AGIL図式が、社会構造の比較分析のために有効な準拠枠であるためには、その図式において設定されている諸次元が、相互に分析的に独立であり、しかも網羅的でなければならない。このことの証明のためにパーソンズは、(一) 小集団の実験室的研究によるベイルズの「四つのシステム問題」という概念の一般化、(二) パターン変数の組合せ、(三) 内的-外的、手段的-成就的という二つの軸のクロスによる導出、という三つの異った方法に依拠している。パーソンズ自身は最終的には (三) を選択しているが、これらはそれぞれ、立証することが相当に困難な前提を含んでいるので、どれか一つの方法のみによって、満足すべき説明を与えうるとは思えない。本稿では、三つの方法が相互に補足しあい補強しあっているという観点から、特に、従来議論されることの少なかった (二) を重視して、『作業論文集』における議論を検討し再構成する。そして、この (二) のタイプの方法が、(a) 五一-五三年の段階のパターン変数の理論、(b) 行為が多機能的ではないという仮定、をまず前提としながら、(c) ある特定のパターン変数の間の「親和性」が他のパターン変数の組合せから区別しうる程に強い、という仮説を含んでいることを明らかにする。
パーソンズはこの「親和性の仮説」を明確化してはいないが、この仮説は図式の構成において非常に重要な位置を占めている。このことは、彼の理論が「行為理論」を基盤としているということの一つの表現であると見なすことができる。
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