日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
26 巻, 2 号
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  • 橋場 邦武
    1989 年 26 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 1989/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の不整脈について, 一般集団および入院患者における成績について報告した.
    1. 同一固定集団における長期追跡成績: 18年間にわたり2年に1回の周期で心電図その他の連続追跡調査を行った. 対象は最終観察期の年齢が約40~90歳の6,690例である. 心房細動, 心房性期外収縮, 完全右脚ブロック, 左脚ブロックなどの頻度は60歳以後の年代では著明に高いが, 60歳代から80歳代までの老年群において, 年齢と共にほぼ直線的に増加することが認められた.
    2. Holter 心電図による検討: 14歳から87歳の健常者164名を対象とした. 標準12誘導で不整脈のあった例は除外してあるが, Holter 心電図では心房性期外収縮を159例, 96.9%の高率に認めた. 心房性期外収縮の24時間総数, 連発性心房性期外収縮の有無, 24時間中のその回数および最大連発数, などのすべてにおいて, 60歳以上の老年者では60歳以下の群に比べて有意に著明な高値を示した.
    3. 発作性心房細動 (Paf) 症例の心房電気生理的所見: Pafのリエントリーの生じ易さの指標として, 洞調律時の心房内記録によるA波の幅の増大とその棘波数の増加, 心房期外刺激による反復性心房興奮波の誘発, について検討した. Paf群では対照のPaf (-) 群に比して両指標とも有意に高値であった. Pafのない洞不全症候群も Paf群とほぼ同程度の異常を示したが, 本症候群が老年者に多い不整脈であることを考え合わせると, Paf群の心房電気生理的所見の異常は一種の老年性変化によるものと考えられた.
    4. 一過性の高度低K血症による高度徐脈例: 80歳以上の比較的軽度の腎不全の2例で一過性の高K血症, 高度洞徐脈および洞停止, 意識障害を生じた例について述べた. 高K血症は腎不全のみでは説明がつかず, 血漿アルドステロンの低値とACTHおよびアンジオテンシンIIに対する低反応から, 低アルドステロン症が主な要因と考えられた.
  • 海老原 昭夫, 関 顕, 小椋 力, 松田 保, 桑島 巌, 山本 俊幸, 水島 裕
    1989 年 26 巻 2 号 p. 111-145
    発行日: 1989/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 糞便中キモトリプシン活性による検討
    松本 秀次, 原田 英雄, 田中 淳太郎, 越智 浩二, 石橋 忠明, 武田 正彦, 吉田 光男, 三宅 啓文, 木村 郁郎
    1989 年 26 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 1989/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    加齢にともなう膵外分泌機能の変化およびその臨床的意義を検討する目的で, 健常人62名 (20~87歳, 平均51歳), 非膵疾患患者42名 (31~83歳, 平均56.1歳), 消化器疾患のない老人ホーム入居者40名 (63~92歳, 平均77.6歳), 慢性膵炎患者20名 (17~72歳, 平均53.5歳), 膵癌患者5名 (60~76歳, 平均65.4歳) を対象として, 比色法により糞便中キモトリプシン活性 (FCA) を測定し, 以下の結論を得た.
    1) 健常人群のFCAは加齢にともなって低下し (r=-0.56, p<0.001), 65歳以上群は65歳未満群よりも有意の低値を示した (p<0.001). 非膵疾患患者群, 老人ホーム入居者群も同様に加齢とともにFCAの低下を示した.
    2) 65歳以上の健常人群および老人ホーム入居者群のFCAと慢性膵炎患者群および膵癌患者群のFCAとの間には有意差を認めなかった.
    また, 65歳未満健常人群のFCAのM-2SD (14.5U/g) を正常下限値に設定した場合の異常低値出現率は, 65歳以上健常人群52.4%, 老人ホーム入居者群62.5%, 慢性膵炎群55%, 膵癌群60%であった. したがって, 高齢者においてはFCA検査法には膵疾患診断法としての価値はない. しかし, 膵の病態の把握, 治療効果の判定, および経過観察においては有用であることが示唆された.
