社会学評論
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60 巻 , 2 号
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投稿論文
  • 小宮 友根
    2009 年 60 巻 2 号 p. 192-208
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    J. バトラーの理論は社会学にとってどのような意義をもっているだろうか.本稿では「パフォーマティヴとしてのジェンダー」という考え方の検討をとおして,この問いに1つの答を与える.
    はじめに,パフォーマティヴィティ概念がJ. デリダの「反覆可能性」概念に接続されていることの問題点を指摘する.1つは,「行為をとおした構築」という主張の内実が不明確なままにとどまっていること.もう1つは,それゆえ「攪乱」という戦略が採用されるべきであるという主張にも十分な根拠が与えられていないことである.
    だが,バトラーがなぜ「社会的に構築された性差」という意味でのジェンダー概念を批判していたかに注目するなら,パフォーマティヴィティ概念についての異なった解釈を導き出すことができる.ここでは,人間の行為を因果的に説明する議論のもつ限界の外で「性別の社会性」を論じることの重要性を考察することからその作業をおこなう.
    そのうえで,私たちが言語による記述のもとで行為を理解していることと,私たちが多様なアイデンティティをもつことの論理的関係へと目を向けるものとしてパフォーマティヴィティ概念を解釈するなら,その内実は経験的にあきらかにしていくことができるものになり,それゆえ社会学にとって重要な課題を示唆するものになることを論じる.
  • 高橋 章子
    2009 年 60 巻 2 号 p. 209-224
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    主に英米圏において従来É. デュルケムは,社会秩序を,集団の価値観や信念が個人を拘束することで成立すると,論じたのだとみなされてきた.だが近年,これとは異なる解釈が提出されている.H. ガーフィンケルは,人々が互いに相互行為に参加することによって秩序が形成されるという見方を,デュルケムも採っていたと考えている.ガーフィンケルによって着目されたデュルケムのこのような側面とはどのようなものなのだろうか.本稿は,ガーフィンケルの提起を受け,これまで構造主義,客観主義の代表とみなされてきたデュルケムのうちに存在している,相互行為論との接点を示すことを目的としている.そのために『社会分業論』を中心に,デュルケムがどのような状態を秩序とみなしたかを検証した.デュルケムは,社会を個々人が相互に自由に形成するものと捉えていた.デュルケムのこの見方には,J.-J. ルソーからの影響が認められる.他方,現在でもデュルケム解釈に大きな影響を与えているT. パーソンズは,これとは別の社会形成の論理に則っているため,これまでデュルケムのこの側面に焦点があてられてこなかった.本稿は,T. ホッブズ「秩序問題」との関係を軸として,2つの社会形成の論理を比較することによって,ルソーから影響を受けたデュルケムの社会形成の論理が,根本的な点でガーフィンケルの相互行為論と共通性をもっていることを論じている.
  • 立道 信吾
    2009 年 60 巻 2 号 p. 225-241
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    企業の人事部長と労働者を対象としたアンケート調査の結果,両者の成果主義導入に関する認識にはミスマッチがあることがわかった.労働者の認識に基づいて4つの類型を設定し,モラールに与える影響について分析した結果,労働者が成果主義の導入を認識している場合,モラールが高まっていることがわかった.だが,生産性との関係をみると,実際に成果主義が導入されている企業でのみ,生産性が向上しており,モラール以外の要因が生産性に影響を与えていることが示唆された.労働者は,賃金の絶対額,昇進・昇格の早期化という2つの変数によって自社における成果主義の導入状況を認識していたことから,この2つの要因が,労働者の生産性を上げる可能性があることが分析結果から示唆された.
  • 岡田 章子
    2009 年 60 巻 2 号 p. 242-258
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,『女学雑誌』の文学を,キリスト教改良主義による女性と文学の新しい関係性という観点から捉え,その新しい関係性が,後の『文学界』における文学の自律性を求める動きにおいて,どのような意義をもっていたのか,を検討するものである.
