日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
30 巻, 12 号
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  • 金子 憲太郎, 黒坂 光江, 前田 安彦
    1983 年 30 巻 12 号 p. 675-680
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    塩化カルシウムで処理したのちに塩蔵したウメ漬の硬度が保持される機構について検討した。
    (1)塩化カルシウムで処理したウメ漬の硬度は高かった。
    (2)ウメは塩蔵することによって塩酸可溶性ペクチン画分の減少と水溶性ペクチン画分の増加が急激に起こり,それに伴って軟化した。
    (3)塩化カルシウムで処理したウメ漬は無処理のものにくらべて水溶性ペクチン画分が少なく,ヘキサメタリン酸可溶性ペクチン及び塩酸可溶性ペクチン画分が多かった。また,硬度も高かった。
    (4)塩酸可溶性及びヘキサメタリン酸可溶性ペクチン画分が多く,水溶性ペクチン画分の少ないウメ漬ほどAIS中のカルシウムが多かった。また,塩蔵によってAIS中のナトリウム含量が増加した。
    以上の結果,ウメは塩蔵することによって塩酸可溶性ペクチン画分から水溶性ペクチン画分への変化が起こり,それに伴って軟化の生ずることが明らかになった。そして,そのことはウメのペクチン質に塩化ナトリウムのナトリウムが結合したことや有機酸による加水分解などにより,ペクチン質の分子構造に変化が起こり,その結果,組織構造が崩壊し,軟化すると推察した。
    また,カルシウム塩は塩酸可溶性ペクチン画分から水溶性ペクチン画分への変化の阻止と,ヘキサメタリン酸可溶性ペクチン画分の増加を引き起こしウメ漬の硬度を保持することが明らかになった。そして,このことはカルシウムがペクチン質の架橋結合を増強したため構造が安定化するためと考えた。
  • 奥 忠武
    1983 年 30 巻 12 号 p. 681-687
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    タンパクや脂質含量が高いといわれるマイワシを主原料とした揚げかまぼこを調製し, 3kGy照射および貯蔵を行い,アミノ酸や総菌数などの変化を調べ,前報のスケトウダラ主原料の場合と比較した。結果は以下の通りである。
    (1)アミノ酸含量はいずれも前報のスケトウダラ主原料の場合より高く, 18種アミノ酸の含量は照射および非照射試料間で大差がみられなかった。
    (2)照射によりメチオニンの酸化物であるメチオニンスルホキシドおよびスルホンの生成が認められた。
    (3)30℃で21日間の貯蔵を行つた場合,照射および非照射試料の全アミノ酸含量の減少は,それぞれ5.8%および4.8%と高く,総菌数やエキス中のアミノ酸含量の増加も早く,短期間で腐敗が起っていることが明らかであった。
    (4)10℃貯蔵の場合,非照射試料の全アミノ酸含量の変化は21日間を通じ大きくないが,総菌数とエキス,中のアミノ酸含量の増加は大であった。照射揚げかまぼこは56日間の貯蔵中, 18種アミノ酸の組成,エキス中のアミノ酸含量および総菌数の変化は極く僅かであり,その変化の度合は前報のスケトウダラ主原料の場合と同程度であることが判明した。
  • 辻 政雄, 原川 守, 小宮山 美弘
    1983 年 30 巻 12 号 p. 688-692
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    ソルダムスモモについてフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)の存在を調べるとともに, 30℃貯蔵における果肉色の増加抑制現象をPAL活性の変化から追求した。
    1)ソルダムスモモから粗酵素液を調製し,酵素反応によって生成するtrans-ケイ皮酸をペーパークロマトグラフィーと紫外部吸収のスポットの有無によって確認し, PALの存在が認められた。
    2)PAL活性の最適pHは8.8附近,最適温度は45~50℃であった。
    3)樹上での成熟中におけるアントシアニン色素含量とPAL活性の変化は両老ともほぼ平行的に推移し,収穫適期以後両者とも増大することからPAL活性がアントシアニン色素の生成に深く関与していることが推察された。
