日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
40 巻, 5 号
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  • 若林 素子, 宮尾 茂雄
    1993 年 40 巻 5 号 p. 248-352
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    各種漬物の生菌数の測定を,平板混釈法,ペトリフィルム法およびスパイラルプレーティング法により,また,大腸菌群の定性を,BGLB試験管法,Pro・mediaMT-21法およびColilert法により行い,結果を比較検討した.
    生菌数については,試料127検体の各方法による測定値間の相関係数および分散比F値は,平板混釈法とペトリフィルム法で0.991および1.0756,平板混釈法とスパイラルプレーティング法で0.959および1.1830,ペトリフィルム法とスパイラルプレーティング'法で0.962および1.0997であった.これらのF値の有意水準5%における両側検定を行った結果,どの方法においてもそれらの分散に有意差は認められなかった.
    大腸菌群については,試料137検体の48±3時間培養後の3法間の結果において86.1から92.0%の一致率が得られた.さらに,Pro・mediaMT-21法およびColilert法は結果が迅速に得られ,特にPro・mediaMT-21法においてはその判定も明確であった.Colilert法は,試料によっては大腸菌群の判定が困難な場合があったが,E.coliの存在はUV照射による蛍光反応により確認できた.
    以上の結果から,生菌数の測定および大腸菌群・大腸菌の定性試験を実施する際の簡便法として,ペトリフィルム法, Pro・mediaMT-21法およびColilert法が十分利用できることが明らかとなった.
  • ホエータンパク質の有効利用に関する研究(第1報)
    藤野 博史, 六車 三治男, 伊藤 肇躬, 大橋 登美男
    1993 年 40 巻 5 号 p. 309-315
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    食品素材としてのホエータンパク質製品の有効利用の可能性を探るために,WPCおよびWPIの熱凝集性に及ぼすpH,食塩および塩化カルシウムの影響について,直線的温度上昇法による濁度の変化,および80℃,1分加熱による粘度の変化を測定することにより検討した.
    (1)直線的温度上昇法による濁度の変化については,WPC,WPIともにpH5.0で濁度の変化が認められ,WPIの方がその傾向が強かった.食塩については200mMの添加で加熱による明らかな濁度変化が認められた,塩化カルシウムについては両者とも1mMの添加で加熱により大きく濁度が変化し,とくにWPIにおいて約80℃で最大のピークが得られた.
    (2)粘度については,WPC,WPIともにpHの影響は少なかった.食塩200mMを添加したWPIでは加熱による明らかな粘度変化が認められた.塩化カルシウム添加についてはWPCでは加熱による粘度変化はわずかであったが, WPIでは未加熱でも添加量の増加にしたがって粘度が変化し, 5mM添加したWPIでは加熱により粘性が大きく変化し,凝固物の形成が認められた.
  • 鄭 昌敏, 宮本 拓, 片岡 啓, 大平 猪一朗, 米屋 武文
    1993 年 40 巻 5 号 p. 316-322
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    乳酸菌6属49菌株についてフマル酸からL-リンゴ酸生成能を比較し,次のような結果を得た.
    (1)Streptocccus属,Enterococcus属,Lactoco-ccus属おびLeuconostoc属の菌株はL-リンゴ酸の生成能が弱く,フマル酸からL-リンゴ酸への変換がほとんど認められなかった.
    (2)Pedtiococcus属ではP.pntosaceusIAM12296が食塩を含まない反応液で高い生成能を示したが,他の菌株においては両反応液での生成能はほぼ同等であった.(3)Lactobacillus属には高い生成能を示す菌株が多く含まれていた.そのうち,L.delbrueckiisubsp.bulgaricus7235が無塩下で,L.delbrueckisubsp.lactis1135は5%食塩下で最も高いL-リンゴ酸生成能を示した.
    (4)高い生成能を示した上記2菌株では,反応2日目までにフマル酸の大部分がL-リンゴ酸変換されていた.
    (5)i1135とi7235におけるフマル酸からL-リンゴ酸生成の至適pHはそれぞれpH7とpH6であり,両菌株とも30℃から45℃の範囲で高いL-リンゴ酸生成能を示した.また,7235および1135の菌株のL-リンゴ酸生成はそれぞれ3%および10%の食塩濃度で最高を示した.
