日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
29 巻, 11 号
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  • 標準的うつ尺度との関連
    松林 公蔵, 木村 茂昭, 岩崎 智子, 濱田 富男, 奥宮 清人, 藤沢 道子, 竹内 克介, 河本 昭子, 小澤 利男
    1992 年 29 巻 11 号 p. 811-816
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の quality of life (QOL) の一端を, 客観的に評価する目的で, Visual Analogue Scale による (「主観的幸福度スケール」) Visual Analogue Scale of Happiness (“VAS-H”) を考案し, 地域在住の後期老年者を対象に, すでに確立されているうつ評価法との関係を検討した.“VAS-H”は, 同時に施行した標準的 Geriatric Depression Scale ならびに, 同じ被験者に一年前に行った Zung の自己評価抑うつ尺度 (SDS) とも有意の相関を示した. 以上より, 老年者の日常の主観的幸福観を評価する本法は, 情緒やうつ状態を一定程度反映していると考えられた. 本法はQOLの一端を評価するための簡便な方法と考えられる.
  • ライフスタイルならびに認知・行動機能との関連
    松林 公蔵, 木村 茂昭, 岩崎 智子, 濱田 富雄, 奥宮 清人, 藤沢 道子, 竹内 克介, 河本 昭子, 小澤 利男
    1992 年 29 巻 11 号 p. 817-822
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    地域在住後期老年者313名を対象に, 主観的幸福度に影響を与える因子を検討した. 幸福度を評価する指標としては, Visual Analogue Scale of Happiness (“VAS-H”)「主観的幸福度スケール」を用いた. アンケート調査によるADL, 情報関連身体状況, 社会的状況などをスコア化し, また各種の認知・行動機能のスコアと“VAS-H”との関連を解析した. その結果, ADLスコアと幸福度との関連は薄く, また情報関連身体状況, 認知・行動機能と幸福度との相関も小さかった. 幸福度と相関が強かったのは, 社会的因子であり, とりわけ経済状況, 同居形態, 家族関係, 集団行動などが幸福度と有意の相関を示した. この結果は, 比較的元気な地域在住老年者を対象母集団としたことによると考えられ, 老年者では, より身近な具体的現象によって幸福度が左右されるものと想定された.
  • ヒマラヤ地域高所住民への応用
    松林 公蔵, 奥宮 清人, 岩崎 智子, 藤沢 道子, 濱田 富男, 木村 茂昭, 武内 克介, 河本 昭子, 小澤 利男
    1992 年 29 巻 11 号 p. 823-828
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Visual Analogue Scale of Happiness (“VAS-H”)「主観的幸福度スケール」を, ヒマラヤ地域の5カ村における高所住民に適用し, 文化的背景が住民の主観的幸福度におよぼす影響についての国際的比較検討を行った. 対象は, ヒマラヤ地域5カ村に居住する高所住民733名と日本人老年者313名である. また, 同一尺度の神経行動機能評価を行い, 75歳以上の後期老年者について, ヒマラヤ地域住民老年者と日本人老年者について, 神経行動機能と幸福度との関連を比較検討した.
    ヒマラヤ地域高所住民では, 主観的幸福度は, 居住村への近代文明の浸透度と反比例する傾向を認めた. また, ヒマラヤ地域老年者と日本人老年者の比較では, ヒマラヤ地域の女性老年者が有意に幸福度スコアの低値を示した. 神経行動機能のうち, 日本人老年者では姿勢反射と歩行の安定度に関する指標のみが幸福度と相関を示したのに対して, ヒマラヤ地域の後期老年者では, 指先の巧緻運動能力が幸福度と相関した. 以上より, 客観的幸福度には, その民族のライフスタイルや文化的背景がつよく影響することが示唆された. このようなQOLに関する国際比較を行う場合に, 本尺度は簡便な一方法であると考えられた.
