都市在住の高齢者におけるソーシャル・サポートと抑うつ症状の関連を明らかにするため, 仙台市T地区の70歳以上住民に対し総合機能評価を平成14年7月から8月に行った. 対象2,730人のうち1,198人が参加し, 聞き取り調査を受けた. ソーシャル・サポートに関しては, 村岡ら (1996) の調査票により (i) 困ったときの相談相手, (ii) 体の具合の悪いときの相談相手, (iii) 家事などの日常生活を援助してくれる人, (iv) 具合の悪いとき病院に連れて行ってくれる人, (v) 寝込んだとき身の回りの世話をしてくれる人の有無を尋ねた. 抑うつ症状の評価は Geriatric Depression Scale (GDS) 30項目を用い, GDSに回答した1,170人のうち, Mini-Mental State Examination (MMSE) が18点以上で研究に同意した1,146人を解析対象とした. GDS 10点以下を非抑うつ群, 11点以上または抗うつ剤服用者を抑うつ群とした. ソーシャル・サポートの欠如と抑うつ症状の出現に関する多変量補正オッズ比 (95%信頼区間) を (i) から (v)の各項目について, 多重ロジスティック回帰分析により算出した. その際, 年齢, 配偶者の有無, 同居人数, 既往疾患数, 教育レベル, 認知機能, 運動能力, 痛み, 主観的健康度を補正した. 抑うつ群は男性134人 (27.9%), 女性259人 (38.9%) であった. 質問 (i) から (v) まで各々の「ある」者に比べて「ない」者では抑うつ症状出現のオッズ比 (95%信頼区間) は, 男性では (i) 2.5 (1.5~4.1), (ii) 1.9 (1.1~3.2), (iii) 2.7 (1.7~4.4), (iv) 1.9 (1.1~3.2), (v) 2.8 (1.6~4.9) と全項目で有意に上昇した. 女性では (i) 1.2 (0.8~1.8), (ii) 1.2 (0.8~1.8), (iii) 1.4 (1.0~2.0), (iv) 1.6 (1.1~2.3), (v) 2.0 (1.4~2.9) と (iii), (iv), (v) の項目で有意にオッズ比が上昇した. 都市部高齢者では男女ともソーシャル・サポートの欠如と抑うつ症状との間に有意な関連があった. しかも男性では, 関連するソーシャル・サポートの種類と関連の強さの両面において影響が顕著であった.
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