日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
41 巻, 4 号
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  • 鄭 海泳, 成 寶慶, 鄭 敬眞
    2004 年 41 巻 4 号 p. 357-364
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    これまで蓄積されてきた研究成果は酸化ストレスが老化の成立に強く関与していることを支持している. また食餌制限は老化に関連する酸化ストレスを減らして, 抗炎症作用を持つという明確な根拠も示されてきた. しかし, 老化過程における活性酸素種 (ROS) や活性窒素種 (RNS) と前炎症状態 (proinflammatory state) の関係を明解に説明するには分子レベルで明らかにされている情報は未だに不足している. 本稿では老化に関連する分子炎症仮説を説明するために, 生化学的あるいは分子生物学的な解析結果について記述した. この分子炎症仮説によれば, 老化の進行に伴いNF-κB, IL-1β, IL-6, TNF-α, cyclooxygenase-2, inducible NO synthase などの炎症反応に関連する遺伝子群の発現が亢進される. そしてこれらの遺伝子発現は食餌制限により抑制されることが明らかとなってきた. 特に老化過程において活性化される NF-κB は, IκB kinase/NIKとMAPKのリン酸化と関連するが, 食餌制限はこの活性化を抑制する. これらの因子の活性化や非活性化が老化の成立に関与し, 食餌制限が抗炎症作用を持つということを分子レベルでも明らかになった. このような最近の研究結果を基に, 我々は上記の様な老化における分子反応機序と慢性炎症の重要性を強調するために, 分子的炎症 (molecular inflammation) という用語を提唱した. 特に酸化還元状態に敏感な炎症作用が生じている老化状態に対する食餌制限の応用は寿命を延長するのに役立つと考えるからである.
  • 神森 眞, 田久保 海誉
    2004 年 41 巻 4 号 p. 365-368
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    テロメアは染色体末端に存在し, 染色体の安定に貢献している. また, 正常培養細胞における細胞老化はテロメア短縮によって説明されている. 今回, 我々は組織切片を用いたテロメア長測定法を開発したので, テロメア長測定法を中心に記述し, テロメア研究の進歩について述べる. 従来は, 細胞や組織から抽出したDNAを制限酵素で切断し泳動像のピーク値などをテロメア長としていた. 1996年に培養細胞を用いた細胞分裂中期 (metaphase) の染色体個々のテロメア長測定が quantitative fluorescence in situ hybridization (Q-FISH) により可能となり, 癌組織では, 特異的に限られた染色体のテロメアが短縮していることが報告された. 培養細胞や末梢血のテロメア測定は flow cytometery による flow FISH が行われ, 多くの白血病細胞におけるテロメア代謝が明らかにされた. 組織切片を用いたテロメア長測定法 (tissue FISH) は, 少数の論文の中で紹介されていたが良好な結果を得ることが困難であった. 我々の研究グループにより確立された組織切片を用いたテロメア長の測定法を紹介し, この方法は測定が容易であると同時に, 組織像と対比できる点で利点が大きく, 今後の組織のテロメア代謝の解明に貢献すると思われる.
  • 横野 浩一, 櫻井 孝
    2004 年 41 巻 4 号 p. 369-371
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 石川 冬木
    2004 年 41 巻 4 号 p. 372-374
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 遠藤 英俊
    2004 年 41 巻 4 号 p. 375-377
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    包括医療とは高齢患者に対して, 総合機能評価を行い, チーム医療を提供することでより全人的医療の提供をめざすものであり, 急性期医療, 亜急性期医療, リハビリ, 慢性期医療, 在宅医療を含む, Seamless care の総合的医療システムである. 本稿では高齢者医療において抱える様々な現状と課題について取り上げた. 一般病床では在院日数の短縮が求められており, 高齢者のクリティカルパスの重要性や, 退院支援のための入院スクリーニングが重要な意味を持つ. さらに高齢患者がいかに自宅や施設に退院するかについて, 介護システムの利用が欠かせないまた全人的医療をめざす上でもEBMだけはなく, NBMの重要性など今後の高齢者医療の展開についてデータを示しつつ, さらにQOLの向上や介護者支援の重要性を示し, 高齢者医療の現状と課題について概説を述べた.
