腫瘍を疑い,胸腔鏡下にて部分切除を行った.術中迅速診断にて悪性所見はなく,最終診断は肺クリプトコッカス症の診断であった.肺クリプトコッカス症は基礎疾患がなくても感染し,術前診断は血清クリプトコッカス抗原も陰性を示すことが多く困難と言われる.また孤立性ではさらに陽性率は低下すると言われ,今回の症例でも血清クリプトコッカス抗原は陰性であった.よって悪性を考慮した場合は今回のような診断的治療を兼ねた胸腔鏡手術は有用と考える.
  • 三賀森 学, 高見 康二, 大宮 英泰, 山村 順, 栗山 啓子, 児玉 良典, 中森 正二, 辻仲 利政
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2791-2795
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例:70歳,女性.乳癌術前の胸部CTで両肺の気腫性嚢胞性変化を認めた.全身麻酔下に乳房部分切除術を施行中に右気胸を発症した.1週間の持続胸腔ドレナージを行ったが気瘻が改善せず,手術の方針とした.胸腔鏡下に右S6からの気瘻を確認し,同部の肺部分切除術を施行した.ホルマリン固定後の切除標本割面の肉眼所見で胸膜直下に12mmの白色結節を認め,瘻孔を確認した.病理診断は扁平上皮癌で瘻孔部に腫瘍の胸膜露出を認めた(pl2).原発性肺癌(pT2a)と診断し,気胸手術の4週後に胸腔鏡下右下葉切除術を施行した.術後補助化学療法を施行したが,初回手術後7カ月で胸膜播種で再発し,11カ月で永眠された.気胸発症を初発症状とする,中年以降や肺の気腫性変化を有する患者では肺癌の合併を念頭に置く必要がある.
  • 西野 豪志, 片山 和久, 高橋 裕兒, 田中 隆
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2796-2802
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.胃癌に対し腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した.術後4日目の透視検査で吻合部に異常を認めなかったが,上部空腸の拡張を認めた.麻痺性イレウスと考え術後7日目まで絶食を継続し,排ガスを確認したのち経口摂取を開始した.ところが術後10日目より食後の嘔気を認め,腹部CTにて左側腹部のポートサイトに小腸の陥入と口側小腸の拡張を認めた.ポートサイトヘルニアによる腸閉塞と診断し緊急手術を施行した.ポート創を延長し皮下組織を剥離したところ,陥入した小腸を認め,漿膜面に虚血変化を認めたため切除した.術後経過は良好で再手術から14日目に軽快退院した.腹腔鏡補助下胃切除術後のポートサイトヘルニアは比較的まれであるが,対処が遅れると全身状態の悪化をきたす可能性のある重篤な合併症であるため,術後に腸閉塞を認めた場合,ポートサイトヘルニアの可能性を念頭に入れ,迅速に診断,治療を行うべきである.
  • 勝木 健文, 吉田 久美子, 小野田 雅彦, 古谷 彰, 河野 和明, 加藤 智栄
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2803-2807
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    特発性食道破裂は比較的稀で,縦隔炎や膿胸を合併し致死率が高いため早期診断と治療が重要な救急疾患である.症例は51歳の男性.基礎疾患としてアルコール性肝硬変あり.大腸内視鏡検査の前処置として自宅でポリエチレングリコール(PEG)を服用後,嘔吐と胸痛,吐血をきたし当院へ救急搬送.CT・食道造影で縦隔気腫を伴う食道破裂と診断し,発症後10時間で緊急手術を開始した.血性胸水と胸部下部食道左側壁の約2cm大の破裂孔を認め,縫合閉鎖と縦隔胸腔ドレナージを行った.術後4日間の人工呼吸管理を要し,またDICを併発したが,その後は経過良好だった.術後食道造影では縫合不全や狭窄を認めず,術後第23病日に独歩退院となった.PEG服用後の特発性食道破裂は本邦で2例の報告しかないが,PEG服用の際に嘔吐することがあるため,特に合併症を有する場合は内服速度に注意する必要があり,また自宅での服用は避けるべきと考えられた.
  • 木内 亮太, 高木 正和, 渡辺 昌也, 大端 考, 大場 範行, 伊関 丈治
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2808-2812
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.2005年5月,食道癌に対して内視鏡下粘膜下剥離術を施行した.病理結果は中分化型扁平上皮癌,1.0×0.7cm,pSM1 200μm,pHM0,pVM0,ly1,v1であったため放射線化学療法を施行した.その後2007年12月の上部消化管内視鏡検査で内視鏡下粘膜下剥離術を施行した局所に所見はなかったが,胃噴門部に2型病変を指摘し,生検で扁平上皮癌を認めた.その他画像検査で他臓器やリンパ節転移は認めず,食道癌治療後異時性胃壁内転移と診断し噴門側胃切除術を施行した.術後病理学検査では粘膜下を主座とした中分化型扁平上皮癌でly1,v2の脈管浸潤を認めたことから脈管経由による食道癌胃壁内転移と診断した.食道癌異時性胃壁内転移は稀であり文献的考察を加えて報告する.
