日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
48 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
第52回日本老年医学会学術集会記録〈会長講演〉
第52回日本老年医学会学術集会記録〈Meet the Expert 2:高齢者診療のポイント〉
第52回日本老年医学会学術集会記録〈Meet the Expert 3:高齢者生活習慣病への介入
第52回日本老年医学会学術集会記録〈パネルディスカッション2:高齢者の転倒―その成因の解明と予防対策―〉
第52回日本老年医学会学術集会記録〈若手企画シンポジウム2:サルコペニアの臨床〉
原著
  • 河野 智之, 大槻 俊輔, 細見 直永, 竹田 育子, 青木 志郎, 石原 佳代子, 末田 芳雅, 中村 毅, 山脇 健盛, 松本 昌泰
    2011 年 48 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    目的:悪性腫瘍を合併した急性期脳梗塞症例を悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞と悪性腫瘍との関連性が低い脳梗塞に分類し,悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞の特徴を明らかとする.方法:観察期間は2006年1月~2009年3月.対象は急性期脳梗塞で当施設にて入院加療し,過去に悪性腫瘍と診断された症例と脳梗塞加療中または脳梗塞診断後1年以内に悪性腫瘍を新たに診断しえた症例とした.ただし脳梗塞発症から5年以上前に悪性腫瘍の治療がなされ,脳梗塞発症前5年以内に悪性腫瘍の再発,転移,治療歴を有さない症例は除外した.選択基準に合致した28例についてTOAST分類に準じて脳梗塞病型分類を行い,さらに悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞と悪性腫瘍との関連性が低い脳梗塞に分類した.結果:年齢中央値74歳(56~91歳),男性19名(68%).脳梗塞病型はSmall-vessel occlusion 3例(11%),Large-artery atherosclerosis 5例(18%),Cardioembolism 8例(28%),Stroke of other determined etiology 5例(18%),Stroke of undetermined etiology 7例(25%)であった.悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞は8例(29%)に認められ,悪性腫瘍の進展度が高い症例に多いことが示唆された.悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞では悪性腫瘍との関連性が低い脳梗塞に比べD-dimer値は高い傾向を示した.結論:悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞は75歳未満の群で進行癌の症例に多く,D-dimer値はこの分類において有用である可能性が示唆された.
  • 荒幡 昌久, 栗山 政人, 米山 宏, 南 真司
    2011 年 48 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者嚥下性肺炎は予後不良の疾患であり,在院日数を延長させる.本症は感染症としての肺炎治療のみでは十分でなく,咳反射や脳循環を改善する薬物治療,看護や介護,リハビリテーション,栄養管理が必要とされる.今回我々は,高齢者嚥下性肺炎に対し,多職種に対する教育および多職種によるチェックシートとカンファレンスを用いた包括的で個別的な介入を行い,その予後を改善できるか検討した.方法:2008年1月15日から4月15日に発症した75歳以上の嚥下性肺炎を対象に,診断直後からプロジェクトチームが介入し,チェックシートやカンファレンスで病態を整理し,多職種間で問題点を共有しながら個別化された対策を行った.肺炎転帰,在院日数,肺炎治癒後の予後について,2007年の同期間と比較し介入の効果を判定した.結果:試験期間中に45回の肺炎があり,41回(34例)を分析対象とした(介入群;87.5±5.7歳,男性15例,女性19例).前年の同期間に51回(46例)の分析対象となる嚥下性肺炎があった(対照群;87.5±6.4歳,男性24例,女性22例).介入群で7例,対照群で5例の再発があり,介入群では再介入により評価と対策を改めた.再発を含めた肺炎転帰では,介入群で死亡率の低下傾向を認めた(4.9% vs. 17.6%,P=0.061)が,在院日数には有意差はなかった(47.2±35.0日vs. 55.6±52.1日,P=0.454).肺炎治療後1年(再発例では最後の治療終了から1年)での無再発生存率は介入群で高かった(48.5% vs. 24.3%,P=0.040).結論:高齢者嚥下性肺炎に対する包括的介入は,肺炎治癒率や在院日数よりも,長期的予後である1年後無再発生存率を改善させた.