  • 葛谷 雅文
    2004 年 41 巻 4 号 p. 378-380
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • フィールド医学の現場から
    松林 公蔵
    2004 年 41 巻 4 号 p. 381-383
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 田中 雅嗣, 武安 岳史, 福 典之, 藤田 泰典
    2004 年 41 巻 4 号 p. 384-386
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 三木 哲郎
    2004 年 41 巻 4 号 p. 387-389
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 江面 陽一, 江見 充
    2004 年 41 巻 4 号 p. 390-392
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 佐久間 一郎
    2004 年 41 巻 4 号 p. 393-395
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 菊谷 武, 西脇 恵子, 稲葉 繁, 石田 雅彦, 吉田 雅昭, 米山 武義, 勝又 徳昭, 渡辺 泰雄, 太田 昭二
    2004 年 41 巻 4 号 p. 396-401
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    歯の喪失は咀嚼機能に影響を与え栄養状態の悪化の要因になることが知られている. また, 嚥下機能の低下も栄養状態の悪化の要因となる.
    本研究では, 食事の介助法や食事の環境整備を主体にした栄養改善の取り組みに際し, 歯や義歯による咬合状態と嚥下機能の違いが介入効果に与える影響を検討した.
    対象は, 某介護老人福祉施設を利用する要介護高齢者 (38名: 平均年齢82.04±7.35歳) である. 栄養状態は血液生化学的指標にて評価し, 以下の成績を得た.
    1) 研究開始時 (介入前) に比較して6カ月後 (介入後) に血清アルブミン (介入前3.65±0.32g/dl, 介入後3.77±0.33g/dl), HDLコレステロール (介入前49.39±13.39mg/dl, 介入後53.44±11.27mg/dl), ヘモグロビン (介入前11.39±1.76g/dl, 介入後11.75±1.75g/dl) がそれぞれ有意に上昇を示した (p<0.05).
    2) 血清アルブミンの変化は, 無歯顎でも義歯を使用している者の集団において著しかった (介入前3.64±0.35g/dl, 介入後3.92±0.40g/dl) (p<0.05).
    3) 血清アルブミンの変化は, 嚥下機能が低下していると診断された集団において著しかった.
    以上の結果より, 食介護の適正化を中心とした介入を行った際に, 義歯の使用を行っていたものの方が, 栄養改善に与える効果が現れやすかった. このことは要介護高齢者の義歯の装着の重要性を示唆するものと考える. さらに, 適正な食事介助法によって嚥下機能が低下している者でも栄養改善が可能であることが示唆された.
  • 武田 章敬, 川合 圭成, 服部 陽子, 渡辺 由己, 水野 裕, 田畑 治, 川村 陽一, 柴山 漠人, 祖父江 元
    2004 年 41 巻 4 号 p. 402-407
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    痴呆性高齢者のコミュニケーション能力を評価するために「良好なコミュニケーションをとるために必要な能力」に関する半構造化面接の結果抽出された項目をもとに「簡易コミュニケーションスケール」を作成した. 本尺度は言語機能, 判断力, 感情機能等コミュニケーションに関連する能力を総合的に評価し, 視線を向ける, うなずき, 微笑などの非言語的コミュニケーションをも評価に含めており, 高度な痴呆を呈する高齢者にも負担をかけずに施行可能である. 施設入所中の痴呆性高齢者106名 (平均年齢82.6±7.9歳) に施行した結果, 本尺度の得点は介護スタッフへのアンケートによるコミュニケーション能力の評価 (r=0.958および0.952), GBS痴呆症状評価尺度の知的機能 (r=-0.904), 感情機能 (r=-0.841), 運動機能 (r=-0.679), 改訂長谷川式簡易知能評価スケール (r=0.625), Mini-Mental State (r=0.733) と相関を示し, 検者間信頼性 (r=0.828), 検査-再検査信頼性 (r=0.940), Cronbach のα係数 (0.938) も有意に高値を示したことから, 臨床的使用に耐え得る妥当性・信頼性をもつことが明らかになった. 以上の結果から「簡易コミュニケーションスケール」は痴呆性高齢者のコミュニケーション能力を測定するうえで有用な尺度であることが示された.
