日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
31 巻, 9 号
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  • 26年間の追跡調査
    岩本 廣満, 清原 裕, 加藤 功, 大村 隆夫, 中山 敬三, 大森 将, 野見山 賢介, 吉武 毅人, 上田 一雄, 藤島 正敏
    1994 年 31 巻 9 号 p. 671-676
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1961年に設定した久山町の追跡集団1621名 (当該年齢人口の約90%) のうち, 60歳以上の591名 (男性245名, 女性346名) を対象とした. この集団を1961年11月から26年間追跡し, 主要死因別死亡率とその危険因子について検討した.
    追跡期間中に529名 (89.5%) が死亡し, そのうち448名を剖検した (剖検率84.7%). 死因は, 臨床情報および剖検所見をもとに決定した. 追跡開始時の平均年齢は男性67歳, 女性70歳で, 女性が有意に高齢であった. 男性の年齢調整後の総死亡率 (対1,000人年) は89.9で, 女性の56.7と比べ有意に高かった. 男性の死亡率を死因別にみると, 脳血管障害が21.4で最も高く, 次いで悪性新生物19.9, 肺炎18.1, 心臓病9.0の順であった. 一方, 女性では, それぞれ9.9, 10.6, 12.2, 8.8であった. 脳血管障害, 悪性新生物, 肺炎による死亡率は, いずれも男性の方が女性より有意に高かった. 一方, 心臓病による死亡率に男女差を認めなかった.
    Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析では, 総死亡に対して年齢, 男性, 収縮期血圧が有意の独立した危険因子となった. 死因別にみると, 年齢に加えて, 脳血管障害には性 (男性), 収縮期血圧, 心臓病には収縮期血圧, 悪性新生物には喫煙, 肥満, そして肺炎には痩せが有意の独立した危険因子となった.
    以上より, 地域住民の高齢者では死亡率に男女差が認められた. 血圧値は心血管病, 肥満, 喫煙は悪性新生物, そして痩せは肺炎死亡の危険因子であった.
  • 岩本 俊彦, 佐々木 明徳, 柳川 清尊, 久保 秀樹, 高崎 優
    1994 年 31 巻 9 号 p. 677-682
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Binswanger 病でみられる大脳半球白質の変化は虚血によるとされ, 主に血行力学的機序で説明されてきたが, 本病変の成り立ちを知る目的で, 血小板活性化に伴って放出されるβ-thromboglobulin (以下BTG) を内頚静脈血で測定し, 本病の病態・病因をヘモレオロジーの面から検討した. 対象は頭部CTにて両側大脳半球皮質下白質にびまん性に広がる低吸収域を認め, Bennett らの診断基準に一致した Binswanger 病の30例 (Binswanger 病群) で, これらの内頚静脈 (A) および肘静脈 (B) より血漿BTG濃度を測定し, 濃度較差ΔBTG値 (BTG-A/BTG-B) を脳循環中血小板活性化の指標とした. 対照には脳卒中以外の疾患25例 (非脳卒中群) と脳梗塞各サブタイプ慢性期例 (lacunar 群, atherothrombotic 群, cardioembolic 群) を用い, 群間で比較検討した. Binswanger 病群の平均年齢は74.7歳で, 平均BTG-B値 (m±SD) は63.6±58.3ng/mlと高かった. またΔBTG値は4.55±6.95と上昇し, 大きな偏差とともに他の群より高く, 特に cardioembolic 群, 非脳卒中群 (0.96±0.42) との差は有意で, 異常高値 (ΔBTG値1.8以上) の出現頻度も高かった. ΔBTG値は各群の血管撮影所見より血管病変のあるもの (3.55±3.32) では正常のものより有意に高く, Binswanger 病ではチクロピジンによる影響はみられなかった. 以上より Binswanger 病の脳循環中では血小板の活性化が他の脳梗塞各サブタイプより亢進していることが示された. この成績は, 血管病変によるΔBTG値の成績と考え併せ, 本病の脳動脈では血管病変が広範に進展していることを示すと同時に, 亢進した血小板活性化は種々の強力な血管作動物質の放出を伴い, 下流域, すなわち白質での血管透過性亢進, 浮腫や脳神経障害を招いていることが考えられ, 本病の成り立ちのひとつに血小板の放出反応による白質の生化学的傷害機序が示唆された.
  • 羽生 春夫, 中野 正剛, 阿部 晋衛, 新井 久之, 岩本 俊彦, 高崎 優
    1994 年 31 巻 9 号 p. 683-689
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー病 (AD) における画像診断の精度を明らかにし, 診断マーカーとしての意義について検討した.
