社会学評論
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68 巻, 1 号
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日本社会学会会長講演
特集号・社会学と構築主義の現在
  • 木戸 功, 中河 伸俊
    2017 年 68 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー
  • 定義問題からの離脱と研究関心の共有
    松木 洋人
    2017 年 68 巻 1 号 p. 25-37
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    日本の家族社会学における構築主義的アプローチは, 近代家族をモデルとして家族を定義する核家族論的な研究枠組みの刷新が求められるという学説史的文脈のなかで受容された. その結果として, 構築主義的アプローチへの期待は, このアプローチが人々は家族をどのように定義しているのかに目を向けることによって, 「家族とは何か」を問うという点に寄せられることになった. しかし, 人々による家族の定義を分析の対象とする初期の研究例は, その文脈依存的な多様性を明らかにするものではあっても, 新たにどのような家族の定義が可能なのかを提示したり, 「家族とは何か」という問いに答えを与えたりするものにはなりえなかった. また, これらの研究が, 人々が家族を定義するために用いるレトリックに焦点を当てたことは, 多くの家族社会学者の研究関心との乖離をもたらすことになった. このため, 家族社会学においては, 構築主義的アプローチによる経験的研究の蓄積が進まず, アプローチの空疎化が生じた. このような状況から脱却するためには, 家族の定義ではなく, 人々の家族生活における経験に注目すること, そして, 家族の変動という家族社会学のいわば根本問題と結びつくことによって, 構築主義的アプローチが家族社会学的な関心を共有した研究を展開することが重要になる.

  • 「言説」と「現実」をめぐる攻防
    北澤 毅
    2017 年 68 巻 1 号 p. 38-54
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は, 教育社会学領域における構築主義研究の展開をレビューするとともに, 今後の課題を論じることである. そのためにまずは, 本稿における構築主義に対するスタンスを明らかにした. 簡潔に述べるなら, OG批判を受けて, 言説実践は実在するが, 言説が想定する社会問題の実在性は問わないという方法的立場を採用した. それを受けて「実在/構築」という分類軸を設定し, 教育社会学領域における構築主義研究の特徴と課題を浮き彫りにすることを目指した.

    まずは構築主義前史として, 山村賢明と徳岡秀雄の研究に着目し, それらがどのような意味で構築主義の前史として位置づくかを論じた. そのうえで, 1980年代から始まる教育社会学領域における構築主義研究の系譜を, 教育問題の構築過程の研究と教育問題言説研究とに大別し, それぞれの研究系譜を「実在/構築」という軸から論じた. なかでも, 教育問題言説研究を, 言説とは別に状態の実在性を想定する「言説批判分析」と, 言説が現実を作り出すという言語論的転回以降の言説観に基づく「言説分析」とに峻別し, それぞれの特徴を論じることに力点をおいた. それを受けて最後に, 言説が現実を作るというテーゼは, 構築主義が研究対象とする日常生活世界に適用されるだけでなく, 構築主義研究それ自体にも当てはまることを強調し, 構築主義研究の発展のためには新たな分析概念の創出が不可欠であると論じた.

  • 相互影響関係と回収可能性
    濱西 栄司
    2017 年 68 巻 1 号 p. 55-69
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    本稿の課題は, 「社会運動」研究領域において, 構築主義的研究が何を明らかにし, いかなる貢献を果たし, そこにどのように受け入れられ位置づけられてきたのかを検討することにある――構築主義と社会運動研究の重なりをふまえ, 本稿では後者から前者への影響についても検討する.

    まず1節では, 検討の前段階として社会運動研究を, 方法論的に, 説明アプローチ (「社会運動」と同定された社会的事象の因果的メカニズムを説明するアプローチ) と解釈アプローチ (社会的事象の意義を「社会運動」を中心とした概念枠組みに基づいて解釈するアプローチ) に区分する. その上でまず2節では構築主義が, 初期資源動員論 (説明アプローチ) に影響を及ぼし, フレーミング論や特性分析を生み出してきたことを示す. また3節では構築主義が, 歴史的行為論 (解釈アプローチ) に影響を与え, 「特徴的な連帯」水準中心の解釈や社会問題/制度下の個人の経験分析を可能にしてきたことを指摘する.

