社会学評論
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61 巻, 3 号
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特集・周辺への/周辺からの社会学
  • 樫田 美雄, 下夷 美幸
    2010 年61 巻3 号 p. 232-234
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
  • 社会学の新しい基盤としての市民教育ニーズと専門職教育ニーズ
    樫田 美雄
    2010 年61 巻3 号 p. 235-256
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
  • 岡崎 宏樹
    2010 年61 巻3 号 p. 257-276
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本の中等教育を社会学の観点から考察するものである.
    第1節では,「中等教育の中の社会学」という主題を考察する意義について検討し,国際的視野からみた中等教育における社会学教育の重要性,社会学の教育法や教材の開発を促進する可能性,中等教育の発展に対する貢献の3点を指摘する.
    第2節では,日本の中等教育において社会学的知識が周辺的な位置に置かれていることを,高校「現代社会」と中学「社会(公民的分野)」の学習指導要領をもとに確認し,その要因として,社会学の学問的性格,教育行政への制度的関与の不足,社会科教育と社会学教育との連携の欠如の3点を指摘する.
    第3節では,「総合的学習の時間」と社会学の関係を考察し,この科目が重視する問題解決的・体験的な学習に,社会学教育が貢献しうる部分が大きいことを確認する.また,サービスラーニングを導入した社会学教育に関する諸研究を参照し,中等教育や社会学の導入期教育に効果のある体験的な社会学教育について考察する.
    最後に,社会科教育における社会認識を,市民性教育や現代社会の構造変化との関連で考察するとともに,社会科以外の領域でも共同性や社会性に関わる多様な学習(「生命性の学び」「他者性の学び」)がありうることを論ずる.
    以上によって,中等教育に関する社会学教育の研究や実践,制度的な取り組みを進めることが,日本の社会学の未来にとって重要な意味をもつことを提言する.
  • 細江 容子
    2010 年61 巻3 号 p. 277-293
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,アカデミック以外のアルターナティブな社会学像を家庭科との関係から分析することで,社会学の可能性とその問題点を探ることである.そのためにまず,家庭科がどの様な教科であるかを述べる必要がある.そのプロセスとして,家庭科の学問的背景である家政学からその問いをスタートさせる.さらに,家庭科という教科自体が抱える問題とその問題解決のために,社会学の位置づけとその問題性を分析することでこの課題に応えたい.
    家政学は,古代ギリシアでは男性の実践学(政治学)の一環として,正当な位置を占めていた.古代ギリシア以来近代まで,家政学は家長=男性のためのものであった.しかし,近代以降,男の家政学から女の家政学へ帰属の逆転がなされた.Anthony Giddensのモダニティ論の中心的テーマであるライフ・ポリティックスを基軸とした理論展開から,社会学は,家政学に対し,現代社会の変革を生み出す女と男(人間)の家政学という新たな認識展開を生み出す力になりうると考える.社会学の可能性とは,家政学への越境により,家政学者に家政学を変革する力を与える事ができるということである.その力とは,家政学を背景とした家庭科教育において,子どもたち自身にライフスタイルの反省的選択という生活実践力を身につけさせることで,社会変革を志向することを可能にするという力である.
  • ある社会学教員の経験から
    勝又 正直
    2010 年61 巻3 号 p. 294-306
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    ある看護系学部の社会学教員の体験から次のような経験知が得られる.
    看護師は患者を人間として理解し,その理解に基づいて看護しようとする.この目的のために,看護学では他の学問のさまざまな概念を用いて,患者の問題を看護診断として分類している.さらに,看護理論家は他の学問のさまざまな理論を導入して看護を1つの人間学へと高めようとしている.医療社会学は,医療の世界,あるいは医療が社会においてはたす機能に焦点をあてている.それに対して,看護は,患者を理解し看護するために,患者が属している社会に関心をもつ.看護学生に必要なのは,患者を人間として理解するための,社会学的想像力である.その社会学的想像力は,特殊な応用社会学である医療社会学よりも,むしろ普通の元来の社会学によってより養われるのである.