  • 藤井 瑞恵, 大西 浩文, 斎藤 重幸, 森 満, 島本 和明
    2011 年 48 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    目的:地域一般住民における腹部肥満と糖尿病発症との関連について高齢者と非高齢者での影響の違いを,端野・壮瞥町住民健診受診者のデータから検討した.方法:1994年に住民健診を受診し,かつ2003年または2004年にも健診を受診した1,023名中,データ欠損者,1994年の時点での糖尿病者(空腹時血糖値≥126 mg/dl または糖尿病治療中の者)を除いた827名を対象とした.1994年のデータに基づいて65歳以上の高齢者群,65歳未満の非高齢者群に分け,さらに日本のメタボリックシンドローム診断基準に基づいて腹部肥満群と非腹部肥満群に分けた.上記4群において,2003・04年の受診時点での糖尿病発症者の頻度を比較検討した.結果:非高齢者群においては非腹部肥満群に対し腹部肥満群からの糖尿病発症が有意に高率であったが,高齢者群において統計学的有意差は認められなかった.非高齢者・高齢者で糖尿病発症を従属変数とし,年齢,性別,総コレステロール,収縮期血圧値,喫煙の有無,糖尿病発症家族歴有無,空腹時血糖110 mg/dl の有無で調整したロジスティック回帰分析では,高齢者群において腹部肥満は関連要因とはならず,非高齢者群ではオッズ比2.68で糖尿病発症の有意なリスクとなった.腹部肥満の有無と血圧高値,血糖高値,脂質異常症の危険因子集積の有無を同時にモデルにいれたロジスティック回帰分析では,非高齢者群で腹部肥満が3.10,危険因子集積が3.00とそれぞれ独立して新規糖尿病発症の有意なリスクとなったが,高齢者群では,危険因子集積のみが3.70と新規糖尿病発症の有意なリスクとなった.結論:65歳未満の非高齢者において青壮年期からの腹部肥満への介入が重要であるのはもちろんのこと,高齢者においては腹部肥満なしと判定される者の中でも危険因子集積者は糖尿病のハイリスクであるため,生活習慣見直し等の介入が必要となる可能性が示唆された.
症例報告
  • 丸吉 秀朋, 馬場 太果志, 緒方 二郎, 永田 壮一
    2011 年 48 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    109歳女性が心筋梗塞の診断で介護病棟に入院していたが,これまでの治療歴は不明で,内服はフロセミド20 mg/日のみであった.他院の過去の診療録を調べると,約10年前に循環器専門医により左室前壁中隔の心筋梗塞と診断されていた.アンジオテンシンII受容体拮抗薬やアスピリン,スピロノラクトンなど,循環器系薬剤が開始されたが,病院の移動・主治医交替などを契機に中止されていた.感染を契機とした心不全増悪を来したため,アンジオテンシン変換酵素阻害薬(テモカプリル1 mg/日),アスピリン100 mg/日,スピロノラクトン12.5 mg/日,β遮断薬(カルベジロール2 mg/日)が慎重に導入されたところ,BNP値の改善など病状の安定が得られた.最終的な死因は心血管病ではなく,加齢からの経口摂取不足に伴う脱水および低栄養であった.その置かれた医療システムや施設間での患者情報の共有不足などのため,施設入所中の高齢者は適切な医療を受けていない可能性がある.百寿者の治療を支えるエビデンスは皆無であるが,その特性を理解しながら治療を試みることで病状を改善させることができる.
短報
  • 須藤 英一, 前島 一郎
    2011 年 48 巻 1 号 p. 84-85
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者の肺炎に関連する口腔内乾燥は日常介護でしばしば直面する問題である.この点で,保湿ジェルを用いた口腔ケアの効果を老人ホーム入所中の脳血管障害後遺症患者でみた成績を以前に報告したが,これを他の施設に広げて検討した.方法:対象は脳血管障害後遺症患者11例(男性4例,女性7例,平均年齢84.5±1.3歳).老人ホームの入居者を対象に,口腔ケア用品として,口腔内乾燥予防目的に保湿ジェルを用い,使用前年の6カ月間と使用中の6カ月間に於いて発熱を生じた日数,抗菌薬投与日数,抗菌薬投与回数,補液日数,補液回数を比較した.結果:使用前,使用中の6カ月間の発熱日数を比較検討すると使用前平均5.4±2.8日から使用中3.5±2.9日まで有意に(p<0.01)減少した.抗菌薬投与日数,抗菌薬投与回数,補液日数,補液回数はそれぞれ,使用前平均3.3±3.4日から使用中1.1±1.8日,使用前平均6.2±6.7回から使用中2.0±3.6回,使用前平均2.4±3.4日から使用中1.2±1.8日,使用前平均4.2±6.8回から使用中1.4±2.2回と全て減じたが有意差は認めなかった.結論:保湿ジェルを用いた口腔ケアは脳血管障害後遺症患者に生じる口腔内汚染を誘因とする気道感染や脱水予防に寄与できる可能性が示唆された.
Letters to the Editor
feedback
Top