    AD38例 (平均年齢74.5歳) と老年者コントロール26例 (平均年齢74.1歳) を対象に, SPECTによる側頭頭頂葉の血流低下所見およびMRIによる側頭葉内側部の萎縮所見 (側脳室下角面積測定と側頭葉内側部の一次元的計測パターンから評価) の程度をスコア化し, 比較検討した. SPECTやMRI検査単独でもおよそ80%台の診断が得られたが, これらの併用によりさらに高い診断精度が得られ, 感度95%, 特異性92%, 正確度94%となった. また軽症例や病初期のADについても両検査の併用から92%の異常検出率が得られ, 早期診断にも有用と考えられた.
    ADの画像診断の基本は, 側頭葉内側部と側頭頭頂葉連合野にみられる形態的, 機能的変化を検出することにあり, MRIとSPECTからこの特徴的な変性分布を描出することは診断的に有用と考えられた. 両検査の併用により90%以上の高い診断精度が得られたことから, ADの診断マーカーとして活用できると考えられた.
  • 老人病院における実態調査
    小谷 典之, 熊本 悦明, 塚本 泰司, 横尾 彰文, 浦澤 喜一, 川原田 信
    1994 年 31 巻 9 号 p. 690-696
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老人病院に入院している高齢者を対象に排尿障害に関するアンケート調査を行った. 男性355名, 女性683名, 年齢は50~99歳, 平均79.1歳であった. 老人病院における高齢者の排尿障害に関するアンケート調査により, 回答が得られた1,038例中, 自排尿可能で尿失禁のない患者が全体の35.8%, 自排尿可能で尿失禁を認める患者は23.6%, また, 一日中オムツで管理されている患者が約4割を占めていた. 基礎疾患としては脳神経障害が全体の約70%の患者にあり, 痴呆度, ADLは排泄管理状態とよく相関していた. 尿のでぐあいについては男性同様, 女性も加齢とともに夜間頻尿や尿線途絶, 残尿感などの排尿困難を訴える症例が増加する傾向を認めた. 今回の対象症例は老人病院入院患者に限定しており, 脳梗塞などの脳神経障害が基礎疾患として多いが, 女性も男性同様, 排尿障害を訴える患者が潜在していることが示唆された.
  • 井門 ゆかり, 山口 慎也, 片山 禎夫, 原田 暁, 山村 安弘, 中村 重信
    1994 年 31 巻 9 号 p. 697-704
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    MRIT2強調画像上の大脳皮質の低信号域 (T2-CLIA) の出現は, アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症などで指摘されているが, 他の疾患においては詳細な検討がなされておらず, その出現の様態や病的意義は不明である. そこで我々は, T2-CLIAを各種神経疾患において検索し, 年齢別, 疾患別の出現頻度や, MRI上に見られる他の退行性変化との関連性を明らかにするため以下の研究を行った.
    対象は, アルツハイマー型痴呆16例, 多発性脳梗塞53例, パーキンソン病8例, その他の中枢性神経疾患33例, 末梢性神経疾患29例からなる, 6歳から85歳までの計139例 (平均年齢60.6歳±標準偏差18.5歳) である. MRIT2-強調画像 (TR: 2,000ms, TE: 80ms) におけるT2-CLIAを, 運動領野 (MC), 感覚領野 (SC), 後頭葉 (OC), その他の部位ごとに段階付けをもって評価した.
    T2-CLIAはMC, OC, SCに認められたが, その他の部位には認められなかった. MC, OC, SCにおけるT2-CLIAは50歳代以降に出現し, いずれの部位においても加齢と共に出現率が増加した. 70歳以上でT2-CLIAは, MC広範に認められるものは50.9%で, 一部に認めるものを含めると88.7%, OCでは47.2%, SCでは20.8%に認められた. T2-CLIAの出現する部位や頻度は疾患により違いがあり, MCのT2-CLIAは70歳以上では多発性脳梗塞および全中枢性神経疾患は, 末梢性神経疾患より有意に出現率が高かった. またT2-CLIAはMCでは側頭葉萎縮, 白質病変と, SCでは白質病変と相関を認めた.
    T2-CLIAの加齢に伴う出現率の増加は, 大脳皮質の非ヘム鉄含有量の加齢による増加によると考えられ, ある種の中枢神経疾患おいては加速される.
