日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
47 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
第26回日本老年学会総会記録〈シンポジウムI:老衰の成因と対策〉
第51回日本老年医学会学術集会記録〈教育講演〉
原著
  • 高橋 光子, 荒木 厚, 渡辺 修一郎, 芳賀 博, 金原 嘉之, 田村 嘉章, 千葉 優子, 森 聖二郎, 井藤 英喜, 柴田 博
    2010 年 47 巻 2 号 p. 140-146
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/17
    ジャーナル フリー
    目的:高齢糖尿病患者の生活満足度に関連する社会的要因を明らかにする.方法:高齢糖尿病患者56例を対象に,身体的,心理的,社会的因子について面接アンケート調査を行った.生活満足度はLSIK(生活満足度尺度K)により評価した.社会的因子は情緒的,および手段的ポジティブソーシャルサポートを評価した.また,社会関連性指標を1)生活の主体性,2)社会への関心,3)他者との関わり,4)身近な社会参加,5)生活の安心感の5領域の18項目の質問によって評価した.結果:糖尿病性神経障害や腰痛・膝痛はLSIKの低値と関連した.社会関連性指標の身近な社会参加,社会への関心,他者との関わりと同居家族内の手段的サポートはLISKの得点と正の相関関係を示した.また,患者会の世話役をしている人は,LSIKの得点が有意に高かった.重回帰分析の結果,神経障害のないこと,同居家族内の手段的サポート,および身近な社会参加がLSIKの高値と独立に関連する有意な因子であった.結論:身近な社会参加は高齢糖尿病患者の生活満足度と関連する重要な因子である.
  • 久米 一誠, 羽生 春夫, 佐藤 友彦, 平尾 健太郎, 金高 秀和, 清水 聡一郎, 櫻井 博文, 岩本 俊彦
    2010 年 47 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/17
    ジャーナル フリー
    目的:MRIやSPECT画像データの解析とともに病識を評価することによって,健忘型軽度認知障害(MCI)からアルツハイマー病(AD)への移行が予測できるか否かを検討した.方法:健忘型MCIを約2年半から3年間追跡し,観察期間内に認知障害が進行しADと診断されたMCI/AD群21例と進行がみられなかったかあるいは多少の進行はみられても自立できADの診断には至らなかったMCI/MCI群18例を対象とし,早期AD19例と比較した.MRIはvoxel-based specific regional analysis system for Alzheimer's disease(VSRAD)を用いて解析し海馬傍回の萎縮(z-score)を求め,SPECTは3D-stereotactic surface projectionのz-score像から大脳後方連合野の血流低下を定性的に評価し,病識は生活健忘チェックリストの(介護者-患者)間のスコア差から評価し,それぞれ観察開始時の成績を比較した.結果:MCI/MCI群と比べて,MCI/AD群はMRIによる海馬のz-scoreが高値となり,SPECTによる大脳後方連合野の血流低下が高頻度にみられ,病識は低下していた.さらに早期AD群ではこれらの検査異常はより高度または高率にみられた.各検査成績を一項目または二項目組み合わせてもMCI/AD群とMCI/MCI群の識別率はせいぜい60%~70%台であったが,MRI,SPECT,病識の各成績をすべて組み合わせると80%以上の識別率が得られた.結論:MRIやSPECTの画像所見に病識の評価を加えることによって,MCIからADへの移行をより正確に予測できると考えられた.
  • 原 毅, 久保 晃
    2010 年 47 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/17
    ジャーナル フリー
    目的:障害高齢者を対象に座位での下肢荷重力測定を実施し,得られた測定値が移乗動作の自立判定に応用可能か検討すること.方法:対象は,障害高齢者83例(男性34例,女性49例,年齢79.9±9.1歳:mean±SD)とした.障害高齢者の移乗動作自立度は,Functional Independence Measure(以下FIM)の車椅子―ベッド間の移乗動作項目得点で3群(6~7点:自立群,5点:監視群,2~4点:介助群)に分類した.座位での下肢荷重力測定は,左右下肢各1回ずつ実施し,得られた左右測定値(kg)の和を体重比百分率にて下肢荷重力体重比(%)に換算した.統計学的処理は,移乗動作自立度を要因にした一元配置分散分析と多重比較検定(Scheffe)で下肢荷重力体重比(%)について比較した.また,Receiver Operating Characteristic(以下ROC)曲線で下肢荷重力体重比(%)と移乗動作の自立,非自立の関係について検討した.ROC曲線の検討では,移乗動作の自立,非自立を判断するカットオフ値を決定し,陽性適中度,陰性適中度,正診率を算出した.結果:一元配置分散分析と多重比較検定の結果から下肢荷重力体重比(%)は,移乗動作自立度要因に有意な主効果が認められ,全ての群間に有意差が認められた.ROC曲線の検討では,曲線下面積(area under the curve;以下AUC)が0.84を示し,下肢荷重力体重比(%)のカットオフ値は52.6%,感度77%,特異度81%であった.カットオフ値における陽性適中度は71%であり,陰性適中度は86%であった.また,カットオフ値の正診率は,80%であった.結論:座位での下肢荷重力は,障害高齢者の移乗動作自立度を鋭敏に反映しており,高い判別精度で障害高齢者の移乗動作自立,非自立を判断できる可能性があると考えられる.
症例報告
  • 越智 雅之, 戸井 孝行, 鴨川 賢二, 永井 勅久, 田口 敬子, 河野 祐治, 伊賀瀬 道也, 小原 克彦, 三木 哲郎
    2010 年 47 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/17
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性.2006年春頃から左眼瞼下垂,10月から右眼瞼下垂,11月から夕刻の易疲労感,鼻声,発語困難感を自覚するようになった.近医でのCT・MRI検査にて浸潤性胸腺腫を指摘され,4月下旬に精査・加療目的で当院当科へ入院した.神経学的所見では意識清明,知能正常.右眼瞼下垂あり.眼球運動正常,複視なし.構音障害なし,嚥下障害なし.項部硬直なし.上下肢運動系に異常なし.腱反射は両側上腕二頭筋・膝蓋腱反射が軽度の亢進あり,病的反射なし.小脳症候は認めなかった.感覚系では,明らかな異常は認めなかった.膀胱直腸障害なし.右眼瞼下垂,易疲労感,鼻声などの症状は夕方に増悪し,休息により改善がみられた.抗核抗体は40倍,抗アセチルコリンレセプター抗体62.9 nmol/lと上昇していた.テンシロン試験陽性であり,左右眼輪筋でHarvey-Masland試験陽性であった.胸部造影CT検査で,前縦隔と上大静脈から右心房にかけて造影されない腫瘤を認め,それらは上部で連続性がみられた.また,右中葉には径18 mmの結節影もみられた.胸部造影CTおよびMRI検査所見から,前縦隔腫瘍は浸潤性胸腺腫が疑わしく,右肺中葉結節影は浸潤性胸腺腫の遠隔転移のほか既往歴から乳癌再発の可能性も考えられた.腫瘍による肺塞栓をきたす危険性が高く,早期に手術が必要と判断され,2007年5月下旬に右中葉切除術,拡大胸腺摘出手術,人工血管バイパス術(体外循環補助下上大静脈再建)を施行した.病理検査にて右肺中葉結節(WHO分類:type A thymoma)および,前縦隔腫瘍(WHO分類:type B2 thymoma)はthymomaであり,遠隔転移が認められたため正岡分類stage IVbと診断した.血管内への直接的な浸潤,肺転移をきたしたことがこれまでの報告例と比較し特徴的であった.
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