  • 古北 由仁, 森本 雅美, 後藤 正和, 山本 洋太, 武知 浩和, 丹黒 章
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2813-2818
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代,男性.背部痛と季肋部痛の精査加療目的に紹介となった.上部消化管造影検査では胃穹窿部は腹腔内に存在していたが,胃体部から幽門前庭部までは縦隔内に脱出し間膜軸性捻転をきたしていた.またCTでは横行結腸の縦隔内への脱出も認めた.以上より,upside down stomachと横行結腸脱出を伴う食道裂孔ヘルニアと診断し,腹腔鏡下手術を行った.懸念していた横行結腸は腹腔内に存在しており,胃を腹腔内に還納し,開大した食道裂孔を縫縮閉鎖した後にNissen噴門形成術を施行した.臓器の牽引や剥離に難渋したが,腹腔鏡下に完遂しえた.第8病日に軽快退院となり,術後2年3カ月が経過した現在,再発は認めていない.本邦における本疾患に対する腹腔鏡下手術の報告は少なく,その低侵襲性や治療効果は担保されていたが,手術難易度からも内視鏡外科手術に精通した医師が施行することが望ましいと考えられた.
  • 武山 大輔, 石山 智敏, 神宮 彰, 松本 秀一, 高須 直樹, 鈴木 知信
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2819-2824
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡補助下胃切除,Roux-en-Y再建(結腸前経路)術後に生じた内ヘルニアの3手術例を経験したので報告する.症例1:65歳,男性.胃癌,直腸癌に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除および高位前方切除術後,2年7カ月目に腹痛を主訴に入院.Petersen間隙をヘルニア門として小腸が陥入する内ヘルニアだった.症例2:77歳,女性.胃癌に対して腹腔鏡補助下胃全摘術後,1年5カ月目に腹痛を主訴に入院.Y脚吻合部背側の腸間膜間隙に小腸が陥入する内ヘルニアだった.症例3:64歳,男性.胃癌に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除術後,3年3カ月目に腹痛を主訴に入院.Y脚吻合部背側の腸間膜間隙に小腸が陥入する内ヘルニアだった.これら3例はいずれも腸管壊死を伴わず,ヘルニア整復およびヘルニア門閉鎖術を行った.内ヘルニアの予防に腸間膜間隙の閉鎖が必要と考えられた.
  • 白井 順也, 國崎 主税, 長谷川 慎一, 大島 貴, 利野 靖, 益田 宗孝
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2825-2829
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.胃癌の診断で当科紹介となり,平成18年11月,開腹幽門側胃切除(D2郭清),Roux-en-Y再建術を施行した.病理組織結果ではT3,N0,H0,P0,M0 pStage II(第13版)であり,術後補助化学療法としてS-1(100mg/day)を1年間投与した.平成20年2月,平成22年9月に急性膵炎の診断で入院,保存的に軽快した.平成23年9月5日,腹痛を主訴に来院し急性膵炎の診断で入院となった.腹部CT検査で膵の腫大と周囲脂肪織濃度上昇,またY脚の拡張を認めた.小腸内視鏡検査でY脚吻合部に高度の狭窄を認めたため,ドレナージを行い,急性膵炎に対する加療後にY脚吻合部のバルーン拡張術を行った.Y脚内には結石を認め,排石した.経過は良好で軽快退院となった.今回われわれは,Y脚吻合部狭窄に起因すると考えられる輸入脚症候群,急性膵炎を発症した1例を経験したので報告する.
  • 砂川 真輝, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 前田 敦行, 高山 祐一
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2830-2834
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は91歳女性,心窩部痛を主訴に救急外来を受診した.腹部CTで胃前庭部に全周性の壁肥厚,腹腔内遊離ガス像と肝表面に腹水を認めた.胃癌穿孔と診断し緊急手術を施行した.術中所見で胃体中部の胃壁が穿孔しており,穿孔部の周囲はびまん性に硬化を認めた.幽門側胃切除術,D1郭清,BillrothII法再建を施行した.病理学的診断は胃悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)であった.胃大弯側リンパ節に2個転移を認めたが遠隔転移や腹膜播種を認めず,Lugano国際分類でII1E期であった.術後化学療法は施行しなかった.術後8カ月の現在無再発生存中である.
    胃悪性リンパ腫による自然穿孔はまれであるため,報告した.
  • 宮坂 大介, 山口 晃司, 菊地 健司, 松永 明宏, 神田 誠, 江平 宣起
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2835-2840
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.平成22年5月に当院婦人科で子宮体癌(漿液性腺癌)に対する手術が行われたが,癌性腹膜炎の状態であり,手術進行期分類FIGO(2008)stage IVBの子宮体癌と診断された.その後,化学療法の後,腫瘍マーカー(CA125)が正常化したため,腫瘍減量手術としての開腹子宮,両側付属器切除,後腹膜リンパ節郭清術が行われ,肉眼的遺残病変を認めない状態となり,術後化学療法が行われたが,腫瘍マーカー(CA125)の再上昇およびFDG-PETで上腹部に異常集積を指摘され,平成23年3月当科紹介.上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部後壁に約2cm大の粘膜下腫瘍を認め,超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診で腺癌と診断.子宮体癌の転移性胃腫瘍を疑い,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.子宮体癌の転移性胃腫瘍に関する臨床報告例は極めて稀であり,文献的考察を含め報告する.