  • 西田 宏二, 野尻 五千穂, 加藤 正博, 東島 正泰, 高木 維彦, 明石 隆吉
    1992 年 29 巻 11 号 p. 829-835
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年高齢化社会を迎えて, 老年者の吐・下血に遭遇する機会が増えている. 今回我々は明らかな吐・下血を主訴に緊急上部内視鏡検査を施行した60歳以上の老年者69例を経験し, 老年者の上部消化管出血例の傾向や問題点など, 文献的考察をふまえ検討した. 内訳は胃潰瘍20例 (29.0%), 食道潰瘍・食道びらん12例 (17.4%), 十二指腸潰瘍9例 (13.0%), 胃癌7例 (10.1%), Mallory-Weiss 症候群6例 (8.7%), 食道・胃静脈瘤6例 (8.7%), 急性出血性胃炎4例 (5.8%), Dieulafoy 潰瘍3例 (4.3%), 慢性膵炎 (Hemosuccus pancreaticus) 及び胃 angiodysplasia よりの出血例各1例 (1.4%) であった. うち輸血が必要だったものは46例 (66.7%), ショックに至ったものは27例 (39.1%) であった. また高齢者においては基礎疾患があり, 消化管出血による急速な全身状態の悪化の為手術不能となる症例も多く, 積極的に内視鏡的止血法を施行し有用であった.
  • 吉田 昌, 高橋 忠雄, 橋本 肇, 野呂 俊夫, 日野 恭徳, 平島 得路, 寺島 裕夫, 津布 久裕, 若栗 直子, 山城 守也
    1992 年 29 巻 11 号 p. 836-840
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    上部消化管出血は種々のストレス下において発生するが, 日常の診療上術後においてたびたび経験する. われわれは老年者における手術後の上部消化管出血について, その特徴・治療法・問題点を検討した.
    過去10年間の手術症例のうち65歳以上を対象とし, 胃切除など上部消化管に何らかの手術操作を加えた症例を除く2,441例について検討した. 腰椎麻酔などで行われる, いわゆる minor 手術も含まれている. 上部消化管出血は, 胃液に少量の血液が混じる程度の軽症例は除外し, 内視鏡での出血源の確認, または輸血を必要としたものを対象とした. 食道静脈瘤からの出血は除外した.
    上記条件に該当する出血例は18例 (0.7%) あり, 男7例, 女11例で年齢は67~91歳 (平均77.0歳) であった. 手術対象臓器別では, 胆道系が10例 (胆道系手術の1.5%) と最も多く, 次いで大腸が5例 (1.1%)であった. 胆道系手術のうち, 術前の Total Bilirubin が2.0mg/dl以上の黄疸例では, 出血率は3.8%と非黄疸例 (0.6%) に対して有意に高値を示した. 原疾患では胆道系の癌 (4.5%) が結石 (1.1%) よりも有意に高率であった. 大腸に対する手術では, 標準術式以外に人工肛門の造設を必要とした例は, それ以外の例に対し, 有意に高率 (3.1%対0.6%) に発生した. これらは進行度の高い癌または全身状態不良症例であった. 出血源としては胃病変が多く, 胃潰瘍が11例・糜爛性胃炎が4例であった. 治療はH2-bolcker などによる保存的治療で止血効果は良好であったが, 手術を施行した2例を含め5例が多臓器不全で死亡した.
    術後上部消化管出血の risk factor として閉塞性黄疸・胆道系の癌・大腸の手術で標準術式以外に人工肛門造設を必要とした場合が挙げられる. High risk 例でのH2-blocker の予防的投与は効果があると思われた. 文献比較上, 老年者での術後上部消化管出血は発生頻度および死亡率ともに低い結果となった.
