蒸発散は,流域の水収支を考える上で重要な成分であるばかりでなく,土壌水分を介して流出など他の水循環プロセスに影響を与える。従って,土地利用の変化に伴う蒸発散の変化を把握することは重要である。本論文では,造成畑地流域と山林地流域での長期にわたる観測データに基づき,水収支法を適用して両流域の年および季別,月別の蒸発散特性を比較検討した。その結果,年蒸発散量は年降水量に依存し,年降水量1,800mm程度以下では蒸発散比が減少すること,そして,その依存性は造成農地流域において特に顕著であることを明らかにした。また,造成農地流域の蒸発散量は,可能蒸発散量の大きい夏季に抑制されるが,山林地流域ではこの傾向がほとんど認められないことを示した。
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