動脈硬化発症における血小板の関与を追求するために, まず加齢による血小板凝集能の変動を検討した. 187名の健康正常人を対象とし, 29歳以下, 30歳代, 40歳代, 50歳代, 60歳以上の血小板凝集能, 血漿 Prostanoid, Cyclic nucleotide を測定し, 更に血清脂質との関連について検討を加えた. 血小板凝集能は男性に比し, 女性の方が各年代とも, ADP, adrenaline, collagen 凝集のいずれにおいても高値を示す傾向にあったが, 両者の間に有意の差は認められなかった. また, 加齢による影響は男女ともに認められなかった. 血漿 thromboxane B
2は, 各年代において, 男性に比し女性の方が高値を示す傾向にあったが, 有意差はなく, また加齢の影響も認められなかった. 6-keto PGF
1α, cAMP, cGMPについては, 性差, 加齢による影響は認められなかった. 更に, 血小板凝集能についてその分散を検討したところ, 1γの adrenaline 凝集において, 男女ともに二峰性の分布を示した. そこで, 凝集能の低い(50%以下), Low responder group と, 50%以上を示す High responder group において, 他のADP, collagen 凝集を比較したところ, High responder group に比しLow responder group は低い凝集能を示す傾向が認められた. 血小板凝集能と血清脂質との相関について調べたところ, 2μMのADP凝集と総コレステロール値との間に有意の正相関 (r=0.3754, p<0.025) が認められた. 以上の結果より健康日本人の血小板凝集能は, (1) 健康正常人においては各年代による血小板凝集能の差は認められず, 加齢の因子を除いた正常平均値を設定してもよい. (2) adrenaline 凝集に関し, Low responder group と High responder group の二群が存在し, これらの二群が, ADP, collagen 凝集においても同様の傾向を示し, 特に1γの collagen 凝集では有意差が得られた. (3) ADP凝集は, 血清脂質の影響を受ける, 特徴が明らかにされた.
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