  • 山本 智子, 三浦 久幸, 中島 一光
    2004 年 41 巻 4 号 p. 408-413
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    国立医療機関における過去5年間の疥癬による院内感染事例について, アンケートによる調査を行った. 183施設へのアンケート送付に対し93施設より回答があった. 過去5年間に合計53事例の疥癬院内感染が24施設で報告されていた. 疥癬に罹患した患者の年齢層は高齢者, またはADLの低下した患者が多かった. 平均年齢が高く, かつADLが良い自立した高齢者の集団と考えられるハンセン氏病療養所 (7施設) で疥癬による院内感染を経験した施設はなかった. 院内感染が終焉したと思われるまでの期間は全体の平均で7.5週間で, 10人以上の規模の院内感染が発生した医療機関では対策期間は全例8週以上であった. 治療薬に関しては, 院内感染を経験している施設では1施設を除きすべての施設で保険外治療薬である安息香酸ベンジル, γ-BHC, フェノトリン (ピレスロイド系殺虫剤) が使用されていた. 対策上の問題点としては(1)診断・治療の遅れ, (2)看護側のマンパワー不足, (3)個室不足・患者の理解不足・患者の精神的変調による隔離困難, (4)薬剤の効果不十分による再発, (5)施設からの情報不足, (6)かゆみを伴う皮疹をすべて疥癬としてしまう過剰診断, (7)正確な患者皮膚状態の申し送りが困難であることに起因した一貫性を欠く疥癬患者に対する看護などがあげられた.
  • 島田 裕之, 鈴木 隆雄, 大渕 修一, 古名 丈人
    2004 年 41 巻 4 号 p. 414-419
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    長期ケア施設に入所する多くの高齢者が痴呆と身体機能障害を合併し, 転倒の危険性が高い. 本研究は転倒を予防するための監視者 (転倒リスクマネジャー) を長期ケア施設に導入し, その転倒予防効果を明らかにすることを目的とした. 対象は介護老人保健施設に入所する高齢者64名であった. 転倒リスクマネジャーは週3日間, 日中8時間, 合計50回, 転倒予防のためにレクリエーションや会話を通して入所者の監視を行い, 転倒の危険性を未然に防いだ (介入日). 介入日と非介入日 (同じ週の介入日以外の日) の転倒回数を比較した結果, 有意差は認められなかった. また, 介入後にGBSスケール (痴呆検査) が改善したことから, 転倒リスクマネジャーの導入は, 転倒事故を減少させることはできなかったが, 転倒の危険因子に対する改善効果を有する可能性が推察され, 長期的に観察する必要性があると考えられた.