  • 山本 基, 小林 康人, 落合 実, 寺澤 宏, 水本 有紀, 坪田 ゆかり
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2841-2846
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    胃未分化癌とは,「病巣のどの部分にも腺癌や扁平上皮癌への分化を示さない癌」と定義される.症例は55歳,男性,上腹部痛および膨満感を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査では幽門前庭部に3型の腫瘍を認め,同部からの生検では低分化型腺癌(por)を認めた.また,腹部CT検査では腹壁への浸潤と多発性肝転移を認めた.入院後直ちにS-1/CDDPによる化学療法を開始したが,腫瘍からの出血が増悪したため,やむなく幽門側胃切除術・肝外側区域切除・腹壁部分切除術を施行した.術後7病日から異型細胞を含む血性腹水が生じて増加し,術後39病日にDICおよび肝腎不全にて死亡した.免疫組織学的検討ではCytokeratinが陽性であったが,AFP・CEA・EMA・MUC2・MUC5AC・MUC6・CD56・Synaptophysin・Chromogranin Aが陰性であり,最終的に胃未分化癌と診断した.
  • 工藤 泰崇, 十倉 知久, 西川 晋右, 高橋 賢一, 森田 隆幸
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2847-2851
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.食欲低下と胸苦を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で胃前庭部に3型腫瘍を認めたため当院へ紹介となった.白血球21,600/μl,血清G-CSF 277pg/mlと上昇しており,生検では扁平上皮癌であった.腹部造影CTで肝右葉に6cm大の肝転移を認めた.出血制御と経口摂取の維持を目的として,幽門側胃切除術(D1郭清)と胆嚢摘出術を施行した.病理検査では腺扁平上皮癌であり,免疫染色で抗G-CSF抗体陽性であったため,G-CSF産生胃腺扁平上皮癌と診断した.術後経過は良好であったが,患者の希望により化学療法は施行せず,術後7週間で死亡した.G-CSF産生胃癌は比較的まれな疾患であり,文献的考察を加え報告する.
  • 鈴木 隆, 山崎 有浩, 名波 竜規, 大嶋 陽幸, 島田 英昭, 金子 弘真
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2852-2856
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の男性,腹腔動脈を巻き込み大動脈周囲に一塊となった長径10cmの高度なリンパ節転移を伴う胃癌を認めた.cT3N3M1(LYM)Stage IV (胃癌取扱い規約第14版)と診断して治癒切除不能と判断した.延命治療としてS-1+CDDP化学療法を開始したところ,2コース終了時点で腫瘍の著明な縮小を認めた.化学療法6コース終了時点には治癒切除可能と判断されたためD2+No.16a2-b1リンパ節郭清を伴う胃全摘術を施行した.病理組織所見ではypT1b,ly0,v0,N0,Stage IAであった.高度な大動脈周囲リンパ節転移は予後不良因子のひとつであるが,S-1+CDDP療法によって治癒切除が可能となり,予後改善が期待できる症例もあると思われた.
  • 八木 浩一, 服部 正一, 坂東 道哉, 村田 祐二郎, 森 正樹, 佐藤 裕二
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2857-2862
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例1は78歳,女性.特発性正常圧水頭症に対して腰部クモ膜下腔腹腔シャント(以下LPS)を留置されていた.横行結腸癌術前に脳室心房シャント(以下VAS)へ変更し,その後拡大結腸右半切除術を施行した.症例2は93歳,男性.クモ膜下出血後の水頭症に対して脳室腹腔シャント(以下VPS)を留置されていたが,胃癌術前にVASに変更し,その後幽門側胃切除術を施行した.2症例とも合併症なく経過した.LPSおよびVPSはカテーテルが腹腔内へ露出しており,腹部外科手術に伴うシャント感染やシャント機能不全などの合併症が危惧される.消化管手術の前にVASへ変更することは,周術期のシャント管理法として有用であると考えられた.
  • 遠藤 芳克, 渡邉 貴紀, 甲斐 恭平, 佐藤 四三, 藤澤 真義
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2863-2868
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.心窩部不快感を主訴に近医受診,胃癌の診断のもと当科紹介となった.平成18年7月胃癌に対し幽門側胃切除術を施行,病理組織学的検査および免疫組織学的検査より診断はadenocarcinoma(pap>tub2)とneuroendocrine carcinomaの混在する腫瘍であった.TS-1内服による術後補助化学療法を行っていたが,高度の皮疹出現により中断,経過観察となっていた.術後2年11カ月目に行った定期検査での腹部CTにより孤発性肝転移を認め,肝以外の他臓器転移を認めないことから平成21年7月肝後区域+前背側区域切除術を行った.病理組織検査では初回切除標本はadenocarcinomaとneuroendocrine carcinomaの混在する腫瘍であったが,今回の肝転移巣にはadenocarcinomaの成分は認めずneuroendocrine carcinomaの成分のみが肝転移を起こしていた.原発巣切除から5年,肝切除術後3年経過した現在無再発生存中である.
  • 前田 健一, 國枝 克行, 河合 雅彦, 長尾 成敏, 田中 千弘, 種田 靖久, 岩田 仁
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2869-2873
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,女性.全身倦怠感を主訴に前医を受診し,Hb 5.4g/dlと貧血を指摘され,精査加療目的に当院紹介となった.腹部症状は特に認めなかった.造影CTにて,十二指腸内腔に40mm大の腫瘤を認め,上部消化管内視鏡検査にて,十二指腸球部より発生し,先端は十二指腸下行脚に及ぶ有茎性腫瘍を認めた.Brunner腺過形成・過誤腫・腺腫,脂肪腫などが疑われた.大きさより内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;以下EMRと略記)は困難と判断され,手術施行となった.手術は十二指腸球部から下行脚に切開を加え,腫瘍の基部で結紮切除した.病理組織学的検査でBrunner腺過誤腫と診断された.Brunner腺過誤腫はまれな疾患であるが,上部消化管出血の原因として考慮すべきである.
