インライン搾汁機による搾汁時に多量に排出される搾汁粕の洗浄液から,連続的に遠心分離して得られる精油の成分を知る目的から,温州ミカン,夏柑,カボスの精油を採取し,物理化学恒数の測定,ガスクロマトグラフ分析を行い,次の結果を得た。
(1) 温州ミカン,夏柑,カボスとも比重,屈折率には大きな差異はみられなかった。旋光度はカボスが最も低く,酸価は夏柑が高く,カボスが最も低かった。アルデヒド含量はカボスが多く,夏柑と温州ミカンは同程度であった。
(2) PEG-6,000を用いたカラムで,150℃の恒温式と70℃~170℃の昇温式で高沸点成分と全体成分に分けて分離したが,3種に共通した主要成分は, D-limo-nene, γ-terpinene, myrcene, α-pineneなどであり,テルペン系炭化水素が96~97%の高率を占めた。とくに夏柑ではγ-terpinene, linaloo1が多く,カボスはmyrcene, linaloo1, n-decylaldehyde, n-decylalcoholなどが多く検出された。
(3) 温州ミカンの精油から25,夏柑から27,カボスからは27の成分を検出し,組成比を従来の報告と比較したが,それぞれの数値は実験的規模で行われた分析値と近似しており,今後,インライン搾汁機の利用により良質の精油を連続的に採取しうる見通しを得た。
終りにあたり終始,御指導,御助言,御校閲を賜わった九州大学芥田教授,筬島助教授ならびに発表を許可していただいた横矢乾会長に深謝します。
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