多段フラッシュ蒸発装置内のフラッシュ蒸発における非平衡温度差に関して, 従来提出されている実測値および経験式を, フラッシュ室長を考慮する意味で, 液のフラッシュ室内平均滞留時間を導入して比較した.3.45m以上の比較的長いフラッシュ室長をもつ空段に対する実測値は変形したBLH社の経験式Eq.(6') と最も良好な相関を示したが, 2.13m以下の短いフラッシュ室長の空段に対する実測値は経験式Eq.(6') と相関しなかった.このことは, 空段においてフラッシュ室長が短くなると, 室内における入口領域と出口領域の流れが干渉するようになって液面近傍で逆流が生じ, 流入液噴流は逆流してくる蒸発の完了した冷たい液を巻き込み, 温度低下して下流域で液表面に到達するので弱い蒸発しか起きず, さらに熱い液が室底部を次段へ貫通するようになることに起因する. したがって短い室長の場合には, 蒸発促進器の設置が不可欠である.
各種の蒸発促進器の効果を比較した結果, 乱れを起こす型式よりも, 熱い流入液をそのまま液表面近傍に送り出す型式の蒸発促進器が効果的であることがわかった.
比較的長い室長のフラッシュ室内に蒸発促進器を設置しても, 非平衡温度差の低下は顕著でないが, 室長の短いフラッシュ室内に蒸発促進器を設置すると, 非平衡温度差は室長の比較的長い空段の場合に得られるそれと同程度まで低下するので, 蒸発促進器の設置により所要フラッシュ室長は大幅に減少する.
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