  • 宇治 誠人, 平松 和洋, 加藤 岳人, 柴田 佳久, 吉原 基
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2874-2879
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.慢性関節リウマチのためNon Steroidal Anti Inflammatory Drug(以下,NSAID)を常用していた.腹痛と嘔吐のため受診し,黒色吐物と貧血が見られ上部消化管内視鏡を行ったが明らかな出血源はなかった.CT検査で小腸閉塞を認めたため入院となったが,黒色便と貧血の進行があり,小腸出血と判断して試験開腹術を施行した.小腸全体に多発する節状の硬結を触知し,盲腸を切開して内視鏡を挿入すると回腸に全周性の膜様狭窄を認めた.内視鏡は通過しなかったが,排便があったことと小腸内に血液の貯留がないことから閉腹した.しかし腸閉塞が再燃し,再手術を施行した.空腸より内視鏡を挿入して全小腸内を観察した.空腸に高度狭窄が2箇所ありこれらを含めた小腸を部分切除した.本症例はNSAID長期使用による多発小腸狭窄症考えられ,術中内視鏡を用いることで小腸の大量切除を回避できた.
  • 多田 和裕, 上田 貴威, 草野 徹, 衛藤 剛, 猪股 雅史, 北野 正剛
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2880-2885
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    Crohn病の合併症として瘻孔形成はよく知られているが,腸管膀胱瘻はまれとされている.また,瘻孔内に腫瘍が発生する頻度はさらに低い.今回,Crohn病による回腸膀胱瘻に発生した瘻孔癌を経験したので報告する.症例は53歳,男性.28年前にCrohn病による腸閉塞症で小腸バイパス術施行.平成23年1月,腸閉塞症状を主訴に紹介医を受診.腹部CT検査で膀胱壁の肥厚と周囲腸管の癒着を認めた.膀胱鏡検査で内腔に突出する腫瘍を認め,生検で腺癌と診断.小腸癌による膀胱浸潤の診断で,回盲部切除術,膀胱部分切除術を施行.病理組織学的検査で,腫瘍は瘻孔腔から発生した瘻孔癌と診断した.Crohn病で長期間の瘻孔形成を認める症例は,瘻孔癌の発生も念頭に置き,注意深くfollow-upしていく必要があると考えられた.
  • 沼賀 有紀, 大矢 敏裕, 高橋 憲史, 清水 尚, 長谷川 剛, 竹吉 泉
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2886-2891
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,男性.検診で貧血を指摘され近医を受診し,精査目的に紹介された.血液検査で軽度の貧血以外に異常を認めなかった.下部消化管内視鏡検査で虫垂開口部にポリープを認めた.生検ではgroup 2であったが,ポリープの全体像が不明瞭で内視鏡的粘膜切除は困難と判断し,腹腔鏡下盲腸部分切除を施行した.摘出標本で腫瘍は虫垂開口部から盲腸内腔に脱出しており,大きさ15×10mmの有茎性ポリープであった.病理学的には異型のない粘膜の過形成と粘膜筋板の分枝が樹枝状に増殖した所見を認め,虫垂のPeutz-Jeghers型を呈したポリープと診断された.虫垂に発生したPeutz-Jeghers型を呈するポリープは非常にまれで,本邦では8例目の報告であり,色素沈着や家族歴を伴わない症例としては,本邦で4例目の報告である.
  • 木下 茂喜, 小林 成行
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2892-2897
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    胃結腸瘻をきたした大腸癌はまれである.今回われわれは胃結腸瘻をきたし,左横隔膜・肺浸潤をきたした横行結腸癌の1例を経験したので報告する.80歳男性,貧血にて精査目的に入院.GIFにて胃体上部大弯に潰瘍性病変を伴う粘膜下腫瘍を認めた.CFにて脾弯曲部に全周性の腫瘍を認め,生検にて高分化腺癌と診断された.胃透視・注腸にて胃結腸瘻をきたしていた.平成16年6月手術を施行.脾弯曲部の腫瘍は著明に壁外性に発育し,胃体上部大弯に浸潤し,さらに左横隔膜・左肺下葉に浸潤していた.左半結腸切除,胃部分切除,横隔膜および左肺合併切除を行いen blocに切除した.摘出標本では腫瘍径13×7.5cm大で,結腸と胃壁の間の瘻孔が確認された.病理組織検査では高分化腺癌で,胃・横隔膜・肺への直接浸潤を認めた.pSIN0cH0P0M0 fStage IIであった.再発の兆候はなかったが,術後8カ月で他病死された.
  • 大谷 剛, 西浦 文平, 石村 健, 若林 久男
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2898-2902
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性.上行結腸癌に対し右半結腸切除術(D3郭清)を施行した.病理検査で低分化型腺癌,se-a,ly3,v2,n2,StageIIIbであった.術後補助化学療法を施行したが,術後6カ月のCT検査で右腎門付近に径40mmのiso densityな腫瘤と近傍リンパ節腫脹,造影CTでlow to iso densityな腫瘍と腎静脈から下大静脈に連続する腫瘍栓を認めた.大腸癌の転移も否定はできなかったが,画像上は腎細胞癌の疑いで腎生検を行った.低分化な腺癌が浸潤増殖し,原発巣と類似していた.免疫染色でCDX2陽性,CK7陰性,CD10陰性であり,大腸癌の腎転移と診断された.抗癌剤治療を行うも,初回手術後1年4カ月,腎転移診断後10カ月で死亡した.大腸癌の腎転移は稀であり,IVC腫瘍栓を伴う腎転移の症例報告例は本症例が初例であり文献的考察を加え報告する.