  • 江藤 文夫, 田中 正則, 千島 亮, 五十嵐 雅哉, 溝口 環, 和田 博夫, 飯島 節
    1992 年 29 巻 11 号 p. 841-848
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    日常生活動作・活動 (ADL: Activities of daily living) の評価に関して, 老年者一般に適用しうることを目的として, 評価法試案 (ADL-20) を作成し, 大学病院対象110例, 長期入院・入所施設対象106例の合計216例 (男性77例, 女性139例, 平均年齢76.2歳) に施行して, その信頼性, 妥当性, 有用性について検討した. 本評価法は下位領域として基本的ADL (BADL), 手段的ADL (IADL), コミュニケーションADL (CADL) を含む20項目からなり, それぞれ能力を完全自立(3)~全介助(0)までの4段階に分類評価した. 信頼性に関して, 40例について異なる評価者 (医師と理学療法士) による同時評価の一致率を検討した. 全体での完全一致率は85.6%で, 項目毎には70.0~97.5%であり, 一致性の指標としての kappa 係数は0.52~0.88に分布した. 医師と理学療法士間の成績の相関係数は0.97であった. 各項目の内的整合性に関する Cronbach のα係数は0.97と極めて高いものであった. 妥当性に関して, ADL評価法として臨床的有用性が認められている Barthel Index, Katz Index との比較 (大学病院対象110例) で高度の相関が示された. また, 介護ニーズを7段階に分類し, 精神機能障害を4段階に分類し, 本評価法との相関を検討した. 介護ニーズとの相関係数は項目毎あるいは下位領域群よりも総得点において最も相関が高く, 下位領域群ではIADLとの相関が最も高度に認められた. また精神機能評価との相関も高く, とくにIADL項目における相関係数が大であった. 以上の結果から本評価法は身体, 精神機能を含めた老年者の総合的障害を反映したADLの評価法として十分満足な信頼性と妥当性を有すると考えられ, 介護ニーズや精神機能の指標としても有用性が期待される.
  • 稲垣 俊明, 山本 俊幸, 野倉 一也, 橋詰 良夫, 新美 達司, 三竹 重久, 小鹿 幸生, 山本 正彦
    1992 年 29 巻 11 号 p. 849-854
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    名古屋市厚生院およびその関連の老人施設に入院・入所中の100歳以上の老人 (以下百歳老人と略す) 12例 (男1例, 女11例) の知的機能, 日常生活動作能力 (以下ADLと略す) の特徴を明らかにするため, 62歳より99歳の同施設の老人742例 (男242例, 女500例) と比較検討し, 以下の結果を得た.
    1) 百歳老人の痴呆の出現率は66.7%であり, 原因疾患ではアルツハイマー型痴呆75%, 混合型痴呆が25%であり, 痴呆の程度はいずれも高度であった. 痴呆のない百歳老人の特徴は, 痴呆老人と比較して知的機能では自分および身近な物に対する認識の衰えがないことと精神症状が認められないことであった.
    2) 百歳老人のADLは寝たきり例および排泄の全面介助例が多いが, 食事の自立例は高率であった.
    3) 加齢とともに知的機能, ADLは低下した. すなわち百歳老人は通常の老年者の延長線上にあることが示唆された.
    4) 百歳老人12例のうち5例が死亡し, その5例について臨床病理学的検討をおこなった結果, 痴呆のない2例およびアルツハイマー型痴呆の2例で臨床診断と病理診断が一致した.