  • 明石 のぞみ
    1989 年 26 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 1989/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    不整脈と脳梗塞の関係を明らかにすることは, 不整脈の治療や脳梗塞の予防をしていくうえで重要なことである. そこで, 24時間連続記録心電図 (以下ホルター心電図) を用い, 脳梗塞と不整脈の関係を検討した.
    症例は男80例, 女31例の計111例で平均年齢は65.4歳である. 頭部CT上の低吸収域の大きさから, 大脳皮質を含む大きな低吸収域を認める群 (皮質枝梗塞群: 以下L群), 基底核付近に小さな低吸収域を認める群 (穿通枝梗塞群: 以下S群), 低吸収域を認めない群 (以下N群) の3群に分類した. ホルター心電図は全例に発症後3週間以上を経過した慢性期に行い, そのうち14例は急性期にも施行し, さらに3例は発症前の記録と比較した. ホルター心電図から基本調律を洞調律例と心房細動例に分け, 各々の症例について, 24時間あたりの心室期外収縮 (Ventricular Premature Contraction: 以下VPC) の総数を求めた. ホルター心電図施行の時期 (発症前, 急性期, 慢性期) によるVPC総数の変動は少なかった. また, VPC総数と年齢, 高血圧の既往の有無, およびCT上の梗塞部位との間にも関連はなかった. 心房細動例における24時間あたりのVPC総数とCT所見との間に関連はなかったが, 洞調律例ではS群, N群に比し, L群でVPC総数1,000以上の例が有意に高い出現頻度を示した. 一般に皮質枝梗塞では塞栓症が多いことから, 心房細動と同様にVPC総数も塞栓症の発症と関連を有することが示唆された.
  • 小嶋 和英, 巽 典之
    1989 年 26 巻 2 号 p. 160-164
    発行日: 1989/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    全自動網赤血球測定装置を用い, 成人 (20~40歳) 正常群, 溶血性貧血群, 骨髄機能抑制群, 70歳以上の老年正常群, 老年貧血群について網赤血球動態より検討を行った. 網赤血球はRNA含量て3分類した. RNA含量が多く幼弱で側方蛍光強度の強い highly fluorescent cells (以下HFC), RNA含量が少なく赤血球に近い slightly fluorescent cells (以下SFC), その中間に位置する moderately fluorescent cells (以下MFC) である. 正常群における各指標は網赤血球率=0.70±0.55%, 網赤血球数=4.36±1.90×104l, HFC=2.33±1.95%, MFC=18.73±5.07%, SFC=78.82±6.58%であった. 骨髄機能抑制群では網赤血球率, 網赤血球数, HFCは低下しSFCは高値となった. 溶血性貧血群では網赤血球率, 網赤血球数の上昇はもちろんであるが網赤血球分類におけるHFCの増加SFCの低下を特徴とした. 一般検血上貧血を示さない老年正常群は多くの報告と同様に, 正常群と明らかな差は認められなかった. 老年貧血群は老年正常群や正常群より網赤血球数が低値であり, 網赤血球分類において溶血性貧血群が示したHFC増加とSFC低下という特徴を示さなかった. 綱赤血球率は正常群と差が認められないが, これは老年貧血群の赤血球数の減少に基づくものである. 網赤血球動態より考えると老年貧血は骨髄の造血機能異常に基づく貧血であると思われた.
