5種の原塩を用い, 不溶解分定量法を比較するとともに, 不溶解分をX線回折分析および蛍光X線分析した結果, 次の知見を得た.
1) 中国塩 (Xingang) の水不溶解分中にはα-石英, 斜長石, 微量の方解石が, オーストラリア塩 (Porthedland) では微量のα-石英のほかカオリン鉱物と思われるものが, メキシコ塩 (Cedlos Island) では微量のα-石英のほか斜長石と思われるものが, オーストリア岩塩では無水石膏が, チリ岩塩では微量の菱苦土石, α-石英のほか緑泥石と思われるものが検出された. 産地がわからない場合, このような含有鉱物成分や石英とのX線回折強度比を比較することによって推定できるかもしれない.
2) 膜フィルターを濾過体に用いることにより, 不溶解分のX線分析をできただけでなく, 不溶解分の定量精度も塩務法よりよいことがわかった.
3) 多くの原塩では塩務法とISO法との間に大きな差はなかった. しかし, 無水石膏のように小さい溶解度をもち溶解速度の遅い粗い粒子を含む原塩では両法の間に著しい差があり, これは可溶成分の定量値にも影響すると思われた.
4) 塩務法のほうがISO法より方解石の溶解度が高い傾向が認められ, これは試料を溶解するとき用いる水の中の炭酸濃度の影響のように思われた.
5) 原塩のなかには, 水に簡単には溶けにくいが, アルカリには溶けるような形でSi, Alなどが存在する場合もあるように思われた.
6) 原塩中の不溶解分中には前述のCa, S, Si, Al, Mgのほか, Fe, K, P, その他が含まれて産地によってその割合も異なっていた, これもまた産地の推定に役立つかもしれない. 一方, このような微量元素の定量では, 試料溶解に注意を要するとともに, 厳密には可溶性と不溶性に分けて定量する必要がある.
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