日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
34 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 清原 裕, 池上 博司, 島本 和明, 久代 登志男, 大荷 満生
    1997 年 34 巻 5 号 p. 359-388
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 背景因子の検討
    澤井 伸之, 山野 繁, 南 繁敏, 山本 雄太, 赤井 真弓, 野村 久美子, 土肥 和紘
    1997 年 34 巻 5 号 p. 389-394
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    無症侯性脳梗塞患者は, 脳卒中を発症する危険性が高いとされている. したがって, 無症候性脳梗塞は, 脳卒中危険因子の1つに挙げられている. しかし, 無症候性脳梗塞の発症要因を多変量解析から検討した報告はない. また, 無症候性脳梗塞患者の高血圧症合併頻度は頭部MRIで無症候性脳梗塞のない症例に比して高いと報告されているが, 高血圧症の重症度と無症候性脳梗塞との関連を多変量解析で検討した報告もない. そこで著者らは, 脳卒中発作の既往のない312例 (平均年齢63歳) を対象に頭部MRI撮影を実施し, 無症候性脳梗塞の発症に対する背景因子 (年齢, 性別, 高血圧症, 糖尿病, 高コレステロール血症, 高トリグリセリド血症, 左室肥大, および心房細動) の影響を多変量解析で検討した. さらに, 本態性高血圧症患者を対象に高血圧症病期分類と無症候性脳梗塞との関連についても検討を加えた. 65歳以上が占める頻度, 高血圧症合併頻度, 糖尿病合併頻度, および心房細動合併頻度は, 無症候性脳梗塞のない健常 (N) 群に比して無症候性脳梗塞 (AS) 群で有意に高かった. また, WHO II期に相当する臓器障害合併頻度は, N群に比してAS群で有意に高かった. なかでも左室肥大 (高血圧性心肥大) と高血圧性眼底所見 (Scheie 分類H2) の合併頻度は, N群に比してAS群で有意に高かった.
    以上から, 無症候性脳梗塞発症の危険因子は, 年齢, 高血圧症, 糖尿病, および心房細動であることが示唆される. また, 高血圧症患者における無症候性脳梗塞発症には, 左室肥大 (高血圧性心肥大) と高血圧性眼底所見 (Scheie 分類H2) が予知指標になることも示唆される.
  • 高齢者アセスメント表 (MDS) による評価
    酒井 泰一, 森 敏, 金山 政喜, 赤木 博, 中島 健二
    1997 年 34 巻 5 号 p. 395-401
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    痴呆性老人の精神・身体状況が入院後どのように変化するかを, 高齢者アセスメント表を用いて検討した. 対象は老人性痴呆疾患治療病棟の痴呆性老人で, 入院時と入院3カ月後にアセスメントを行った. 入院時の評価では, 精神状態に関連した領域では,「痴呆状態・認知障害の検討」,「せん妄の兆候」,「問題行動の兆候」,「アクティビティ (日常生活の活性化) の必要性」および「気分と落ち込みの検討」が高率に選定され, 身体状況に関連した領域では,「視覚機能 (障害) の検討」,「日常生活動作 (ADL) とリハビリテーションの可能性」,「尿失禁および留置カテーテルの検討」,「栄養状態の検討」,「脱水状態・水分補給の検討」および「口腔内ケアの検討」が高率に選定された. 入院3カ月後の評価では,「痴呆状態・認知障害の検討」,「視覚機能 (障害) の検討」にはほとんど変化が見られなかったが,「せん妄の兆候」,「望ましい人間関係 (心理社会的充足) の検討」,「気分と落ち込みの検討」,「アクティビティ (日常生活の活性化) の必要性」,「尿失禁および留置カテーテルの検討」,「栄養状態の検討」,「脱水状態・水分補給の検討」および「口腔内ケアの検討」が著しく改善していた. 改善の見られなかった「痴呆状態・認知障害の検討」は痴呆の中核症状であり, 改善が見られた領域は, 状況因性の情動障害を反映する痴呆の周辺症状と考えられる. また身体症状は, 精神症状の改善にともない減少したことから, 精神症状により二次的に引き起こされた生活状態の乱れを反映していると考えられる. 今回の結果は, 痴呆性老人の施設ケアでは, 痴呆の周辺症状を改善する方向で, 個別性を尊重したケア計画を立てることが重要であることを示唆している.