  • 服部 正嗣, 禰宜田 政隆, 市川 俊介, 高木 大志, 神谷 勲
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2903-2906
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で,55歳時に胃癌に対して胃全摘・回結腸間置術を施行した.2カ月前からの食欲不振,嘔吐,体重減少を主訴に受診した.上部消化管内視鏡検査で間置回結腸十二指腸側に全周性の3型病変を認め,生検で腺癌と診断された.胸腹部CTで遠隔転移の所見を認めず,胃全摘回結腸間置再建術後の間置結腸癌と診断して手術を施行した.支配血管根部までの3群リンパ節郭清を伴う間置回結腸切除を行い,Roux-en-Y法で再建した.病理組織学的検査所見は乳頭腺癌・高分化管状腺癌で,大腸癌取扱い規約(第7版)に則るとpSEpN1sH0sP0cM0,fStage IIIAであった.術後補助化学療法としてoxaliplatin/5-fluorouracil/leucovorin(modified FOLFOX-6)を12コース施行してその後経過観察を行って継続しているが術後16カ月経過した現在再発を認めていない.
  • 齋藤 敬弘, 佐藤 佳宏, 大谷 聡, 小出 紀正, 伊東 藤男, 三浦 純一, 小野 伸高
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2907-2914
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.右下腹部の有痛性の腫瘤を主訴に当科受診した.初診時,右下腹部に手拳大の発赤を伴う腫瘤を認めた.CTで回盲部に巨大な腫瘍を認め,右下腹部に連続し腹壁に膿瘍を形成していた.Core needle biopsyにてmucious adenocarcinomaと診断した.盲腸癌または右卵巣原発腫瘍を疑い手術を施行した.腹腔内洗浄細胞診は陰性.肝転移,腹膜播種は認めなかった.腫瘍は,周囲臓器へ浸潤しており,右卵巣切除,子宮・膀胱部分切除,S状結腸部分切除を伴う右結腸切除・D2郭清を施行した.また腫瘍と連続した右下腹壁の膿瘍は,腹壁とともに合併切除した.病理診断にて,盲腸原発のmucinous adenocarcinomaと診断した.腹壁への浸潤は認めなかった.
    腹壁膿瘍と多臓器浸潤を伴った巨大な盲腸癌を,周囲臓器とともに切除しえた1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 山田 秀久, 矢野 智之
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2915-2919
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.2007年より当院血液内科で真性多血症の治療中であった.2010年,便潜血陽性に対して大腸内視鏡でS状結腸に隆起性病変を認めたため,内視鏡下に粘膜切除術を施行した.病理組織学的検査で粘膜下層への浸潤が認められたため,追加切除目的に当科紹介となった.術前はハイドロキシウレアの継続と合計900mlの瀉血によりHb 15%,Ht 50%にコントロールし,単孔式腹腔鏡補助下結腸切除術を施行した.術後は抗凝固薬フォンダパリヌクスナトリウムによる血栓塞栓症予防を行った.周術期に合併症は認めず,術後2年経過したが真性多血症の増悪や癌再発などは認めていない.真性多血症合併S状結腸癌に対して,術前術後の管理により安全に手術が可能であった.
  • 藤井 研介, 井上 善博, 朝隈 光弘, 宮本 好晴, 林 道廣, 内山 和久
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2920-2925
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.近医の腹部超音波検査で2011年2月に肝外門脈に瘤径40mmの門脈瘤を指摘されたが無症状であり,外来にて経過観察されていた.同年3月に行われた腹部超音波検査にて肝外門脈瘤は内部に血栓を伴わないものの径53mmと増大しており,門脈瘤完全切除術を施行した.門脈瘤は肝外,肝内の部分的な拡張を特徴とする稀な血管異常である.無症状であることが多く経過観察が基本とされているが,有症状,血栓形成例,経過観察中の増大例や進行した慢性肝疾患を基礎疾患とする症例では外科的治療の適応となると考えられる.また,進行した慢性肝疾患が併存する際には脾臓摘出術やシャント術を同時に施行することにより門脈血流の改善を図ることも考慮すべきである.
  • 澤崎 翔, 佐伯 博行, 藤澤 順, 松川 博史, 河野 尚美, 益田 宗孝
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2926-2930
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    術前に診断が困難であった肝硬化性血管腫の1切除例を経験したので報告する.症例は65歳女性.貧血および便潜血陽性を指摘され当院紹介となった.精査したところ上行結腸癌を認めた.また腹部CTで肝S6に4cm大の腫瘍を認め,単純で低吸収域であり,造影早期相で腫瘍の辺縁が濃染され,後期相でも腫瘤内部は造影されず辺縁のみが造影されていた.上行結腸癌の肝転移が疑われ,結腸右半切除および肝S6亜区域切除を施行した.病理組織学的検査で肝臓の腫瘍は内腔の狭小化した小血管が線維化を伴って増殖しており硬化性血管腫の診断となった.画像所見では,転移性肝癌,肝内胆管癌など乏血性の腫瘤との鑑別は困難で,確定診断には切除標本による病理学的診断が必要である.乏血性の肝腫瘤性病変の鑑別診断に肝硬化性血管腫も念頭に置く必要があると考えられた.
