症例は75歳, 男性. 平成6年急性骨髄性白血病 (AML: M0) として発症, 完全寛解に至るも, 平成8年に再発, 再寛解に至り, 平成10年3月をもって, 化学療法を終了していた. 平成11年10月右膝痛が出現し整形外科を経て当科に入院となった. 入院時右膝関節の軽度腫脹を認め, 入院時検査成績では末梢血には著変を認めず, 骨髄にもAML細胞を認めなかった. X線上右脛骨近位端に骨融解像を認め, 骨シンチでは右膝, 左大腿骨に集積を, MRIのT1強調画像で, 腫瘍部に一致して低信号域を認めた. 右脛骨生検組織は中から大型の核を有する細胞のびまん性増殖を認め, 免疫組織染色にてMPO, 非特異エステラーゼ, lysozyme, cytokeratin7, 9, 20, EMA, CEA, CD3, CD79a陰性, CD43, CD56陽性で, 生検組織の flow cytometry でCD7, CD13, CD33, CD41, CD56が強陽性であることより顆粒球肉腫 (granulocytic sarcoma, 以下GS), AML: M7と診断した. 放射線の局所照射 (36Gy) により右脛骨と左大腿骨の疹痛は軽減した. 本症例は初発時, 再発時ともCD7陽性のAML: M0であり, 初診時CD56は検索し得ていないが, CD7, CD56陽性の myeloid/NK cell precursor acute leukemia がM7に表面形質が変化した可能性も考えられた. しかし, M7に移行時にCD56を獲得しGSを形成した可能性も否定できない. 本症例は高齢かつ予後不良とされるAML: M0またはM7であるにもかかわらず, 発病より6年余り生存し得たことは, 高齢者AMLの予後不良因子をあまり有しておらず, 標準的化学療法と長期の維持療法が可能であったためとも考えられ, 全身状態良好な高齢者AMLにおける強力化学療法の意義を示唆するとも考えられる.
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