日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
51 巻, 5 号
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目次
原著
  • 葛西 真理, 目黒 謙一, 中村 馨
    2014 年 51 巻 5 号 p. 445-452
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/09
    ジャーナル フリー
    目的:アパシー(意欲低下)は認知症によくみられる症状である.認知症では介護者評価が重要だが,国際的かつ日本語版のあるアパシーの介護者尺度はまだない.本研究では国際的に広く使用されているApathy Evaluation Scale介護者評価(AES-I)(Marin,1991)の日本語版を作成し,信頼性,妥当性,カットオフ値を検討した.方法:1.日本語版の作成:AESを開発したMarinの許可を得て翻訳し,翻訳業者による逆翻訳を経て,著者より日本語版として承諾を得た.2.信頼性・妥当性の検討.対象は認知症専門外来受診の入所または在宅患者40(男16/女24)名.平均年齢は82.7歳,平均教育年数は8.9年,平均Mini-Mental State Examination(MMSE)得点は14.8点.対象者の意欲低下について,主介護者がアンケート形式でAES-I日本語版(AES-I-J)とNPI-NH項目7(アパシーの有無)を回答した.信頼性は内的整合性(Cronbachのα係数)と再検査法による級内相関係数にて検討した.再検査法は,4週間後に同一介護者がAES-I-Jを再回答した.妥当性はNPI-NH項目7を用い,AES-I-JのROC曲線下面積,カットオフ値,感度,特異度を求めた.結果:AES-I-Jの平均値は45.8点であった.Cronbachのα係数は0.97,再検査法による級内相関係数は0.88(95%CI 0.72~0.95)(p<0.0001)であった.アパシーありの検出は,AES-I-Jのカットオフ値を45/46とした時,感度89.5%,特異度81.0%であった.結論:AES-I-Jの信頼性と妥当性は高く,カットオフ値は先行研究よりもやや高い可能性が考えられる.
症例報告
  • 長田 正史, 長谷川 浩, 井上 慎一郎, 守屋 佑貴子, 輪千 督高, 須藤 紀子, 神崎 恒一
    2014 年 51 巻 5 号 p. 453-459
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/09
    ジャーナル フリー
    今回我々は,肺動脈弁に限局した感染性心内膜炎と確診された高齢女性の1例を経験した.症例は78歳女性.生来の日常生活動作は完全自立していた.2009年1月に一時的な悪寒を認めたが,自然軽快したため様子をみていた.2月7日再度悪寒が出現し,翌8日より食欲低下と左腰痛を認めた.嘔気と嘔吐も出現し,14日にトイレ歩行の際に下肢の脱力感を自覚した.その後会話や服薬も困難となり,体熱感と持続性の左腰痛が出現し,17日当院を受診した.来院時高熱と意識障害があり,炎症反応高値で血小板減少と血液凝固異常を認めたが,尿検査,頭部CT,胸腹部X線では有意な所見を認めなかった.体幹部CTでは腰椎の化膿性脊椎炎を否定できない所見を認めたものの確定診断には至らず,全身性炎症反応症候群の診断で緊急入院となった.抗菌薬投与を行ったが改善が乏しく,播種性血管内凝固症候群も併発し,第8病日に死亡した.病理解剖ではCTで指摘された腰椎に有意な炎症所見は認めず,肺動脈弁に限局した疣種を認め,感染性心内膜炎と確定診断した.入院前に定期的な歯石除去を行っていたことが判明し,喀痰培養と血液培養,疣種から検出された菌が同じ薬剤感受性をもつStreptococcus Group Gであったことから,歯科治療の影響が疑われた.高齢者の原因不明発熱では,感染性心内膜炎を念頭におき,歯科治療歴を含む充分な問診を行い,全身検索を進めていく必要がある.
  • 松尾 知平, 石川 宏明, 田地 広明, 吉田 和史, 寺本 信嗣
    2014 年 51 巻 5 号 p. 460-465
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/09
    ジャーナル フリー
    症例は,90歳,男性.主訴は,歩行困難.近医に脳梗塞,糖尿病で通院中.201x年x月,歩行困難を認め,頭部単純CT施行するも陳旧性病変を認めるも新たな病変を認めず,脳波検査にて,てんかん発作と診断された.その後もてんかん発作を繰り返すため精査加療目的で当院紹介受診.入院時検査にて,胸部X線で両側肺野に浸潤影を認めた.発熱およびCRP上昇を認め,超高齢者で脳梗塞後であることから誤嚥性肺炎と考えSBT/ABPCを投与するも改善せず,人工呼吸管理となった.気管支肺胞洗浄を行い,好中球・リンパ球共に増加しておりステロイドパルス療法行った.第13病日に喀痰塗沫検査,第14病日に施行した気管支鏡下の肺胞洗浄液でも塗沫検査の抗酸菌は陰性であったが,第13病日の喀痰培養検査が第36病日に陽性と判明した.結核菌PCR検査も陽性であった.その2日後病状の悪化にて死亡した.剖検肺には,肺結核に特徴的な類上皮細胞肉芽腫は認められず,好中球浸潤を主体とする細菌性肺炎像とフィブリン滲出と器質化像伴うびまん性肺胞障害や急性線維素性器質化肺炎が混在してみられ,滲出性肺結核と考えられた.その他,肝臓,脾臓,骨髄,副腎に結核性結節病変を認めた.脳梗塞後の超高齢者の呼吸器感染症としては,誤嚥性肺炎の頻度が高いが,結核を含め多くの鑑別疾患はある.本症例では誤嚥性肺炎発症時には,すでに肺結核を発病しており,発見の遅れのため,肺結核が進行し,適切な治療を行えずに不幸な転機をとったものと考えられる.
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