目的:アパシー(意欲低下)は認知症によくみられる症状である.認知症では介護者評価が重要だが,国際的かつ日本語版のあるアパシーの介護者尺度はまだない.本研究では国際的に広く使用されているApathy Evaluation Scale介護者評価(AES-I)(Marin,1991)の日本語版を作成し,信頼性,妥当性,カットオフ値を検討した.
方法:1.日本語版の作成:AESを開発したMarinの許可を得て翻訳し,翻訳業者による逆翻訳を経て,著者より日本語版として承諾を得た.2.信頼性・妥当性の検討.対象は認知症専門外来受診の入所または在宅患者40(男16/女24)名.平均年齢は82.7歳,平均教育年数は8.9年,平均Mini-Mental State Examination(MMSE)得点は14.8点.対象者の意欲低下について,主介護者がアンケート形式でAES-I日本語版(AES-I-J)とNPI-NH項目7(アパシーの有無)を回答した.信頼性は内的整合性(Cronbachのα係数)と再検査法による級内相関係数にて検討した.再検査法は,4週間後に同一介護者がAES-I-Jを再回答した.妥当性はNPI-NH項目7を用い,AES-I-JのROC曲線下面積,カットオフ値,感度,特異度を求めた.
結果:AES-I-Jの平均値は45.8点であった.Cronbachのα係数は0.97,再検査法による級内相関係数は0.88(95%CI 0.72~0.95)(p<0.0001)であった.アパシーありの検出は,AES-I-Jのカットオフ値を45/46とした時,感度89.5%,特異度81.0%であった.
結論:AES-I-Jの信頼性と妥当性は高く,カットオフ値は先行研究よりもやや高い可能性が考えられる.
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