  • 棚橋 俊介, 安村 幹央, 木山 茂, 林 昌俊
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2931-2935
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.腹部膨満感を主訴に来院した.腹部CT検査で胆嚢結石と,胆道気腫を認めた.炎症所見はなく,肝胆道系酵素の上昇を認めた.胆嚢消化管瘻の合併が疑われる胆石症の診断で,腹腔鏡下手術を施行した.胆嚢底部と横行結腸との間に瘻孔を認めて,エンドカッターで瘻孔を閉鎖して胆嚢を摘出した.術後経過は良好であった.胆嚢消化管瘻に対する腹腔鏡下手術は,積極的に施行すべきと思われた.
  • 伊禮 俊充, 遠藤 俊治, 富永 春海, 畑中 信良, 吉川 幸伸, 上池 渉
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2936-2941
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.1カ月続く嘔気を主訴に当院救急外来受診.multi detector-row CT(MDCT)を含む画像診断で,胆嚢十二指腸瘻を誘因とした十二指腸,胃,回腸内結石による胆石イレウスと診断.MRIで総胆管結石も指摘された.保存的治療でイレウスの解除に至らず,入院後10日で一期的根治術を施行した(イレウス解除:十二指腸切開,回腸切開排石,胆嚢摘出,胆嚢十二指腸瘻閉鎖,総胆管切開截石術).胆石イレウスは胆石症の比較的稀な合併症であるが,自験例では,さらに複数の腸管内結石,総胆管結石も合併した複雑な病態を呈していた.しかし,術前の正確な画像診断のもと,すべての病態を一期的に根治しえた.術前診断が難しいとされてきた胆石イレウスは,画像診断の進歩により,併存疾患を含め正確な治療前診断が可能となり,イレウスの一因と念頭においたうえで,病態に即した適切な治療が必須の病態となっている.
  • 松川 秀, 山本 壮一郎, 三浦 弘子
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2942-2945
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.主訴は心窩部痛.慢性腎不全により6年の腹膜透析(以下,CAPD)を経て,その後10年間血液透析(以下HD)を導入されている.高熱,心窩部痛を認めて受診.CT,MRCPにて胆嚢壁肥厚と胆石,総胆管の拡張とともに総胆管結石が認められた.内視鏡的乳頭切開(以下,EST)を行い,総胆管結石採石を試みられたが,不可能と判断され,外科へ転科し,腹腔鏡下胆摘(以下,LC)+胆管切石術(以下,LCDL)を行った.CAPD既往患者に対するLCDLに関する報告はなく,手術に際しては,腹膜の肥厚や被嚢化により手術の難易度が上がるため,腹腔鏡下手術は敬遠されがちである.しかし,今回われわれは,CAPD既往のあるHD患者にLCDLを施行し,術後もとくに合併症なく経過したため,開腹でなくより低侵襲な腹腔鏡下での手技もCAPD既往のあるHD患者に対する術式の選択肢に加えてもよいと思われた.
  • 西村 充孝, 西平 友彦, 山岡 竜也, 井上 英信, 石川 順英, 廣瀬 哲朗
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2946-2950
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸で発症した膵十二指腸動脈瘤の1例を経験した.われわれが検索したところ,黄疸を伴う膵十二指腸動脈瘤の手術報告は1例であった.症例は62歳男性.腹痛と黄疸を主訴に受診.血液検査で総ビリルビン値が7.9mg/dlと上昇.MRCP,ERCで下部胆管が壁外性圧迫で狭窄し,ダイナミックCTで強く造影される約4×3cmの腫瘤性病変を認めた.3D CT angiographyで膵十二指腸動脈瘤による閉塞性黄疸と診断し,まずコイル塞栓術を試みたが膵十二指腸動脈の蛇行のためカニュレーションできず手術適応と考えた.画像所見を十分に検討し手術に臨んだが,動脈瘤への流入血管のすべてを把握できておらず,術中操作に難渋し術前に検討していた動脈瘤切開術を動脈瘤切除術に変更せざるを得なかった.腹部内臓血管の走行は複雑で,腹部内臓動脈瘤の手術は術中画像診断機器の積極的な活用も含めた十分な血管走行の把握が肝要と思われた.
