脳底動脈, 冠状動脈, 胸部大動脈弓部, 腹部大動脈のそれぞれから得たエラスチン画分についてエラスチン含量, イソデスモシン (エラスチン特有の架橋) 含量, 遊離SH (総SHと遊離SHとの比), 疎水性, 共存フィブロネクチン含量を生化学的に比較検討し, それぞれの部位における差および部位に特有な相関関係から動脈の部位差を以下のごとく見い出した.
1) 脳底動脈のエラスチン画分では冠状動脈と量的に類似していたが他の部位と異なる相関は認められなかった.
2) 冠状動脈のエラスチン画分では他の部位よりイソデスモシンは低下し, イソデスモシンと年齢, フィブロネクチン, エラスチンおよび遊離SHはそれぞれ負の相関が認められた. 遊離SHは年齢, コレステロールおよびフィブロネクチンとそれぞれ正の相関が認められた.
3) 胸部大動脈弓部のエラスチン画分では他の部位より遊離SH, 疎水性, フィブロネクチンの含量が低下しており, 疎水性はイソデスモシンと負の相関, フィブロネクチンはコレステロールと正の相関がそれぞれ認められた.
4) 腹部大動脈のエラスチン画分では他の部位よりフィブロネクチンが増加し, フィブロネクチンは遊離SHと正の相関が認められ, 遊離SHはエラスチンやイソデスモシンおよび疎水性とそれぞれ負の相関が認められた.
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