自己組織能力を持つ神経回路モデルとして以前に提案したコグニトロン^<(1), (2)>では, 自己組織化の過程で, 互いに良く似たパターンどうしを同一視するようなことがあり, 一旦同一視したまま自己組織化が進行してしまうと, その後どのようなパターンの与え方をしても, それらを別のパターンとみなす方向には自己組織化が進まなくなることがあった。そこで今回は, シナプス強化に関する新しいアルゴリズムを導入し, たとえ良く似ていても, 異なるパターンについては, それらが別のパターンであることを識別できるような能力を持った神経回路モデルを構成した。今回提案するモデルにおいては, アクソンを受け入れる側の細胞がすでに多数の入力シナプス結合を受ている場合には, 各アクソンの"つながりやすさ"が減少するものと仮定している。同時に, 大出力で発火しているにもかかわらず後シナプス側の細胞との結合がまだ弱い神経細胞に対しては, その出力側のシナプス結合を強める作用が強力に働くような機構を想定している。計算機シミュレーションの結果, このモデルが従来のコグニトロンよりも, 良好なパターン分離能力を持つことが確かめられた。特に, 回路の自己組織化が完了した後に, すでに学習を終えたパターンのうちの一つと非常に良く似た刺激パターンを加えて, 再び自己組織化を進めていくと, かなり早い段階で, 新しい刺激パターンに選択的に反応する細胞が出来上がることが確かめられた。
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