    4)貯蔵中におけるアントシアニン色素含量は3℃では変化なく推移し, 20℃では初期から増加し,後期になるとより顕著になった。 30℃ではその色素は増加するものの20℃に比較して低かった。 3℃及び30℃から20℃に移した場合,あるいは20℃から30℃に移した場合は増加する傾向であった。
    5)貯蔵中におけるPAL活性の変化は3, 20及び30℃貯蔵の場合,あるいは3℃及び30℃から20℃に移した場合はすべてアントシアニン色素含量の変化と平行的に推移し,この場合もPAL活性がアントシアニン色素の生成に深く関与していることが推察された。なお, 20℃から30℃に移した場合には, PAL活性は低下し,アントシアニン色素含量の変化とは相違した。
    本実験から30℃における果肉色の増加抑制は果実中のPAL活性が低いことによるものであることがわかった。
  • 山下 市二, 森 健, 飯野 久栄, 柳井 昭二
    1983 年 30 巻 12 号 p. 693-697
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    未利用食糧資源の有効利用および供給不足が懸念されているオガクズの代替物の開発を目的として,ハトムギ殻,落花生殼,芝草および多孔質石・米ぬかを利用するヒラタケ栽培を行つた。
    (1)ハトムギ殼,落花生殼,芝草のいずれも米ぬか無添加では子実体収穫量が低く,実用にはならなかった。
    (2)ハトムギ殼,落花生殼,芝草に米ぬかを16%添加した培養基の最適水分量は,それぞれ50%, 60%,65%であった。
    (3)ハトムギ殼,落花生殻,芝草に米ぬかを16%添加した培養基からの子実体収穫量は,それぞれ培養基重量の14%, 17%, 22%であり,オガクズ代替には落花生穀と芝草が有望である。
    (4)吸水多孔質石と米ぬかを混合して培養基とするヒラタケ栽培法で,米ぬか100g(乾物重量)あたり82~92gの子実体が得られた。このことは,ヒラタケ菌が米ぬかだけを栄養源としても子実体を形成し得ることを示した。
    (5)多孔質石を利用する栽培法は,多孔質石を容易に回収,再利用できるので,廃棄物を出さない利点がある。
  • 野並 慶宣, 斉藤 信, 佐々木 康弘, 鈴木 敦士
    1983 年 30 巻 12 号 p. 698-703
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    新鮮殼付鶏卵およびあひる卵を70℃あるいは100℃に30分間加熱した後凍結,解凍した場合の卵白の微細構造を透過型電顕で観察し,解凍卵白中に分離している液の組成を分析し,またオボムチンを希釈あるいはpHを5.50とすることにより沈でん,除去した卵白を同様に加熱,凍結,解凍し,その微細構造を観察し,次の結果をえた。
    (1)新鮮生卵白の微細構造は鶏とあひるとでは明らかに異なるが,いずれの場合も電子密度の極めて高い線維状構造が認められ,オボムチンを除去した卵白ではこの構造は認められない。
    (2)電顕図において,卵白蛋白質は加熱により電子密度の高い塊状となり,加熱温度が高くなるとこの塊の周辺部の電子密度は増大して塊の輪郭は明らかとなる。オボムチンを除いた場合は,加熱により生じた塊は互に接続するものが多くなり,酸によりオボムチンを除いた場合は,蛋白質は大部分電子密度の高い大きい塊となるが,酸によるこの変化はあひる卵より鶏卵において著しい。
    (3)分離液の重量の卵重に対する割合はいずれの加熱条件下においても鶏卵とあひる卵で差はないが, 70℃,30分間加熱のあひる卵の分離液中の固形物含量は他の場合より著しく少ない。
    (4)分離液中の窒素は, 100℃, 30分間加熱の鶏卵,あひる卵および70℃, 30分間加熱の鶏卵の場合は蛋白態のものが多いが, 70℃, 30分間加熱のあひる卵の場合は大部分が非蛋白態である。また分離液中のヘキソサミン,ウロン酸は鶏卵よりあひる卵に多い。
    (5)鶏卵およびあひる卵の分離液中の遊離の糖のペーパークロマトグラフィーによる分析結果は,新鮮鶏卵卵白の透析性糖のそれとは異なる。
  • 鎌田 慶朗, 加藤 武弘, 山内 文男
    1983 年 30 巻 12 号 p. 704-708
