水文・水資源学会誌
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34 巻, 5 号
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巻頭言
原著論文
  • 高瀬 恵次, 伊藤 優子
    2021 年 34 巻 5 号 p. 274-282
    発行日: 2021/09/05
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

     水質の保全・管理は安全な水資源の確保のみならず,地域の水環境保全にとって重要な課題である.これまでの水質管理は濃度規制的な立場に重きを置いて行われてきたが,近年の排出物質の多様化と排出水量の増加は総量規制による水質管理が重要になることを示唆している.さらに,総負荷量の正確な把握は流域における物質循環・物質収支を理解する上で基本的な事項である.しかしながら,総負荷量の計測には多大の労力と時間あるいは経費を必要することが多く,その正確な把握はそれほど容易ではないのが現状である.そこで,本研究では総負荷量を対象として,これを簡便に正確に計測できるシステムを構築した.そして,これを積雪地の森林理水試験地に適用し,従来からよく用いられてきたオートサンプラーを用いた定時間間隔採水による総負荷量算定値と比較することによって,その有効性を検討した.その結果,両者はよく一致し,本計測システムを用いれば,面源からの長期間にわたる総負荷量を簡便に正確に計測できることが示された.

  • -修正SLSC法を含む手法-
    葛葉 泰久, 水木 千春
    2021 年 34 巻 5 号 p. 283-302
    発行日: 2021/09/05
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

     国土交通省をはじめ,多くの行政機関が河川計画策定時に「中小河川計画の手引き(案)」という資料を用いている.しかし,ここ数年著者らが指摘しているように,この手引きのT年確率水文量算定の手法を表すフローチャートには重大な誤りがある.特に,本邦で長く使われてきたSLSCについて,標本数・確率分布に関してフェアでないことが問題となろう.そこで本稿では,従来の方法からそれほど大きく変わらない手続きを提案する.つまり,

    1)何らかの手法でいくつかの分布関数の母数推定を行う.

    2)それぞれの分布関数に関してSLSCを求める.

    3)モンテカルロ・シミュレーションによって生成させた乱数を用いてSLSCを多数発生させ,それぞれの確率分布について,SLSCの分布関数を求める.

    4)最初に求めたそれぞれの分布のSLSCの非超過確率を求め,それが小さい(つまり「より有意」,すなわち確率密度関数の「より左の裾」にある)ものを「優秀な分布」と考える.

    というようなものである.

     この手法でd4PDF過去実験データの年最大1時間降水量の,最適な確率分布を選定したところ,SLSCそのものを用いる場合と,本稿で提案する手法を用いる場合では,結果が若干異なることが分かった.著者らはこの手法により,よりフェアな適合度評価ができると考える.

研究ノート
  • 平岡 透, 中川 啓, 野中 尋史, 廣田 雅春, 鈴木 祥広
    2021 年 34 巻 5 号 p. 303-310
    発行日: 2021/09/05
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

     2007年から2016年までの2月と8月に都城盆地の浅井戸で観測された硝酸性窒素濃度と降水量の関係を調べる.硝酸性窒素濃度と降水量の関係を調べる上で,相関分析を用いる.また, 1999年に家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律,2004年に都城盆地硝酸性窒素削減対策基本計画が策定され,都城盆地の地下水中の硝酸性窒素濃度も年々減少傾向であるため,相関分析では観測時点間の硝酸性窒素濃度の変化量および降水量の変化量を用いた.分析の結果,硝酸性窒素濃度の変化量と降水量の変化量には正の相関があることがわかった.すなわち,都城盆地において,降水量が大きくなると地下水中の硝酸性窒素濃度が高くなる傾向があるということがわかった.また,1ヶ月前までの累積降水量が大きいほど,地下水中の硝酸性窒素濃度が高くなる傾向があるということもわかった.

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