  • 上島 悦子, 三上 洋, 森本 茂人, 池上 博司, 三木 哲郎, 舛尾 和子, 矢内原 千鶴子, 荻原 俊男
    1992 年 29 巻 11 号 p. 855-863
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    多病罹患傾向が強く投薬数が増加しがちな老年者において, 薬物治療を安全かつ効果的に行う事を目的に, 本年齢層の服薬に対する意識と服薬コンプライアンスの調査を行った. 当科および関連4施設の内科外来に通院中の626名の患者を対象とし, アンケート調査し, 投薬対象疾患, 処方薬の種類と用法等とを対比しながら年代別に比較検討した. 処方薬剤数は高年齢になるに従い増加し, 40歳未満の患者の平均2.3種類に対し, 70歳以上の患者では平均5.1種類と約2倍の薬剤が処方されていた. これに対し, 自己申告による服薬コンプライアンスは, 各年代を通じ70歳以上の患者で最も良いという結果であった. 服用中の薬剤の量に関して, 適当であると答えた患者のうち服薬コンプライアンスの良好なものが76%を占めたのに比して, 多すぎると答えた患者では67%の低率を示した. また, 薬を服用して調子が良いと答えた患者の服薬コンプライアンスに比べ, 具合いが悪いと答えた患者, 副作用を懸念すると答えた患者で低率を示した事から, 患者の不安がコンプライアンスに影響を与える可能性が示された. 服薬時刻別では, 服薬指示不遵守率が朝 (9%), 夕 (8%), 眠前 (6%) に比し, 昼 (21%)が最も高率であった. さらに, 老年者においては複数の科・病院で同時に投薬を受け, しかもそれを医師に告げていない患者が約3分の1にのぼり, さらに医師から服用薬に関する説明を充分聞いていない患者も多いという状態にあることが示された. このように, 老年者では若年層に比して服薬態度に特徴があり, 安全な治療を遂行する上で, 服薬コンプライアンスの向上にはこうした特徴を理解した上での指導が必要である事が示された.
  • 実重 真吾
    1992 年 29 巻 11 号 p. 864-873
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者における骨減少症の頻度と成因を検討する目的で, DEXA法を用い, 女性糖尿病患者69名 (IDDM 14例, NIDDM 55例) の腰椎骨塩量, 全身骨塩量, 全身脂肪量, 除脂肪量を測定し, 骨代謝マーカーとの関連を検討した.
    IDDM群でもNIDDM群でも加齢とともに腰椎骨塩量は減少傾向を示したが, 同年代の健常者の腰椎骨塩量の平均値と比較すると (%Age-matched), 低下している群とともに, 正常あるいは増加している群とが認められた. 閉経後のIDDM群に低下傾向がみられた. 健常者の骨塩量の90%未満に骨塩量が減少している割合は, 69例中13例 (18.8%) であった. 腰椎骨塩量と全身骨塩量は正の相関を示し, 腰椎骨塩量減少群では全身骨塩量も減少していた. 腰椎骨塩量減少群では血糖のコントロール状態は不良であったが, 糖尿病の罹病期間, 合併症の有無と骨塩量減少との関連は認められなかった. IDDM群ではNIDDM群に比して, 1,25(OH)2D, オステオカルシンが低下していた. また, 腰椎骨塩量は尿中ピリジノリン排泄量と負の相関を示した. 腰椎骨塩量は体重と正の相関を示し, 腰椎骨塩量減少群では, Body Mass Index, 体重, 脂肪量, 除脂肪量が骨塩量正常, 増加群に比して有意に低値であった.
    従って, IDDMでは閉経後に骨塩量の低下が見られやすいこと, また, 糖尿病患者の骨塩量低下群の特徴として, 血糖コントロールの状態が不良であり, 痩せが見られること, 活性型ビタミンDが低値の傾向を示すことなどがあげられることが判明した.
  • 黒山 政一, 本橋 茂, 村瀬 勢津子, 小林 輝明, 朝長 文弥, 阿部 直, 冨田 友幸
    1992 年 29 巻 11 号 p. 874-880
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    代表的なセフェム系抗生剤12種 (CET, CEZ, CZX, CPZ, CZON, CPM, CDZM, CFX, CMZ, CTT, LMOX, FMOX) の蛋白結合率を, 健常若年者 (平均28.6歳) および健常老年者 (平均69.7歳) の血清を用いて, 平衡透析法により同一条件下で比較検討した.
    老年者におけるセフェム系抗生剤の蛋白結合率は, 若年者と比較して明らかに低下し, 遊離型薬物濃度の上昇がみられた. 老年者におけるセフェム系抗生剤の蛋白結合率低下の要因として, 血清アルブミン値の低下および非エステル化脂肪酸の組成化の変化が考えられた.
