目的:高齢者の唾液コルチゾールの日内変動およびその季節変動を明らかにする.
方法:介護付き有料老人ホームに入居する高齢者150名中,公募に応募し,日常生活は,老研式活動能力指標で高い自立度を示す18名(年齢79.0±8.0歳)を対象とした.対象の唾液を,10~12月(秋季),1~3月(冬季),4~6月(春季),7~9月(夏季)の,それぞれの時期の1日に,朝6時に3回,その後8,9,11,14,16,19,21時に採取を行った.6時の代表値は3回の平均値を用いた.唾液は,サリべットを用いて滅菌綿花に含ませ,専用のピンセットとシリンジで1~2 m
l採取した後,専用フリーザー(-20℃以下)に冷凍保存し,7日以内に酵素免疫抗体法(EIA)にて濃度を測定した.分析は,唾液コルチゾールを従属変数とし,性別,年齢,時期,測定時刻を独立変数とした一般線形モデルにて日内変動と季節変動を検討した.
結果:唾液コルチゾールに有意に関連した要因は,主効果では,時刻(朝>夜),性別(男性>女性;B=3.782),年齢(B=0.1151),時期(秋>夏)であった.さらに,時刻と性別との間に有意な交互作用がみられ,女性では6時の唾液コルチゾール濃度は男性より高く,その後濃度が漸減し大きな日内変動を示したのに対し,男性では6~11時の低下の度合いは小さく,その後漸減した.性別と時期,時期と時刻の交互作用はみられなかった.
結論:高齢者の唾液コルチゾール濃度は,若年者や成人と同様に,早朝に高く夜に低くなる明らかな日内変動を有した.また,日内変動は女性の方が大きいことが示された.さらに唾液コルチゾール濃度は夏低く秋に高くなる季節変動を示した.唾液コルチゾール濃度をストレス評価の指標として用いる際には,日内変動,季節変動,性差を考慮する必要がある.
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