  • 三島 亜紀子
    2010 年61 巻3 号 p. 307-320
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    1987年に「社会福祉士及び介護福祉士法」が制定されたことから,社会学は社会福祉士の国家資格の試験科目になった.そこで教えられる「社会学」は「社会福祉士に必要な内容」に限られているが,歴史的にみれば社会学は福祉の研究や実践のあり方を大きく方向転換させるなど大きな影響を与えてきた.
    本稿の目的は,社会福祉士養成課程と社会福祉学における「社会学」を分析し,この領域における社会学の可能性について考察することである.
    まず社会福祉教育の現状と,そこで社会学はどのように扱われているかについて明らかにする.つぎに,これまでに社会学が社会福祉の教育・研究・実践に与えた影響を概観する.そして今後,社会学は社会福祉の教育・研究・実践にどのような貢献ができるかを考察した.
    近年,脱施設化がすすめられ,福祉サービスにおけるパターナリズムは否定され,「利用者」の自己決定や「物語」に敬意が払われるようになった.こうした変化にあわせて社会福祉学の理論も展開をみせており,それらの一部は「ポストモダニズム」と呼ばれる.
    しかし,すべての場面においてこうした変化が及んだわけではなかった.現在の専門家は,「ポストモダン」的な援助をする一方で,過去のエビデンスを根拠に権力をもって介入を行う者と特徴づけられる.周辺への/周辺からの社会学を活発にするためには,こうした新しい専門職のあり方を考慮する必要がある.
  • 佐藤 純一
    2010 年61 巻3 号 p. 321-337
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    日本の社会学にとって,医学は,「周辺領域」であり続けている.なぜ,医学領域は社会学にとって周辺であり続けてきたのか.どのようにしたら,社会学は医学に関与できるのか.その周辺に社会学(社会学者)が進出できるのか.本稿は,医学部において,社会学教員として社会学を教えてきた経験をもつ筆者が,その経験から,これらの論点を議論することを目的とする.
    本稿の議論で指摘する第1点は,日本の医学部の医学の生物医学(biomedicine)偏重性である.疾病普遍概念を核にもつ生物医学パラダイムと,病気の社会的構築を論ずる社会学主義の対立は,非和解的なのか,社会学が屈服・妥協するのか,排除されるのか.
    指摘する第2点は医学教育の「特殊性」である.日本の医学教育は,システムから教育内容(カリキュラムから教授方法まで)も,国家によって制度化されている.生物医学ドミナントで制度化された「医学教育コア・カリキュラム」体制の中で,社会学,また社会学者は,どのように振る舞えるのか.
    第3点として指摘するのは,医学部に支配的な「医師至上主義(イデオロギー)」である.「医学部では,医師でなければ人でない」と他学部出身者にいわしめるほどの,「すべての行為における医師至上主義」に,社会学者はどのように対峙し,医学帝国に参入し,医学部で社会学(教育)できるのであろうか.
  • 波平 恵美子
    2010 年61 巻3 号 p. 338-350
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    文化人類学は,その目的からしても基本とする理論からしても,研究テーマに〈中心〉であるとか〈周辺〉であるかの区別はしない.つまり,目的は人間を人間たらしめている文化について明らかにすることであり,その文化は,人間が後天的に獲得した能力や発達させた制度や慣習の総体であると考えているからである.また,具体的な資料の分析では文脈(コンテクスト)を明らかにすることを重視するので,できるだけ広く人間の行動を拾い上げるよう努るからである.したがって,医療が文化人類学の中で〈周辺化〉されることはない.しかし,医療は,それが伝統医療であれ現代医療(バイオメディスン)であれ,人間の身体に直接関わるものであるため,人間の生物学的要素を欠いた資料のみで医療を研究対象にすると,研究のうえで充分な成果をあげることはできない.その意味では,医療は文化人類学において周辺にある.
    文化人類学の下位領域として出発した医療人類学は,現在では人間の生物学的側面を研究対象とする健康科学との学際領域として発達している.そこで採用されている文化人類学の理論や概念やフィールドワークをはじめとするさまざまな手法は,文化人類学の理論,概念,手法を相対化してくれる.また,人間の生物学的側面と人間の文化との関わりを明らかにすることは,文化の普遍性と多様性を追求する文化人類学に新たな知見を提供することになり,周辺が中心を活性化することになる.
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