1998~1999年に行われた,GAME(GEWEX Asian Monsoon Experiment)プロジェクトの枠組みのもと,熱・水収支の解明と併せて熱帯モンスーン気候帯における大気-陸面間のCO2フラックスの季節変化を明らかにするため,タイ国の典型的な土地被覆(複雑地表面,水田地域)においてCO2フラックス観測が実施された.観測結果より,雨季での両地表面において,日中のCO2 fluxは-1.2~-1.0mgCO2m-2s-1の範囲の値となり,高い光合成速度が示された,また,夜間におけるCO2放出量は0.2~0.5mgCO2m-2s-1となった.これらの結果から,植物活動期では暖温気候帯で行われた同様の土地被覆上での観測結果と同程度の値となり大きな違いは見られなかった.一方,乾季においても両観測地において光合成活動が確認され,両地表面は年間を通じたCO2吸収源である可能性が示唆された.また,植物活動期の雨季を対象に群落コンダクタンスモデル,生化学モデルを組み込んだ群落単層モデルを用いて各土地被覆における蒸発散特性・光合成特性を示すパラメータを抽出し,比較を行った,雨季での環境要因に対する群落コンダクタンスの応答は複雑地表面に比べて水田地域が大きかった.また,CO2フラックスは,日中の光条件において水田地域における値が複雑地表面のそれを上回り,これは各植生群落の光透過・反射特性の違いに起因するものと考えられた.
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