日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
11 巻, 1 号
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  • 冠動脈硬化症における観察を中心として
    山本 純子
    1974 年 11 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1974/01/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    動脈硬化症の治療ならびに予防上, 最も重視すべきものは食餌であるとの観点より, 冠動脈硬化症における食後脂血処理能に関与する糖質代謝の役割を明らかにするため, 血中遊離脂肪酸 (FFA) 動態の面から検索を試みた.
    1) 冠動脈硬化症患者群 (P群) 16名と健者13名に早朝空腹時, 25%脂肪含有生クリーム100gを経口投与し, 内P群9名と健者5名に3時間後50%ぶどう糖40mlを静注した全例から経時的に採血し, 血漿 Optical Density (OD) と血漿FFAを測定したところ, 両群ともにぶどう糖静注により, ODは有意に下降するのが認められた. その程度はP群では健者に比し, 低いことが認められた. また両群ともにFFAの変動は, ODの場合と極めて似たパターンを示すことが認められた.
    2) 健者7名に生クリーム経口負荷3時間後, 内4名に Propranolol 10mgを生食に溶解し残り3名に生食のみを点滴静注し, ODとFFAを測定した. その結果, β-遮断剤は, ODを低下させることが認められた.
    3) P群3名と健者3名に生クリーム経口負荷2時間30分後より, 150分間にわたり, Protamine を100mg/hr. で点滴静注を行ない, 点滴開始30分後に50%ぶどう糖40mlを静注し, ODとFFAを測定した. あらかじめ Protamine を投与した場合, ぶどう糖を静注してもODは著明に上昇するのが認められた.
    以上のことより, 食後脂血処理の機序としては, Lipoprotein lipase 活性に基づく内因性清澄能が, 基本的要因であるが, ぶどう糖は, 水解産物であるFFAの処理を促進することによって, 脂血清澄能を増強するものと考えられる. ぶどう糖の食後脂血処理能に対する効果は動脈硬化症患者群では, 健者よりも劣る. この要因として, 前者では後者よりも, 耐糖能の低いことの関与する可能性が示唆される.
  • 倉持 衛夫, 関 顕, 藤井 潤
    1974 年 11 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1974/01/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    昭和44年1月より昭47年12月までに当所に受診した40歳以上の患者より, 糖負荷試験, 鼠径部動脈雑音などの検索をしえた男398例, 女232例について間歇性跛行(「跛行」) を検討した.「跛行」は男27例 (6.8%), 女2例 (0.9%) に認められ, 男では40歳代1.0%, 50歳代2.7%, 60歳代9.2%, 70歳以上23.3%, と加齢とともに増加した. 60歳以上の男184例について検討すると, 収縮期血圧, 血清コレステロール, 糖同化機能には「跛行」群と対照群との間に差はなく, 拡張期血圧は「跛行」群で低くかった. 喫煙者は「跛行」群87.0%, 対照群62.7%で「跛行」群に有意に多かった. 腹部大動脈石灰化も「跛行」群で82.6%に認められ, 対照群41.6%に比し多く, 胸部大動脈石灰化も跛行群に多くみられた. 鼠径部動脈雑音 (「雑音」) は対照群12.4%に対し「跛行」群では73.9%聴取され, 又「雑音」のあるものでは45.9%に「跛行」が認められるのに対し, 「雑音」のないものでは4.1%で, 下肢動脈硬化による「跛行」の診断に「雑音」の聴診が有用であると考えられた.
  • 神経筋疾患との対比
    朝長 正徳, 万年 徹, 亀山 正邦
    1974 年 11 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 1974/01/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者における骨格筋の変化については諸説がある. 我々は最近特に進歩をみた, 神経筋疾患における生検筋の形態学的検索法およびそれによって得られた筋病変の知見を, 老年者における筋の形態学的研究に応用し, 両者の比較を試みた.
    検索対象は80例の老年者の生検筋で, 手術または診断の目的で採取され, 四肢・躯幹筋が含まれる. 一般光顕組織学のほか酵素組織化学, 電子顕微鏡による検索を行ない, 以下の結果を得た.
    1) 光顕的には老年者骨格筋の変化は多彩であるが, 種々な程度の神経原性変化が高頻度にみられた.
    2) 組織化学的に type II fiber atrophy が目立った.
    3) 下肢について, 遠位筋では神経原性変化が主体をなすが, 近位筋では type II atrophy と筋原性変化が目立つた.