  • 浅野 三夫, 遠藤 いずみ, 山内 文男
    1993 年 40 巻 5 号 p. 323-330
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    大豆種子中のどの蛋白質とも相同性を示さない独特な蛋白質である塩基性7Sグロブリン(BG)が,オカラ残査中に検出されたので,それらの分離抽出法を検討し,新しい調製法を試みた.
    (1)未加熱および加熱オカラ水洗残査からの水抽出物を電気泳動分析した結果,いかなる成分も検出されなかった.
    (2)0.1%SDS,6M尿素溶液抽出物においては,未加熱のオカラからは1本の塩基7Sグロブリンのバンドが検出されたが加熱オカラからは何も検出されなかった.しかし加熱オカラの場合,同溶液にメルカプトエタノール(0.02M)を添加して抽出することによって塩基性7SグロブリンのサブユニットであるHMWSとLMWSの2本のバンドが検出された.
    (3)未加熱オカラ塩基性7Sグロブリンの抽出におよぼす各抽出剤(NaCl,尿素,SDS),その濃度,pHおよび抽出温度の影響を調べた結果,夫々NaCl0.3M以上,尿素1M以上,SDS0.1%以上,pH8以上,抽出温度は50℃以下の条件で抽出されることが明らかになった.
    (4)従って,塩基性7Sグロブリンはオカラ中の成分と非共有的な結合をして存在していることが示唆された.
    (5)抽出温度60℃以上では塩基性7SグロプリンのSH基がお互にS-S結合を起こして沈でんするか,又はオカラ中の成分とS-S結合を起こして抽出されないことが明らかになった.(6)オカラから調製した塩基性7SグロブリンをCM-セファロースCL-6Bにかけ得られた2つの画分(F1とF2)のHPLC分析を行った結果,それぞれ,主に85kDaと42kDaの分子量をもつものであった.
    (7)それらの各画分(F1とF2)を解離系の電気泳動分析の結果,全く同一のバンドが検出され,F1は二量体,F2は単量体を形成していることが示唆された.
    (8)対照に従来の調製法や脱脂大豆粉水洗残査からも調製を試み比較した結果,工程の容易さ,収量および再現性においてオカラからの調製法がすぐれていた.
  • 沖縄におけるとうふようの製造に関する研究(第8報)
    安田 正昭, 松本 哲也, 坂口 真樹, 小波本 直忠
    1993 年 40 巻 5 号 p. 331-338
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    Monascus属カビを用いてとうふようの製造を行い,熟成過程における製品の一般成分,タンパク質及び窒素成分の経時的変化及びその熟成環境等について検討した.
    (1)製品の粗タンパク質及び粗脂肪量は熟成の進行に伴い減少した.一方,還元糖量は熟成の進行に伴い増大した.しかしながら,粗繊維はほとんど定量されなかった.食塩は熟成期間を通して3%付近で推移した.もろみ中の粗タンパク質や還元糖量は熟成時間の経過に伴い増大した.
    (2)もろみ中でのとうふようの熟成環境は,pH6.0~5.5の微酸性,エチルアルコール濃度が20%付近であった.もろみ中Monascus属菌のプロティナーゼ活性は熟成初期(0.5ヵ月)に低下(残存活性:37%)したもののそれ以降は熟成5ヵ月までほぼ同程度の残存活性を示した.グルコアミラーゼ活性も熟成初期(0.5カ月)に低下(残存活性:44%)したが,熟成5ヵ月までほぼ同程度の残存活性を示した.一方,α-アミラーゼ活性は熟成後期まで比較的高水準(残存活性:50%)で推移した.
    (3)熟成過程におけるとうふようの純タンパク質量の変化を調べた結果,熟成0日目(乾燥豆腐)では38.6%の値を示したが,熟成0.5ヵ月で27.8%に,3ヵ月で24.0%,それ以降5ヵ月まで徐々に低下した.とうふようのタンパク質の分解の様子をSDS-PAGEで調べたところ,水不溶性試料では,熟成0日目でβ-コングリシニンのα’,α及びβ-サブユニット,グリシニンの酸性及び塩基性サブユニットの他10本のバンドが観察されたものの,熟成の進行に伴い大部分のバンドの消失が観察された.熟成3力月の試料では,グリシニンの塩基性サブユニットと分子量55及び11~15KDaに位置するバンドが残存した.水溶性試料では,熟成0日目で,31,25,23,21,17~14及び12~10KDaに位置するバンドが存在したものの,熟成3カ月ではいずれのバンドも消失した.