  • ジピリダモール負荷心筋シンチによる検討
    村井 孝男, 山崎 文靖, 矢部 敏和, 北岡 裕章, 松村 敬久, 古野 貴志, 近森 大志郎, 土居 義典
    1997 年 34 巻 5 号 p. 402-408
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    無痛性心筋虚血の頻度が高いとされている高齢者を対象に, ジピリダモール負荷心筋シンチ (Dシンチ) を用いてその成因および意義を検討した. 対象は冠動脈疾患を疑って冠動脈造影およびDシンチを施行した65歳以上の高齢者147例のうち, Dシンチ時にST低下とともに可逆性欠損像 (RD) を示した74例である. 負荷時胸痛の有無により無痛群と有痛群に分けて対比した.
    結果: (1) 無痛群18% (13例), 有痛群82% (61例) と無痛群が低頻度であった. (2) 年齢に有意差なく, 無痛群で男性が92%と高頻度であった (p<0.01). (3) 梗塞合併は無痛群62%, 有痛群49%で両群間に有意差を認めなかった (ns). (4) 冠病変枝数は無痛群1枝15%・多枝85%, 有痛群1枝18%・多枝82%で, ともに多枝が高頻度であった (ns). (5) Dシンチ: (1)無痛群・有痛群全例にRDを認めた. (2) 梗塞例 (38例) の対比では, 無痛群で梗塞部RD 63%・対側部RD 37%, 有痛群で梗塞部RD 47%・対側部RD 53%であり, 無痛群で梗塞部RDが多い傾向がみられ (ns), 前壁および下後壁領域にまたがる広範囲固定性欠損像は無痛群75%・有痛群30%と無痛群で高頻度であった (p<0.05). (3) 非梗塞例 (36例) の対比ではいずれの指標にも有意差を認めなかった. (6) 初期CABG・PTCAは無痛群23%・有痛群36%に施行した (ns). (7) 内科治療例の心事故は無痛群10%・有痛群13%にみられた (ns).
    有意冠病変を有する高齢者では, 無痛性可逆性欠損像を示す例は低頻度である. 無痛群・有痛群間には, 年齢, 冠病変重症度に有意差を認めなかった. また, 心筋梗塞の合併率にも有意差を認めないものの, 梗塞を有する無痛群では梗塞部に可逆性欠損像を認める頻度が高い傾向にあり, さらに梗塞そのものが前壁および下後壁の両領域にわたり広範囲であることが多い.
  • 浸透圧補正法
    扇谷 茂樹, 藤井 芳夫, 藤田 拓男
    1997 年 34 巻 5 号 p. 409-414
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    尿中カルシウム/クレアチニン (Ca/Cr) 比は最も古くから用いられる骨代謝マーカーではあるが, 尿量の多寡と食塩摂取量の影響を受ける. 我々は尿中Caの新しい表現方法として, 尿浸透圧 (OSM) で尿量補正したCa値 (Ca/OSM) を求め, Ca/Crと対比した.
    20歳~70歳代の健常女性を主な対象として, 尿中のCa, Cr, OSM, ナトリウム (Na), カリウム (K) を測定した. CaとNa, Kは各々OSM, Crにより尿量補正した. CrとOSMに対するCa/Crの相関係数 (r) は各々r=-0.386, r=-0.437と逆相関性が認められたが, 一方, Ca/OSMではCrおよびOSMとの関連性を示さない. Na/CrとCa/Crとのrは0.399で正相関が認められ, 一方, Ca/OSMにはNa濃度の影響はない. 24hr蓄尿と早朝第1, 2尿中Ca値の相関関係をみた. その結果, 蓄尿中のCa総量を体重 (kg) で除した値とのrは第1尿でCa/OSMがr=0.823, Ca/Crがr=0.641となり, 第2尿では各々0.653, 0.600を示した.
    早朝第1尿中成分の加齢変化をみた結果, OSMとCrは加齢とともに有意に低下, またCa/OSMとCa/Cr, Na/Crは加齢とともに有意に増加した. 早朝第1尿中Ca排泄量が加齢の影響を受けないと仮定し, 20歳代のCa平均値を基準にしてOSM, Crの低下率から70歳代のCa予測値を算出して, 70歳代の実測平均値と比較した. その結果, Ca/OSMの実測値は予測値より131.5%, Ca/Crでは123.9%の高値を呈し, 加齢にともなうエストロゲン分泌低下によるとされる尿細管でのCa再吸収低下, または骨吸収亢進が示唆された.
