目的:地域一般住民における腹部肥満と糖尿病発症との関連について高齢者と非高齢者での影響の違いを,端野・壮瞥町住民健診受診者のデータから検討した.
方法:1994年に住民健診を受診し,かつ2003年または2004年にも健診を受診した1,023名中,データ欠損者,1994年の時点での糖尿病者(空腹時血糖値≥126 mg/d
l または糖尿病治療中の者)を除いた827名を対象とした.1994年のデータに基づいて65歳以上の高齢者群,65歳未満の非高齢者群に分け,さらに日本のメタボリックシンドローム診断基準に基づいて腹部肥満群と非腹部肥満群に分けた.上記4群において,2003・04年の受診時点での糖尿病発症者の頻度を比較検討した.
結果:非高齢者群においては非腹部肥満群に対し腹部肥満群からの糖尿病発症が有意に高率であったが,高齢者群において統計学的有意差は認められなかった.非高齢者・高齢者で糖尿病発症を従属変数とし,年齢,性別,総コレステロール,収縮期血圧値,喫煙の有無,糖尿病発症家族歴有無,空腹時血糖110 mg/d
l の有無で調整したロジスティック回帰分析では,高齢者群において腹部肥満は関連要因とはならず,非高齢者群ではオッズ比2.68で糖尿病発症の有意なリスクとなった.腹部肥満の有無と血圧高値,血糖高値,脂質異常症の危険因子集積の有無を同時にモデルにいれたロジスティック回帰分析では,非高齢者群で腹部肥満が3.10,危険因子集積が3.00とそれぞれ独立して新規糖尿病発症の有意なリスクとなったが,高齢者群では,危険因子集積のみが3.70と新規糖尿病発症の有意なリスクとなった.
結論:65歳未満の非高齢者において青壮年期からの腹部肥満への介入が重要であるのはもちろんのこと,高齢者においては腹部肥満なしと判定される者の中でも危険因子集積者は糖尿病のハイリスクであるため,生活習慣見直し等の介入が必要となる可能性が示唆された.
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