MRIT
2強調画像上の大脳皮質の低信号域 (T
2-CLIA) の出現は, アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症などで指摘されているが, 他の疾患においては詳細な検討がなされておらず, その出現の様態や病的意義は不明である. そこで我々は, T
2-CLIAを各種神経疾患において検索し, 年齢別, 疾患別の出現頻度や, MRI上に見られる他の退行性変化との関連性を明らかにするため以下の研究を行った.
対象は, アルツハイマー型痴呆16例, 多発性脳梗塞53例, パーキンソン病8例, その他の中枢性神経疾患33例, 末梢性神経疾患29例からなる, 6歳から85歳までの計139例 (平均年齢60.6歳±標準偏差18.5歳) である. MRIT
2-強調画像 (TR: 2,000ms, TE: 80ms) におけるT
2-CLIAを, 運動領野 (MC), 感覚領野 (SC), 後頭葉 (OC), その他の部位ごとに段階付けをもって評価した.
T
2-CLIAはMC, OC, SCに認められたが, その他の部位には認められなかった. MC, OC, SCにおけるT
2-CLIAは50歳代以降に出現し, いずれの部位においても加齢と共に出現率が増加した. 70歳以上でT
2-CLIAは, MC広範に認められるものは50.9%で, 一部に認めるものを含めると88.7%, OCでは47.2%, SCでは20.8%に認められた. T
2-CLIAの出現する部位や頻度は疾患により違いがあり, MCのT
2-CLIAは70歳以上では多発性脳梗塞および全中枢性神経疾患は, 末梢性神経疾患より有意に出現率が高かった. またT
2-CLIAはMCでは側頭葉萎縮, 白質病変と, SCでは白質病変と相関を認めた.
T
2-CLIAの加齢に伴う出現率の増加は, 大脳皮質の非ヘム鉄含有量の加齢による増加によると考えられ, ある種の中枢神経疾患おいては加速される.
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