北海道東部の大規模酪農地域において,河川水質環境の現状把握と,水環境保全的見地からみた土地利用のあり方,などについて検討した.調査対象5流域における平水時の河川水質濃度は,[林野流域・自然河川]<<[酪農流域・自然河川]<[酪農流域・改修河川]の傾向を示した.とくに,酪農流域ではT-NのうちNO3-Nが80%程度を占め,単位草地面積当たりの家畜飼養頭数が多いほど濃度も増大するなど, NO3-Nの溶脱が明らかに認められた.流量と水質との関係では,飼養頭数密度が高い流域ほど水質汚濁は顕著であった.また,飼養頭数密度が類似する酪農流域間の比較では,[自然河川]<[改修河川]の傾向を示し,河畔の林野・湿地などが緩衝域として浄化機能を発揮していることが確認された. 以上より,流域の開発や酪農経営の規模拡大による河川水質への影響は,営農規模・状況のみならず,河川の形態や河畔の土地利用状態にも左右されるという知見を得た.そして,発生負荷と流出負荷の2つの座標軸をもとに,地域の水環境保全の方向性に関する考え方を提示した。
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