  • 菊地 基雄, 稲垣 俊明, 上田 龍三
    2004 年 41 巻 4 号 p. 420-425
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は91歳女性. 1997年6月肺炎から成人呼吸窮迫症候群を来たし入院し治療した. 汎血球減少状態で, 骨髄検査では低形成で芽球の増加や異形成, 染色体異常を認めず再生不良性貧血 (AA) と診断した. 抗菌薬を投与しメチルプレドニゾロンのパルス療法を施行したところ, 呼吸状態は改善し末梢血血球数も安定した. 2001年6月37度台の発熱が続き白血球減少を伴い再入院した. 胸骨骨髄標本及び腸骨骨髄生検で骨髄中に小リンパ球の増殖を認めた. 骨髄組織の免疫染色所見やフローサイトメトリーで増殖細胞はCD5- CD10- CD11c+ CD19+ CD20+ CD23-で, CD30+, CD34+, CD56+細胞は少数であった. 細胞表面免疫グロブリンIgG, IgA, IgM, IgDは陰性であった. リンパ節性及び他の節外性病変を認めず, 骨髄細胞は染色体異常を伴い Southern 解析で免疫グロブリンH鎖遺伝子の再構成を認めた. Small lymphocytic lymphoma (SLL) と診断し, rituximab (375mg/m2) を4回静脈投与したが特記すべき副作用は認めなかった. 4週間後に腫瘍細胞のCD20抗原は飽和されたが, 免疫グロブリンH鎖遺伝子の再構成, 染色体異常を認めた. 汎血球減少の緩解は得られなかったものの, 血清LDH値やsIL2R値は減少し末梢血の血小板数や赤血球数は増加し, 全身状態は安定した. 本症例はAAから発症し骨髄に浸潤し, 表面抗原としてCD5- CD10- CD11c+ CD19+ CD20+ CD23-を呈した稀なSLLと考えられた.
  • 小泉 弥生, 粟田 主一, 関 徹, 中谷 直樹, 栗山 進一, 鈴木 寿則, 大森 芳, 寳澤 篤, 海老原 覚, 荒井 啓行, 辻 一郎
    2004 年 41 巻 4 号 p. 426-433
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    都市在住の高齢者におけるソーシャル・サポートと抑うつ症状の関連を明らかにするため, 仙台市T地区の70歳以上住民に対し総合機能評価を平成14年7月から8月に行った. 対象2,730人のうち1,198人が参加し, 聞き取り調査を受けた. ソーシャル・サポートに関しては, 村岡ら (1996) の調査票により (i) 困ったときの相談相手, (ii) 体の具合の悪いときの相談相手, (iii) 家事などの日常生活を援助してくれる人, (iv) 具合の悪いとき病院に連れて行ってくれる人, (v) 寝込んだとき身の回りの世話をしてくれる人の有無を尋ねた. 抑うつ症状の評価は Geriatric Depression Scale (GDS) 30項目を用い, GDSに回答した1,170人のうち, Mini-Mental State Examination (MMSE) が18点以上で研究に同意した1,146人を解析対象とした. GDS 10点以下を非抑うつ群, 11点以上または抗うつ剤服用者を抑うつ群とした. ソーシャル・サポートの欠如と抑うつ症状の出現に関する多変量補正オッズ比 (95%信頼区間) を (i) から (v)の各項目について, 多重ロジスティック回帰分析により算出した. その際, 年齢, 配偶者の有無, 同居人数, 既往疾患数, 教育レベル, 認知機能, 運動能力, 痛み, 主観的健康度を補正した. 抑うつ群は男性134人 (27.9%), 女性259人 (38.9%) であった. 質問 (i) から (v) まで各々の「ある」者に比べて「ない」者では抑うつ症状出現のオッズ比 (95%信頼区間) は, 男性では (i) 2.5 (1.5~4.1), (ii) 1.9 (1.1~3.2), (iii) 2.7 (1.7~4.4), (iv) 1.9 (1.1~3.2), (v) 2.8 (1.6~4.9) と全項目で有意に上昇した. 女性では (i) 1.2 (0.8~1.8), (ii) 1.2 (0.8~1.8), (iii) 1.4 (1.0~2.0), (iv) 1.6 (1.1~2.3), (v) 2.0 (1.4~2.9) と (iii), (iv), (v) の項目で有意にオッズ比が上昇した. 都市部高齢者では男女ともソーシャル・サポートの欠如と抑うつ症状との間に有意な関連があった. しかも男性では, 関連するソーシャル・サポートの種類と関連の強さの両面において影響が顕著であった.
  • 2004 年 41 巻 4 号 p. 434-444
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
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