社会学評論
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63 巻, 4 号
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公募特集・ポピュラーカルチャーの社会学
  • 小川 博司, 栗田 宣義
    2013 年63 巻4 号 p. 478-486
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
  • 消費・身体・メディアを越えて
    小形 道正
    2013 年63 巻4 号 p. 487-502
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    現在ファッションに関する研究は, 複雑かつ多岐にわたる一方で, それら諸研究を綜合的な視座から論じる視点は, ほとんど提示されてこなかった. そこで本稿は, まずこれまでのファッション研究の方法論的視線を明らかにしたうえで, 今後の社会学的課題について検討を行う.
    本稿では, これまでのファッション研究が, <衣服と○○>という形式において3つの方法論的視線より論じられてきたことを明らかにする. この3つの方法論的視線とは, <衣服と消費>, <衣服と身体>, <衣服とメディア>という視点である.
    まず<衣服と消費>では, 2つの側面からファッションにおける流行現象について論じられてきた. しかし, 結果としてこれらの研究は, ファッションの分類学的研究へと収斂する. 次に<衣服と身体>のファッション研究では, 根源的な身体を想定し, 衣服を対象化する現象学的研究が存在する一方で, 衣服の歴史性を論じながら, 形式化された身体を発見する研究が存在する. 最後に<衣服とメディア>に準拠する視線では, ファッションにまつわる雑誌の役割と読者の様態が描写される.
    このように本稿では, まずファッション研究における3つの方法論的視線を明示する. そして, 今後のファッション研究における社会学的課題とは, 3つの方法論的視線を継承し, 綜合するだけではなく, <衣服と○○>という形式を越えて, 衣服それ自体の社会性とその変容を論じてゆくことであると提示する.
  • 記号・物質・記憶
    松井 広志
    2013 年63 巻4 号 p. 503-518
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    近年, デジタルメディアによるコンテンツ受容に関して, 「物質」の対概念としての「情報」そのものに近い消費のあり方が伺える. しかし, ポピュラーカルチャーの現場では, 物質的な「モノ」という形式での受容が依然として観察される. ここには「ポピュラーカルチャーにおけるモノをめぐる人々の活動」という論点が潜んでいる. 本稿の目的は, この受容の論理を多面的な視点から, しかも日常的な実感に即して読み解くことである. 本稿ではその動向の典型を, ポピュラーカルチャーのコンテンツを題材としたキャラクターグッズやフィギュア, 模型やモニュメントに見出し, これらを「モノとしてのポピュラーカルチャー」と理念的に定義したうえで, 3つの理論的枠組から捉えた.
    まず, 従来の主要な枠組であった消費社会論から「記号」としてのモノの消費について検討した. 次に, 空間的に存在するモノを捉える枠組として物質文化論に注目し, とくにモノ理論から「あるモノに固有の物質的な質感」を受容する側面を見出した. さらに, モノとしてのポピュラーカルチャーをめぐる時間的側面を, 集合的記憶論における「物的環境による記憶の想起」という枠組から捉えた. これらの総合的考察から浮かび上がった「モノとしてのポピュラーカルチャー」をめぐる人々の受容の論理は, 記号・物質・記憶のどれにも還元されず, 時間的・空間的に重層化した力学の総体であった.
  • ファッション, デザイン, アートの制作者のエスノグラフィー
    藤田 結子
    2013 年63 巻4 号 p. 519-535
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿は, 文化生産におけるナショナル・アイデンティティの構築について考察することを目的とする. 考察のため, 「欧米都市のアート・ワールドにおいて, どのような要因により『日本らしさ』の構築が促されているのか」という研究の問いを設定し, ファッション, インダストリアル・デザイン, 現代アートの各分野を対象に調査を行った. 調査方法にはマルチサイテッド・エスノグラフィーを用い, パリ, ロンドン, ニューヨーク, 東京などで参与観察とインタビューを実施した.
    調査の結果, 欧米都市のアート・ワールドでは異なる職業・役割をもつ人々を結びつける弱い紐帯が, さまざまな利益を生む活動に影響を及ぼしていた. しかし国境を越える人のフローが活発化し, アジア系のデザイナーやアーティストの活動が顕著になっている現在でも, バイヤーやコレクター, 記者・編集者など重要な判断や権力を行使する職業・役割においては, 白人が多数派を占めていた. この状況のもと, 白人性を「標準」とした価値観を基に, 日本出身のデザイナー, アーティストとその作品が本質的な「日本らしさ」と結びつけられていた.
    結論として, 制作者の「日本らしさ」への愛着によってナショナル・アイデンティティが再生産されているのではなく, アート・ワールドの職業・役割に見られる特徴的な人種関係と, その人種関係に基づく作者・作品への評価のあり方が「日本らしさ」の再構築を促していることが明らかになった.
  • ハイ=ポピュラー間分節の稀薄化
    小藪 明生, 山田 真茂留
    2013 年63 巻4 号 p. 536-551
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, ハイ・カルチャーとの関係性のもとで, ポピュラー・カルチャーの意味をあらためて問い直すことにある. ポピュラー・カルチャーがその内部で制度化や多様化を遂げると, そこから大衆的・対抗的な意味が剥落し, その結果, かつてのハイ・カルチャーのような様相を呈しがちになる. その一方, ハイ・カルチャーが制度的・市場的な力に乗って社会に浸透していくと, それは大衆受けするようになり, ポピュラー・カルチャー寄りの存在と化していく. こうして今日, この2つの間の境界はきわめて曖昧なものとなった.
