日本海水学会誌
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44 巻, 5 号
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  • 本山 正夫
    1990 年 44 巻 5 号 p. 301-315
    発行日: 1990年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, イオンかん水の組成およびイオンかん水属する系の溶解平衡を調べ, それらのデータに基づきイオンかん水のせんごう, せんごう母液の冷却による液組成の変化, 析出結晶の種類とその量などを相律に解析したものである.
    製塩工場および研究所で採かんされたイオンかん水の組成を検討し, その特徴を明らかにした.
    0.25および100℃におけるNa+, K+, Mg2+, Ca2+∥Cl--H2O系5成分系とその低次系の溶解平衡を温法で調べ, 測定結果と文献データとに基づいて々の5成分系状態図を作成した, 上記の5成分系の塩化ナトリウム飽和点の液組成をめる一般式を誘導, 実験による吟味を行った. こ5成分系の正四面体座標上の塩化ナトリウム析出領を平面座標上に表示する方法を考案し, この方法の効性を実験により確認した.
    イオンかん水の25℃における等温蒸発の図計算をい, 実験により液組成の変化, 析出結晶の種類など計算値は十分信頼しうることを明らかにした, 製塩の諸操作, すなわちイオンかん水のせんごうによる塩化ナトリウムの析出, せんごう母液の冷却による塩類析出などの図計算法を考案した. 以上の計算法の製塩工場への応用について若干の考察を試みた.
  • 江川 博明, 野中 敬正, 中山 守雄
    1990 年 44 巻 5 号 p. 316-321
    発行日: 1990年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    物理的細孔構造の異なる9種のスチレン-ジビニルベンゼン球状共重合体を高分子基体として, ホスフィン基およびホスホン基を有する巨大網状型樹脂 (RCSP) を 合成 し, そのウラン吸着性を検討した.これらの樹脂のウラニルイオン吸着容量は官能基量にほぼ比例したが, 海水ウラン吸着性能については, 樹脂の物理的細孔に加え, 湿潤細孔の形成が大 きく影響することが確認された, 今回, 合成した9種の樹脂のうち, 最も海水ウラン吸着性能の大きかったRCSP (C),(G) を充填したカラムに40日間SV180h-1で海水を通液した結果, カルシウムとマグネシウムは5日以内に飽和吸着量に達したのに対し, ウラン吸着量は, 通液日数が経過するとともに増加することから, RCSPは, 海水ウランに対して, 高い吸着性を有することが明らかになった.
  • 千種 豪彦
    1990 年 44 巻 5 号 p. 322-327
    発行日: 1990年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    育晶するセンサーは, いろいろあるが, 固さ (レオメータ) は, 過飽和度のほかに懸濁密度を検出することが知られている.
    筆者は, 固さを溶液濃度と懸濁密度およびこれらの中間物質の胞芽量を合わせた量と定義して, 育晶制御は胞芽量の制御であることを提唱している.
    本報告は, レオメータを用いて, 二つの異なる育晶方法による実験をしたことについて, 下記の内容について述べた.
    育方晶法は, 固さの中の胞芽を制御 (IGCR) する方法と固さの量を制御 (CGCR) する方法で, 共に核が生成される限界曲線でプログラム制御を行ったこと.
    育晶結果は, IGCRの方がCGCRより回収率が向上し, 結晶品質が向上し, 育晶時間が短縮したこと.
    これらの理由は, IGCRの方がCGCRより胞芽量が多くあったことについて報告した.
  • 大坪 藤代, 宮川 金二郎
    1990 年 44 巻 5 号 p. 328-333
    発行日: 1990年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    食塩溶液による野菜の脱水について検討するため, 27種の野菜の浸透圧を測定するとともに, 種々な食塩濃度および温度のもとでダイコンの脱水率を測定し, 速度論的に考察した. また走査型電子顕微鏡 (SEM) にて脱水前後のダイコン組織を観察し, 以下の結果を得た.
    1) 葉菜17種, 果菜4種および根菜6種のそれぞれの平均浸透圧は4.25, 7.47および9.62atmであり, 葉菜類が低く, ついで果菜類であり, 根菜類は最も高い値を示した.
