日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
28 巻, 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 寳學 英隆, 松本 昌泰, 北川 一夫, 原田 貢士, 奥 直彦, 伊藤 泰司, 前田 宏明, 半田 伸夫, 木村 和文, 鎌田 武信
    1991 年 28 巻 6 号 p. 741-747
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    無症候性脳梗塞発現における高血圧症の意義を明らかにするため, 脳卒中発作の既往のない高血圧患者 (WHO I~II期) 66例と, 年齢を一致させた正常血圧患者42例にMRI (0.1T) を施行して, 脳梗塞合併率, 病変の分布, 個数, 大きさを評価し, 同時に合併する脳卒中危険因子についても検索した. また, 高血圧例では東大3内科判定基準により臓器障害度を評価した. 高血圧群における無症候性脳梗塞合併率は47%と正常血圧群に比し高値を示し, 加齢により有意に増加した. また, 高血圧群では, 臓器障害度が強い程, 梗塞合併率は有意に高かった. 無症候性病変のほとんどは基底核, 白質の小梗塞として認めたが, 高血圧群においては合併梗塞個数が正常血圧群に比し有意に多く, その病変分布の主体は高血圧性血管壊死の好発する穿通枝系領域であった. 以上, 高血圧症が無症候性脳梗塞, なかでも穿通枝領域の梗塞の発現に深く関わることが示唆された.
  • 加々美 明彦, 日野 浩一, 望月 恵子, 阪本 琢也, 多田 紀夫, 石川 俊次, 真鍋 満久, 佐藤 能理子
    1991 年 28 巻 6 号 p. 748-754
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高コレステロール血症治療薬である probucol および pravastain 投与におけるHDLの変化を量的変化だけでなく, 質的変化の面からも検討する為, HDLの粒子サイズや抗アポA-I, 抗アポA-II抗体アフィニティーカラムを用いて分離したHDLの亜分画に相当する lipoprotein A-I without A-II (Lp A-I), lipoprotein A-I with A-II (Lp A-I/A-II) 粒子の変化について検討した.
    probucol はHDL-コレステロール, 血漿アポA-I/アポA-II比, 直径10.4nm以上の大型粒子を有意に減少させた. Lp A-I, Lp A-I/A-IIの比率を正脂血症者および probucol 投与前・後で比較したところ, probucol 長期投与ではLp A-Iの比率の減少が著明で, 長期投与におけるHDL-コレステロールの低下はLp A-I/A-IIよりもLp A-I粒子の減少をより一層反映しているものと推測された.
    一方, pravastatin 群では, HDL-コレステロール, 血漿アポA-I/アポA-II比, HDL粒子サイズ等は有意の変化を示さなかった.
    今後, HDL-コレステロールの抗動脈硬化作用を検討するにあたっては, リポ蛋白の代謝に重要な役割を演じているアポ蛋白の面からHDLをながめることが重要と考えられる. すなわちHDLをLp A-I, Lp A-I/A-IIにわけて, それぞれの代謝や役割を追求することが必要と思われる.
  • 特に虚血性脳血管障害の合併について
    馬原 孝彦, 岩本 俊彦, 高崎 優, 勝沼 英宇
    1991 年 28 巻 6 号 p. 755-760
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者パーキンソン病 (P病) 例において, これまでの病理学的検討では Alzheimer 型老年痴呆 (SDAT) や脳血管障害 (CVD) の合併が少なくなく, それらがP病に合併する痴呆の一因となり得ることが指摘されている. しかしP病とCVDの合併の問題を臨床的に検討した報告はほとんどない. 今回は高齢者P病における, CVDの合併頻度および併発例の病態につき, MRI・SPECT所見を中心に検討した.
    P病と臨床診断 (2年以上観察, 一時期は3主徴を有し, L-dopa の有効性を確認) した70歳以上の34例 (平均年齢76.5歳, Yahr II度4例・III度26例・IV度4例) を対象とした.
    MRIにて lacune を中心とした虚血性CVDを有する例〔CI (+) 群〕は, 23/34例 (67.6%) と高率に認められた. CI (-) 群 (11例) のSPECT所見としては, 痴呆の特に強い2例においてSDAT例と類似の両側側頭-頭頂葉の低集積域を認めた. CI (+) 群23例のうちSPECT施行した16例中10例で皮質 (7例は前頭葉) の軽度低集積域を認めた. CI (-) 群のうちSDAT類似のSPECT所見を認めた2例を除いた9例とCI (+) 群の局所脳循環の比較では, CI (+) 群の前頭葉における値が有意に低値を示し, 長谷川スケールの比較では, 前者が26.8±5.2, 後者が22.5±6.7と, CI (+) 群で有意に低値 (p<0.05) を示した.