    そしてそのハイ=ポピュラー間の分節の稀薄化は, 文化生産ならびに消費の現場では文化的雑食として立ち現れることになる. 本稿では, ミネソタ管弦楽団アーカイヴズの諸資料を用いて, オーケストラ芸術におけるクラシックとポピュラーの関係性を文化生産論的に抉り出すとともに, 社会生活基本調査 (総務省) のデータに直接当たり, 人々の文化的嗜好の現実に迫る作業を行った. これによりあらためて確認されたのは, 文化の生産の場でも消費の場でも雑食性が広く浸透しているという実態にほかならない. ただし文化的雑食と言っても, それは一枚岩的な現象ではけっしてない. 本稿最後では, ポピュラー・カルチャー研究の今後の課題の1つとして, 文化的雑食性の多彩な様相を比較社会学的に見極めていくことの重要性が示唆される.
投稿論文
  • 一般向け小児喘息診療ガイドライン作成過程の検討
    畠山 洋輔
    2013 年63 巻4 号 p. 552-568
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    現在, 一般的に, 「患者視点」に立った医療の提供が期待されているものの, 患者視点についての共通理解が成立しているとは言いがたい. 本稿は, 患者参加によって患者の視点を実現したとされる取り組みの重要性と問題点について検討することを目的とする.
    そこで, 日本の小児喘息の一般向け診療ガイドライン (clinical practice guidelines: CPGs) の作成を事例とし, その過程に参加した作成委員12名全員にインタビューを行った. 本稿では, そこで得られたインタビュー・データと, その過程についての報告書とを用いて, 作成委員が語る患者視点とその視点をつくりだす過程とを考察する.
    作成されたCPGsは言葉がやさしくなり, 内容にも患者固有の経験が含まれているという点で患者視点が主張されていたが, 言葉をやさしくするだけなら医師もできる, また, 患者固有の経験とされた内容も医師委員が以前から知っている内容であったと語られた. そのようなCPGsになったのは, 患者・支援者委員の多様性を, 公募, 勉強会, 構成の検討, 執筆, 最終的なジャッジといった作成過程全体を通して縮減させたためであり, また, 医師委員の指導, 患者・支援者委員による医学的知識・エビデンス志向の内面化が行われていたためである.
    患者参加による患者視点の実現を目指す取り組みは, 患者に選択の機会を与え, 医療者の選択に患者が影響を与える可能性がある一方で, 医療者の主導性が巧妙に織り込まれる可能性が潜んでいる.
  • アメリカ在郷軍人会による西部戦線巡礼と「聖地」創出
    望戸 愛果
    2013 年63 巻4 号 p. 569-584
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    G. Mosseの歴史社会学的議論において, 戦間期における戦場観光旅行の流行は, 現実の戦争を矮小化する「戦争の平凡化」の過程として捉えられ, 従軍体験のある退役軍人はもっぱらその流行を嘆く反対者か, あるいはその流行に抗いがたく追随する消費者として描かれてきた. 一方で, このような議論においては, 戦争の記憶の大衆消費の拡大過程において退役軍人自身が果たす役割は等閑視されている.
    本稿では, アメリカ最大の退役軍人組織であるアメリカ在郷軍人会 (1919年創設) による, 戦間期における西部戦線巡礼事業の変遷を論じる. 在郷軍人会による巡礼者の選抜・募集方法, 旅行会社・船会社との契約関係のあり方, さらに実際に巡礼に参加した退役軍人の所感は, 報告書, 書簡, 機関誌, 議事録等の一次資料から析出することができる. このような分析から明らかにされてくるのは, 従来の研究において想定されているように「平凡なるものの侵略から神聖なるものを防衛」せんとする退役軍人の守旧的態度ではない. むしろ, 船会社との独自契約によって生み出された利益構造を組織運営に取り込み, 大衆娯楽小説や観光ガイドブック上のイメージを退役軍人向けに巧みに加工・流用し, ついには戦場・墓地巡りに特有のものであったはずの巡礼の「神聖性」の定義までをも大幅に変化させていく最大退役軍人組織の戦略的事業展開なのである.
  • 2つの側面による測定の可能性
    脇田 彩
    2013 年63 巻4 号 p. 585-601
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 日本社会における女性の階層再生産の概要を, 実証的に記述することである.
    女性を階層研究の対象とする際, 階層的地位には2つの区別すべき側面, すなわち個人単位の地位と, 世帯の生活水準があることが明らかになる. しかしその2つの側面からなる女性の階層再生産の全体像は, あまり記述されていない. 本稿では階層的地位の2つの側面を区別し, それぞれに対する出身階層の影響を示した. 従属変数である個人単位の地位の測度として個人所得, 世帯の生活水準の測度として夫妻の合計所得, そして独立変数である出身階層の測度として両親の職業の組み合わせを用いた.
    2005年SSM調査データを用いた分析の結果, 女性の階層再生産の特徴として, 2点が明らかになった. 第1に, 女性の出身階層は, (1) 両親の職業的地位がともに高い家庭, (2) 典型的な専業主婦家庭, (3) 両親どちらかが農業に就いていた家庭, そして (4) 父親がブルーカラーの家庭という, 4つのグループで捉えられる. 第2に, 女性の階層的地位の2つの側面に対する, 出身階層の効果は異なる. 個人単位の地位の達成には両親の職業的地位がともに高い女性, 次いで両親どちらかが農業に就いていた女性が有利である. 一方, 世帯の生活水準の達成には典型的な専業主婦家庭出身の女性がもっとも有利である. これら2つの特徴が, 女性が両親から階層的地位を受け継ぐ過程をより複雑に見せていると考えられる.
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