  • 特に肺機能および気管支肺胞洗浄液の検討
    新津 望
    1994 年 31 巻 9 号 p. 705-710
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    非ホジキンリンパ腫 (NHL) に対する化学療法は, MACOP-B療法などの第三世代の治療方法が主流となっているが, 高齢者では副作用特に肺合併症による死亡例も少なくない. 我々はCOP-BLAM III療法を高齢者NHLに施行する際に, 治療前後で呼吸機能および気管支肺胞洗浄液 (BALF)について検討した. 対象は60歳以上の未治療NHL13例で, 男性8例, 女性5例, 年齢中央値66歳である. COP-BLAM III療法は Boyd らの方法に準じ, 持続点滴の portion Aと静注の portion Bを3週間毎に繰り返した. 呼吸機能およびBALFは原則としてCOP-BLAM III治療前と治療2クール目以降寛解となった時点で施行し, 治療中または治療後肺炎となった症例では, 発症早期に施行した.
    治療前のPaO2は86.5±7.6mmHg (平均±SD), 治療後69.3±9.2mmHgで, PaO2 20mmHg以下の低下を4例に認めた. %一酸化炭素拡散能 (%DLCO) は治療前92.1%治療後66.9%で, 20%以上の低下を6例に認めたが, %肺活量 (%VC) および%1秒率 (%FEV1.0) に明らかな変化は認めなかった. BALFの検討では, 治療後に総細胞数の軽度増加とリンパ球の増加を見たが, 好中球および好酸球の有意な変化は認められなかった. T細胞数及びB細胞数にも治療前後で有意差は認められなかった. また, CD4/CD8は肺合併症を認めなかった症例では, 治療前0.43, 治療後1.65と増加傾向を示したが, 経過中肺炎をともなった症例では, CD4/CD8は治療前より0.21と低値であり治療後も0.20と低値のままであった. また, 治療後のBALF中のリンパ球の増加およびCD4/CD8の低値が肺炎の発症に関与している可能性が示唆された.
  • 長尾 毅彦, 濱本 真, 神田 明美, 宮崎 徳蔵, 赫 彰郎
    1994 年 31 巻 9 号 p. 711-715
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    非リウマチ性心房細動を基礎疾患とする高齢者心原性脳塞栓症20例に再発予防療法としてワーファリンを用いた低用量抗凝固療法 (Thrombotest=20~30%: International Normalized Ratio=1.47~1.81) を採用し, 再発予防効果, 出血合併率を prospective に検討した.
    実際の治療域は平均INRで1.29~2.10であった. 14.7カ月の平均観察期間中に2例の脳梗塞再発が認められ, 臨床的に心原性脳塞栓症とラクナ梗塞と診断した. 脳塞栓症の年間再発率は4.1%であった. 軽度の消化管出血を1例に認めたが, 頭蓋内出血は見られなかった.
    従来対象外とされてきた高齢者脳塞栓症においても, 極めて低い治療域を設定することにより安全かつ有効に抗凝固療法が行える可能性があると考えられた.
  • 横井 健治, 赤池 雅史, 重清 俊雄, 齋藤 史郎
    1994 年 31 巻 9 号 p. 716-719
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は84歳女性. 本例では約8年間のあいだに心筋梗塞, 多発性脳梗塞, 視力障害および四肢の潰瘍性病変がみられ, 同時に赤沈およびCRP高値といった炎症反応が持続して認められた. 入院時の検査成績でループスアンチコアグラントは希釈ラッセル蛇毒時間で150秒と陽性で, 抗カルジオリピン抗体はIgGサブクラスが21.2単位と陽性で, また梅毒反応は疑陽性であった. 抗核抗体は80倍と陽性であったが, 抗二本鎖DNA抗体は陰性であった. 胸部および腹部のMRアンギオグラフィーで, 両総頸動脈はび漫性に狭窄し, 両鎖骨下動脈はその起始部で完全に閉塞し, また腹部大動脈も腎動脈分岐部直下で完全に閉塞していた. またそれらの矢状断面では罹患血管壁の肥厚もみられた. したがって多彩な血管病変と炎症反応高値および大血管を中心とした閉塞性血管病変の存在より, 本例を大動脈炎症候群と診断した. これまで抗リン脂質抗体陽性の大動脈炎症候群は5例報告されているが, いずれもきわめて高度な閉塞性血管病変を伴っていた. 抗リン脂質抗体が血栓形成や血管炎を惹起することが知られており, 抗リン脂質抗体が本例の大血管の高度な閉塞性血管病変の促進に関与している可能性が考えられた.
  • 高橋 龍太郎, 出雲 祐二
    1994 年 31 巻 9 号 p. 720-721
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 31 巻 9 号 p. 722-744
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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