  • 奥川 郁, 中野 且敬, 大坂 芳夫, 高橋 滋, 土屋 邦之, 迫 裕孝
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2951-2956
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.背部打撲後の腹痛で,救急受診した.腹部造影Computed Tomography (CT)で脾頭側とDouglas窩に少量の液体貯留あり腹腔内出血が疑われた.救急医が観察入院を勧めたが,患者が拒否し帰宅した.翌朝受診時には腹部所見異常なく,血液検査上貧血の進行を認めなかった.診察1時間後に急激な腹痛が生じ,脾損傷による腹腔内出血と診断された.貧血が進行し血圧が不安定なため,緊急脾摘術を施行した.摘出脾臓には脾門部損傷なく,下極に小さな被膜損傷を認めた.病理診断は脾リンパ管腫であった.脾臓の軽微な損傷のみで緊急開腹を要したのは,脾リンパ管腫であったためと考えられた.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 今枝 政喜, 橋本 瑞生, 小木曽 清二, 坂口 憲史, 石川 玲, 石坂 貴彦
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2957-2962
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    脾破裂をきたした脾原発悪性リンパ腫は,医学中央雑誌で検索した限りでは本症例が13例目である.症例は76歳,男性で,安静時に突然左側腹部痛が出現したため受診した.腹部造影CTで肝表面,脾周囲に液体貯留を認め,脾臓内部には最大径7cmの類円型腫瘤を認めた.腫瘤辺縁部には血管外漏出が示唆される高吸収域を認め,脾腫瘍の破裂による腹腔内出血と判断して,緊急IVRを行った.TAEを施行したが,検査所見,腹部所見からは止血が不十分であると判断して,翌日に緊急手術を行った.腹腔内には約2,500ccの血性腹水を認めた.脾上極の脾門部に被膜損傷と出血を認め,脾臓摘出術を施行した.腫瘍の割面は白色充実性腫瘍で,最大径は60mm,弾性硬であった.病理学的診断はnon-Hodgkin diffuse large B-cell lymphomaであった.術後経過は良好で,化学療法目的に転院し,術後15カ月無再発生存中である.脾臓内の悪性リンパ腫の増大により血管が破綻し血腫を形成し,血腫が増大したことで被膜が伸展され脾破裂が起こったと考えられる.
  • 小南 裕明, 押切 太郎, 田中 賢一, 川崎 健太郎, 藤野 泰宏, 富永 正寛
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2963-2968
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行後22カ月目に脾臓に限局する多発性腫瘍が出現し,確定診断に苦慮した1例を経験した.症例は81歳男性で,Rb直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行し,外来で経過観察中だった.1年6カ月後に撮影したCTで脾臓に低輝度陰影の存在を指摘された.腫瘍の急速増大傾向が見られたことなどから脾臓摘出術が施行された.画像検査上はサルコイドーシスが最も疑われていたが,最終病理診断はDiffuse large B cell lymphomaだった.脾臓に腫瘤陰影が出現した症例が悪性疾患の既往を有していた場合,サルコイドーシス,悪性リンパ腫に加えて脾転移の可能性も考慮する必要があり,画像検査のみでは確定診断に至らないことも多い.その際は診断と治療を兼ねた脾臓摘出術を迅速に施行することが治療方針決定の上でも重要であると考えられた.
  • 橋本 知実, 中川 国利, 高舘 達之, 深町 伸, 小林 照忠, 鈴木 幸正
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2969-2972
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は42歳女性で,3年前から臍部に腫瘤を触れ,2カ月前から疼痛も生じたため来院した.来院時,臍部に径2cm大で圧痛を伴う,表面平滑な弾性硬の腫瘤を触知した.なお腫瘤から出血や排膿はなく,疼痛は月経周期と一致しなかった.腹部CT検査や超音波検査では臍部に2.0×1.5cm大で内部不均一な腫瘤を認め,子宮左側に4cm大の嚢胞状構造を認めた.臍部子宮内膜症を疑い,腹腔内を検索するため最初に腹腔鏡検査を施行した.臍直下の腹壁に軽度の膨隆を認めたが,腸管や腹膜に異常所見は認めなかった.また左卵巣にチョコレート嚢腫を認めた.そこで腫瘤を含めて臍を切除し,臍形成術を施行した.病理組織検査では臍部子宮内膜症と診断された.生殖可能な女性における臍部腫瘤では,月経随伴性の疼痛や出血がなくても子宮内膜症は遭遇しうる疾患である.今回の症例では腹腔鏡検査は有用であった.
  • 山本 誠士, 奥田 準二, 田中 慶太朗, 近藤 圭策, 鱒渕 真介, 芥川 寛, 江頭 由太郎, 内山 和久
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2973-2977
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,女性.他院にて回腸末端から盲腸にかけての壁肥厚を伴う腸閉塞を指摘されたが,同院でのDouble balloon内視鏡検査では異常所見を指摘されなかった.退院後,症状が再燃したため,当院紹介となった.イレウス管での減圧処置後,小腸造影を施行し,回腸末端から盲腸にかけて狭窄を認めたため,手術目的に外科紹介となった.回腸末端から盲腸にかけて炎症性に壁肥厚を認めたため腹腔鏡下にリンパ節郭清を伴う回盲部切除術を施行した.病理組織学的診断では回腸から盲腸にかけて,粘膜下層から漿膜下層に異所性子宮内膜の増生を認め,所属リンパ節(#201)にも同様の子宮内膜組を認めた.今回,腸閉塞を契機に発見されたリンパ節病変を伴う回盲部腸管子宮内膜症に対して,腹腔鏡下に回盲部切除術を施行し,良好な結果が得られた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 鈴木 哲太郎, 早稲田 正博, 三浦 康誠, 高坂 佳宏, 松本 匡史, 石田 康男
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2978-2982
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    後腹膜線維症は後腹膜結合織に炎症細胞浸潤と線維性増殖を生じ,IgG4との関連から一部に自己免疫の関与も示唆されている.今回,診断確定に腹腔鏡下生検が有用であった2例を経験したので報告する.症例1:66歳,男性.乏尿の精査で,CT上,腹部大動脈下部から両側総腸骨動脈周囲に広がる軟部陰影と両側水腎症を認め,後腹膜線維症が疑われたが,IgG4は正常範囲内であったので生検した.症例2:70歳,男性.前立腺癌疑いの精査中,CT上,右水腎症と右総腸骨動脈,右内腸骨動脈周囲に軟部陰影を認め,IgG4高値から後腹膜線維症が疑われたが前立腺癌の転移の可能性も否定できないため生検した.両症例とも病変部が主要な血管の近傍に存在し,CTガイド下針生検は血管損傷のリスクが高く困難であったので,腹腔鏡下に生検し特発性後腹膜線維症と診断できた.腹腔鏡下生検は安全かつ低侵襲で行える方法として有用であると考えられた.