    2) 飽和食塩水によるダイコンの脱水は初期脱水期, 第一平衡期, 減少期および第二平衡期の4段階で進行することが明らかとなった.
    3) SEMによるダイコン組織像から, 脱水によりダイコン組織が収縮するとともに細胞間の引き裂かれ現象が見られた.
    4) 初期脱水期は見掛け上, 一次反応として取り扱うことができ, その脱水速度定数は10-2(min-1) のオーダーであった. またその速度定数はダイコン試料の表面積に比例した,
    5) 脱水反応の活性化エネルギー, E=3.6kcal/molであり, 脱水反応の活性化状態における自由エネルギー変化量ΔF*, エンタルピー変化量ΔH*およびエントロピー変化量ΔS*はそれぞれ21~22kcal/mol, 3.0kcal/molおよび-62~-64e.u. であった. 活性化エネルギーおよび自由エネルギー変化量がかなり小さな値であり, エントロピー変化量が負の値をとることが特徴づけられた.
  • 深沢 力, 川久保 進, 山本 修司
    1990 年 44 巻 5 号 p. 334-340
    発行日: 1990年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    約0.4gの検塩を23mlテフロン高圧加熱分解容器 (UNI-SEAL) 中で120℃で30分間, 6M塩酸8mlで溶解した. 検液中に不溶解残渣が認められる場合は遠心分離し, フッ化水素酸と硫酸を用いて分解し不溶性アルミニウム定量用の検液とした. それぞれの検液に酢酸アンモニウム溶液を加えてpH4.5に調節し, アスコルビン酸と8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸を加えて蛍光強度を測定し可溶性と不溶性アルミニウムを分けて簡便に再現性よく定量できた. 約0.2ppmまでのアルミニウムが塩化ナトリウム共存のまま定量できる. 塩化ナトリウム濃度, 共存元素の影響とマスキング, 試料分解法などを検討するとともに, アルミニウムのみならずほかの微量成分も必要に応じて, 可溶性, 不溶性に分けて定量すべきことを述べた. また, 中国塩, 並塩, 天日塩の分析例を示した.
  • 岩附 正明, 深沢 力
    1990 年 44 巻 5 号 p. 341-347
    発行日: 1990年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    5種の原塩を用い, 不溶解分定量法を比較するとともに, 不溶解分をX線回折分析および蛍光X線分析した結果, 次の知見を得た.
    1) 中国塩 (Xingang) の水不溶解分中にはα-石英, 斜長石, 微量の方解石が, オーストラリア塩 (Porthedland) では微量のα-石英のほかカオリン鉱物と思われるものが, メキシコ塩 (Cedlos Island) では微量のα-石英のほか斜長石と思われるものが, オーストリア岩塩では無水石膏が, チリ岩塩では微量の菱苦土石, α-石英のほか緑泥石と思われるものが検出された. 産地がわからない場合, このような含有鉱物成分や石英とのX線回折強度比を比較することによって推定できるかもしれない.
    2) 膜フィルターを濾過体に用いることにより, 不溶解分のX線分析をできただけでなく, 不溶解分の定量精度も塩務法よりよいことがわかった.
    3) 多くの原塩では塩務法とISO法との間に大きな差はなかった. しかし, 無水石膏のように小さい溶解度をもち溶解速度の遅い粗い粒子を含む原塩では両法の間に著しい差があり, これは可溶成分の定量値にも影響すると思われた.
    4) 塩務法のほうがISO法より方解石の溶解度が高い傾向が認められ, これは試料を溶解するとき用いる水の中の炭酸濃度の影響のように思われた.
    5) 原塩のなかには, 水に簡単には溶けにくいが, アルカリには溶けるような形でSi, Alなどが存在する場合もあるように思われた.
    6) 原塩中の不溶解分中には前述のCa, S, Si, Al, Mgのほか, Fe, K, P, その他が含まれて産地によってその割合も異なっていた, これもまた産地の推定に役立つかもしれない. 一方, このような微量元素の定量では, 試料溶解に注意を要するとともに, 厳密には可溶性と不溶性に分けて定量する必要がある.
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