塩化ニッケル単独溶液の濃縮と塩化ナトリウムとの混合溶液の濃縮および脱塩をイオン交換膜電気透析法により行なった.
単独溶液の濃縮実験を1~5A・dm
-2の電流密度で行なった結果, 濃縮液濃度, 濃縮液量に及ぼす電流密度の影響は海水の濃縮の場合と同様の傾向を示し, 電流効率は約90%と良好であり, 工業的にも十分利用可能であることがわかった.
混合溶液の濃縮実験の場合には各電流密度における原液濃度と濃縮液濃度の値とから, ナトリウムイオンに対するニッケルイオンの選択濃縮係数, PNiNaを求め, ナトリウムイオンに対するニッケルイオンの透過性を比較した結果, この
PN1Naの値は電流密度が増加すると減少する傾向が認められた. そこで, 電流密度が零のときの値,[
PN1Na]
0を外そうすると1.24の値が得られた.一方, 同一の原液中に陽イオン交換膜を浸漬し, 膜中の両イオンの濃度比を測定し, ナトリウムイオンに対するニッケルイオンの選択吸着係数, SNiNaを求めたところ1.79の値となった.両者の値よりナトリウムイオンに対するニッケルイオンの移動度比は0.69と推定された.
塩化ナトリウム-塩化ニッケル混合溶液の脱塩実験では, 両金属イオンおよび塩素イオンの濃度は通電時間とともにほぼ直線的に減少し, 濃度の経時変化からナトリウムイオンに対するニッケルイオンの選択脱塩係数,
P'N1Naの値を求めると1.42となった.
以上, 濃縮および脱塩の実験結果から, ニッケルイオンはナトリウムイオンにくらべて陽イオン交換膜をいくぶん透過しやすいことがわかった.
抄録全体を表示