    (4)とうふようの水溶性窒素量,4%TCA可溶性窒素量及び75%エチルアルコール可溶性窒素量の総窒素量に対する比率で表される数値はそれぞれ熟成の進行にともない増大した.熟成3カ月における製品のこれらの数値はそれぞれ36.3, 34.0, 22.7%であった.
  • 杉田 浩一, 山内 清, 大橋 登美男, 水光 正仁, 三浦 道雄
    1993 年 40 巻 5 号 p. 339-347
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    切り干し大根のチップから調製した抽出エキス(チップェキス)が亜硝酸塩の代用物として利用できる可能性を,チップエキス添加ソーセージの発色,風味および保存性を通じて検討した.チップエキスを用いて調製したポークソーセージでは,4日間の短期塩漬で塩漬肉製品の特徴的色調を発現させるのに十分なNO2一量を生成した.しかし,1%のチップエキス添加ポークソーセージの場合,加熱後冷蔵中,加熱塩漬肉製品の特徴的色調を保持するためには,還元剤としてアスコルビン酸塩の共存が必要であった.またチップエキスは抗酸化活性を有し,アスコルビン酸塩の共存下で増強された.さらに,添加したチップエキスがポークソーセージにおいて静菌作用を有することが示唆された.1%あるいは3%のチップエキスを添加したフランクフルトソーセージの味および香りは,無添加あるいは5%のチップエキスを添加したソーセージより好ましかった.チップエキス5%添加ソーセージは明白なダイコン様風味を有していた.無硝酸塩ソーセージ原料にはアスコルビン酸塩とともに1%あるいは3%のチップエキスを使用することが適当であり,加熱塩漬肉製品の特徴的色調と風味の発現を確実にした.
  • ハトムギもやしの抗菌性物質に関する研究
    石黒 幸雄, 岡本 賢治, 園田 洋次
    1993 年 40 巻 5 号 p. 353-356
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    ハトムギのメタノール抽出物(常温,48時間)に含まれる抗菌性物質について研究し,次の結果を得た.
    (1)ハトムギは,茎葉,種子,もやしおよび根の各部において抗菌活性が認められ,特に,もやしに強い抗菌活性があることが確認された.また,Coixolは抗菌活性を示さなかった.
    (2)ハトムギもやしの生育段階における抗菌活性を調べたところ,もやし伸長が2cmの発芽初期段階時に最も強い抗菌活性が確認された.
    (3)ハトムギもやし抽出物の各種菌株に対する抗菌活性を調べたところ,グラム陽性菌,グラム陰性菌,酵母およびカビに対して抗菌活性を示したことから,ハトムギもやしの抗菌性物質は幅広い抗菌スペクトルを有していることが確認された.
    (4)ハトムギもやし抽出物を加熱処理(120℃,20分間)した後,ペーパーディスク法により抗菌活性の変化を調べたところ,抗菌活性はほとんど失われなかったことから,ハトムギもやしの抗菌性物質は熱安定性を有していることが確認された.
  • バンペイユ茎葉組織におけるリモノイドの存在部位(第1報)
    森下 敏子
    1993 年 40 巻 5 号 p. 357-361
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    バンペイユを試料とし,茎および葉におけるリモノイドの存在状態について顕微鏡による組織的観察とHPLCによる化学分析により確認した.
    (1)検鏡の結果,茎の篩部にp-N-ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液により褐色を呈する不定形の物質が認められた.この物質はジクロルメタン,酢酸エチル,アセトニトリル,クロロホルムに可溶性であり,石油エーテルおよびヘキサンに不溶であった.
    さらに塩化第二鉄溶液により紫色に呈色し,アンモニア性硝酸銀により褐色に呈色した.
    (2)葉の裏面に暗色不定形の物質が認められ,P-N-ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液により褐色に呈色し,ジクロルメタン,酢酸エチル,アセトニトリルおよびクロロホルムに溶解し,石油エーテルおよびヘキサンに不溶であった.
    (3) 葉中のリモノイド量はノミリンが20.3ppmを示し,他のリモノイドに比べ高い値を示した.