    以上より, 高齢者P病例では, lacune を中心としたCVDの合併が高率に認められ, それは前頭葉血流分布及びHDS得点に影響を及ぼしていた. よって高齢者P病例では, CVDの合併が痴呆の一因となりうることが臨床的にも示された.
    また, 高齢者においては, CVDを伴うPDと, 血管性 Parkinsonism の臨床的鑑別がむずかしいこと, および混合型 Parkinsonism という概念が必要かどうかについて今後慎重に検討すべきであることを指摘した. 一方でSDAT相似のSPECT所見を呈す例があり, 痴呆の程度も強く, SDATの合併が疑われた.
  • 寺井 敏, 佐々木 由美, 馬場 亮三
    1991 年 28 巻 6 号 p. 761-767
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    発症後24時間以内に当院へ入院した高血圧性被殻出血32例を, 退院時の転帰より独歩可能な11例をA群, 杖歩行9例および車椅子2例の合計11例をB群, そして, 血腫除去術が施行された6例に死亡例4例を加えた10例をC群に分類した. これら3群における急性期での病態生理および網膜, 心,腎での高血圧性臓器障害の程度などにつき比較検討を行い, 高血圧性脳出血の予後を規定する因子への解明を試みた. さらに, 32例中10例では血腫体積, 1日平均血圧, 1日尿中カテコールアミン排泄量の各間における相関の有無につき検討を加えた.
    平均年齢はA群61.4±8.1歳, B群58.0±11.3歳, C群52.4±6.8歳であり3群中C群で最も若かった. C群では, 入院時 (第1病日) の血腫体積は50.2±28.2mlとA群の19.5±8.8ml, B群の25.1±12.6mlと比べ有意に大であり (p<0.01 vs A群, p<0.05 vs B群), 入院翌日 (第2病日) には98.4±39.5mlと有意な血腫増大がみられた (p<0.01). 同群では, 第1病日での平均血圧は他の2群と比べて高く, 第2病日にはその平均収縮期圧は上昇傾向を示し, A, B両群との間に有意差を認めた (p<0.05 vs A群, p<0.01 vs B群). 血液生化学および血液凝固学的検査値, 高血圧性臓器障害の程度には3群間で差を認めなかった. 血腫体積は各血圧の平均値および尿中カテコールアミン排泄量との間に相関を示さなかった. しかし, 1日尿中ノルアドレナリン排泄量と平均収縮期圧との間には良好な正の相関がみられた (r=0.735, p<0.05).
    以上より, 入院時に50ml以上の血腫量を有するもの, あるいは, 入院時より血圧の高値が持続するものでは, 入院後に著しい血腫増大をきたす危険性が高く, これらの症例では交感神経機能の亢進状態にあるものと思われた. なお, 高血圧の重症度と血腫の進展度には相関は認めなかった.
  • 上野 満雄
    1991 年 28 巻 6 号 p. 768-772
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    長寿地域とされる沖縄県O村における老人健康調査の中から, 本報では活力のある老人の多いこの地域の特徴に注目し, 身体的移動能力の高さに寄与する関連要因について疫学的検討を行ったので報告する.
    研究対象は, 沖縄県O村に存在する65歳以上の老人756人である. 身体的移動能力の高さに関連する要因の検討対象として, 性別, 年齢, 喫煙状況, 仕事, 飲酒, 医学的指標 (高血圧, ケトレー指数, 皮下脂肪厚, 握力, 血清アルブミン, 血清総コレステロール, 血色素), 食品摂取頻度を採用した. 統計的解析方法としては, 身体的移動能力を目的変数とし, 関連要因検討項目を説明変数として多重ロジスティック回帰分析を用いた. 医学的指標のうち, 連続量については, 平均値±標準偏差によって3段階に分類した.
    身体的活動能力の高さに効果をもった項目として年齢の低い群, 仕事への従事群, 食品摂取頻度の高い群の中では魚類, 卵, 緑黄色野菜, 医学的指標としては皮下脂肪厚が高い群, 握力の大きい群, 血清アルブミン値の高い群が認められた. 食品摂取頻度のうち肉類については摂取頻度の高い群のオッズ比が1.86と高い傾向を示したが, 統計的有意差は出なかった. 喫煙の影響は, 喫煙量が増加するとオッズ比の低下する傾向はあるものの, 統計的有意差は認めなかった. 飲酒についても飲酒の有無で差は認められなかった.