  • 健康正常人における血小板凝集能, 血漿 Prostanoid, Cyclic nucleotide, 血清脂質との相関について
    丸山 義明
    1989 年 26 巻 2 号 p. 165-173
    発行日: 1989/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    動脈硬化発症における血小板の関与を追求するために, まず加齢による血小板凝集能の変動を検討した. 187名の健康正常人を対象とし, 29歳以下, 30歳代, 40歳代, 50歳代, 60歳以上の血小板凝集能, 血漿 Prostanoid, Cyclic nucleotide を測定し, 更に血清脂質との関連について検討を加えた. 血小板凝集能は男性に比し, 女性の方が各年代とも, ADP, adrenaline, collagen 凝集のいずれにおいても高値を示す傾向にあったが, 両者の間に有意の差は認められなかった. また, 加齢による影響は男女ともに認められなかった. 血漿 thromboxane B2は, 各年代において, 男性に比し女性の方が高値を示す傾向にあったが, 有意差はなく, また加齢の影響も認められなかった. 6-keto PGF, cAMP, cGMPについては, 性差, 加齢による影響は認められなかった. 更に, 血小板凝集能についてその分散を検討したところ, 1γの adrenaline 凝集において, 男女ともに二峰性の分布を示した. そこで, 凝集能の低い(50%以下), Low responder group と, 50%以上を示す High responder group において, 他のADP, collagen 凝集を比較したところ, High responder group に比しLow responder group は低い凝集能を示す傾向が認められた. 血小板凝集能と血清脂質との相関について調べたところ, 2μMのADP凝集と総コレステロール値との間に有意の正相関 (r=0.3754, p<0.025) が認められた. 以上の結果より健康日本人の血小板凝集能は, (1) 健康正常人においては各年代による血小板凝集能の差は認められず, 加齢の因子を除いた正常平均値を設定してもよい. (2) adrenaline 凝集に関し, Low responder group と High responder group の二群が存在し, これらの二群が, ADP, collagen 凝集においても同様の傾向を示し, 特に1γの collagen 凝集では有意差が得られた. (3) ADP凝集は, 血清脂質の影響を受ける, 特徴が明らかにされた.
  • 水内 知子, 軽部 俊二, 松井 玲子, 藤森 尚子, 太田 ケイ子, 木田 厚瑞
    1989 年 26 巻 2 号 p. 174-178
    発行日: 1989/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    大腿骨頚部骨折は老年者に発生頻度が高い. かかる老年者にみる骨折に合併する呼吸器疾患のうちでは肺血栓・塞栓症, あるいは肺炎が重要であるが, 臨床上, 両者の鑑別は困難であることが多い. 本研究は, 老年者の大腿骨頚部骨折後に生ずる肺血栓・塞栓症のうちで重篤な経過をとる大量栓子の病像解明を目的とした.
    最近5年間に東京都老人医療センターに大腿骨頚部骨折の治療目的に入院した618例を遡及的に調査した. 対象とした全例が65歳以上の老年者である. 骨折後入院までの日数は, 平均2.3日であった. 入院直後の諸検査により, 肺合併症がみられた例については, 詳細に経過を追跡調査した. 肺合併症は次の3群に分類された. I群: 骨折以前より基礎疾患として呼吸器疾患が存在 (29例). II群: 骨折後, 新たな呼吸器系に関する自他覚症状が出現, 検査結果より肺血栓・塞栓症が強く疑われた (12例). III群: 臨床経過より肺血栓・塞栓症と肺炎との鑑別が困難 (4例). II, III群を構成する症例を検討した結果, 自覚症状では, 呼吸困難, 咳嗽・喀痰が多く, 他覚症状では, 約半数例に頻脈, 頻呼吸がみられた. 検査所見では, II群で白血球の増加を伴う低酸素血症が特徴的であり, 入院直後の胸部レ線で, 浸潤影を呈するものが56.4%みられた. かかるII群の症例でも発症後72時間以内には呼吸不全を脱し, 7日後には全例PaO2 60Torr以上に達した.
    老年者の大腿骨頚部骨折後に生じる肺血栓・塞栓症につき臨床病理学的な考察を加えた.
  • 伏見 尚子, 澤田 秀幸, 宇高 不可思, 亀山 正邦
    1989 年 26 巻 2 号 p. 179-180
    発行日: 1989/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 26 巻 2 号 p. 181-206
    発行日: 1989/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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