    次に4節では, 構築主義が焦点をあてるとする「語りと相互行為という人々の不断の働きかけ」それ自体が「社会運動」と重なることをふまえ, 初期資源動員論 (説明アプローチ) が構築主義の方法論的明確化を, また経験の社会学 (解釈アプローチ) が構築主義の相対化・複数化をもたらしうることを示す. 最後に構築主義の, (広義の) 社会運動研究への回収可能性にも触れる.

  • 上野 加代子
    2017 年 68 巻 1 号 p. 70-86
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    福祉の領域における社会構築主義の研究は多様であるが, この領域に特有の姿勢を見て取ることができる. それは, 自分たちがクライエントを抑圧してきたという「自身の加害性の認識」と, 「研究結果の実践への反映」である. 本稿では, 福祉の領域に特有のこれらの姿勢に着目し, それに関連する文献を中心にレビューする. 具体的に, ひとつはソーシャルワーカーとクライエントを拘束しているドミナント・ストーリーをクライエントと共同で脱構築しようとするナラティヴ・アプローチの研究の流れである. 本稿で取り上げるもうひとつの構築主義的研究の流れは, ソーシャルワークが専門職として確立, 再確立される過程で, 「トラブルをもつ個人」がどのように創りあげられてきたのかを, 外在的に分析するものである. なお, 「自身の加害性の認識」という点は, 英語圏の文献には顕著であるが, 日本語の文献では弱い. そこで, 英語圏の文献をレビューした後, 日本における構築主義研究ではどうして「自身の加害性の認識」という観点が乏しいのかについて考察する. そして最後には, 近年の英語圏の文献では自身の加害性のみならず, 「被害者性」についても議論されていることを踏まえ, 自分自身の知識や実践に対する構築主義研究が, 「自分は加害者たることを強制された被害者だ」という自己弁護に陥る危険をはらみつつも, 社会制度変革へのコミットにつながることに触れておきたい.

  • ディスコース分析をめぐって
    佐藤 哲彦
    2017 年 68 巻 1 号 p. 87-101
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    本論文は逸脱研究における社会構築主義的分析の意義について2つの問いを経由して論じ, とくにディスコース分析を用いることで, 逸脱とそれを一部とするより大きな社会過程の記述が可能であるということを示したものである.

    問いの1つは, 逸脱の社会学の退潮という現状から, こんにちどのような形で社会学的な逸脱研究が可能かということである. この点についてはとくに1980年代以降の犯罪コントロールや刑罰と社会との関係の変化を踏まえ, 新刑罰学などで中心的に議論されている論点を参考にしつつ, 新たな社会状況とそれに巻き込まれる人びとの姿を記述する方法の必要性を論じた. もう1つの問いは, そのための記述方法として社会構築主義的方法がどのような意義をもつかということである. この点について本論文は, ‹語られたこと/語られなかったこと›の分割をどのように処理するかという最近の構築主義批判に応える形で, とくに語りの遂行性に着目した社会構築主義的な分析方法としてのディスコース分析の意義を, 覚醒剤使用者の告白を題材に論じた. そしてその告白が覚醒剤をめぐる社会状況と結びつけて理解可能であることを示した. 併せてディスコース分析の代表的な技法であるレパトワール分析の意義として, 個別性を超えた記述に接続可能であることを論じ, それを具体的に示すために企業逸脱とされる薬害問題を対象にディスコース分析を行うことで, その意義を明らかにした.

  • 昔から社会学者は「自己の構成」について語り続けているが一体どこが変わったのか?
    芦川 晋
    2017 年 68 巻 1 号 p. 102-117
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は, 現代社会を踏まえて社会構築主義が提示する「物語的な自己論」を吟味し, より実態に即した「物語的な自己論」の展開可能性を模索することにある. そのために, まず, シカゴ学派にはじまるアメリカ社会学における自己論の洗練過程を, G. H. ミード/H. ブルーマー (象徴的相互作用論), H. ベッカー (レイベリング理論), E. ゴッフマン (対面的相互作用論) の順で検討をする.

