汚染水域において蒸発法によって海水淡水化を行なう場合, 汚濁物質が生成淡水の水質に与える影響を調べる目的で, 汚濁物質の一つであるアンモニウムイオンをとりあげ, フラスコ蒸留試験により基礎的なデータを得るとともに, 蒸発法海水淡水化プラントを用い, 原料海水に微量の塊化アンモニウムを添加し, その挙動を調べた.
アンモニウムイオンはアンモニアとして水蒸気とともに揮発して生成淡水に混入する. その留出はブラインのpHによって著しい影響を受ける. 緩衝液を加えたブラインを常圧で蒸留した場合, 初留3.6%の容量の留出の濃縮限界値はpH6.4で, それ以上のpHでアンモニアは蒸留水に濃縮し, 以下では残留液に濃縮する. 初留14.3%の容量を留出させた場合の限界pHは6.6付近となるが, プラントでは高圧から低圧までの範囲で蒸留が行なわれるため, 気液平衡の平均値が変わり, pH6.9付近が限界値となる. この装置の循環ブラインpH7.0~7.4の通常の運転では, アンモニウムイオンは1.5~1.7倍量が生成淡水に濃縮してくる. したがってアンモニウムイオンによって汚染された海域での海水淡水化では, アンモニウムイオン除去のためなんらかの処理または循環ブラインのpH6以下での運転を行なうなどの注意が必要となる.
この研究にあたり, 東海大学海洋学部学生である川端知治, 北村光夫, 稲美富佐夫, 土屋稔, 山川耕平, 内田樹三男氏らの協力を得た.
またプラント運転試験には (株) 笹倉機械製作所および石川島播磨重工業 (株) の協力を得た.
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