    『女学雑誌』の文学志向は,当時の英米の女性雑誌に影響されたものであり,同時にそれは,明治20年代における「社会のための文学」という潮流において好意的に捉えられ,女性に向けて新しい小説を書く女性作家の登場を促した.彼女たちは,あるいは口語自叙体の小説によって女性の内面を語り,あるいは平易な言文一致体によって海外小説を翻訳するなど,独自の成果を生み出した.しかし,キリスト教改良主義の社会運動や道徳に縛られた文学は,やがて文学の自律性を求める『文学界』の離反を招き,「社会のための文学」ではなく,文学の自律性,ひいては社会における文学の独自の意義が追求されることになった.しかし,こうしたブルデューの定義するような「文学場」の構築を求める動きは,『女学雑誌』との断絶よりも,むしろ共通する「社会にとって文学とは何か」の問いを前提にしたものであり,しかも,樋口一葉という女性作家の,女性の問題のまなざしにおいて成立したという意味で,『女学雑誌』は日本の近代文学の成立において,従来論じられてきた以上に不可欠な役割を担っていた,といえるのである.
  • 白波瀬 佐和子, 竹内 俊子
    2009 年 60 巻 2 号 p. 259-278
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,人口高齢化と経済格差の関係について,マクロな経済状況とも関連させて,3時点の時系列比較を通して検討することにある.ここでの論点は3つある.第1に,1980年代半ば以降の所得格差の変化に対する評価についてであり,第2に,所得格差の変化と人口高齢化について,そして第3に暮らし向き意識に着目して,実態と意識の乖離を考察する.
    本分析で用いるデータは,1986年,1995年,2004年の3時点の「国民生活基礎調査所得票」(厚生労働省)である.これら3時点は,バブル経済突入時,バブル経済崩壊後「失われた10年」の最中,そして平成不況後に対応する.第1の分析については,80年代半ば以降,変化の程度は最近小さくなっているものの,2000年代半ばまで所得格差は拡大したと確認された.第2に,所得格差拡大の要因を「年齢階層内効果」「人口構造効果」「年齢階層間効果」に分解して,それぞれ2時点比較を行った結果,90年代から2000年代半ばにかけて,80年代半ばから90年代半ばと同様に,格差拡大の多くを人口構造効果によって説明できることが確認された.
    最後に,近年,全体として暮らし向き意識は悪化しているが,意識の規定構造そのものは1980年代以降大きな変化はない.一方,働き盛りの40代層,50代層で,実態以上に生活の苦しさ意識の上昇がめだった.
  • 石田 光規
    2009 年 60 巻 2 号 p. 279-296
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    転職におけるネットワークの効果に関する研究は,情報伝達や影響力の発揮などを通じて諸個人に地位上昇や所得増加の機会をもたらす「地位達成効果」の検討を中心としてきた.しかし,諸個人の職業キャリアにはさまざまな局面が存在する.その中には倒産やリストラなどの不測の事態に遭遇し,キャリアの立て直しを余儀なくされている人もいるはずである.このような人々にとっては,良い機会を手に入れて高い地位に到達することよりも,不安定雇用を回避することが重要になるだろう.本稿では,倒産やリストラなどの不測の事態に遭遇した人々の不安定雇用の回避に寄与するネットワークの効果を「セーフティネット効果」とし,転職のさいに用いられるネットワークの地位達成効果とセーフティネット効果に注目して分析を行った.なお,前者の分析では職業威信スコアを,後者の分析では従業上の地位(非正規雇用か否か)を従属変数として用いている.
    分析の結果,転職のさいに用いられるネットワークは,リストラや倒産といった会社の都合により非自発的に離職せざるをえなかった人々の不安定雇用の回避に寄与するセーフティネット効果を示し,その中心は血縁関係が担っていた.一方,諸個人の地位上昇に寄与する地位達成効果は見られなかった.したがって,現在の日本において転職のさいに用いられるネットワークは,地位達成効果よりもむしろ,セーフティネットの効果を有していると言えよう.
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