    その結果, まだこれらの議論には十分使い出があることが分かる. ミード/ブルーマーの他者の役割取得論は習慣形成論でもあった. レイベリング論になると, 役割に代わって「人格」概念が重視され, 習慣より「経歴」が問題になる. ゴッフマンの議論では, 相互行為過程における「人格」概念のもつ意義がより突き詰められ, 「経歴」や「生活誌」という概念を用いてパーソナル・アイデンティティを主題化し, すでに簡単な自己物語論を展開していた.

    ところが, J. グブリアムとJ. ホルスタインは自らが物語的な自己論を展開するにあたって, わざわざ振り返った前史の意義をまともに評価できていない. そのもっとも顕著な例は「自己」と「パーソナル・アイデンティティ」を区別できない点にある.

    そこで本稿では前史を踏まえたうえで, ゴッフマンのアイデアを継承するかたちで自己物語の記述を試みてきたM. H. グッディンの議論をも参照して, より精緻で現実に即した自己物語論の展開を試みる.

  • 赤川 学
    2017 年 68 巻 1 号 p. 118-133
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    本稿は, 構築主義アプローチに基づく社会問題の歴史社会学を発展させるための試論である. 以下の作業を行った.

    第1に, 佐藤雅浩『精神疾患言説の歴史社会学』 (佐藤2013) を取り上げ, それが構築主義的な「観念の歴史」と, スコッチポル流の比較歴史社会学を組み合わせた優れた業績であることを確認する.

    第2に, 保城広至が提案する歴史事象における因果関係の説明に関する3つの様式, すなわち (1) 「なぜ疑問」に答える因果説, (2) 理論の統合説, (3) 「なに疑問」に答える記述説を紹介した. 従来, ある言説やレトリックが発生, 流行, 維持, 消滅するプロセスとその条件を探求する社会問題の構築主義アプローチは (3) の記述説 (厚い記述) に該当すると考えられてきたが, 既存の研究をみるかぎりでも, 因果連関の説明を完全に放棄しているわけではないことを確認する.

    第3に, 過程構築の方法論に基づいて, 1990年代以降の少子化対策の比較歴史社会学を実践する. この結果, 雇用と収入安定が少子化対策に「効果あり」という結果の十分条件となることを確認した.

    第4に, 上記の比較歴史社会学における因果的説明の特性 (メリット, デメリット) を理解したうえで, 因果のメカニズムが十分に特定できないときには, クレイム申し立て活動や言説の連鎖や変化に着目する社会問題の自然史モデルが, 過程追跡の方法として有効であると主張した.

  • 小宮 友根
    2017 年 68 巻 1 号 p. 134-149
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は, 「概念分析の社会学」の立場から構築主義社会問題論を再解釈することである. 構築主義社会問題論は, OG問題を乗り越え, 経験的研究に取り組むだけの段階にあると言われて久しい. けれど, 「クレイム申し立て活動」を調べることが社会学方法論上どのような意義をもつのかについては, これまで決して十分に注意が払われてこなかったと本稿は考える.

    本稿はまず, OG問題をめぐる議論がもっぱら哲学的立場の選択をめぐるものであり, 「クレイム申し立て活動」の調査から引き出せる知見の身分に関するものではなかったことを指摘する. 次いで, 社会問題の構築主義のもともとの関心が, 犯罪や児童虐待といった問題を, 社会問題として研究するための方法にあったこと, そしてその関心の中に, 社会のメンバーが社会の状態を評価する仕方への着目が含まれていたことを確認する. その上で, 「概念分析の社会学」という方針が, そうした関心のもとで社会問題研究をおこなうための明確な方法論となることをあきらかにする.

    「概念分析の社会学」は, 私たちが何者で何をしているのかについて理解するために私たちが用いている概念を, 実践の記述をとおして解明しようとするものである. この観点からすれば, 構築主義社会問題論は, 「クレイム申し立て活動」をほかならぬ「社会問題」の訴えとして理解可能にするような人々の方法論に関する概念的探究として解釈することができるだろう.

第15 回日本社会学会奨励賞【著書の部】受賞者「自著を語る」
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