    沖縄の老人の食生活や労働の特徴については, いくつかの報告がなされているが, 動物性食品と植物性食品のバランスが良いことや1年中農作業に従事出来ることなどが長寿の要因として推測されている. 本報の分析結果は, 身体的移動能力の高さにもこれらの生活習慣が寄与していることを示唆しているものと考えられる.
  • 二つの老人専門病院の退院患者調査
    高橋 龍太郎, 奥川 幸子
    1991 年 28 巻 6 号 p. 773-780
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老人専門病院に入院する老人の Quality of Life (QOL) を高める目的で, 退院後まもない患者900名を対象に「入院中提供された医療・ケアへの満足度」を中心としたアンケート調査を行った. 回収率は66% (598票) で, 集計は二つの病院別, 性別, 年齢別, ADL別 (4群), 疾病別 (10分類), そして記入者別に行われたが, ADL別および疾病別の集計結果に統計的解析を加えた.
    1)「入院中に受けたサービスは満足できるものだったか」との問いを否定したものは1.2%にすぎなかったが, 一部介助を要するADL状態にある群, 中枢神経系疾患群及び骨関節疾患群で有意に高率であった.
    2) これらのADL, 疾病群の患者は, 即日入院かつ長期入院が多いにもかかわらず, 入院期間が短いとし, 退院後の在宅サポートシステムや福祉情報を必要としていることが示唆された. また,「職員の態度」を「悪い」と評価する率も有意に高く認められた.
    3) 一方, 全介助のADL群では「入院中に受けたサービス」「職員の態度」に否定的に答えたものはなく,「普通」,“こんなもの”といった判断が目立った.
    4) プライバシーについてはADL低下にともなって「守られていない」とする率が増加し, 配慮の必要性が示された.
    医療・ケアへの不満は, ADLの自立を妨げる疾病・障害に集中して表れ, 老人医療の中でQOLを向上させるとき克服されるべきポイントと思われる.
  • 千田 宏司, 大川 真一郎, 前田 茂, 久保 木謙二, 今井 保, 坂井 誠, 渡辺 千鶴子, 松下 哲, 上田 慶二, 蔵本 築
    1991 年 28 巻 6 号 p. 781-789
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    心エコー検査を施行した60歳以上の老年者9,670例中, 収縮期前方運動 (SAM) を示した55例 (0.57%) を対象とし, その臨床的特徴および心エコー図上の左室の形態学的特徴を明らかにした. 55例の平均年齢は78.2歳, 男性19例, 女性36例であった. 心エコー図でのSAMの程度により, 心室中隔に接しない38例をI群, 中隔と接するが心エコー図上の収縮期の30%をこえない10例をII群, 30%以上接する7例をIII群に分類し検討した. 高血圧の既往を35例 (64%) に, 心電図にて左室肥大を34例 (62%) に認めた. I群1例, II群3例, III群7例全例が臨床的には肥大型閉塞性心筋症と診断された. 3群間の比較では, 左室肥大はII, III群で高率であったが, SVI+RV5が70mm以上の例はIII群で高率となった. III群で心室中隔と左室後壁が肥大する傾向が認められ, III群では心室中隔と左室後壁の比は1.37±0.17と非対称性中隔肥大を示した. 左室拡張終期径とC点での心室中隔と僧帽弁前尖との距離はII, III群で有意に小で (p<0.05), 左室および左室流出路の狭小化を認めた. 上部心室中隔突出はSAMが高度になるにつれ高率となった (p<0.01). 剖検しえた9例中 (I群6例, II群1例, III群2例), 肥大型閉塞性心筋症に特徴的とされる心室中隔上部の線維帯をII, III群の3例に認めた. 以上より, SAMを示した55例の特徴は, 1) 左室内腔の狭小化, 2) 左室内腔の狭小化による余剰腱索の発生, 3) Aorto-septal angle の狭小化や上部心室中隔突出による左室流出路の狭小化, 4) 僧帽弁輪石灰化による僧帽弁の前方変位, 5) 良好な左室収縮機能の5点である. これらのうちいくつかの因子を合わせ持つ例にSAMが出現すると考えられ, さらに, SAMの進行には, 左室流出路の狭小化と左室肥大の進行が関与していることが示された. また, 剖検例では, 僧帽弁エコーが収縮期に心室中隔と接するII, III群の例にのみ中隔線維帯を認めた.
