水文・水資源学会誌
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20 巻, 5 号
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Original research article
  • 今村 能之
    2007 年 20 巻 5 号 p. 400-408
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    2002年の持続可能な開発に関する世界首脳会議,2003年の第3回世界水フォーラム,国連総会の決議に基づく国際淡水年(2003年)や「国際行動の10年:生命のための水(2005-2015年)」,フランス・エビアンでの主要国首脳会議(2003年)などにより,水問題に対する国際的な認識が高まっている.このような状況の中,日本の主導により2000年8月に設立された世界水アセスメント計画(WWAP)は,水に関する史上初の国連システム全体の取り組みとして,先進国,途上国の双方から高い評価を受けながら発展を続けている.ほぼ同じ時期に開始された国連環境計画(UNEP)主導のグローバル国際水域評価(GIWA)と比較を行い,WWAPのような国連の水問題に関する取り組みの成功の要因として(1)政治的リーダーシップ,(2)多国参加型の推進体制,(3)国連システム全体による推進体制,(4)政府主体の実施,(5)効果的な広報戦略が重要であることわかった.
  • 塩野 克宏, 安部 征雄, 河原崎 里子, 濱野 裕之, 田内 裕之, 小島 紀徳, 山田 興一
    2007 年 20 巻 5 号 p. 409-423
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    ハードパン破砕を伴った植林法のための適種選抜はハードパンが分布する乾燥地での植林の成功に重要である.ハードパン破砕による成長改善には種間差があり,Eucalyptus camaldulensisで改善されるが,Acacia aneuraでは改善されない.この原因として,ハードパン破砕により土壌水分状態が改善された深い土層を水源とする能力の種間差が予想されていた.本研究では,ハードパン破砕区と非破砕区(自然状態)における灌漑前後の深度別の土壌体積含水率の測定と,土壌と植林木からの抽出水,灌漑水および井戸水の酸素安定同位体比の分析により,2樹種の主な水源の深さを推定した.非破砕区では両樹種ともに厚いハードパン層のある深度20 cmよりも浅い土層を主な水源としており,灌漑前のこの土層は乾燥していた.一方,灌漑前にも破砕区の深度100 cmより深い土層は湿潤状態にあった.破砕区のE.camaldulensisはこの深度100 cmよりも深い土層の水を主な水源としていた.しかし,A.aneuraは破砕区でも深度100 cmより浅い土層を主な水源としており,深い土層の水を有効に利用できていなかった.本研究により深い土層(>100 cm)の水を主な水源として利用できる樹種はハードパン破砕により成長改善されることが推察できた.
  • 大竹 奈津子, 高瀬 恵次, 戎 信宏
    2007 年 20 巻 5 号 p. 424-431
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    森林整備が樹冠遮断に及ぼす影響を明らかにするため,まず,樹種(スギとヒノキ)や樹高の異なる立木を対象に枝貯留容量実験を行った.次に,枝打ちによる枝葉の減少,除伐・間伐による立木密度の減少など,森林整備の影響を考慮に入れた枝貯留容量の検討を行うため,樹形特性の計測を行い樹形モデルの構築を試みた.そして,枝貯留容量実験の結果から得られた単木貯留容量と樹形モデルによる推定値を比較したところ,両者は概ね一致した.また,試験地内で観測された林内雨量から樹冠貯留容量を求め,モデル推定値と比べたところほぼ類似した値となった.さらに,従来の研究で報告されている樹冠貯留容量と樹形モデルによって算出した推定値を比較すると,過去の報告値は樹形モデルの推定範囲内となった.
  • 坂本 麻衣子, 福島 陽介, 萩原 良巳
    2007 年 20 巻 5 号 p. 432-449
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    バングラデシュにおいて地下水のヒ素汚染が問題となっている.ヒ素汚染の発見以来,安全な飲料水を供給すべく様々な代替技術が導入されてきた.しかし,現地に導入された技術も住民に受容されず放置されることが少なくない.そして,現在多くの地域で多くの住民は点在する安全な水源に大きな負担を感じながらも毎日通って水運びを行っていたり,あるいはヒ素汚染を認知しながらなおも汚染された近場の井戸の水を飲み続けていたりする.本研究では,技術的には減災が十分に可能ながらも改善されていないバングラデシュのヒ素汚染問題を,現地社会環境と深く結びついた災害として認識し,この関連に着目しながら,問題の明確化,調査,分析を経て現地の住民が受容可能な計画代替案の設計を行うための計画プロセスを示す.特に本研究では社会環境システム論的な視点から,現地住民の水資源選択行動を説明するために,安全な飲料水入手のための潜在能力と水運びストレスという2つの概念を導入し,これらを計量化するためのモデルを作成する.そして,これらのモデルを用いたヒ素汚染災害軽減のための水利施設整備計画を示す.
  • 多田 毅
    2007 年 20 巻 5 号 p. 450-461
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,流出モデルのパラメータを同定するために,大域的探索法の一種であるparticle swarm optimization (PSO)アルゴリズムを適用し,その有用性を確認したものである.パラメータ数の異なる4種の直列タンクモデルに対し,the shuffled complex evolution method(SCE-UA),改良されたSCE-UA,改良されたSCE-UAに初期パラメータを与えたもの, PSO,改良されたPSO,改良されたPSOに初期パラメータを与えたものの6種の大域的最適化手法を適用し,パラメータの最適化性能を比較した.その結果,ほとんどのケースにおいてPSOとSCE-UAは同等の性能を示すこと,モデルのパラメータ数が多い場合,パラメータの探索範囲が広い場合,同定期間が短い場合,データに多くの不確定性が含まれている場合において,PSOがSCE-UAよりも高い性能を示すことが確認された.特に,改良されたPSOに初期パラメータを与える手法が最も安定して高い性能を示した.
Technical note
  • ― 日本への適用可能性 ―
    篠原 慶規, 小松 光, 大槻 恭一
    2007 年 20 巻 5 号 p. 462-469
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    日射量は,水文モデルなどの入力データとしてしばしば必要だが,気温や降水量などと比べると観測地点は非常に少ない.そのため,全天日射量を推定する数多くの方法が考案されており,その中の1つに気温の日較差を用いる方法がある.本研究では,この方法の日本での適用性・精度について,気象官署の観測値を用いて調べた結果,以下の3点が明らかとなった.(1)モデル中に含まれる経験定数ACを観測値から決定した場合,バイアスはほとんどなく,RMSE = 4.40 MJ m-2 day-1程度で推定可能であった.(2)経験定数ACを観測値から決定できない場合, A = 0.76,C = 2.2と与えることで,ACを地点ごとに決定する場合と同程度のRMSEで全天日射量の推定が可能である.(3)この方法による全天日射量の推定精度は,約200km離れた地点での観測値を用いる場合とほぼ同程度であるため,この方法は200km以内に全天日射量観測地点がない場合に有用である.
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