  • 平賀 理佐子, 小出 直彦, 小松 大介, 宮川 眞一
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2983-2988
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.腹部腫瘤を主訴に来院した.腹部CTでは大動脈分岐部後腹膜に直径13cmの境界明瞭で内部不均一な腫瘍を指摘された.MRIでは充実成分と嚢胞成分が混在した辺縁平滑な腫瘍であった.FDG-PETでは腫瘍に一致してSUV max 8.5の高集積を認め,delayed phaseでも9.5の強い集積が持続した.後腹膜腫瘍の診断のもと手術を施行した.後腹膜に存在する境界明瞭で弾性軟な腫瘍で,小腸や結腸との連続性は認められなかった.切除標本の腫瘍サイズは12.5×10.5×8.5cmで,割面は黄色調で,嚢胞形成を認めた.病理組織検査,免疫染色より後腹膜神経鞘腫と診断された.本例はFDG-PET高集積を示した神経鞘腫で,PET所見が記載された本邦報告の後腹膜神経鞘腫9例のPET所見の考察を加えて報告した.
  • 大本 智勝, 遠藤 俊吾, 日高 英二, 石田 文生, 田中 淳一, 工藤 進英, 尾松 睦子
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2989-2993
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.左側腹部痛を主訴に前医を受診し,同部に腫瘤を指摘され紹介となった.初診時に左下腹部に圧痛を伴う可動性不良な腫瘤を触知した.血液生化学検査では炎症反応の上昇と軽度貧血を認めた.CTでは下行結腸背側に手拳大の腫瘍を認め,内部は均一で一部に石灰化を伴っていた.MRIではT1強調・T2強調像で腫瘍は不均一な高信号を示した.後腹膜腫瘍と診断し,下行結腸と一塊に腫瘍を切除した.腫瘍は10.5×7.0×7.0cm,割面は充実性で白色調の部位と黄色調の部位が混在していた.病理組織学検査では紡錘形細胞が車軸状に増殖する像を認め,悪性線維組織球腫に類似した所見であった.CDK4およびMDM2が陽性で,腫瘍内には骨肉腫と平滑筋肉種の成分も認め,骨肉腫と平滑筋肉腫への分化を示す脱分極型脂肪肉腫と診断した.
  • 甲賀 淳史, 山下 公裕, 矢島 澄鎮, 奥村 拓也, 鈴木 憲次, 川辺 昭浩
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2994-2998
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.慢性腎不全にて透析中.2009年頃より左鼠径部膨隆を自覚し,徐々に増大した.2011年2月某日腹痛・嘔吐を自覚.翌日ヘルニア嵌頓の診断にて当科へ紹介となった.左鼠径部は小児頭大に腫脹し発赤していた.CTにて左陰嚢内に嵌頓する腸管およびfree airを認め左鼠径ヘルニア嵌頓・陰嚢内腸管破裂と診断,緊急手術を行った.回盲部およびS状結腸が入り込み嵌頓し,回盲部の腸管が壊死し穿孔していた.回盲部切除を行った後,McVay法にて鼠径ヘルニア根治術を施行し,回腸人工肛門を造設した.術後人工呼吸器管理下にエンドトキシン吸着療法および持続的血液濾過透析を要した.術後59日目に退院した.巨大鼠径ヘルニアにおいてはヘルニア内容が嵌頓・絞扼を起こし緊急手術・腸切除を行った報告も散見される.回盲部が左側に脱出し,S状結腸と併せて陰嚢内に入り込み嵌頓したという症例は極めてまれであると考えられた.
  • 大和田 洋平, 松尾 亮太, 池田 治, 田野井 智倫, 大河内 信弘
    2012 年 73 巻 11 号 p. 2999-3002
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.左鼠径ヘルニアに対して他院でMesh plug法によるヘルニア修復術が施行されたが術後より腸骨鼠径神経領域の神経因性疼痛が出現した.保存的治療を行ったが6カ月経過しても疼痛は改善せず,当院を受診した.ヘルニア再発も認めヘルニア修復術と併せて神経因性疼痛に対する腸骨鼠径神経摘出術を施行した.術前に認められた神経因性疼痛は術後速やかに消失し患者のQOLは著しく改善した.近年,鼠径ヘルニアに対するメッシュ手術の普及に伴いメッシュ周囲の炎症・瘢痕化による神経のentrapmentによる神経因性疼痛が問題となりしばしば患者のQOL低下の原因となることがわかってきた.保存的治療で軽快しない場合に神経摘出など外科治療が奏効することがある.今回われわれは前方到達法によるヘルニア術後の神経因性疼痛に対して腸骨鼠径神経摘出術を施行し良好な経過を得たので報告する.
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