  • 中里 克治, 下仲 順子, 成田 健一, 本城 由美子
    1991 年 28 巻 6 号 p. 790-800
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者の適応状況を客観的に測定するため, 介護者による評価を用いた行動評価表を作成し, 4つの特別養護老人ホームにすむ280名の老人を対象として, 施設職員に行動評価を求め, 信頼性・妥当性の検討を行った. 信頼性は内的整合性, テスト-再テスト間の安定性, 評定者間の一致度から検討した. いずれの信頼性係数も非常に高く十分な信頼性を持つことが示された. また妥当性を検討するため, 身体状況, 生活状況, 知的能力と人格を含む19の外部変数と行動評価表の得点との相関を求めたところ, 総合的評価と5下位尺度 (ADL, 活動性, 対人関係, 痴呆, 問題行動) が老人の評定に有効であり, 老人の日常生活における行動から高齢者の適応状況を適切に測定することが示された. また, 総得点, 各下位尺度ともに年齢, 性別, 施設入所年数, 教育の諸変数と相関が低く, 本行動評価表がこれらの特性を考慮せずに使えることが示された.
  • P3a成分とP3b成分
    戸田 和夫
    1991 年 28 巻 6 号 p. 801-810
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Parkinson 病 (PD) 31例の事象関連電位 (ERP) を測定し, Alzheimer 病 (AD) 9例, 正常者37例のそれらと比較した. ERPは3種の視覚図形 (低頻度標的刺激: RT, 低頻度非標的刺激: RNT, 高頻度非標的刺激: FNT) を用い, RTおよびRNTから得られたERPより各々P3b, P3aを導出した. PD群のうち痴呆を有する症例では age match した正常群に比しP3b潜時の延長がみられたが, P3a潜時は痴呆の有無に関わらず正常群と明らかな差はみなかった. AD群ではP3a, P3b潜時とも延長していた. P3aは自動処理段階を反映し, P3bは注意制御処理を反映すると考えられることから, ADと異なりPDでは自動処理段階は障害されにくいことが示唆された.
  • 中田 安彦, 島尻 正紀, 島袋 充生, 大城 康一, 長嶺 文雄, 村上 啓治, 三村 悟郎, 小山 雄三, 大澤 炯
    1991 年 28 巻 6 号 p. 811-816
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    MRIが診断に有用であった高齢発症の特発性後腹膜線維症の1例を経験したので報告する. 症例は74歳の男性で全身倦怠感, 食思不振を主訴に入院した. 左臍上部に, 表面平滑で弾性硬な腫瘤を触知し, 血沈の亢進, 腎機能低下が認められた. 腹部エコー・CTでは, 後腹膜腔に腹部大動脈及び下大静脈と一塊になった腫瘤と, 両側水腎症が認められたが確定診断には至らなかった. 一方, MRIでは, 腹部大動脈前方に脂肪組織より low intensity, 筋組織より high intensity を示す homogeneous な腫瘤が認められ, 大動脈等の周囲臓器とは境界明瞭で, 良性後腹膜線維症が疑われた. 手術時の組織標本では, 明らかな腫瘍細胞は認められず, 非特異的な炎症所見を示す線維組織及び新生血管の増生やリンパ球の浸潤がみられ, 特発性後腹膜線維症と診断された. 尿管剥離術及び尿路変更術を施行し, 手術後ステロイド投与により血沈の持続的な亢進は正常化し, 後腹膜線維症の増悪はみられなかった. 今回我々は, 本邦における特発性後腹膜線維症86例 (1990年7月までの文献報告) と自験例とを集計し, 性別・年齢を検討した. 性差は従来の報告と同様, 男性:女性=2:1であり, 発症年齢のピークは60歳代で, 高齢者での発症は稀で, 本症例が本邦最高齢者であると思われた.
