本論文では, 人間が音声から知覚できる感情について, 心理実験により分析した.実験では, 感情(平静, 怒り, 悲しみ, 喜び, 驚き, 嫌悪)をこめて発話された音声を, ランダムに提示し, 聴取者が知覚した感情を選択させた.話者の意図した感情と, 聴取者の知覚した感情が, 一致した割合は51.5%であった.特に, 悲しみの感情で一致することが多く, 逆に, 喜びでは一致しないことが多かった.話者の感情を半数以上の聴取者が知覚できる音声について分析した結果, 話者の意図した感情と, 聴取者の知覚した感情が, 一致した割合は73%で, これは, 音声から感情を推定する人工的システムの一致率の目標となる.また, 怒りと嫌悪を区別するのは難しいことや, 怒りや喜びでは, 感情と似た意味を持つ語句で, 感情識別が易しいことなど, 感情に依存する特性が見つかった.さらに, 人間の感情の判定は実験日に依存しなかった.
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