    4) 筋線維の変化として, Z-band の変化, nemaline rods 形成, figure lamellée,“red-ragged”fiber, lipofuscin 沈着等が注目された. nemaline rods の出現率は他疾患に比し高いといえる. その場合, 筋の病像は神経原性或は type II atrophy が多い.“red-ragged”fiber の本態はリポピグメント沈着やミトコンドリア (結晶様封入体を有するものもある) の集合, その他 tubular aggregates, t-system の増殖 (honeycomb like structure) よりなる. また, amaurotic idiocy にみられる curvilinear bodies の出現が1例にみとめられた.
    5) 種々な核変化と satellite cell の変性像.
    6) 毛細管基底膜の肥厚 (中等度).
    7) 筋終板の変形と subsynaptic folds の減少.
    以上の変化はすべて神経筋疾患において記載されたもので, 老年者に特異的なものではないが, この所見は老年者における骨格筋の神経支配の異常および筋そのものの変性過程を示すものと考えられる. 即ち, 老年者においては老化に伴う種々な因子が, 運動ノイロン系を広く傷害している可能性がある.
  • 福井 巌, 久城 英人, 筒井 伸子, 水口 葉子
    1974 年 11 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 1974/01/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    尿酸を Uricase で酸化する際, 尿酸濃度に応じて消費される酸素の消費速度をポーラログラフ式酸素電極でとらえるベツクマングルコース分析計による血清尿酸の測定法について検討を行ない, 次のような結果を得た.
    1) 検量線は尿酸値12mg/dlまでは原点を通る直線となるが, それ以上の濃度では多少下向く傾向を示した.
    2) 同時測定 (n=10) による測定精度は尿酸の正常値血清でC.V.=±3.0%, 高値血清でC.V.=±2.2%であった. 日差変動 (n=10) はプール血清でC.V.=±3.6%と良好な精密度を示した.
    3) 回収率は97.4~101.3%で, その平均は99.5%となった.
    4) ブドウ糖, システイン, フエノールは影響を示さないが, アスコルビン酸100mg/dlは尿酸として1.3mg/dlの正誤差を, ホルムアルデヒド10mg/dlは0.4mg/dlの負誤差を示した.
    5) 反応温度は30~40℃の範囲では温度の変化による測定値への影響を認めなかった.
    6) Uricase を主成分とする酵素試薬は少なくとも5回は使用可能であった.
    7) 患者血清80検体の本法とリンタングステン酸法との相関係数 (γ) は0.950, Uricase catalase 比色法との相関係数 (γ) は0.910と良好な相関を示した. 測定値は Uricase catalase 比色法5.3mg/dl, 本法5.4mg/dl, リンタングステン酸法6.0mg/dlであった. 患者尿40検体の本法とリンタングステン酸法との相関係数 (γ) は0.946, Uricase catalase 比色法との相関係数 (γ) は0.918と良好な相関を示した. 測定値は Uricase catalase 比色法57.7mg/dl, 本法60.0mg/dl, リンタングステン酸法73.9mg/dlであった.
    以上の成績より, 本法は微量の試料で, 尿酸の真値を, 再現性よく, 迅速, 簡便に測定することができるので,現時点においてもっとも優れた血清尿酸の測定法の1つと考えられる.
  • 吉峯 徳, 葛谷 文男
    1974 年 11 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 1974/01/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    自然発生高血圧ラット (SHR) の脳内 L-Dopa decarboxylase 活性が正常血圧ラットに比して著明に減少している事, 及び, 本酵素がB6を補酵素としている事より, 著者らはSHRをB6欠乏状態におき, 脳, 腎及び肝における L-Dopa decarboxylase の変動を中心に, 加えて脳内カテコールアミン量及び血圧の変動についても検索し次の結果を得た.
    1) 血圧は実験終了時にB6でやや低値を示したがその他の期間では差異はなかった.
    2) 脳, 腎及び肝共にSHR群では正常ラット群に比して L-Dopa decarboxylase 活性は有意の低値を示した. 更にB6では有意の低値を示した.
    3) 脳内 Dopa, Dopamine, Noradrenaline, Adrenaline 量についてはB6で Dopa 及び Dopamine の増加傾向を認め, NAも増加傾向を認めたが有意差はなかった.
    以上の事から, 短時間のB6欠乏は末梢において L-Dopa decarboxylase 活性に対して抑制的に作用するものと推定される.
  • 1974 年 11 巻 1 号 p. 33-62
    発行日: 1974/01/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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