老年者高血圧症患者の薬物療法の実態と, 患者背景および投薬内容の予後に与える影響を検討する目的で65歳から84歳までの高血圧症患者を3年間追跡した.
1,669例の登録症例中1,459例が解析対象となり, 332例が脱落 (脱落率22.8%), 1,127例が3年間追跡された.
降圧薬単独投与は736例, 併用投与は664例であり, 単独投与症例中Ca拮抗薬は463例, β遮断薬100例,ACE阻害薬80例, 利尿薬64例, α遮断薬16例, その他13例であった. 非事故例は955例 (非事故群), 非致死性脳心腎等事故例は139例 (非致死性事故群), 死亡例は33例 (死亡群) であった. 死亡率は10.7人/1,000人・年, 死亡を含む事故発生率は55.6人/1,000人・年であった.
登録時の患者背景因子に関しては, 死亡例で男性が多く, 高齢であり, 血清クレアチニン値が高値であったが, 血圧値, 心拍数は3群間に差がなく予後と関連が認められなかった. また, 登録時の投薬内容に関しては, 死亡例で利尿薬およびβ遮断薬の使用頻度が低い傾向にはあったが3群間に差がなく, 投薬内容と予後との間にも有意な関連は見出し得なかった.
以上より, 現在の老年者高血圧症患者の降圧治療に用いられている降圧薬の差は予後に大きな差異を与えないことが示唆された.
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