    Ca/OSMはCa/Crにくらべて尿量やNa濃度の影響の少ない, 新しい尿中Ca指標であると考えられる. また, このように尿中Ca濃度を評価する際には, 24hr蓄尿の代用試料として用いうる早朝起床時第1尿 (Sleep Urine) の使用が適切であると考えられた.
  • 宮地 隆史, 酒井 孝裕, 徳井 真紀, 渡辺 千種, 中村 重信
    1997 年 34 巻 5 号 p. 415-420
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性. 意識障害, 髄膜刺激症状, 単核球優位の髄液細胞数の増多, 頭部CT上右側頭葉, 視床下部の腫脹を認め急性無菌性髄膜脳炎と診断した. その後亜急性に両下肢筋力低下, 排尿障害が出現した. 髄液蛋白の上昇, 末梢神経伝導検査でF波の遅延を認め, 炎症が脊髄神経根を含め広範囲に拡がったものと思われた. 乾燥症状は認めなかったが, 口唇生検で唾液腺の萎縮とリンパ球, 形質細胞の浸潤を認めたこと, 高γグロブリン血症および抗核抗体, 抗SS-A抗体, 抗SS-B抗体が高値であったことより Sjögren 症候群と診断し, その神経合併症として無菌性髄膜脳炎を呈したと考えた. 近年 Sjögren 症候群に伴う無菌性髄膜脳炎の報告が散見されるが本症例のように高齢発症例はない. 高齢者でも無菌性髄膜脳炎が Sjögren 症候群の初発症状となりうることを示唆した点でも重要と思われ報告した.
  • 石井 健男, 木田 厚瑞, 神野 悟, 野村 浩一郎, 山田 浩一, 桂 秀樹, 井藤 英喜, 倉島 知恵理, 宮尾 益理子
    1997 年 34 巻 5 号 p. 421-427
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    乳び胸水を来たした甲状腺乳頭状腺癌の2症例を報告した. 症例1: 85歳, 女性. 乳び胸水による呼吸困難により入院. 左頸部に2×2cmの腫瘤を触知し, 生検により甲状腺乳頭状腺癌と診断. 画像上, 甲状腺癌が気管分岐部の高さにまで浸潤していることから, 胸管破壊により乳び胸水を来たしたと考えられた. 症例2: 53歳, 女性, 剖検例. 34歳及び49歳時に乳び胸水で入院, その際甲状腺機能低下症・副甲状腺機能低下症の診断を受けている. 52歳時再度乳び胸水による呼吸困難にて入院, 1年後, 敗血症合併により死亡. 剖検にて甲状腺乳頭状腺癌とその Virchow リンパ節への転移と判明. 胸管は大動脈弓部から静脈角の部分で瘢痕化した索状物として認められた. これは, 早い時期からすでに Virchow リンパ節への転位が存在し, 胸管はその影響で閉塞と再疎通または側副路形成を繰り返したが, 最終的に完全閉塞したものと考えられた. 甲状腺乳頭状腺癌における乳び胸水の合併は著者の検索しえた範囲では文献的にも無く極めて稀な病態と考えられたので, 考察を加え報告した.
  • 門 祐輔
    1997 年 34 巻 5 号 p. 428-430
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は82歳男性. 猛暑の夏に重労働をし, 下肢の浮腫, しびれ, 筋力低下, 全身倦怠感が生じ本院へ入院した. 神経学的には下肢遠位部に強い筋力低下, 感覚障害, アキレス腱反射の消失あり. 胸部レントゲンで心胸郭比の拡大, 超音波心臓検査法で左室壁運動の亢進を認めた. ビタミンB1値, 赤血球トランスケトラーゼ活性の低下を認め,「浮腫を伴う多発性神経炎」を呈する脚気と診断した. ビタミンB1の投与でこれらの症状, 所見は消失した. 本例は, われわれが調べえた限りでは最高齢の脚気患者であるが, 最近の報告例は以前に比し高齢化してきている. 脚気は若年者だけの病気と考えず, 高齢者でも多発性神経炎の鑑別診断に加える必要がある.
  • 1997 年 34 巻 5 号 p. 431-447
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
feedback
Top