  • 石渡 尚子, 菊池 俊彦
    1993 年 40 巻 5 号 p. 362-364
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    Alt.alternateから抽出・精製したβ-ガラクトシダーゼのオリゴ糖生成条件について,HPLCおよび酵素法を伴用し検討した.その結果,6種類のオリゴ糖類の生成が認められ,5種類は二糖類,1種類は三糖類と推定された.グルコースの遊離量とオリゴ糖生成量には高い正の相関が見られた.オリゴ糖生成は基質濃度および反応温度がそれぞれ高いほど効率よく行われ,最適反応pH付近で生成量は最高に達した.生成率は酸性側よりもアルカリ側で高く,また,生成されたオリゴ糖の種類は酸性側とアルカリ側で異なることが認められた.
  • 山下 純隆, 馬場 紀子, 森山 弘信
    1993 年 40 巻 5 号 p. 365-369
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    アミロースとアミロペクチンが混在しているヨウ素呈色液中のそれぞれの含量を測定するために,単波長を用いるJULIANOの方法と2波長を用いる2波長測定法を比較した.
    2波長測定法はJULIANOの方法に比べて,アミロースだけでなく,アミロペクチンによるヨウ素呈色度をも正確に測定できることが明らかになった.
    2波長測定法によって品種別に米粉を分析した結果,本測定法によって得られるアミロペクチンの測定値やアミロース/アミロペクチンの値は,アミロースの測定値よりも食味に強く影響している可能性もあると考えられた.
  • シュー生地の調製条件が膨化に及ぼす影響(第1報)
    大喜多 祥子, 山田 光江, 遠藤 金次
    1993 年 40 巻 5 号 p. 370-377
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    シュー生地の卵液の混入操作では空気の取り込みと成分の均質分散化が同時に起こる.そこで,それぞれの膨化への影響を追究するために減圧下で撹拌混合を行い,生地の諸性質と膨化体積との関連を検討した結果,
    (1)生地の柔らかさと白さは撹拌により増すが,いずれも製品体積との問に有意な相関が認められず,生地比重と体積との間に強い負の相関があった.
    (2)生地中に占める気泡の容積が生地容積の1%程度では,成分の分散が充分であってもシュー状の膨化は不可能で,含気が膨化の不可欠因子であることが実証された.
    (3)製品が大きく膨化するには生地中に,生地容積の3.5%程度以上の気泡が含まれる必要があった.しかし量的には5%程度含まれていても撹拌不足で成分および気泡の分散が不充分では膨化体積は小さく,撹拌による分散化も膨化要因であることが確認された.
    (4) 生地中気泡の直径の分布比較により,含気量が同等なら小気泡多数の方が膨化に有効であることが示唆された.
  • 林 徹, 等々力 節子, 乙部 和紀, 杉山 純一
    1993 年 40 巻 5 号 p. 378-384
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    インピーダンス測定する前の馬鈴薯の貯蔵条件が照射馬鈴薯の検知の成否に大きな影響を及ぼした.馬鈴薯を22℃で3日以上貯蔵してから22℃で先端部のインピーダンスを測定して求めた5kHzと50kHzにおけるインピーダンスの比(Z5k/Z50k)が照射馬鈴薯の検知のパラメータとして最も優れており,この値は線量に依存して増加した.10品種の馬鈴薯について検討したところ,いずれにおいても,非照射の試料と100Gy照射した試料を識別することができた.Z5k/Z50kは,同一品種であれば産地の影響はあまり受けなかったが,品種が異なると異なった値を示した.これらの結果から,品種が既知の馬鈴薯については照射処理の検出が可能であることが明らかになった.本方法により,士幌で商業的に照射された馬鈴薯(男爵)と非照射の馬鈴薯(男爵)とを識別することも可能であった.
  • 選択拡散理論の適用
    古田 武
    1993 年 40 巻 5 号 p. 385-392
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    噴霧乾燥食品の品質管理上重要な,乾燥中のフレーバー散失量の推定法について,選択拡散理論を基礎に解説した.この方面に携わる食品工学技術者諸氏の参考になれば幸である.簡易推算法に関しては,パラメーターの値の不足により,筆者らが測定した単一液滴のデーターを相関することができなかった.最近は手軽に計算機が扱えるので,物性値さえわかれば数値計算はそれほど困難ではない.その意味で,拡散係数,水分活性などの諸物性値の推算法の研究が望まれる.
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