健常な中高年男女60名を対象に, 1974年から1981年まで8年間, 食生活と若干の健康指標を追跡調査した. その中から動脈硬化の危険因子である血圧, 肥満度, 総コレステロール, β-リポプロティン (β-Lipo) の他, フィブリノーゲン (Fbg), GOT, GPT, LDH, アルカリフォスファターゼ (Alk-P), を選び, 加齢変動について性別, 個人別に検討した.
1) 加齢変動が認められた項目は, Fbg, LDH, GOT, GPT, 肥満度 (男女とも共通), Alk-P (男のみ), β-Lipo (女のみ) であった.
2) Fbg は男女とも, 加齢と共に低下した. この結果は, 調査した年齢の範囲で,“加齢と共に上昇する”というこれまでの報告と必ずしも一致するものではなかった.
3) LDH, GOT, GPTは男女とも, 加齢と共に上昇し, 肝機能低下が推察された.
4) Alk-P は男で加齢と共に有意に低下した. 一方, β-Lipo は女で加齢と共に有意に増加した. しかし, 個人別データでは個人差が大きく, 変化の方向は一定ではなかった.
5) 血圧, 血清総コレステロール値は, 個人別の加齢変動が若干認められたが, 集団として共通の現象ではなかった.
以上, 血漿フィブリノーゲン, 肝機能検査値等には加齢変動が認められた. しかし, 動脈硬化の危険因子そのものの変動は少なかった. その理由として本対象が成人病, 特に動脈硬化による疾患予防についての知識が普及した集団であり, 自ら健康管理を行ったものと考えられた.
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