  • 橋爪 喜代子, 佐藤 充重, 佐伯 集一, 高本 勝之, 美濃 良夫, 大西 利夫
    1991 年 28 巻 6 号 p. 817-822
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    帯状疱疹にて入院し, 貧血, 片麻痺を合併した高齢者SLEと思われる1症例を経験した. 患者は70歳の女性. 帯状疱疹にて入院し, 検査上, 血沈の亢進, 中等度貧血, 網状赤血球の増加および血小板の減少を認めた. 入院後帯状疱疹は改善したが, 貧血は進行し, 精査を行ったところ, 溶血性貧血が疑われた. また, 眼底所見 (シミ状出血, 軟性白斑) より基礎疾患としてSLEを疑い, 免疫学的検査を行ったところ, 1982年ARAの診断基準の4項目の陽性所見によりSLEと診断した. 経過中, 右不完全麻痺が出現した. プレドニン投与により, 貧血, 免疫学的所見, 片麻痺とも軽快した. 高齢者のSLEは若年者に比し非定型的で, 老化に伴う免疫異常や臓器の変化に修飾されて診断が困難な場合がある. SLEに貧血を伴うことは多いが, AIHA合併は比較的まれである. 本症例はクームズ試験陰性であり, 通常のクームズ血清の検出限界以下の赤血球抗体または非特異的抗体により, 何らかの溶血機転が関与したと考えられた. 片麻痺に関しても, 脳CTスキャンやMRIで異常所見が見出せず, SLEとの関連は否定できない.
  • 池田 裕
    1991 年 28 巻 6 号 p. 823-828
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    慢性うっ血性心不全と肝硬変の経過中に低T3症候群を呈した68歳の男性に, 家族性と推定できなかった特異な低βリポ蛋白質 (βLP) 血症を認めた. Apo Bが20mg/dl, 低比重リポ蛋白質 (LDL)が157mg/dl, ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (PAGE) でのβLP分画比が7%と異常低値であった. 低コレステロール血症, 低燐脂質血症だが, カイロミクロン (CM) の存在のためにトリグリセライド (TG) は正常濃度であった. PAGEで mid-band を認め, これにLp (a) リポ蛋白質〔Lp (a)〕の存在を確認したが, 濃度は18.3mg/dlで対照と同等であった. Lecithin cholesterol acyltransferase (LCAT) と肝性リパーゼ (H-TGL) とリポ蛋白質リパーゼ (LPL) は低活性であった. Apo A濃度は正常なのに, apo Cと apo Eは低レベルであった.
    著者のこれまでの成績では, 症候性低βLP血症や臍帯血の生理的低βLP血症の apo Cは大部分が高比重リポ蛋白質 (HDL) に分布しており, apo Eはその大部分がHDL-with apo Eすなわちα2-apo Eとして存在していた. また, 甲状腺腫群では全 apo Eに対するα2-apo E分画比と apo B濃度の間には, 密な逆相関関係が認められた. そして今回の検討で, 低T3症候群患者でのα2-apo E分画比は健康対照のものより高いことがわかった. ところが, 本症例では, apo C-IIIはCMとβLPにわずか存在し, 大部分はHDLに分布しているのに, apo EはCMとβLPにのみ分布していて, α2-apo Eが欠如していた. この apo E分布は, 低βLP血症としては特異なものである. そこで, apo E分布に関与する因子を考察した結果, この特異な apo E分布の原因として, 主に, LPL活性の低下が推測された.
  • 杉原 伸幸, 松崎 益徳, 加藤 由起子
    1991 年 28 巻 6 号 p. 829-836
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例: 76歳, 男性. 身長150cm, 体重45kg. 血圧120/64mmHg, 脈拍90/min. 心臓は心音遠く心雑音を聴取せず. 胸写は肺野の透過性が亢進し, 心陰影に著変なし. 心電図は肺性P波, 完全左脚ブロックと単源性心室性期外収縮をみた. 心エコー図は, 左心不全, 左室後壁肥大, 軽度な僧帽弁閉鎖不全と左房拡大をみたが, 僧帽弁輪石灰化はなかった. 大動脈弁に軽度な石灰化をみた. 三尖弁弁輪部は, 下大静脈の右房開口部近傍の右背方に著明な石灰化をみた. 石灰化像は10×14mm径で心周期に一致する運動をみた. 三尖弁閉鎖不全は認めず. 胸部CTは三尖弁輪部に相当する心基部右側部に石灰化像をみた. 血液は貧血があるも, 血糖, 脂質や肝・腎機能検査値は正常. 梅毒反応は陽性. 副甲状腺ホルモンとカルシトニンは正常. 腰椎骨量や椎体は骨粗鬆症の所見が少なかった. 高齢男性の肺気腫に合併した原因不明の三尖弁輪石灰化の1例であった.
  • 豊田 英樹, 留奥 誠, 藤岡 博文, 浜田 正行, 金丸 正泰
    1991 年 28 巻 6 号 p. 837-838
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 28 巻 6 号 p. 839-885
    発行日: 1991/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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