    セフェム系抗生剤の効果・副作用の発現には遊離型薬物濃度が関与するので, 老年者へのセフェム系抗生剤の投与に際しては, このような蛋白結合率の低下に起因する薬理効果の増強, 副作用発現率の増加の可能性にも十分考慮すべきであろう.
  • 新 弘一, 高崎 優, 勝沼 英宇, 佐藤 勝彦, 渋谷 健, 佐藤 成實, 平山 八彦
    1992 年 29 巻 11 号 p. 881-887
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    消炎・鎮痛薬 Alminoprofen アルミノプロフェン (ミナルフェン®錠) の高齢患者 (慢性関節リウマチ患者3例, 変形性脊椎症患者2例, 平均79±5歳) における血中濃度推移を指標とした pharmacokinetics の解析を行い, 若年健常者における調査成績 (Shibuya et al. 1989) との比較検討を行った.
    その結果, 最高血中濃度 (Cmax) は, 服薬第1日目が16.1±2.5μg/ml, 第3日目が25.2±1.6μg/ml, 第5日目では21.6±2.7μg/mlで, 最高血中濃度到達時間 (Tmax) は約2時間であった. また, 血中濃度曲線下面積 (AUC) は, 第1日目のAUC0-∞は58.5±6.3μg・hr/ml, 第3日目のAUC0-4はそれぞれ58.5±3.1, 58.1±8.5μg・hr/mlで極めて類似しており, 若年健常者のAUCと比較して著しい差異はなかった. 蓄積性に係わる消失相の半減期 (t1/2) は, 投与第1日目が2.45±0.35hr., 第3日目が2.09±0.82hr., 第5日目では2.49±0.63hr. であり, いずれも著しい差異はない. また, 本薬の高齢者における蓄積率は1.16±0.05で, 若年健常者での1.2と比べ差異は認められなかった. さらに, 血漿中の平均滞留時間 (MRT) は第1日目が2.31±0.03hr., 第3日目が2.15±0.09hr., 第5日目では2.15±0.07hr. であり, 分散時間 (VRT) は第1日目が0.95±0.05hr2, 第3日目が0.88±0.09hr2, 第5日目では1.06±0.07hr2であった.
    これらの pharmacokinetics に関する調査成績から, 本薬の高齢者におけるTmax, t1/2はやや延長するものの, AUCや蓄積率等は成人健常者と比較的類似しており, 高齢患者に連続投与しても若年成人健常者と同様に, 体内蓄積性はないか又は極めて弱いものと考えられた.
  • 野倉 一也, 稲垣 俊明, 内藤 敬子, 新美 達司, 山本 俊幸, 三竹 重久, 小鹿 幸生, 山本 正彦
    1992 年 29 巻 11 号 p. 888-894
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性. 外陰部は幼児様であり, 陰毛, 髭は欠如, 声はやや高く, 指極長の過長, 下口唇の肥厚, 円形顔貌など類宙官症候を認めた. 知的機能の障害は明らかでなかった. 耳側半盲を認めた. 頭部単純レントゲン写真でトルコ鞍の拡大, 上方に進展した石灰化腫瘍を認め, CTでは辺縁と内部に石灰化を認めた. MRI, T1強調画像では脳実質と等信号, T2強調画像では低信号であり, 頭蓋咽頭腫が疑われた. 内分泌機能検査からは腫瘍の下垂体, 視床下部圧迫による低 gonadotoropin 症を主体とした汎下垂体機能低下症と考えられた. 性腺系以外の内分泌機能低下症状が現在まで顕在化していないのは, 受容体 up-regulation の関与, 甲状腺系と副腎皮質系が均衡を保ちながら徐々に低下したこと, 老化が加わったためと推測された. また良性単クローン性高ガンマグロブリン血症を合併したが因果関係は不明であった.
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