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    蒸煮した丸大豆中のタンパク質の変性状態を,各種の抽出方法を用いた抽出率によって検討した。常圧で0~60分間蒸煮した大豆を試料として用い,このタンパク質抽出率をタンパク質分解酵素,糖質分解酵素あるいは変性剤を含む緩衝液や,機械的な分散処理を用いて測定した。また,抽出物のSDS電気泳動分析や,抽出残査の顕微鏡観察も合わせて行った。水抽出率は蒸煮時間が長くなるに従って低下し,蒸煮10分で最低レベル(約20%)に達した。トリプシンを含む緩衝液での抽出率はやはり蒸煮時間により低下したが, 10分での最低レベルは約40%で,さらに蒸煮すると再び回復し, 60分蒸煮した豆では未蒸煮のものとはほとんど変わらない抽出率が得られた。電気泳動分析によれば,トリプシンにより抽出されるタンパク質は未変性のものと異った分解パターンを示し,変性していることが明らかとなった。以上の結果,蒸煮丸大豆中のタンパク質の変性はトリプシンによる抽出によって評価され得ることが示唆された。このタンパク質はまた,高濃度の変性剤によっても容易に抽出されたが,蒸煮時間の違いによる差は見られなかった。糖質分解酵素や機械的な処理は抽出率にはほとんど寄与しなかった。
  • 福谷 敬三, 小川 浩史
    1983 年 30 巻 12 号 p. 709-715
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    逆浸透法による温州ミカン果汁の濃縮試験を行ない,3種類の膜(酢酸セルロース,複合膜,ポリアクリロニトリル系)を用いて,透過流束,果汁成分の透過性などについて検討した。
    (1) 操作圧力70kg/cmcm2の場合,効率的な濃縮は30°Bx前後迄であった。
    (2) 供給液としては,清澄果汁が最も望ましく,混濁果汁においては,パルプ量の増加に伴ない透過流束の著しい低下がみられた。混濁果汁では,供給液流量の増大に伴ない,透過流束の増加がみられた。
    (3) 清澄果汁においては,操作圧力を高めることは,透過流束の増加に大きく寄与するが,混濁果汁では顕著な効果はみられなかった。
    (4) 果汁成分の阻止率は,糖に比べ,酸,カリウム,ビタミンCがわずかに低い値を示した。また酢酸セルロース膜は他の膜に比しやや低い値を示した。
    (5) 原果汁に含まれている芳香成分のうち,テルペン系炭化水素類の阻止率はいづれの膜ともにほぼ100%であった。アルコール類,アルデヒド類については膜による差がみられ,非酢酸セルロース系膜に比し酢酸セルロース膜では,透過がより大きかった。
  • 加藤 司郎, 北村 英三, 大島 貞雄
    1983 年 30 巻 12 号 p. 716-718
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
  • 板橋 雅子
    1983 年 30 巻 12 号 p. 719-721
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    ミズナをすんき漬法によって保存食化することを目的とし,ミズナ生鮮物およびそのすんき漬の粗たんぱく質と遊離アミノ酸とを分析して,以下の結果を得た。
    (1) 生鮮物では粗たんぱく質含有量や旨味アミノ酸含有量は葉部が茎部より多い。従って従来賞用されていた茎部より葉部の方が,栄養的にもまた味覚上にもすぐれていることを知った。
    (2) すんき漬法によって,ミズナを保存食化することが可能であることを知ったが,遊離アミノ酸の残存量が少ないことより,味覚の点では凍結乾燥物より劣る。
    (3) ミズナの漬たんぱく質中には必須アミノ酸も含まれている。
  • くん煙成分をめぐる諸問題と今後の展望
    チュエン グュエン.ヴァン, 加藤 博通
    1983 年 30 巻 12 号 p. 722-728
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
  • 魚住 純, 岩元 睦夫
    1983 年 30 巻 12 号 p. 729-734
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
  • 田中 芳一
    1983 年 30 巻 12 号 p. 736
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
  • 1983 年 30 巻 12 号 p. A85-A91
    発行日: 1983/12/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
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