ニッケル系触媒によるCOの水素化反応では,メタン化反応のほかにFischer-Tropsch反応,COと生成水蒸気との反応によるH2への転化反応,生成CO2のメタン化反応,COの不均化反応などが進行する。またCO2の水素化反応ではCOにいったん還元されてから水素化されるとされていることから,COの場合と同様の関連反応が考えられる。そこで,これらの反応の関連性を解明する一助として,Ni-α-Al
203およびこれにLa,Y,Kを添加した含浸担持触媒上のCOおよびCO
2の水素化反応を検討した。すなわち,定温下の触媒活性・選択性の評価と,定速昇温反応法(T.P.R.)による触媒表面上の炭素種とその反応性を検討した。実験は,常圧流通式固定層反応装置を用い,定温実験では触媒(1.0mm径)O.5mlに対し10%CO-30%H
2-N
2あるいは10%CO,-40%H
2-N
2を500Ncmslmin(空間速度6×104h-1)で供給し,200~500℃ で行なった。またT.P.R.実験では,触媒1.0mlに対し,10%CO-N
2,10%CO-30%H
2-N
2,10%CO
2-N
2あるいは10%CO2-40%H
2-N
2を500Ncm
3/minで供給し,200~300℃ で1時間処理し,室温まで冷却後,10℃minの定速昇温下30%H
2-N
2を供給した。
得られたおもな結果は,1)CO-H,系では2種の,CO
2-H
2系では1種の触媒表面炭素種が存在する。2)CO-H,系の一つの炭素種と,CO
2-H
2系の炭素種は同一で,この炭素種がメタン化反応に関与する。すなわちCO
2はH
2によっていったんCOに還元され,COと同じ反応経路でメタン化反応が進行する。3)CO-H,系のもう一つの炭素種は低温域で起こるFischer-Tropsch反応に関与し・同時に進行するCOのメタン化反応を抑制する。このことがCOとCO
2のメタン化活性の間に差異をもたらす一因となっている。4)H
2と共存しないCO系では3種の炭素種が存在する。このうち2種はCO-H
2系のものと同様で,もう一つは主としてCOの不均化反応(2CO→C+CO
2)で生成する炭素である。
抄録全体を表示